東京国立近代美術館

美術と音楽

美術と音楽とをつないでいるのは、想像力です。
この展示室には、当館のコレクションの中から音楽と関連付けられる様々な作品―絵画・彫刻・工芸・版画・写真―が展示されています。
まず、作品の前に立って、耳を澄ましてみましょう。楽器やそれを演奏しているところを描いたものを見ていて、その楽器の音色が聞こえてきましたか。絵画は、楽器や演奏者を描くことで、音楽を暗示することが出来ますが、私たちの豊かな想像力はそれでは飽き足りません。
楽譜はある意味で音楽を再現しているといえます。たとえば、楽器がなくても頭の中で楽譜どおりの音楽を想像することが出来る音楽家にとってみれば、楽譜は音楽そのものだと言えるでしょう。近年、五線譜にとらわれない自由な形状の楽譜が考えられて来ていますが、五線譜が音楽の細部までを規定していくのに対して、演奏者の想像力をより重視していく傾向といえるでしょう。楽譜が音楽を表現し始めたのかも知れません。
楽譜からの音楽の想像は、音楽家だけの特権かも知れませんが、絵画をはじめ造形作品からの音楽の想像は、美術と音楽とを楽しめる私たちすべての人間に許されています。今回の展示では、いくつかの作品に対して、特にそれと関係深い音楽を聴いていただけるようにしてあります。音楽からインスピレーションを得た作品を前に実際にその原曲を聴くことも出来るわけです。神原泰の《スクリアビンの「エクスタシーの詩」に題す》という抽象画を眼にしながら、その原曲を耳にすると、画家の想像力がいかにたくましく豊かなものか、実感されることでしょう。音楽が絵画を生むことがあれば、絵画が音楽を生むこともあります。池辺晋一郎氏は、福田平八郎の《雨》という日本画をヒントとして、交響曲第7番を作曲しています。
クレーやカンディンスキーの抽象作品は、特定の音楽をテーマとしたものではありませんが、彼らの作品制作に対する意識は明快です。音楽のような絵画をつくること。ですから、抽象画はわからない、と思われている方にお勧めします。それを音楽だと思って、その絵から聞こえてくる音楽に耳を傾けてください。画面に潜む色彩のハーモニー、形態のリズムを感じるとき、構成(コンポジション)は作曲(コンポジション)となるでしょう。そして、すぐれた作品ならば必ず、あなたの想像力をかきたてながら、素敵な音楽を奏でてくれるはずです。

♪視聴機にてお聴きいただける関連楽曲一覧

福田平八郎 《雨》 1953年
池辺晋一郎作曲 交響曲第7番「一滴の共感へ」 17:07
『悲しみの森〜池辺晋一郎:交響曲』 カメラータ・トウキョウ28CM-614
井上三綱 《黄鐘調(おうしきちょう)》 1965年
「黄鐘調音取」(おうしきちょうねとり)
『雅楽の世界(下)』 日本コロムビア COCF-6197
神原泰 《スクリアビンの『エクスタシーの詩』に題す》 1922年
スクリャービン作曲 交響曲第4番「法悦の詩」 20:26
ゲルギエフ指揮/キーロフ歌劇場管弦楽団 PHILIPS UCCP-1035
利根山光人 《春の祭典》
ストラヴィンスキー作曲 バレエ「春の祭典」(1947改訂版) 34:54
ゲルギエフ指揮/キーロフ歌劇場管弦楽団 PHILIPS UCCP-1035
伊砂利彦
 《紙本型絵染額装・雪の上の歩み ドビュッシー作曲前奏曲集1のイメージより》1981年
 《紙本型絵染額装・とだえたセレナーデ ドビュッシー作曲前奏曲集1のイメージより》1981年
 《紙本型絵染額装・沈める寺 ドビュッシー作曲前奏曲集1のイメージより》1981年
 《着物・ドビュッシー前奏曲集花火のイメージより》1985年
 舘野泉『前奏曲集 第一集、第二集』 ポニーキャニオン、POCL00533
野村仁 《月の譜》1977-80年
 野村仁「'moon' score」1979年 20:40

