東京国立近代美術館

所蔵品ギャラリー「近代日本の美術」

・ 東京国立近代美術館では、絵画・彫刻・水彩画・素描・版画・写真など、およそ9,000点の美術作品を所蔵しています。これらのコレクションの中から約200点の作品を選び、明治中期から現代に至る日本の近代美術の流れが概観できるよう、4階から2階の所蔵品ギャラリーで展示しています。

・ 所蔵品展というと、いつも同じ作品が並んでいると思われる方も多いかもしれません。名作といわれる作品は、できるだけいつでもご覧いただけるようにしておきたいのも事実です。けれども一方で、ご覧いただくたびに新しい発見をしていただきたい。そこで当館では、多数の所蔵品をフルに活用して定期的に展示替えを行い、さまざまな切り口から日本の近代美術を、ときに外国の作品も交えながらご覧いただけるように工夫しています。現在の所蔵品ギャラリーの見どころを次にご紹介します。

出品リスト

2003年10月10日-2004年1月4日の展示

*11月18日より一部展示替えがあります
*2004年1月2日(金)は午後5時までの開館となります。ご注意ください。

<4階>
I 明治・大正期の美術

・ 文展開設前後

   「文展」とは文部省美術展覧会の略称で、現在の日展の前身にあたります。1907(明治40)年に開設されたこの展覧会制度は、その後の美術界に大きな影響を与えました。この文展の際に文部省に買い上げられた作品が、当館コレクションのひとつの基礎となっています。和田三造<南風>(第1回文展、二等賞)などを展示。また同時期の作品として、日本画では菱田春草<四季山水>(1910年)、洋画では黒田清輝<落葉>(1891年)などを展示します。

   さらに、護国寺より寄託されている原田直次郎<騎龍観音>(1890年)もあわせて展示します。明治中期の洋画の記念碑的な大作です。

・ 大正のヒューマニズム

   大正時代は芸術家の自由な自己表現が主張されはじめ、岸田劉生、萬鉄五郎、高村光太郎、荻原守衛らが個性的な作品をのこしました。洋画では岸田劉生の徹底した細密描写による<道路と土手と塀(切通之写生)>(1915年、重要文化財)、など、日本画では土田麦僊<湯女>(1918年、重要文化財)や村上華岳<日高河清姫図>(1919年、重要文化財/11月18日-1月4日展示)などを展示します。

II 昭和戦前期の美術

・ 都市のなかの芸術家

   関東大震災以後の復興の中で近代都市へと変貌した東京。古賀春江の<海>(1929年)は、新しい都市生活を新しいスタイルで表現した典型的な作品です。当時は、抽象美術やシュルレアリスムなど、西洋のさまざまな前衛美術が紹介されましたが、日本に影響を与えたクレー、カンディンスキー、レジェなどの作品も、このセクションであわせてご覧いただけます。

   また、この時期には多くの画家たちが海外で絵を学ぶようになりました。パリに学んだ佐伯祐三、前田寛治、アメリカに学んだ国吉康雄、野田英夫らの作品を紹介します。

・ 特集コーナー 藤田嗣治

   藤田嗣治(1886-1968)は1913年にフランスに渡り、乳白色の美しい下地に細筆によるデリケートな線で裸婦や猫などを描く独自のスタイルを生み出し、エコール・ド・パリの人気作家として活躍しました。帰国後、戦時中には戦争記録画を多数制作しましたが、戦後はアメリカ経由で再渡仏し、以後フランスで制作を続けました。今回は当館所蔵の彼の作品から、彼のエコール・ド・パリ時代の代表作<五人の裸婦>(1923年)、特徴ある猫や自画像、戦争記録画2点(<十二月八日の真珠湾><アッツ島玉砕>)、そして戦後の小品を含む計7点を展示いたします。

<3階>
II 昭和戦前期の美術

・ 日本画・洋画の成熟

   昭和の戦前期には、西洋から前衛美術の影響を受ける一方で、日本の伝統や古典に学び、日本独自の絵画を確立しようとする動きもみられました。洋画では安井曽太郎<金蓉>(1934年)、梅原龍三郎<北京秋天>(1942年)などに、写実と装飾性をあわせたスタイルを見ることができます。日本画では、端正な線描によって源頼朝と義経の出会いを描いた安田靫彦<黄瀬川陣>(1940/41年)などを、彫刻では平櫛田中による木彫大作の岡倉天心像<鶴氅(かくしょう)>(1942年)を展示します。

   なお、今回は安井曽太郎<金蓉>について、油彩画と素描をあわせて展示します。最初のスケッチの段階から油彩画へと制作が進むにつれて、どのような画面構成の変化や誇張がなされているか、比べてみてください。

