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はじめに

このたびの東日本大震災にて被災された皆様に心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

東京国立近代美術館では、5月17日(火)から7月31日(日)まで、所蔵作品展内にて、「特集 東北を思う」を開催することといたしました。

青森県八戸市の種差海岸をモチーフに描かれた、東山魁夷の代表作《道》。そして岩手県東和賀郡十二ケ村(現・花巻市東和町)出身の萬鉄五郎の代表作《裸体美人》(国指定重要文化財)。これらをはじめ、39点により構成されております。また、すべての作品に、書き下ろしの解説を付しました。

会期や開館時間について

この特集展示は、所蔵作品展「近代日本の美術」内で開催されます。

萬鉄五郎《裸体美人》1912年
重要文化財
萬鉄五郎《裸体美人》1912年
重要文化財
企画の趣旨

今回、当館のコレクションより、次の三つの視点で39点を選びました。

東北出身の作家の作品
モデルが東北出身の作品
東北の風景を描いた作品

明治以降の美術家たちの出身地を調べると、日本画は京都を中心とする関西圏が、洋画は多数の先達を擁する九州が、それぞれ多いことがわかります。

その中で、萬鉄五郎(よろずてつごろう)、関根正二、松本竣介、舟越保武、佐藤忠良といった、忘れがたい個性を持つ何人もの作家が東北から現れているのは、特筆すべきことです。

また、荻原守衛の恋した相馬黒光(そうまこっこう)、高村光太郎の妻、智恵子など、幾人もの東北出身の人々が、日本近代美術史に残る重要な作品の制作にインスピレーションを与えました。

福島県大沼郡出身の日本画家、酒井三良(さかいさんりょう)は、郷里の風物を繰り返し描きました。東山魁夷のように、その風景に心惹かれ、たびたび東北を訪れて制作を行った画家もいます。戦争の傷跡がいまだ癒えぬ1950年、未来への希望を手探りするように、あの有名な《道》が描かれたのも、青森県八戸市の種差海岸(たねさしかいがん)でした。

このたびの震災では、これらの作家やモデルの故郷が大きな被害を受け、美しい風景も打撃を蒙りました。今、美術館にできることは何なのか。東北という場を栄養源として、約100年のあいだに育まれた数々の作品が語りかけるものに耳を傾けながら、みなさまと一緒に考えて行きたいと願い、この特集を企画しました。

作品は会場内のあちこちに展示されています。初夏の東北をイメージした青のキャプションを目印に、どうぞゆっくりと館内を巡ってご鑑賞ください。

なお、本特集には、「天心と五浦(いづら)と日本美術院」と題した、震災で消失した岡倉天心遺愛の「六角堂(観瀾亭)」(かんらんてい)をしのぶ展示が含まれています。4階の一角で展示されていますので、あわせてご高覧ください。

出品作品

東山魁夷の《道》は、ギャラリー4(2階)で開催中の「路上」に展示されています。

会期中展示替があります。ご注意ください。なお作品に注記のないものについては、通期展示となります。
前期:5月17日(火)~6月26日(日)
後期:6月28日(火)~7月31日(日)


横山大観 《菊慈童》 1897年頃 絹本彩色 *後期
今村紫紅 《笛》 1900年頃 絹本彩色 *後期
菱田春草 《賢首菩薩》 1907年 絹本彩色 重要文化財 *前期
下村観山 《大原御幸(おおはらごこう)》 1908年 絹本彩色
今村紫紅 《時宗》 1908年 絹本彩色 *前期
菱田春草 《水辺初夏(鷺)》 1908年 絹本彩色 *後期
荻原守衛 《女》 1910年 ブロンズ
下村観山 《唐茄子畑》 1911年 紙本彩色
横山大観 《観音》 1912年頃 絹本彩色 *前期
赤城泰舒 《白い砂》 1912年 水彩、鉛筆・紙
萬鉄五郎 《裸体美人》 1912年 油彩・キャンバス 重要文化財
萬鉄五郎 《手袋のある静物》 1915年 油彩・キャンバス
中村彝  《田中館博士の肖像》 1916年 油彩・キャンバス
萬鉄五郎 《立木風景》 1916年 油彩・キャンバス
萬鉄五郎 《もたれて立つ人》 1917年 油彩・キャンバス
関根正二 《婦人像》 1918年頃 油彩・キャンバス
横山大観 《暮色》 1922年 絹本墨画 *後期
横山大観 《東山》 1924年 絹本墨画 *前期
高村光太郎 《鯰》 1926年 木
佐藤玄々(朝山) 《動》 1929年 木
安井曽太郎 《奥入瀬の溪流》 1933年 油彩・キャンバス
太田聴雨 《星をみる女性》 1936年 紙本彩色
平櫛田中 《鶴●》 1942年 木 *
酒井三良 《山里の春》 1942年年 紙本彩色
島田墨仙 《山鹿素行先生》 1942年 絹本彩色 *前期
松本竣介 《並木道》 1943年 油彩・キャンバス
松本竣介 《裸婦》 1947年 油彩・キャンバス
舟越保武 《アザレア》 1950年 大理石
東山魁夷 《道》 1950年 彩色絹本
佐藤忠良 《群馬の人》 1952年 ブロンズ
舟越保武 《萩原朔太郎》 1955年 ブロンズ
東山魁夷 《青響》 1960年 紙本彩色
佐藤忠良 《裸婦》 1961年頃 コンテ・紙
奥田元宋 《磐梯》 1962年 紙本彩色
佐藤忠良 《うずくまる裸婦》 1963年 ブロンズ
舟越保武 《原の城 (頭部)》 1964年 ブロンズ
舟越保武 《原の城》 1971年 ブロンズ
畠山直哉 《川の連作》 1993-96年 タイプCプリント
菅木志雄 《景留斜継》 2004年 木、ワイヤーロープ

*平櫛の作品は、「かくしょう」と題した岡倉天心の像で、高さ2メートルを超える木彫作品です。

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The National Museum of Modern Art, Tokyo