MOMAT | 東京国立近代美術館
「建築はどこにあるの?7つのインスタレーション」展
Where is Architecture?
Seven Installations by Japanese Architects
建築家によるインスタレーションは、いつも美術館が展示しているそれとはちょっと違います。意味のある新しい建築家によるインスタレーションは、いつも美術館が展示しているそれとはちょっと違います。意味のある新しい「空間」をつくるために、会場を実測し、模型などでスタディし、見積もりをとって唸り、次の案を考える……こうしたプロセスが、できあがった作品と同じくらい重要なのです。そこで彼らの「work in progress」を、特別にご紹介することとしました。各建築家が、不定期に、制作状況をアップしてくれています。人によって「スピード」や「量」が異なるのもポイントのひとつ。ちなみに空間の割り振りが全て決定したのは、2009年12月中旬のことでした。保坂健二朗(本展キュレーター)
展覧会会期 : 2010年4月29日(木・祝) ~ 8月8日(日)
ITO Toyo / 伊東豊雄
伊東豊雄は、2006年にRIBAゴールドメダルをするなど、世界的な建築家として知られている。しかし、つねに彼は、新しくも根源的である空間のつくり方を探求している。斬新な「形」をいたずらにつくるのではもちろんない。「単純なルールで複雑な空間を作る」といったような明確なコンセプトのもと、論理に基づいた空間をつくろうとしているのだ。そこが快適に感じられるのだとしたら、それは、今や私たちの思考までを支配するようになった「水平/垂直」というあり方から自由な空間が生まれているからだろう。伊東の建築は、初期作だろうと近作だろうと、人間にとって自由とはなにかという問いに対する回答であるという点では、一貫しているように思える。
略歴
1941年生まれ。65年東京大学工学部建築学科卒業。菊竹清訓建築設計事務所を経て、71年アーバンロボット設立。79年伊東豊雄建築設計事務所に改称。2005年からは、くまもとアートポリスコミッショナーも務める。
主な作品
「中野本町の家」(1976) 「シルバーハット」(1984、住宅) 「横浜風の塔」(1986) 「八代市立博物館」(1991) 「下諏訪町立諏訪湖博物館」(1993) 「大館樹海ドーム」(1997) 「せんだいメディアテーク」(2001) 「ブルージュ・パビリオン」(2002) 「サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2002」(2002) 「まつもと市民芸術館」(2004) 「TOD'S表参道ビル」(2004) 「福岡アイランドシティ中央公園中核施設ぐりんぐりん」(2005) 「MIKIMOTO Ginza 2」(2005) 「瞑想の森市営斎場」(2006) 「コニャック・ジェイ病院」(2006、パリ) 「VivoCity」(2006、シンガポール) 「多摩美術大学図書館(八王子キャンパス)」(2007) 「座・高円寺」(2008) 「2009高雄ワールドゲームズメインスタジアム」(2009、台湾)など多数。
主な受賞
日本建築学会賞作品賞(1985 シルバーハット) 毎日芸術賞(1992 八代市立博物館) 芸術選奨文部大臣賞(1997 大館樹海ドーム) 日本芸術院賞(1999 大館樹海ドーム) 国際建築アカデミー・アカデミシアン賞(2000) アメリカ芸術文化アカデミー・アーノルド・ブルーナー賞(2000) グッドデザイン大賞(2001 せんだいメディアテーク) ヴェネツィア・ビエンナーレ 金獅子賞(2002) 日本建築学会賞作品賞(2003 せんだいメディアテーク) 金のコンパス賞(2004 木製ベンチ「ripples」) 王立英国建築家協会(RIBA)ロイヤルゴールドメダル(2006) 金のコンパス賞(2008 HORM社のブースデザイン) オーストリア・フレデリック・キースラー建築芸術賞(2008)
主な著作
『風の変様体』(青土社、1989) 『シミュレイテド・シティの建築』(INAX出版、1992) 『透層する建築』(青土社、2000) 『みちの家』(インデックス・コミュニケーションズ、2005) 『けんちく世界をめぐる10の冒険』(彰国社、2006)など多数。
SUZUKI Ryoji / 鈴木了二
