の検索結果

の検索結果

生誕120周年 長谷川三郎と国立近代美術館

1952年に開館した国立近代美術館(1967年に東京国立近代美術館に改称。以下当館)は、日本で最初の国立美術館として誕生しました。戦後まもなく財政も厳しかったため、新築ではなく東京・京橋の旧日活本社ビルを改装してのスタートでした。国立に「近代」が付けられたのは、同時代の美術と関わり戦後の文化復興をけん引する「動的な美術館」としての役割が期待されたからでした。日本の抽象美術のパイオニアとして知られる長谷川三郎(はせがわ・さぶろう、1906–1957)は、そのような美術館の方針に沿って開催された「抽象と幻想」展(1953)および「日米抽象美術展」(1955)で重要な役割 を果たしています。   これまで長谷川は、「画」と「論」に象徴されるように、画家としてだけでなく、評論家・思想家としての顔を持ち合わせる作家と位置づけられてきました。ここでは、さらにキュレーターとしての側面に注目をします。本年生誕120周年を迎える長谷川の作品と、関係作家の作品からその足跡を辿りつつ、展覧会の仕事、そして、生涯にわたる旺盛な執筆活動の紹介を通して、総合的な芸術家としての実像に迫ります。  本展の開催に当たり、学校法人甲南学園長谷川三郎記念ギャラリーをはじめ、ご協力いただきました関係者の皆様に深く感謝申し上げます。  長谷川三郎《オルレアン街道の雨》(1930年)  開催概要 東京国立近代美術館所蔵品ギャラリー(2階)  2026年5月26日(火)~9月13日(日)  月曜日(ただし7月20日は開館)、7月21日(火) 10:00–17:00(金曜・土曜は10:00–20:00) 入館は閉館30分前まで 一般 500円 (400円) 大学生 250円 (200円) ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込み。 5時から割引(金・土曜) :一般 300円 大学生 150円 高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。入館の際に、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示でご観覧いただけます。 「友の会MOMATサポーターズ」、「賛助会MOMATメンバーズ」会員の方は、会員証のご提示でご観覧いただけます。 「MOMAT支援サークル」のパートナー企業の皆様は、社員証のご提示でご観覧いただけます。(同伴者1名迄。シルバー会員は本人のみ) 本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品「MOMATコレクション」もご覧いただけます。  東京国立近代美術館

所蔵作品展 MOMATコレクション(2026.5.26–2026.9.13)

