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東京国立近代美術館・国立西洋美術館所蔵作品による

「交差するまなざし
 ──ヨーロッパと近代日本の美術」


◆展覧会を構成する各章の概説(各章のタイトルは仮称)

第1章 外光への関心―印象派を中心に

 印象派が近代美術史上にもたらした革新性は、対象の固有色を否定し、
色彩を全て光との関係において捉えたことにある。彼らは鮮やかな色彩
のタッチを細かく連ね、光と大気の、うつろいやすくも美しい一瞬一瞬
の表情を表現することに成功した。この章では彼ら印象派の作品に加え
て、印象派とアカデミズムを穏健に折衷して日本に伝えた黒田清輝ら、
さらにルノワールやセザンヌとその影響を受けた日本の画家たちの作品
を比較展示する。

主な作品:クロード・モネ〈舟遊び〉1887年
     ポール・セザンヌ〈ジャ・ド・ブッファンの眺め〉1880年代
     ピエール=オーギュスト・ルノワール〈アルジェリア風パリの女たち〉1872年
     黒田清輝〈落葉〉1891年
     中村彜〈エロシェンコ氏の像〉1920年 重要文化財
     土田麦僊〈湯女〉1918年

第2章 装飾性−色や形の新しい秩序を求めて

 絵画における装飾性という問題は、特に前世紀末から今世紀初頭のヨー
ロッパにおいて、新たな表現を獲得しようとする画家たちの重要な関心
事となった。ゴーギャンとその影響を受けた画家たちは、「目に見えな
い」理念や内面を表わすため、時には浮世絵などに刺激を受けながら、
平坦な色彩や単純化された形態を用いて表現を行った。また日本におい
ては、それらの画風の移入や、日本古来の美術の見直しのなかで、藤島
武二や土田麦僊らの優れた試みが現れてくることになる。

主な作品:ポール・ゴーギャン〈海辺に立つブルターニュの二少女〉1889年
     モーリス・ドニ〈雌鶏と少女〉1890年
     ピエール・ボナール〈座る娘と兎〉1891年
     土田麦僊〈島の女〉1912年
     藤島武二〈匂い〉1915年
     辻 永 〈椿と仔山羊〉1916年

第3章 迫真的再現−細密描写の再発見

 印象派をはじめとするヨーロッパ近代の絵画は、同時代の日本の画家
たちに強い影響を与えた。しかし、その一方で、西洋の伝統的な画風に
学びながら細密描写に取り組む者も現れた。彼らは時代錯誤と言われな
がらも、対象にそくした克明緻密な描写で、質感の正確な再現を目指し、
その背後に隠れる「内なる美」を探し求めたのである。この章では、岸
田劉生に代表される大正期の洋画および日本画と、15〜17世紀の北方ヨー
ロッパ絵画を併せて展示し、日本の画家が求めたヴィジョンを検討する。

主な作品:アルブレヒト・デューラー〈アダムとエヴァ〉(銅版画)1504年
     ヘーラルト・ダウ〈シャボン玉を吹く少年と静物〉1635/36年頃
     コルネリス・ド・ヘーム〈果物篭のある静物〉1654年頃
     岸田劉生〈道路と土手と塀(切通之写生)〉1915年 重要文化財
         〈麗子肖像(麗子五歳之像)〉1918年頃
     河野通勢〈好子像〉1916年頃
     徳岡神泉〈椿〉1922年頃

第4章 歴史画―宗教と物語の表現

 西欧の再現的な描写を身につけた洋画家たちは、明治中期になって、
日本画界の国粋主義的な歴史画を意識しつつ、西欧アカデミズムで重視
された歴史的主題の表現へと目を向け始めた。この章では、中世以来の
キリスト教的主題を含む西洋の歴史画と、近代日本の洋画と日本画によ
る歴史的主題を扱った作品を並べ、その表現法を比較する。

主な作品:リッツォス〈イコン:神の御座を伴なうキリスト〉15世紀
     クロード・ロラン〈踊るサテュロスとニンフのいる風景〉1646年
     ウジェーヌ・ドラクロワ〈墓に運ばれるキリスト〉1859年
     原田直次郎〈騎龍観音〉1890年 寄託作品
     菱田春草〈賢首菩薩〉1907年 重要文化財
     中沢弘光〈おもいで〉1909年

第5章 画面における造形的な探求−特徴ある画肌と個性の発現

 19世紀後半以降、画家の関心は次第に「何を」から「どのように」描
くかということへと移行していく。この章ではこのような時代背景のも
と、特徴ある筆触や塗り、そしてその結果得られる表情豊かなマチエー
ルをもつ作品を通して、個性的な表現を模索する近代の問題意識を見る。

主な作品:ギュスターヴ・クールベ〈罠にかかった狐〉1860年
     エドゥアール・マネ〈花の中の子供〉1876年
     ハイム・スーチン〈狂女〉1920年
     須田国太郎〈書斎〉1937年
     安井曾太郎〈金蓉〉1934年
     佐伯祐三〈ガス灯と広告〉1927年

第6章 生命の造型−ロダンと戦前までの日本近代彫刻

 国立西洋美術館の松方コレクションの豊富なロダンを初めとする彫刻
作品と日本のロダニズム(ロダン主義)の系列の作品を同時に鑑賞しな
がら、現代の美に繋がる西洋と日本の近代彫刻の造型の本質と変容を再
考しようとするものである。そこには、人体に生き生きとした生命を宿
らせ、視覚にも充分に訴え、さらに作品としての確固とした構築性を備
えた造型の厳しい探求がある。

主な作品:オーギュスト・ロダン〈考える人〉(1/2)
     アントワーヌ・ブールデル〈アポロンのマスク〉1900年
     アリスティード・マイヨール〈座る女〉1900年
     荻原守衛〈女〉1910年
     高村光太郎〈手〉1923年
     中原悌二郎〈若きカフカス人〉1919年



            展 覧 会 概 要

   展覧会名:東京国立近代美術館・国立西洋美術館所蔵作品による
        交差するまなざし−ヨーロッパと近代日本の美術

   会  期:1996年7月20日(土)−9月8日(日)
        月曜日休館
        午前10時-午後5時(入館は午後4時30分まで)
        夜間開館=毎週金曜日午後8時まで(入館は午後7時30分まで)

   主  催:東京国立近代美術館
        国立西洋美術館

   協  賛:財団法人西洋美術振興財団

   観 覧 料:一般       400(200)円
         高校・大学生   130( 70)円
         小・中学生     70( 40)円
         ●()内は20名以上の団体料金
   無料観覧日:第1日曜日および第2・第4土曜日

   写真等の資料請求:普及係 内川・大谷
            TEL:03(3214)2561
            FAX:03(3213)1340

   展覧会にちなむ講演会のお知らせ:
   7月26日(金) 午後3時-4時30分  東京国立近代美術館本館講堂
   講師:喜多崎 親(国立西洋美術館研究員)