♪「美術と音楽」出品作品

作家名(和) 作家名(ヨミ) 題名(和) 題名(よみ) 制作年 技法 支持体
伊砂利彦 イサ、 トシヒコ 紙本型絵染額装・雪の上の歩み ドビュッシー作曲前奏曲集1のイメージより しほん かたえぞめ がくそう・ゆき の うえ の あゆみ どびゅっしー さっきょく ぜんそうきょくしゅう 1 の いめーじ より 1981 型絵染  
伊砂利彦 イサ、 トシヒコ 紙本型絵染額装・とだえたセレナーデ ドビュッシー作曲前奏曲集1のイメージより しほん かたえぞめ がくそう・とだえた せれなーで どびゅっしー さっきょく ぜんそうきょくしゅう 1 の いめーじ より 1981 型絵染  
伊砂利彦 イサ、 トシヒコ 紙本型絵染額装・沈める寺 ドビュッシー作曲前奏曲集1のイメージより しほん かたえぞめ がくそう・しずめる てら どびゅっしー さっきょく ぜんそうきょくしゅう 1 の いめーじ より 1981 型絵染  
伊砂利彦 イサ、 トシヒコ 着物・ドビュッシー前奏曲集花火のイメージより きもの・どびゅっしー ぜんそうきょくしゅう はなび の いめーじ より 1985 絹、型絵染  
井上三綱 イノウエ、 サンコウ 黄鐘調 おうしきちょう 1965 フロッタージュ
瑛九 エイ−キュウ 瑛九・銅版画 「SCALE IV」より 176.音楽   1953 銅版
織田一磨 オダ、 カズマ 水亭夜曲(中央) すいていやきょく 1927 リトグラフ
織田一磨 オダ、 カズマ 水亭夜曲(左方) すいていやきょく 1927 リトグラフ
織田一磨 オダ、 カズマ 水亭夜曲(右方) すいていやきょく 1927 リトグラフ
恩地孝四郎 オンチ、 コウシロウ Lyrique No.2 楽曲によせる抒情 諸井三郎 〈プレリュード〉 りりっくなんばーつー がっきょくによせるじょじょう もろいさぶろう ぷれりゅーど 1932 木版(多色)
恩地孝四郎 オンチ、 コウシロウ Lyrique No.2 楽曲によせる抒情 バルトーク 〈大食漢のマーチ〉 りりっくなんばーつー がっきょくによせるじょじょう ばるとーく たいしょくかんのまーち 1933 木版(多色)
川口軌外 カワグチ、 キガイ 静物(マンドリン) せいぶつ(まんどりん) 1931 油彩 キャンバス
カンディンスキー、 ワシリー カンディンスキー、 ワシリー 全体 ぜんたい 1940 油彩 キャンバス
神原泰 カンバラ、 タイ スクリアビンの『エクスタシーの詩』に題す   1922 油彩
木村賢太郎 キムラ、 ケンタロウ 古墳の音 こふんのおと 1966  
熊倉順吉 クマクラ、 ジュンキチ "Jazz, Vocal" じゃず・ぼーかる 1975-79 陶器  
クレー、 パウル クレー、 パウル 小さな秋の風景 ちいさなあきのふうけい 1920 油彩 紙(ボードに貼付)
クレー、 パウル クレー、 パウル 花ひらく木をめぐる抽象 はなひらくきをめぐるちゅうしょう 1925 油彩 厚紙
小出楢重 コイデ、 ナラシゲ ラッパを持てる少年 らっぱをもてるしょうねん 1923 油彩 キャンバス
古賀春江 コガ、 ハルエ 月花 げっか 1926 油彩 キャンバス
シャガール、 マルク シャガール、 マルク コンサート   1974-75 油彩 キャンバス
白木ゆり シラキ、 ユリ Sound−28 さうんど28 2000 銅版
スティーグリッツ、 アルフレッド スティーグリッツ、 アルフレッド 音楽−10点の雲の連作 No.VII おんがく じゅってんのくものれんさく 1922 ゼラチン・シルバー・プリント  
東郷青児 トウゴウ、 セイジ サルタンバンク   1926 油彩 キャンバス
利根山光人 トネヤマ、コウジン 交響 春の祭典 こうきょうはるのさいてん 1954 油彩 キャンバス
ドローネー、 ロベール ドローネー、 ロベール リズム 螺旋 りずむ らせん 1935 油彩 キャンバス
野村仁 ノムラ、 ヒトシ ‘moon’score (月の譜) 1977.1.1 むーんすこあ つきのふ 1977 ゼラチン・シルバー・プリント  
野村仁 ノムラ、 ヒトシ ‘moon' score (月の譜) 1978.1.12 むーんすこあ つきのふ 1978 ゼラチン・シルバー・プリント  
野村仁 ノムラ、 ヒトシ ‘moon' score (月の譜) 1979.1.1 むーんすこあ つきのふ 1979 ゼラチン・シルバー・プリント  
野村仁 ノムラ、 ヒトシ ‘moon' score (月の譜) 1980.1.1 むーんすこあ つきのふ 1980 ゼラチン・シルバー・プリント  
福田平八郎 フクダ、 ヘイハチロウ あめ 1953 彩色 紙本
吉岡堅二 ヨシオカ、 ケンジ 小憩 しょうけい 1933 彩色 紙本
リヒター、 ハンス リヒター、 ハンス 色のオーケストレーション いろのおーけすとれーしょん 1923 油彩 キャンバス