過去の展覧会

  • 2015.9.19 - 12.13
  • 企画展

てぶくろ|ろくぶて

コレクションを中心とした小企画

glove|evolg

Primarily from the Museum Collection

所蔵品ギャラリー内での撮影禁止について

今会期(9月19日~12月13日)は「特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示。」の開催にともない混雑が予想されるため、所蔵品ギャラリーおよびギャラリー4における撮影はご遠慮願います。ご了承ください。

「特集:藤田嗣治、全所蔵作品展示。」についてはこちらをご覧ください。

 

展示構成

 私たちは、どのようにして私たちを取り巻く世界と出会うのでしょうか。

 たとえば、今そこにあるモノは、私が見ていない時にもちゃんとそこに存在するのでしょうか。それとも、私が見ているからこそモノはそこにあり、私抜きではモノは存在しない、つまり私が知覚していなければ私を取り巻く世界も消えてしまうのでしょうか。

 反対に、私はそんなに大した存在ではなく、私もまた世界に無数にあるモノの一つに過ぎないのでしょうか。しかしそのとき、他のモノとはちょっと違うはずの「モノを知覚している私」という存在を一体どう考えればいいのでしょうか。

 フランスの哲学者、モーリス・メルロ=ポンティ(1908‐1961)は、「私」だけがあるのでも「モノ」だけがあるのでもない、「私」と「モノ」が出会う、その接触面にだけ、世界は成立するのだと考えました。ちょうど、手袋の布一枚をはさんで内側の「私」と向こう側の「世界」が触れ合うように。メルロ=ポンティの著作は1960-70年代、アーティストに大きな影響を与えました。

 この小企画展は、メルロ=ポンティを隠れた案内人に、「リヴァーシブルについて考える」「私が私にさわる」「一点透視法を疑う」などのテーマで、オブジェ、写真、映像、絵画など約30点をご紹介するものです。

Ⅰ. リヴァーシブルについて考える

 最初の部屋では、手にまつわる岡崎和郎の作品を中心にご紹介します。

 たとえば、おのれを握る人間の手を「知覚」して凹んだ棒とボール。モノを知覚する人間の立場から離れ、モノの側が人間を知覚するようすを捉えています。知覚する私と知覚されるモノとがくるっと入れ替わることを、メルロ=ポンティは「可逆性(リヴァーシブルであること)」と呼びました。

 私とモノの世界との間のリヴァーシブルな入れ替わりが起こる場所のひとつが、手です。岡崎にとってもメルロ=ポンティにとっても、手は、私に属しながら、モノの世界の中に真っ先に伸びてゆくという点で、私と世界のあいだに位置する特別な存在のようです。またメルロ=ポンティは、手を舞台として起こる私とモノとのリヴァーシブルな関係について、手袋のたとえを借りて語っています。手袋の内側に手があり、手袋の外側にモノの世界がある。両者の接点である手袋の布地の部分で人と世界は出会う。布地はまた、手とモノが簡単に入れ替わる裏返し点なのだ、と。

Ⅱ. 私が私にさわる



 この章では、私をさわる私、というテーマにまつわる作品をご紹介します。私の右手が私の左手に触れるとき、どちらの手が「手というモノを知覚する私」で、どちらの手が「私に知覚される、手というモノ」なのか、区別をつけることはできない、とメルロ=ポンティは言います。つまりここにも私とモノの世界とが入れ替わる、リヴァーシブルなポイントがあるのです。

 「私をさわる私」のリヴァーシブルな関係、というテーマはまた、鏡というテーマにつながっています。なぜなら、人は鏡の前に立って自分で自分を見るとき、やはり自分というモノを自分自身で知覚しているからです。メルロ=ポンティがさかんに読まれた1960-70年代には、多くのアーティストが、新しいメディアであるヴィデオを用いて、この「自分を見る自分」という問題を考えました。

Ⅲ. 一点透視法を疑う

ポール・セザンヌ 《大きな花束》 1892-95年頃 

 最後に、一点透視法への疑いを表す作品をご紹介します。

 遠近法は、平らな画面に空間の奥行きを描き表すための技法です。その一種である一点透視法は、地平線上にひとつの点(消失点)を置き、そこに向ってすべてのモノが小さくなっていくように描くやり方で、ヨーロッパで発達しました。

 一点透視法の特徴は、「私」が真正面から消失点に目を据え、身動きせずに外の世界を眺める態度を基礎に描かれていること。メルロ=ポンティは、「私」と世界がまるで敵対するようによそよそしく向い合う一点透視法の考え方を疑いました。「私」の身体は、実際には空間に入り込み、動き回り、さまざまな角度から世界を知覚するものだからです。その疑いを共有する人物として、メルロ=ポンティがたびたび論じたのが、画家、ポール・セザンヌでした。

 美術の世界では、1960年代、パフォーマンスやヴィデオといった多様な表現手段が登場します。その中で、長く美術の中心に位置した絵画と、その絵画をしばってきた一点透視法とを問い直す作品が多く作られました。

キュレータートーク

蔵屋美香(本展企画者・当館美術課長)

2015年 10月10日[土]   15:30-16:30
2015年 10月30日[金]   18:00-19:00

場所:ギャラリー4
*申込不要、要観覧券



会場:
ギャラリー4
会期:
9月19日(土)~12月13日(日)
開館時間:
10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
※入館は閉館30分前まで
休室日:
:月曜日[ただし、9月21日、10月12日、11月23日、、12月7日は開館]、9月24日、10月13日、11月24日
観覧料:
一般 430円 (220円)
大学生 130円 (70円)
*高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、友の会・賛助会会員、キャンパスメンバーズ、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
*それぞれ入館の際、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、会員証、障害者手帳等をご提示ください。
*( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
※お得な観覧券「MOMATパスポート」でご覧いただけます。
キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示により無料でご覧いただけます。
*本展の観覧料で、入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(所蔵品ギャラリー、4-2F)もご観覧いただけます。
無料観覧日:
10月4日(日)、11月1日(日) 、11月3日(火・文化の日)、12月6日(日)
主催:
東京国立近代美術館


「てぶくろ|ろくぶて」出品リスト