・ 版画コーナー:織田一磨

   織田一磨(1882-1956)は、雑誌「方寸」や日本創作版画協会の創立に関わるなど、わが国における近代版画の確立に重要な役割を果たした版画家です。彼は古い情緒をとどめながら近代化の中で移り変わってゆく都市の風景を、石版画の繊細な明暗の諧調で表現しました。今回は「東京風景」および「画集銀座 第一輯」の連作の中から16点の作品をご紹介します。

・ 写真コーナー:写真の中の人間像3 群衆

   カメラを持って街に出た写真家は、群衆を被写体として発見しました。特定の個人の肖像が一対一で向き合うかたちで撮影されるのに対して、匿名の集団としての群衆は、距離をおいて眺めるように撮影されるといえるでしょう。そこには社会批評的な視点が生まれます。また人々の連なりや視線は、複雑な画面空間を生み出し、造形的にも興味深いものがあります。今回はアルフレッド・スティーグリッツ、アレクサンダー・ロドチェンコ、大辻清司、富山治夫、ゲリー・ウィノグランド、セバスチャン・サルガドなどの作品を紹介します。

III 戦時と「戦後」の美術

   1937年の日中戦争以降、45年に敗戦を迎えるまでの間、個性に立脚するはずの「近代」芸術家をとりまく時代状況は厳しいものとなりました。一方で多くの画家たちが戦争記録画の制作に動員されました。それらの戦争記録画の多くは戦後アメリカに接収されましたが、1970年に当館に「無期限貸与」のかたちで返還されました。今回は新井勝利<航空母艦上に於ける整備作業>三部作(1943年頃)を展示します。いずれも当館ではじめて展示するものです(このほか、藤田嗣治の戦争記録画2点を、4階特集展示で展示します)。

   また、戦時下にあって自己の内面を見据えた靉光<眼のある風景>(1938年)、<自画像>(1944年)、松本竣介<並木道>(1943年)、戦後の時代状況にあって、見る者に進むべき道を問いかけるような北脇昇<クォ・ヴァディス>(1949年)などもこのセクションでご紹介します。

IV 1950-60年代の美術

   1952年の講和条約以降、急速に復興し高度成長を遂げた日本。それとともに美術においても、西洋のモダニズムの造形思考に学びながら、さまざまなかたちで新しい表現が模索されました。

 日本画では、東山魁夷<雪降る>(1961年)、加山又造<春秋波涛>(1966年)などを、洋画では、岡本太郎<燃える人>(1955年)などを展示します。

 また、1950年代に新しい総合芸術運動を展開した「実験工房」の作家、山口勝弘の<ヴィトリーヌNo.47(完全分析方法による風景画)>(1955年)、北代省三の<モビール・オブジェ(回転する面による構成)>(1953年)を展示します。いずれも作品に「動き」の要素を導入した造形です。

<2階>
V 現代美術-1970年代以降

   社会変革や意識変革への意志が高まった1960年代末頃から、美術においても、絵とは何か、彫刻とは何かということが根本から問い直されるようになりました。そこでは美術を成り立たせているひとつひとつの要素が再検討されています。ルチオ・フォンタナ、ゲルハルト・リヒター、小林正人、赤塚祐二、辰野登恵子などの作品を展示します。

* 今回展示される新収蔵作品のご紹介

当館では、日本の近代美術の流れをより充実してお見せするために、毎年、購入や所蔵家の方からの寄贈を通してコレクションの拡充に努めています。平成13年度・14年度に新たに収蔵された作品の中から、今回展示されるものは次の通りです。

・日本画

鏑木清方<目黒の栢莚(はくえん)>1933年(13年度堀越友規子氏寄贈/11月 18日-1月4日展示)

・洋画

草間彌生<残骸のアキュミレイション(離人カーテンの囚人)>1950年(14年度購入)

草間彌生<集積の大地>1950年(14年度購入)

藤田嗣治<少女>1956年(14年度田原修氏寄贈)

・素描

鶴岡政男<雪の子供>1964年(13年度購入)

鶴岡政男<暈>1964年(13年度購入)

鶴岡政男<謂れなき涙>1966年(13年度購入)

・版画

ピエール・アレシンスキー<呼鈴なしで>1971年(14年度菊地のぶ子氏寄贈)

・写真

ゲリー・ウィノグランド<ワールド・フェア―ニューヨーク州ニューヨーク>1964年(13年度購入)

ゲリー・ウィノグランド<在郷軍人会―テキサス州ダラス>1964年(13年度購入)

ゲリー・ウィノグランド<カリフォルニア州ロサンゼルス>1969年(13年度購入)

ゲリー・ウィノグランド<スタッテン島行きフェリー ― ニューヨーク州ニューヨーク>1971年(13年度購入)

・彫刻

北代省三<モビール・オブジェ(回転する面による構成)>1953年(14年度北代芳江氏寄贈)

アントニー・ゴームリー<反映/思索>2000年(14年度購入)