鈴木了二の創作を支えているもの、それは、建築だけでなく、絵画、写真、映画、音楽、文学、哲学など、芸術・思想の世界を縦横無尽にとびまわる感性にほかならない。その感性に基づきつつ、彼は、素材、文脈、ヒト、それら「物質」の出会いから生まれるものとして、形と空間を探求する。作品は、建築であっても本であっても全て「物質試行」と名づけられ、ナンバリングされる。 鈴木が生みだす空間は、連続性と非連続性、闇と光、ヴォリュームとヴォイドといった対照的な要素の妙なる組み合わせにより、そこを歩くことがまるで「映画」の空間的体験のようになっている(実際彼は映像作品をつくってもいる)。実体としてはソリッドであっても、体験はなまめかしく流動的となる、そこに鈴木の妙がある。
略歴
1944年生まれ。68年早稲田大学理工学部建築学科卒業。68-73年竹中工務店設計部に勤務。70年fromnow設立。70-72年竹中工務店から槇総合計画事務所に出向。77年早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。82年鈴木了二建築計画事務所に改称。97年早稲田大学教授、2004年からは早稲田大学芸術学校校長を務める。
主な作品
「T邸(物質試行5)」(1978) 「東久留米の住宅(物質試行17)」(1986) 「麻布EDGE(物質試行20)」(1987) 「絶対現場1987(物質試行24)」(1987) 「フォリー 花と緑の博覧会'90 (物質試行31)」(1990) 「成城山耕雲寺(物質試行33)」(1991) 「佐木島プロジェクト(物質試行37)」(1998) 「熊本県立あしきた青少年の家(物質試行38)」(1998) 「金刀比羅宮プロジェクト(物質試行47)」(2004)など多数。
主な受賞
パリ・日仏文化会館国際設計競技 二席(1990) 横浜国際客船ターミナル国際設計競技 優秀賞(1995) 日本建築学会賞作品賞(1997 物質試行37 佐木島プロジェクト) 村野藤吾賞(2005 物質試行47 金刀比羅宮プロジェクト) 日本芸術院賞(2007 物質試行47 金刀比羅宮プロジェクト)
主な著作
『物質試行28 「非建築的考察」』(筑摩書房、1988) 『建築家の住宅論 鈴木了二』(鹿島出版会、2001) 『建築零年』(筑摩書房、2001) 『物質試行49 鈴木了二作品集 1973-2007』(INAX出版、2007)など多数。
NAITO Hiroshi / 内藤廣
大胆なのに洗練された構造。シンプルだけれどエレガントな形。そんな特徴を持つ内藤廣の建築は、「作品」となろうとは決してしない。それはただ、建物によって守られているようでいて実はむき出しの空間を、寡黙に目指している。 一見すると穏やかな建物を設計する内藤だが、「建築」と「土木」を融合した「建土築木」の理念を提唱し、建築家として東京大学の土木工学科(現・社会基盤学科)の教職に就くなど、活動の根底にあるのは、アヴァンギャルドな精神である。
略歴
1950年生まれ。76年早稲田大学大学院修士課程修了。フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所(マドリッド)、菊竹清訓建築設計事務所を経て、81年に内藤廣建築設計事務所を設立。2001年東京大学大学院工学系研究科社会基盤学科助教授、03年から教授。07年からはグッドデザイン賞審査委員長も務める。
主な作品
「海の博物館」(1992) 「安曇野ちひろ美術館」(1997) 「牧野富太郎記念館」(1999) 「島根県芸術文化センター」(2005) 「日向市駅」(2008) 「高知駅」(2009) 「虎屋京都店」(2009)など多数。
主な受賞
芸術選奨文部大臣新人賞(1993 海の博物館) 日本建築学会賞作品賞(1993 海の博物館) 吉田五十八賞(1993 海の博物館) くまもと景観賞(1998 うしぶか海彩館) 村野藤吾賞(2000 牧野富太郎記念館) IAA国際トリエンナーレ グランプリ(2000 牧野富太郎記念館) 毎日芸術賞(2001 牧野富太郎記念館) 織部賞(2003) グッドデザイン賞(2004 みなとみらい線) International Architecture Award(2006 島根県芸術文化センター) ブルネル賞(2008 日向市駅)
主な著作
