企画の趣旨
今回、当館のコレクションより、次の三つの視点で39点を選びました。
東北出身の作家の作品
モデルが東北出身の作品
東北の風景を描いた作品
明治以降の美術家たちの出身地を調べると、日本画は京都を中心とする関西圏が、洋画は多数の先達を擁する九州が、それぞれ多いことがわかります。
その中で、萬鉄五郎(よろずてつごろう)、関根正二、松本竣介、舟越保武、佐藤忠良といった、忘れがたい個性を持つ何人もの作家が東北から現れているのは、特筆すべきことです。
また、荻原守衛の恋した相馬黒光(そうまこっこう)、高村光太郎の妻、智恵子など、幾人もの東北出身の人々が、日本近代美術史に残る重要な作品の制作にインスピレーションを与えました。
福島県大沼郡出身の日本画家、酒井三良(さかいさんりょう)は、郷里の風物を繰り返し描きました。東山魁夷のように、その風景に心惹かれ、たびたび東北を訪れて制作を行った画家もいます。戦争の傷跡がいまだ癒えぬ1950年、未来への希望を手探りするように、あの有名な《道》が描かれたのも、青森県八戸市の種差海岸(たねさしかいがん)でした。
このたびの震災では、これらの作家やモデルの故郷が大きな被害を受け、美しい風景も打撃を蒙りました。今、美術館にできることは何なのか。東北という場を栄養源として、約100年のあいだに育まれた数々の作品が語りかけるものに耳を傾けながら、みなさまと一緒に考えて行きたいと願い、この特集を企画しました。
作品は会場内のあちこちに展示されています。初夏の東北をイメージした青のキャプションを目印に、どうぞゆっくりと館内を巡ってご鑑賞ください。
なお、本特集には、「天心と五浦(いづら)と日本美術院」と題した、震災で消失した岡倉天心遺愛の「六角堂(観瀾亭)」(かんらんてい)をしのぶ展示が含まれています。4階の一角で展示されていますので、あわせてご高覧ください。