2026年5月26日-9月13日の所蔵作品展のみどころ 萬鉄五郎《裸体美人》1912年、重要文化財  MOMATコレクションにようこそ!   当館コレクション展の特徴をご紹介します。まずはその規模。1952年の開館以来の活動を通じて収集してきたおよそ14,000点の所蔵作品から、会期ごとに約200点を展示する国内最大級のコレクション展です。そして、それぞれ小さなテーマが立てられた全12室のつながりによって、19世紀末から今日に至る日本の近現代美術の流れをたどることができる国内随一の展示です。 今期の見所紹介です。1階で開催する企画展と連動した展示を所蔵作品展で展開できるのは、豊富なコレクションを有する当館の強みです。今回は3階の8室、9室と10室の一部を使って「杉本博司 絶滅写真」展(6月16日~)にちなんだ関連展示を行います。また今期も、新収蔵作品が多く展示されています(作品横に貼られた「新収蔵作品」マークが目印です)。長く館を代表してきた顔ぶれにフレッシュな新星と、盛りだくさんのMOMATコレクションをお楽しみください。  今会期に展示される重要文化財指定作品 今会期に展示される重要文化財指定作品は以下の通りです。 2室 原田直次郎《騎龍観音》1890年、寄託作品、護国寺蔵  2室 菱田春草《王昭君》1902年、寄託作品、善寳寺蔵(展示期間: 5月26日~7月20日) 2室 和田三造《南風》1907年 3室 萬鉄五郎《裸体美人》1912年 原田直次郎《騎龍観音》1890年、寄託作品、護国寺蔵  菱田春草《王昭君》1902年、寄託作品、善寳寺蔵  和田三造《南風》1907年  萬鉄五郎《裸体美人》1912年 展覧会について 4階 1-5室 1880s-1940s 明治の中ごろから昭和のはじめまで  「眺めのよい部屋」 美術館の最上階に位置する休憩スペースには、椅子デザインの名品にかぞえられるベルトイア・チェアを設置しています。明るい窓辺で、ぜひゆったりとおくつろぎください。大きな窓からは、皇居の緑や丸の内のビル群のパノラマ・ビューをお楽しみいただけます。 「情報コーナー」 導入部にある情報コーナーには、MOMATの歴史を振り返る年表と関連資料を展示しています。関連資料も随時展示替えしておりますのでお見逃しなく。作品貸出中の他館の展覧会のお知らせや、所蔵作品検索システムも提供しています。 1室 ハイライト 藤田嗣治《五人の裸婦》1923年  3000㎡に200点近くが並ぶ、所蔵作品展「MOMATコレクション」。「ハイライト」では近現代美術を代表する作品を揃え、当館のコレクションの魅力をぎゅっと凝縮してご紹介しています。 今期は日本画にご注目ください。前期(7月20日まで展示)には北野恒富《戯れ》(1929年)や小倉遊亀《浴女 その一》(1938年)、《浴女 その二》(1939年)、そして後期(7月22日から展示)には福田平八郎《雨》(1953年)など、当館の日本画コレクションのなかでも屈指の人気を誇る作品が登場します。ケースの外には、国内各地の展覧会にひっぱりだこだった藤田嗣治《五人の裸婦》(1923年)が、約3年の不在を経てMOMATコレクション展に帰ってきました。ポール・セザンヌ、ピエール・ボナール、パウル・クレーなど、この部屋の常連となっている作品や、ひきつづいてのご紹介となる奈良美智《Harmless Kitty》(1994年)とあわせ、じっくりとご堪能ください。 2室 坂の上の雲 和田三造《南風》1907年  日清戦争(1894–95年)、日露戦争(1904–05年)の勝利によって、日本は列国との不平等条約を改正し、真の独立国としての地位を獲得します。東アジアの新秩序の担い手を自任し、「世界の中の日本」という意識が芽生え始めるのもこの頃のことです。司馬遼太郎が『坂の上の雲』で描きだしたように、明治維新以来追い求めてきた近代日本の国家像がひとつの完成を見たのです。それはまた、当時の国際関係の中で日本が「帝国」としての一歩を踏み出したことを意味します。日露戦争の結果、日本は1910(明治43)年に韓国を併合し、大陸進出への足がかりを得たのです。 文部省主催の美術展覧会(文展)が始まったのは、日露戦争直後の1907(明治40)年のこと。第1回文展出品作の中には和田三造の《南風》のように、英雄的な男性像によって時代の気運を捉えたものも含まれていました。しかし、その一方で戦争遂行の負担を強いられてきた民衆の政府に対する不満が爆発。世間の関心の比重は次第に「国家」から「個人」に移りつつありました。 