『建土築木1 構築物の風景』 『建土築木2 川のある風景』(以上ともに鹿島出版会、2006) 『建築的思考のゆくえ』(王国社、2004) 『構造デザイン講義』(王国社、2008) 『建築のちから』(王国社、2009)など多数。
Atelier Bow-Wow / アトリエ・ワン
塚本由晴と貝島桃代による建築事務所がアトリエ・ワンである。「ワン」は犬の鳴き声。だから英語による表記は、Atelier Bow-Wowとなる。そんな素敵な感性を持っている彼らは、住宅を、小さな存在としては捉えていない。むしろ、東京という都市の中では、住宅のような「粒」のレベルで更新していくことの方が、リアルな変容をもたらすと考えているように見える。そうした考え方を可能にしているのは、東京を中心にした徹底したリサーチと観察と分析であり、その成果は、今や世界的に有名となった『メイド・イン・トーキョー』などの著作に結実している。
略歴
塚本由晴 1965年生まれ。87年東京工業大学工学部建築学科卒業。87-88年パリ建築大学ベルヴィル校(U.P.8)にて学ぶ。92年貝島桃代とアトリエ・ワンを設立、94年東京工業大学大学院博士課程修了。ハーバード大学大学院客員教授、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)客員教授などを歴任。2000年より東京工業大学大学院准教授。 貝島桃代 1969年生まれ。91年日本女子大学住居学科卒業。92年塚本由晴とアトリエ・ワン設立。94年東京工業大学大学院修士課程修了、96-97年スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)奨学生、2000年東京工業大学大学院博士課程修了。筑波大学講師、ハーバード大学大学院客員教授、ETHZ客員教授などを歴任。09年より筑波大学准教授。
主な作品
「ガエ・ハウス」(2003) 「ホワイトリムジン屋台」(2003、第3回越後妻有アートトリエンナーレ) 「花みどり文化センター」(2005) 「ハウス&アトリエ・ワン」(2005) 「マド・ビル」(2006) 「ポニー・ガーデン」(2008) 「まちやゲストハウス」(2008) 「マウンテン・ハウス」(2009) 「リンツ・スーパー・ブランチ」(2009) 「フォー・ボックス・ギャラリー」(2009)など多数。
主な受賞
くまもとアートポリス・デザイン・コンペ最優秀賞(1992 田園にたたずむキオスク) 東京建築士会住宅建築賞(1995 ハスネ・ワールド・アパートメント) 東京建築士会住宅建築賞(1998 アニ・ハウス) 東京建築士会住宅建築賞 金賞(1999 ミニ・ハウス) 吉岡賞(2000 ミニ・ハウス) American Wood Dsign Awards 2002(2002 ハウス・サイコ) グッドデザイン賞(2007、ハウス&アトリエ・ワン)
主な著作
『メイド・イン・トーキョー』(共著、鹿島出版会、2001) 塚本由晴『ちいさな家の「気づき」』(王国社、2003) 『アトリエ・ワン・フロム・ポスト・バブル・シティ』(INAX出版、2006) 『図解アトリエ・ワン』(TOTO出版、2007) 『現代建築家コンセプト・シリーズ5 アトリエ・ワン ― 空間の響き/響きの空間』(INAX出版、2009)など多数。
KIKUCHI Hiroshi / 菊地宏
菊地宏は、模型をつくるときに、一般的なスタイロフォームではなくて、木を使う。コンクリートを使うことすらある。スピードは出ないが、設計という行為が「考える」ことだけでなく「つくる」ことにかかわっていると確認できる。あるいは、「建築」と個人的に、つまりは身体的に対峙することができる。その「幸せ」な時間の体験は、当然のことながら、できあがるものにも反映されるだろう。「色」を使い、「形」に変化を加え、「光」を整理して生まれた空間は、それ自体が喜んでいるように見える。
略歴
1972年生まれ。98年東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。妹島和世建築設計事務所、ヘルツォーク&ド・ムーロン建築事務所(バーゼル)を経て、2004年菊地宏建築設計事務所を設立。2010年より武蔵野美術大学建築学科准教授。
主な作品
「九段オフィスリノベーション」(2004) 「松原ハウス」(2005) 「LUZ STORE」(2006) 「南洋堂書店改修」(2007) 「浜田山の集合住宅改修」(2009) 「大泉の家」(2009)など。
