東京国立近代美術館
東京国立近代美術館
www.momat.go.jp

所蔵作品展 近代日本の美術

□コレクションと展示の概要

佐伯祐三<ガス灯と広告>1927年 油彩・キャンバス

・ 東京国立近代美術館では、絵画・彫刻・水彩画・素描・版画・写真など、およそ9,200点の美術作品を所蔵しています。これらのコレクションの中から200〜250点の作品を選び、20世紀初頭から現代に至る日本の近代美術の流れが概観できるよう、4階から2階の所蔵品ギャラリーで展示しています。(→出品作品リスト

・ 所蔵品展というと、いつも同じ作品が並んでいると思われる方も多いかもしれません。名作といわれる作品は、できるだけいつでもご覧いただけるようにしておきたいのも事実です。けれども一方で、ご覧いただくたびに新しい発見をしていただきたい。そこで当館では、多数の所蔵品をフルに活用して定期的に展示替えを行い、さまざまな切り口から日本の近代美術を、ときに外国の作品も交えながらご覧いただけるように工夫しています。現在の所蔵品ギャラリーのあらましと主要作品を以下にご案内します。

□展示構成

 所蔵作品展は4階から始まり、続いて3階、2階へと時代順にフロアを下っていく構成になっています。時代の特色が浮かび上がるように、次のような章だてで展示は構成されています。

<4階>
第1章−1 明治・大正期の美術 文展開設前後
第1章−2 明治・大正期の美術 大正のヒューマニズム
第2章−1 昭和戦前期の美術 都市のなかの芸術家
<3階>
第2章−2 昭和戦前期の美術 日本画・洋画の成熟
第3章 戦時と「戦後」の美術
第4章 1950−60年代の美術
<2階>
第5章 現代美術−1970年代以降

 また、これら時代順の展示の他に、各フロアに特集コーナーを設けて、特定の作家の特集や、時代とは別の切り口からのテーマ展示を行うようにしています。

□2006年3月11日(土)〜5月21日(日)の展示のみどころ

会期中、一部の日本画の展示替があります
前期:3月11日(土)〜4月 9日(日)
後期:4月11日(火)〜5月21日(日)

□今回の特集

●<4階特集コーナー>パリの街角へのまなざし

1階企画展ギャラリーで開催される藤田嗣治展にあわせて、4階特集コーナーではフジタの活躍した芸術の都・パリの姿を捉えた作品を特集します。藤田がパリに渡ったのは1913年、第一次世界大戦の直前のことでしたが、大戦後には多くの日本人芸術家がパリに留学しました。今回はその中から、佐伯祐三、前田寛治、野口弥太郎、東郷青児、荻須高徳らの油彩画を展示します。また、20世紀初頭のパリの街並みを写したウジェーヌ・アジェをはじめ、アンドレ・ケルテス、フローレンス・アンリらの写真もあわせて、約20点の作品で、芸術家たちの眼を通して表されたパリの相貌の一端をご紹介します。

●<3階版画コーナー>浜田知明

浜田知明(1917〜  )は、過酷な兵役体験を基に、戦争の不条理を幻想的な銅版画連作<初年兵哀歌>で鋭く描き出しました。その後は社会の矛盾や人間の愚かさを、諷刺を交えて表現してきましたが、その制作に一貫して流れているのはヒューマニズムの精神だといえるでしょう。深い人間観察に裏打ちされた彼の銅版画16点を紹介します。

●<3階写真コーナー>岡上淑子

岡上淑子(1928〜  )は文化学院に学び、1950年代前半に集中してきわめて鮮烈なコラージュ作品を生み出しました。外国のグラフ雑誌などからとられたそれらのイメージは、美術評論家、瀧口修造によって「不思議の国のアリスの現代版」と称されました。半世紀を過ぎた現在も、私たちの想像力を刺激してやまない彼女の作品20点をご紹介します。

<2階ギャラリー4>現代の版画−写真の活用とイメージの変容

版画は1960年代後半以降、写真的なイメージを取り入れることによって、飛躍的に表現を多様化させました。また同時に、表現や認識についての概念的な問いかけを主題とする作品も現れました。こうした写真を活用した版画の諸相をご紹介します。横尾忠則、野田哲也、池田良二、秋岡美帆らの27点。