3室 わたしと太陽 川上涼花《鉄路》1912年  「僕は芸術界の絶対の自由(フライハイト)を求めている。従って、芸術家のPERSOENLICHKEIT(人格)に無限の権威を認めようとするのである。[…]人が『緑色の太陽』を画いても僕はこれを非なりと言わないつもりである」。1910(明治43)年に高村光太郎が発表したエッセイ、「緑色の太陽」の中の一文です。外界の自然の姿すら変えることが可能な、芸術家のものの見方、感じ方の絶対の自由をうたう、大正デモクラシーの幕開けを告げる文章です。さて、赤いはずの太陽が補色の緑で描かれる―このたとえの背後には、オレンジと青の二つの補色で太陽を描くヴァン・ゴッホの作品のイメージがあったはずです。同じ1910年に発刊された雑誌『白樺』には、ゴッホの複製図版が多数紹介されました。輝くような色彩(図版の多くはモノクロでしたが)、息せき切った作画のスピード感を示す絵具の厚塗り、そして周囲に理解されない悲劇の生涯―ゴッホはたちまちのうちに、若い芸術家たちの拡張を求めて止まない「わたし=自我」を照らし出す、心の「太陽」となったのです。 4室 海を渡った新版画  吉田博《帆船 朝日》1921年(展示期間:5月26日-7月20日)  吉田博《帆船 夕日》1921年(展示期間:7月22日-9月13日)  大正時代に始まり、浮世絵と同じ分業体制によって制作され、その復興と近代化を目指した版画を新版画といいます。現在海外の美術館やコレクターも多く新版画を所蔵していますが、1930年と1936年には、アメリカでその認知度を高めた巡回展が行われていました。どちらの展示も10人の作家が選ばれ、300点前後の作品が出品される大規模なものでした。作品のジャンルも風景画、美人画、役者絵、花鳥画と多岐にわたり、その多くを日本らしいモチーフがしめていました。そして出品作品のほとんどが版元に注文可能というシステムだったこともあり、多くの版画が海を渡ってアメリカへ輸出されることになったのです。なお、この新版画展は1936年以降5年おきの開催が目論まれていましたが、戦争へ向かっていく時局の影響もあり、その後継続されることなく終わっています。この部屋では、当時アメリカの観衆にお披露目された版画の一部を、出品作家・仲介役として展覧会開催に貢献した吉田博の作品とともに振り返ります。 5室 風景の動員 梅原龍三郎《北京秋天》1942年  島国である日本に暮らす人々にとって、大陸の果てしなく続く地平線や、抜けるような青い空は、憧れを誘う異郷の象徴でした。その眼差しは、明治以降、日本が台湾や朝鮮を植民地として支配し、アジアへ版図を広げるにつれて政治的な意味合いを急速に強めていきます。例えば、梅原龍三郎が戦時下に描いた北平(現在の北京)の紫禁城に、当時の人々は異国趣味と領土拡大のイメージを重ね見たことでしょう。 兵士として海を渡ることは、日本の戦争遂行のために命を捧げることと同義でした。実際に、靉光や浅原清隆は応召して大陸へ渡り、そのまま帰らぬ人となっています。また辻晋堂の木彫のモデル、大伴家持が詠んだ『万葉集』の一節は、国民歌謡「海ゆかば」の歌詞として斉唱されました。太平洋戦争中、「海ゆかば」は玉砕報道に伴う鎮魂のテーマ曲として定着していきます。大陸や海の風景は、単なる鑑賞の対象を超えて、人々を戦地へと駆り立てる装置として「動員」されていったのです。 3階 6-8室 1940s-1960s 昭和のはじめから中ごろまで9室  写真・映像10室 日本画建物を思う部屋(ソル・ルウィット《ウォールドローイング#769》) 6室 鋼鉄の夢、廃墟の傷 鶴岡政男《転がっている首》1950年 撮影:大谷一郎  海軍作戦記録画に描かれた大海原や、臨場感あふれる戦艦の戦闘シーン。これらのイメージは、雑誌『機械化』に掲載された空想科学兵器の挿絵などと共に、軍国少年たちの夢と憧れをかき立てていきました。しかし、1945年の敗戦によってその幻想は解体されます。古沢岩美の《餓鬼》は、廃墟と化した街に傷痍軍人や街娼が佇む敗戦直後の世相を色濃く反映した作品です。 戦後、朝鮮戦争の特需景気で社会が復興へ向かうなか、作家たちはその忘却の流れに抗うかのように、苦悶する人間の身体へと目を向けました。近年新たに収蔵した鶴岡政男《転がっている首》や漆原英子《Midnight Circus》は、戦後日本における変形し、断片化された身体表現を象徴する作品です。この部屋では、勇ましいプロパガンダから、痛ましい肉体へと変容した表現の軌跡を通じて、戦争の記憶を振り返ります。 7室 オヘソの手術 河原温《孕んだ女》1954年  昨年度、当館は世界的な日本人美術家・河原温の初期の重要作品《洪水期》を収集しました。