主な受賞
新建築住宅設計競技1等賞(1998) 東京建築士会住宅建築賞奨励賞(2006 松原ハウス) グッドデザイン賞(2006 松原ハウス) JCDデザインアワード 入賞(2006 LUZ STORE) 東京建築士会住宅建築賞(2009 大泉の家 ) グッドデザイン賞(2009 メゾンアンドー)
主な著作
『HIROSHI KIKUCHI ARCHITECTS 2004-2007』(自費出版、2007)
NAKAMURA Ryuji / 中村竜治
つくりかたは同じだけれど、大きさや機能を違えたときに形はどう変わっていくのか。ある均質な構造に形を与えるとき、両者の関係と「見え方」はどうつながるのか。そうした根本的な問題に、中村は今、注力している。そのとき彼は、美しさが生まれることを恐れない。むしろ積極的に求めているところが、今の時代、新鮮に映る。2008年には「くまもとアートポリス『熊本駅西口駅前広場設計競技』」で優秀賞を受賞し、その楽しげなイメージスケッチが話題を呼んだ。
略歴
1972年生まれ。99年東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修士課程修了。青木淳建築計画事務所を経て、2004年中村竜治建築設計事務所を設立。
主な作品
「hechima」(2004- 、椅子) 「shortcut」(2007、めがね店インテリア) 「insect cage」(2007、虫かご) 「catenarhythm」(2008、会場構成、「散歩-ミナペルホネンのリボンプロジェクト」展、リビングデザインセンターOZONE)「atmosphere」(2009、舞台美術、オペラ「ル・グラン・マカーブル」、新国立劇場) 「blossom」(2009、結婚式場インテリア)など多数。
主な受賞
代官山インスタレーション 入選(2005) グッドデザイン賞(2006 JIN's GLOBAL STANDARD 青山店) JCDデザインアワード 金賞(2006) THE GREAT INDOORS AWARD(2007) JCDデザインアワード 大賞(2007 JIN'SGLOBAL STANDARD NAGAREYAMA) ナショップライティングアワード 優秀賞(2007) 東京デザイナーズウィーク東京デザインプレミオ くまもとアートポリス熊本駅西口駅前広場設計競技 優秀賞(2008) JCDデザインアワード 大賞、金賞(2009 ブロッサム(レ・アール・ド・セゾン・セージ プライベイト・ダイニング)) 椅子のある風景 北の創作椅子展 入選(2009)
主な著作
NAKAYAMA Hideyuki / 中山英之
伊東豊雄建築設計事務所に在籍している頃に手がけた住宅「2004」が、若手建築家の登竜門と言われるSDレビューと吉岡賞(現「新建築賞」)をダブル受賞するなど、独立前から話題を呼んでいた中山英之。しかもその住宅は、ドローイングでちょっと具体的な光景を描いてみて、それを模型につくりかえてみるという作業から生まれた。斬新なようでいて根源的な方法だからこそのやわらかな空間、そう言えるだろう。独立後も、大胆なコンペティションとして注目を集めた第1回六花の森Tea House Competitionで最優秀賞を受賞するなど、新作が常に期待されている若手建築家のひとりである。
略歴
1972年生まれ。2000年東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修士課程修了。伊東豊雄建築設計事務所を経て、07年中山英之建築設計事務所を設立。昭和女子大学、東京藝術大学、東京電機大学の非常勤講師も務める。
主な作品
「2004」(2006、住宅) 「O邸」(2009) 「Yビル」(2009)
主な受賞
SD Review 2004 最優秀賞(鹿島賞)(2004 住宅「2004」) 吉岡賞(2007 住宅「2004」) 六花の森Tea House Competition 最優秀賞(2008「草原の大きな扉」)
主な著作
『青木淳 JUN AOKI COMPLETE WORKS〈2〉 青森県立美術館』(共著、INAX出版、2006) 『中山英之/スケッチング』(神戸芸術工科大学デザイン教育研究センター編、新宿書房、2010)など