□今回展示される重要文化財

●川合玉堂<行く春>1916年 紙本彩色
  雄大な自然と、そこに暮らす人々の生活の姿とを、細やかな観察眼と確かな筆致で描き出した玉堂。この作品は秩父、長瀞に取材したもので、穀物をひく水車舟のある渓谷に桜が舞い散る情景を、パノラマ的に描き出しています。
●萬鉄五郎<裸体美人>1912年 油彩・キャンバス
  萬の東京美術学校の卒業制作であり、ゴッホの影響を受けた強烈な色彩と筆致による表現は当時の指導教官たちを困惑させたと伝えられますが、その主観的表現は、個性の尊重された大正時代のさきがけとなる記念碑的作品といえます。
●岸田劉生<道路と土手と塀(切通之写生)>1915年 油彩・キャンバス
  劉生が当時住んでいた代々木付近を描いた風景画。密度の高い画面作りと、見る者に迫るような特異な空間把握によって、大正時代の「写実」絵画の中でも傑出した独自性を持つ作品です。
●中村彝<エロシェンコ氏の像>1920年 油彩・キャンバス
  当時、日本を訪れていた盲目のロシア詩人エロシェンコを描いた肖像画。ルノワールの影響の見られる柔らかい光の表現の中に、モデルの深い精神性を浮かび上がらせた作品です。

□今回展示される新収蔵作品

平成15年度〜17年度に購入・受贈した作品で今回展示されるものは次の通りです。

(洋画)
イヴ・タンギー<聾者の耳>1938年(平成17年度購入)
小牧源太郎<願望No.1>1938年(平成15年度購入)
丸山直文<Garden 1>2003年(平成15年度購入)
堂本右美<Kanashi−11>2004年(平成16年度購入)
(版画)
横尾忠則<風景No.10 ヴォーグの女>1969年(平成17年度購入)
横尾忠則<風景No.16 自画像>1969年(平成17年度購入)
(写真)
岡上淑子<作品B>1950年 ほか合計20点(平成16年度購入/作者寄贈)
林隆喜<ZOO>より5点 1984年(平成16年度購入)
(彫刻)
工藤哲巳<あなたのアイドル>1962年(平成17年度購入)
菅木志雄<景留斜継>2004年(平成16年度購入)

□その他のみどころ

●桜を描いた名作が揃います

 今年も桜の季節が巡ってきました。美術館の近くの千鳥が淵も桜の名所として知られていますが、それに劣らない桜を描いた名品を、当館では数多く所蔵しています。上記の重要文化財のところでもご紹介した川合玉堂<行く春>(1916年)を筆頭に、以下のような作品の展示を予定しています。

菊池芳文<小雨ふる吉野>(1914年)
富岡鉄斎<花桜人武士図>(1920年、前期のみ展示)
冨田渓仙<紙漉き>(1928年)
跡見玉枝<桜花図巻>(1934年、後期のみ展示)
松林桂月<春宵花影図>(1939年、前期のみ展示)
宇田荻邨<桜>(1942年、前期のみ展示)

●戦争記録画の展示

今回展示予定の戦争記録画は、以下の通りです。*は当館で初めて展示する作品です。

前期(3月11日〜4月9日)
矢沢弦月<攻略直後のシンガポール軍港>1942年頃*
田村孝之介<佐野部隊長還らざる大野挺身隊と訣別す>1944年
清水登之<工兵隊架橋作業>1944年頃
後期(4月11日〜5月21日)
山口蓬春<香港島最後の総攻撃図>1942年
鶴田吾郎<神兵パレンバンに降下す>1942年
中村研一<コタ・バルB>1944年

●アーティスト・トーク

活躍中の作家をお招きして自作の前で語っていただくアーティスト・トークも、5回目を迎えることになりました。今回はギャラリー4の小企画「現代の版画−写真の活用とイメージの変容」出品作家の池田良二さんをお迎えして、3月31日(金)に開催します。