そのお披露目を兼ねて、戦後日本の前衛の実践を紹介します。 戦後に岡本太郎が提唱した「対極主義」─相反する要素を矛盾したまま共存させて新たな価値を生み出す芸術思想─を踏まえ、それを発展させるアイディアを河原は「オヘソの手術」と呼んでいます。曰く、「従来のなまぬるい(…)空間造形を破壊して、観客の視覚と画との矛盾、対立をさらに先鋭化」する試みです。画面の中心点(オヘソ)を崩す制作過程を惜しげもなく公開した雑誌記事からは、この時期に河原が変形キャンバスを多用していた理由がわかります。画面の左右対称性を崩し、見る者の視線の更新に挑戦すること。それは、モンタージュを駆使する中村宏、視点を固定させず流動させる山口勝弘、あるいはまさしく中心を持たない宮脇愛子など、他の作者の表現と並べてみると、同時代的な関心であったことも見えてきます。 8室 物質化か非物質化か 高松次郎《No.273(影)》1969年  1階で開催する「杉本博司 絶滅写真」にちなみ、1970年代を中心とする美術を紹介します。杉本博司は1970年に渡米して写真を学ぶことで作家として出発しました。この頃、世界各地で表面化していた傾向が「美術の非物質化」です。目を楽しませる手わざや造形などの物質的・視覚的要素によらず、作品を通して本質的な概念を見せようとする─アメリカの批評家ルーシー・リパードが指摘したこの傾向は美術の唯一性や商業性に切り込み、いわゆるコンセプチュアル・アート(概念芸術)の興隆につながっていきます。多くの作家が色彩を排し、物質性から距離を置くために版を用いて制作を間接化させる表現がしばしば試みられました。もちろん、それでもなお、美術作品は物質であることを逃れられません。物質によって物質を裏切り、あるいは物質を概念として提示するというチャレンジや思考は、たとえば高松次郎の作品の原図に残されたメモから推し量ることができます。 9室 ヴィデオ(私はみる) リンダ・ベングリス《ナウ》1973年 Courtesy Electronic Arts Intermix (EAI), New York  20世紀前半、音声信号を示す技術用語として生まれたaudio(ラテン語で「私は聞く」)と対になる用語として、視覚信号を指すために使われるようになったvideo(同じく「私は見る」)。1960年代に入って持ち運び可能なヴィデオカメラが開発されると、この装置を使ってアーティストたちは新たな創造へと繰り出しました。この部屋では初期にあたる1970年代初頭に制作された代表的な作品3本を紹介します。 視覚像を信号に変換してすぐさま再生する、つまり自分で撮影した映像を自分が再確認し続けるという機械独自の構造、そして、見ることがすでに「ヴィデオ」であり「ヴィデオ」が見る行為を規定しているという二重の名称。この自己言及的な性格に応答して、誰が/何を見ているのかを鏡写しにして省みるような作品が多く生まれることになりました。初期のヴィデオアートに作者自身が登場することが多いのは、それが最も身近なモデルであるからというより、そうした性格に基づいているといえるでしょう。 10室(前期:5月26日―7月20日) 劇場・海景・スギモトノート/風を表す 杉本博司《カボット・ストリート・シネマ、マサチューセッツ州》1978年 Ⓒ Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi 手前のコーナーでは、1階企画展ギャラリーで開催中の「杉本博司 絶滅写真」展のサテライト展示として、当館所蔵の杉本作品13点と、その制作の過程を記録したノートを紹介しています。初期の代表作として知られる〈劇場〉と〈海景〉は、ともにコンセプチュアルな作品ですが、一方で、今回展示するノートからは、暗室作業において、杉本が試行錯誤を重ねながら写真プリントとしての質を究めようとしていたことがうかがわれます。 奥の部屋は、風や空気のゆらぎに注目した特集です。近代の日本画家は総じて、それまでに定型化していた絵のあり方から脱却することを課題としましたが、伝統的な、いわゆる「花鳥風月」を愛でる心は失われなかったようです。ここに並んでいる明治から平成にいたるまでの作品は、「風」とかかわりがあるといえるでしょう。風を表すなかに、どのような近代の新しい表現や伝統の再解釈が見られるでしょうか。 