明治から今日までの日本の美術の展開をあとづけながら、下記の時代 ごとの美術動向とそれを生み出した芸術的な理念をクローズアップする ことをめざすこの講座では、5回の講演会において毎回、今日的な視点か ら、当館の所蔵作品を中心にとり上げ、その歴史的な意味を掘り下げつつ、 あらためて、近代日本の美術全体へのパースペクティヴを提示できれば と思っております。
この講座で、スライドで紹介される館蔵品の多くは、本館の全館陳列 「近代日本美術の名作−人間と風景」、工芸館の「近代日本工芸の巨匠」 に展示されますので、展示会場で鑑賞いただけます。展示会場は有料です が、第2・第4土曜日にあたる講座の第2回と第3回の両日は、両会場の 展示も無料でご覧いただけます。
皆様のご参加を心よりお待ちいたします。
| 第1回 | 「近代化と明治の美術―技術から美術へ」 | 8月1日(土) | ![]() |
| 第2回 | 「大正期の美術―芸術と生活」 | 8月8日(土) | |
| 第3回 | 「昭和戦前期の美術―伝統と近代の葛藤」 | 8月22日(土) | |
| 第4回 | 「1950−60年代の美術―変貌する社会,変貌する芸術」 | 8月29日(土) | |
| 第5回 | 「1970年代以降の美術―同時代への視点」 | 9月5日(土) |
第1回 8月1日(土)
「近代化と明治の美術―技術から美術へ」
講師:市川政憲(当館次長)
西洋絵画の迫真的描写のうちに美的な興趣を見出した高橋由一に始 まる油彩技法の習得、そして黒田清輝の帰国とともに、洋画はその時 代の美術として市民権を獲得していきました。同時に一方では、黒田 の帰国を機に、従来の、東洋(伝統)と西洋(近代)との対立にかわ って、新派と旧派の対立が生まれる中から、新しい日本画が形成され ていきます。
こうした過程を辿るとともに、新しい時代の美術が、社会的な価値 を獲得していったところに開設された文展の意義を考えます。
第2回 8月8日(土)
「大正期の美術―芸術と生活」
講師:樋田豊次郎(当館主任研究官)
文展を飾った外光派的表現に代表されるごとく、個人的な抒情性と 社会的共感のはざまに成立した明治の美術に対し、後期印象派の感化 に始まった大正期の美術は、表現の自由をかかげ、個性的な自己表現 を前面に打ち出しました。フォーヴィスムをとりいれた個性的な主観 表現が謳歌される中で、岸田劉生や速水御舟、萬鉄五郎などは、自己 の根源を問うことから、身辺的な生活の場を掘りおこしました。また、 大正期の後半には、第一次大戦後のヨーロッパにおこったダダイスム や構成主義に呼応して、芸術と日常の境界を取り払い、新たな現実の 創造をめざした新興美術運動が活況を呈しました。ここでは大正期の 美術を近代化と日常性の相克という視点から見直します。
第3回 8月22日(土)
「昭和戦前期の美術―伝統と近代の葛藤」
講師:大谷省吾(当館研究員)
西洋の新しい美術の摂取に余念のなかった日本の美術も、昭和戦前 期にはある成熟を見せたと言われます。近代化のモデルとしてきたヨ ーロッパが、第一次大戦後、近代の矛盾に直面したこの時代には、ふ り返ってみずからの近代のありように目が向けられ、日本の美術もま た独自の表現のあり方が問われることになりました。シュルレアリス ムによる前衛的な表現が試みられる一方では、伝統へ回帰する動きも 現れましたが、すでに身近なものとなった近代的現実と緊張関係をも って向かいあった作家たちの表現に、個の自立という近代的な成熟を 見ていきます。

第4回 8月29日(土)
「1950−60年代の美術―変貌する社会,変貌する芸術」
講師:松本透(当館美術課長)
わが国の戦後美術は、大戦後の現実を見据えながら、表現行為を通 じて、何よりも人間性再生の道を求めることではじまりました。急激 な復興と高度成長、それにともなう管理社会化や情報社会化など、世 の中が急速に変貌していくなかで、「創造美術」(1948年)をはじめと する日本画の改革運動や、具体美術協会(1954年)の活動、あるいは50 年代末ころからの「反芸術」の動きなどが相次いで起りました。ここで は、芸術家と社会とのこれまでにない緊張関係のなかで現れた、50-60 年代の美術の変貌を考えます。
第5回 9月5日(土)
「1970年代以降の美術―同時代への視点」
講師:中林和雄(当館主任研究官)
1970年前後に登場した「もの派」と称される作家たちは、それまで の美術のあり方を見直し、物質のありのままの声に耳を傾け、世界と の関わりを実体化することをめざしました。80年代には「絵画」とい う形式も再評価され始めました。そして複雑に錯綜した今日の美術が あります。この錯綜する森の中では、私たちは作品との間で一対一の 対話から始めねばなりません。その対話のなかで感得される価値判断、 明日への手掛かりを積み重ねることが、やがて、「歴史」を紡ぎ出す ことになるのではないでしょうか。
東京国立近代美術館工芸館
観覧料(両館とも):一般420(210)円/高校・大学生130(70)円/
小学・中学生70(40)円
*( )内は20名以上の団体料金
◆ 本館または工芸館のどちらかをご観覧いただいた方で、同じ 日にもう一方の館を併せてご覧になりたい方は、各館1F受 付までお申し出下さい。無料の共通観覧券を発行いたします。
講座に関するお問い合わせ先:03-3214-2561
東京国立近代美術館ホームページ http://www.momat.go.jp/