10室(後期:7月22日―9月13日) 劇場・海景・スギモトノート/近代日本画の鳥 竹内栖鳳《宿鴨宿鴉》1926年(展示期間: 7月22日-9月13日)  手前のコーナーでは、1階企画展ギャラリーで開催中の「杉本博司 絶滅写真」展のサテライト展示として、当館所蔵の杉本作品13点と、その制作の過程を記録したノートを紹介しています。初期の代表作として知られる〈劇場〉と〈海景〉は、ともにコンセプチュアルな作品ですが、一方で、今回展示するノートからは、暗室作業において、杉本が試行錯誤を重ねながら写真プリントとしての質を究めようとしていたことがうかがわれます。 奥の部屋では、前期の「風」に続き、花鳥風月の「鳥」を描いた日本画を特集します。私たちの身近にいる鳥は、日本では古くから絵画に描かれてきました。近代の日本画家たちは定型化した伝統的な花鳥画から脱却するため、鳥だけを取り出して造形や構図の工夫を試みたり、画面に生命感を与えるために風景に鳥を加えるなどしました。ここに並べられた作品の鳥たちには、どのような近代の特徴が表れているでしょうか。 2階 11–12室 1970s-2010s 昭和の終わりから今日まで 11室 イメージ:出現と消失 横溝静《That Day/あの日》(2020年)@ Shizuka Yokomizo   横溝静による映像インスタレーション《That Day/あの日》(2020年)を収蔵後、初めて展示します。このお披露目を契機に、イメージ(像)の出現と消失、という視点からいくつかの作品を紹介します。 写真の現像プロセスを映し出す横溝の映像では、イメージの定着(出現)、そしてそれと表裏一体で進行する記憶の風化(消失)が重なり合います。小林正人の絵画においては、「空」というイメージの到来に立ち会う経験(と同時に生じる絵具やキャンバスといった物質性の消失)が露わになります。あるいはロラン・フレクスナーのドローイングでは、シャボン玉が割れる(消失する)と同時に、イメージが痕跡として現れ出ます。このイメージの出現と消失というテーマは、12室のビル・ヴィオラの映像作品へもゆるやかにつながっていきます。 物理的な意味において、作品は見る者の前に安定的に存在しています。けれどそのイメージ(像)はというと、案外と不確かなものです。イメージは、いつ、どのように私たちの前に出現し、あるいは消失するのでしょうか。 12室 イメージ:内なる力 イケムラレイコ《横たわる少女》1997年  ここに集められた作品に現れる身体は、断片的であったり、実体がなかったり、どこかうつろです。毛髪を用いて作られた白井美穂の作品、自身の存在や身体への不安や葛藤から生まれた前本彰子の亡霊のようなドレス、男性への恐怖心を克服するために、男性器を増殖させた草間彌生のソフトスカルプチャー。村上早の描く顔のない人間や傷ついた動物は、作家の心の奥底に眠る不安やトラウマとつながっています。意識と無意識、覚醒と眠りのあいだを漂うように横たわるイケムラレイコの少女。ミリアム・カーンの描く輪郭のない難民たちは、帰る場所を失い彷徨いつつ歩みを進めています。これらの作品における身体のイメージは、空虚でありながらも、抑圧や不安、痛みや恐怖を受け入れながら生きようとする内に秘めた力を感じさせます。また、ビル・ヴィオラの映像作品《映り込む池》では、時間の経過と共に男性の身体が画面から消えていきますが、その消失によってこそ、映像に力強い緊張感が生まれています。 開催概要 東京国立近代美術館所蔵品ギャラリー(4~2階)  2026年5月26日(火)~2026年9月13日(日) 月曜日(ただし7月20日は開館)、7月21日(火) 10:00–17:00(金・土曜は10:00–20:00)   入館は閉館30分前まで 一般 500円 (400円) 大学生 250円 (200円) ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込み。 5時から割引(金・土曜) :一般 300円 大学生 150円  高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。入館の際に、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示でご観覧いただけます。 「友の会MOMATサポーターズ」、「賛助会MOMATメンバーズ」会員の方は、会員証のご提示でご観覧いただけます。 「MOMAT支援サークル」のパートナー企業の皆様は、社員証のご提示でご観覧いただけます。(同伴者1名まで。シルバー会員は本人のみ) 本展の観覧料で入館当日に限り、コレクションによる小企画(ギャラリー4)もご覧いただけます。 東京国立近代美術館

杉本博司 絶滅写真

杉本博司 《相模湾、江之浦》 2025年 © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi 展覧会概要 様々な領域で活動する現代美術作家、杉本博司(1948-)。小田原文化財団 江之浦測候所をはじめ建築分野でも活躍し、日本の古典芸能など舞台芸術の演出では国内のみならずヨーロッパ数都市やニューヨークにも進出。その活動分野は書、陶芸、和歌、料理と多岐にわたっています。 そんな多才な杉本の芸術の原点は銀塩写真にあります。確たるコンセプトに基づく、独自の表現による作品はまた、銀塩写真の技術としても頂点を極めるものであり、写真がデジタルに置き換わった今、その技法は今やまさに「絶滅が危惧される」ものと言えます。 本展では杉本の初期(1970 年代後半)から現在に至る銀塩写真約60点を展観します。 写真作品で構成する美術館での個展は、国内では2005年の森美術館以来の開催となります。 さらに、所蔵品ギャラリー3階にて当館所蔵杉本作品全点、また制作の秘密を明かす未公開資料「スギモトノート」をサテライト展示します。 「スギモトノート」:写真作品制作における、撮影時および暗室での作業工程の覚書を記したノート。1970 年代半ばより記録は始まる。 展覧会構成と見どころ 初期から近作まで全13 のシリーズを3章構成で展示 本展は、3つの章、全13 シリーズにより、ゆるやかに時系列に沿いつつ杉本博司の作品世界の展開をたどります。 1章「時間・光・記憶」では、1970年代から80年代に着手され、杉本の評価を確立することになった〈ジオラマ〉〈劇場〉〈海景〉の3つのシリーズなどにより、作品世界の始まりを紹介します。 2 章「観念の形」では、人間の知性や想像力がつくりだしたさまざまな「かたち」を主題とした〈観念の形〉〈スタイアライズド・スカルプチャー〉など90年代末から展開されたシリーズにより、作品世界が拡張・深化していくプロセスを紹介します。 3章「絶滅写真」では、終焉を迎えつつある銀塩写真というメディアの始原にさかのぼる〈前写真、時間記録装置〉〈フォトジェニック・ドローイング〉から、近作〈Opticks〉まで、6つのシリーズにより、杉本が予見する“絶滅”をめぐるヴィジョンの行方を探ります。 初公開の新作 本展では初期代表作として知られる〈ジオラマ〉〈海景〉のシリーズ、そして〈スタイアライズド・スカルプチャー〉において、初公開となる新作の展示を予定しています。とくに杉本のデビュー作として知られる〈ジオラマ〉では、《ポコット族》などいくつかの新作を加えた構成により、1975 年、シリーズの始まりからひそかに構想され、半世紀を超えてついに実現に至った、人類史をめぐる深淵なストーリーが初めて提示されます。 “絶滅”をめぐって 本展のタイトルでもある「絶滅写真」とは、銀塩写真というメディアの終焉と自らの作家活動の終幕を見すえて浮上した主題です。しかし本展で示される“絶滅”をめぐるヴィジョンとは、それにとどまるものではありません。それではいったい何が“絶滅”しようとしているのか? 半世紀にわたって写真というメディアによる表現の可能性を拡張・深化させてきた杉本の作品世界の全体像を見わたす本展において、通奏低音として示される“絶滅”という主題にご注目ください。 《観念の形 0003》 2004年 ゼラチン・シルバー・プリント 149.2 × 119.4 cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi 《スタイアライズド・スカルプチャー 120 [クリスチャン・ディオール、Bar、1947]》 2025年 ゼラチン・シルバー・プリント 149.2 × 119.4 cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi 《カリブ海、ジャマイカ》1980年 ゼラチン・シルバー・プリント 119.4 × 149.2 cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi 《パレス・シアター、ゲーリー》 2015年 ゼラチン・シルバー・プリント 119.4 × 149.2 cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi 《ポコット族》 2025年 ゼラチン・シルバー・プリント 119.4 × 185.4 cm © Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi 杉本博司プロフィール 1948年生まれ。1970年渡米後、1974年よりニューヨークと日本を行き来しながら制作を続ける。 初期代表作に〈ジオラマ〉〈海景〉〈劇場〉シリーズがある。2008年に建築設計事務所「新素材研究所」、2009年に公益財団法人小田原文化財団を設立。2017年には構想から10年をかけて建設された文化施設「小田原文化財団 江之浦測候所」を開設。 演出と空間を手掛けた『At the Hawk’s Well / 鷹の井戸』が2019年秋にパリ・オペラ座にて上演。著書に『苔のむすまで』『現な像』『アートの起源』『江之浦奇譚』『影老日記』などがある。2001年ハッセルブラッド国際写真賞、2009年高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)受賞、2010年秋の紫綬褒章受章、2013年フランス芸術文化勲章オフィシエ叙勲。 2017年文化功労者に選出、2023年日本芸術院会員に就任。 開催概要 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー 2026年6月16日(火)~9月13日(日) 月曜日(ただし7月20日は開館)、7月21日(火) 10:00-17:00(金・土曜は10:00-20:00) 入館は閉館の30分前まで 一般  2,300円(2,100円) 大学生 1,200円(1,000円) 高校生 700円(500円) ( )内は20名以上の団体料金、ならびに前売券料金(販売期間:4月21日~6月15日)。いずれも消費税込み。 中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は、学生証・職員証の提示により団体料金でご鑑賞いただけます。 本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)もご覧いただけます。 東京国立近代美術館の窓口では会期中の開館日に限り当日券を販売いたします。前売券の販売はございません。 前売券やスペシャルチケット、オンラインチケットや各種プレイガイドでのご購入方法は本展公式サイトをご確認ください。 東京国立近代美術館、日本経済新聞社 DIOR セイコーグループ、サンエムカラー 公益財団法人小田原文化財団、ギャラリー小柳

No image

MOMAT DONORS’ CLUB

MOMAT DONORS’ CLUB(略称:MDC)は東京国立近代美術館(竹橋)の活動をご寄附で支えてくださる個人の皆さまのための会員制度です。  当館は、充実した所蔵作品展と魅力的な企画展の開催、学校団体、ファミリー、ビジネスパーソンや外国人のお客様など、多様な層に向けた教育普及事業の実施など、活発で積極的な活動に日々取り組んでおりますが、快適な鑑賞環境の整備や来館者サービスの向上、老朽化するインフラの維持・修繕、作品を適正に保存するための光熱費など、美術館活動にかかる費用は、国からの予算と自助努力だけでは補いきれません。私たちの活動や想いを支え、文化を守り育ててくださる寄附者の皆さまのご支援が必要不可欠です。   1952年の開館当時から守り伝え、発展させてきた、時代の記憶である当館のコレクションを、重ねてきた対話を、たくさんの方の暮らしの彩りを、今を生きる私たちだけでなく、100年、200年先の未来の世代にも確実に届けるために、ぜひMDCを通して当館をご支援いただけますようお願い申し上げます。 会員種別・寄附金額 ダイヤモンド会員:100万円 プラチナ会員:50万円 ゴールド会員:30万円 シルバー会員:10万円 ブロンズ会員:5万円 ※有効期限は会員証の発行日より1年間(入会月の翌年同月末まで)※期間内に退会されても寄附金の払い戻しはいたしかねますのでご了承ください。 入会方法 1. 券売窓口にて 東京国立近代美術館(竹橋)の券売窓口にてお申し込みいただけます。会員証をその場で発行し、当日からご利用いただけます。 2. ウェブサイトから 専用ページからお申し込みいただけます。※決済方法はクレジットカードまたはd払いです。※会員証は郵送いたします。お申し込み完了(決済完了)からお手元に届くまで1週間ほどお時間をいただきます。近日中にご来館予定の方は窓口にてお申し込みください。※会員証の有効期限、または発送日を指定してのお申し込みは承っておりません。※会員証及び返礼等の発送先は日本国内のご住所に限ります。 返礼 ご入会いただいた方には、感謝の気持ちを込めてさまざまな返礼をご用意しております。 ●東京国立近代美術館(竹橋) 所蔵作品展の無料観覧(同伴者1名まで) 企画展の招待券進呈 企画展の特別内覧会(開会式)へのご招待 ミュージアムショップ10%割引(現金でのお支払い時のみ適用・一部対象外商品あり) レストラン「ラー・エ・ミクニ」10%割引(一部対象外商品あり) MDC感謝デーへのご招待 館長との食事会&研究員による所蔵作品展のご案内(ダイヤモンド・プラチナ会員のみ) ご芳名の掲出(ウェブサイト・館内) ●国立工芸館、国立西洋美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館の所蔵作品展・常設展と、国立映画アーカイブの7階展示室の無料観覧(同伴者1名まで) など 会員区分に応じた返礼一覧はこちらから(PDF)ご確認いただけます。 会員御芳名 ゴールド会員 三田 武志 様山野 俊治 様​(他1名) シルバー会員 加藤 浩之 様志波 幹雄 様古瀬 敏 様服部 彰子 様山田 玲司 様福谷 尚久 様津村 健文 様​新角 卓也 様関口 和也 様木越 純 様(他4名)​ ブロンズ会員 直江 智子 様菊地 さつき様​永瀬 祐一 様​寄本 健 様​杉山 裕保 様​中山 敦子 様​中島 淑乃 様​菊地 美帆 様​小出 陸 様​林 可南子 様​須貝 英 様​堀川 佳津美 様 五嶋 滋之 様​島崎 美香 様​坂詰 貴司 様布施 優子 様​菊地 明子 様小代 魁之助 様牛嶋 龍之介 様​川島 和孝 様加納 隼人 様尾崎 英司 様土肥 松男 様(他18名) 税制の優遇 MDCの会費につきましては、寄附金控除(所得控除)が適用されます。入会の翌月に領収書を発行しお送りしますので、確定申告の際にご利用ください。 お住まいの都道府県・市区町村が、条例で独立行政法人国立美術館を寄附金控除の対象法人として指定している場合、個人住民税額の控除を受けることができます。詳細については各自治体の条例をご確認ください。 ※令和3年度税制改正により、確定申告時に提出する領収書については、押印を要しないとされたことを受け、当館におきましては、令和7年3月1日以降に受領した会費については、領収書への押印を廃止いたします。(参照:国税庁webサイト) お問い合わせ 〒102-8322東京都千代田区北の丸公園3-1東京国立近代美術館 寄付担当TEL:03-3214-2619(直通/土日祝日を除く9:30~17:00)FAX:03-3214-2577

No image

MOMATメンバーズ(賛助会)

2025年11月30日をもって新規入会の申込受付を終了しました。11月30日よりも前にご加入された賛助会員の皆さまは、お手持ちの会員証に記載された有効期限まで、特典をご利用いただけます。 賛助会とは東京国立近代美術館の運営の趣旨にご賛同いただける方への寄附会員制度です。美術が好きな方、高い関心をお持ちの方はもちろんのこと、東京国立近代美術館の活動を応援してくださる方は、どなたでもご入会いただけます。会員の皆様には展覧会観賞、展覧会に関連するイベントなどのご利用を通して、芸術文化に親しんでいただく機会を提供いたします。 会員種別・年会費 プレミアム会員:30万円 特別会員:10万円 維持会員:5万円 個人会員:1万円 ※有効期間は発行日より1年間(入会月の翌年同月末まで)※期間内に退会されても年会費の払い戻しはいたしかねますのでご了承ください。 特典 会員区分に応じて以下の特典をご用意しております。 ✓ 以下の国立美術館の所蔵作品展(コレクションギャラリー)の無料観覧(2名まで)   東京国立近代美術館(美術館・国立工芸館)   国立西洋美術館   国立映画アーカイブ(7階展示室)   京都国立近代美術館   国立国際美術館 ✓ 東京国立近代美術館開催の所蔵作品展・企画展の招待券進呈 ✓ 東京国立近代美術館ミュージアムショップ10%引き ✓ 東京国立近代美術館(東京・北の丸公園))内レストラン「ラー・エ・ミクニ」10%引き ✓ 特別内覧会(開会式)へのご招待 ✓ ご芳名の掲出 ※国立工芸館については、企画展開催中は所蔵作品展の実施はありません。 (注)所蔵作品展音声ガイドの貸出しサービスは2023年3月末をもって終了しました。 会員御芳名 個人特別会員 山本 俊祐 様伊藤 正人 様堀内 豊太郎 様小宮 一慶 様 個人維持会員 本多 一顯 様中山 理恵 様髙橋 康之 様邑中 雅樹 様 税制の優遇について 賛助会の会費につきましては、寄附金控除(所得控除)が適用されます。入会の翌月に領収書を発行しお送りしますので、確定申告の際にご利用ください。 ※令和3年度税制改正により、確定申告時に提出する領収書については、押印を要しないとされたことを受け、当館におきましては、令和7年3月1日以降に受領した会費については、領収書への押印を廃止いたします。(参照:国税庁webサイト) お住まいの都道府県・市区町村が、条例で独立行政法人国立美術館を寄附金控除の対象法人として指定している場合、個人住民税額の控除を受けることができます。詳細については各自治体の条例をご確認ください。 お問い合わせ 〒102-8322東京都千代田区北の丸公園3-1東京国立近代美術館 運営管理部 賛助会担当TEL:03-3214-2619〈直通〉(土日祝祭日を除く平日9:30~17:00)FAX:03-3214-2577

No image

台風接近による開館及びプログラム中止の対応について(6月2日19時更新)

台風6号の接近に伴い、開館時間等について臨時に変更を行う場合がございます。 6月3日(水)は通常開館の予定ですが、臨時休館または開館時間の変更を行う場合は、決定次第、当ウェブサイト、当館公式SNSアカウントにてご案内いたします。 東京国立近代美術館 X アカウント 東京国立近代美術館 Facebook ページ 東京国立近代美術館 Instagramアカウント なお開館状況に関わらず、6月3日(水)に予定している下記は中止いたします。 ガイドスタッフによる所蔵品ガイド レストラン「ラー・エ・ミクニ」 ランチ営業は休業、ディナー営業は貸し切りのみ

下村観山展|開催記念トーク

3月22日(日)に本展の開催記念トークを開催します。小林健二氏(国文学研究資料館名誉教授)をお招きし、下村観山と能の関係について本展担当研究員と語ります。  2026年3月22日(日)14:00~15:00(開場は13:30) 国文学研究資料館名誉教授 小林健二氏  東京国立近代美術館主任研究員 中村麗子 東京国立近代美術館 地下1階講堂 140名(先着順) 開催当日の10:00より、1階インフォメーションカウンターにて整理券を配布します。 整理券は、定員に達し次第、配布終了となります。 整理券の配布枚数はお一人につき1枚まで、参加者ご本人が直接お受け取りください。 整理券に番号はありません。開場時刻になりましたら、会場にお越しください。 会場内は全席自由です。  参加無料(観覧券不要) イベントの撮影、録画、録音はお断りしております。 イベント当日に有効の本展チケットをお持ちの方は、イベント参加後の展覧会への再入場が可能です。 内容や日時は都合により変更となる可能性があります。あらかじめご了承ください。 イベントのオンライン同時配信、アーカイブ配信はありません。

ヒルマ・アフ・クリント展

抽象絵画の先駆者、ヒルマ・アフ・クリント(1862–1944)のアジア初となる大回顧展です。スウェーデン出身の画家アフ・クリントは、ワシリー・カンディンスキーやピート・モンドリアンら同時代のアーティストに先駆け、抽象絵画を創案した画家として近年再評価が高まっています。彼女の残した 1,000点を超える作品群は、長らく限られた人々に知られるばかりでした。1980 年代以降、ようやくいくつかの展覧会で紹介が始まり、21世紀に入ると、その存在は一挙に世界的なものとなります。2018年にグッゲンハイム美術館(アメリカ、ニューヨーク)で開催された回顧展は同館史上最多*となる60 万人超もの動員を記録しました。*2019年時点 本展では、高さ3mを超える10点組の絵画〈10の最大物〉(1907年)をはじめ、すべて初来日となる作品約140点が出品されます。代表的作品群「神殿のための絵画」(1906–15年)を中心に、画家が残したスケッチやノート、同時代の秘教思想や女性運動といった多様な制作の源の紹介をまじえ、5章立ての構成により画業の全貌をご覧いただきます。 ヒルマ・アフ・クリント(1862-1944) ヒルマ・アフ・クリントはスウェーデンの裕福な家庭に育ち、王立芸術アカデミーを優秀な成績で卒業、職業画家として活動しました。一方で神秘主義などの秘教思想やスピリチュアリズムに傾倒し、交霊術の体験を通してアカデミックな絵画とは異なる抽象表現を生み出します。表現の先駆性や緻密な体系性など、モダン・アート史上、きわめて重要な存在として評価されています。 見どころ すべて日本初公開。「神殿のための絵画」をはじめ約140点で画業の全貌を明らかに 画家の存命中、および死後も長らく、ほとんど展示されることのなかった作品約140点が一堂に。ヒルマ・アフ・クリントの今日の評価を決定づけた代表的作品群「神殿のための絵画」(1906–15年)を中心に、ノートやスケッチなども展示し、画家の制作の源泉を探るとともに、画業の全貌をご紹介します。 圧巻の大作〈10の最大物〉で体感する無限の創造力 本展のハイライトは、代表的作品群「神殿のための絵画」のなかでも異例の巨大なサイズで描かれた〈10の最大物〉(1907年)。人生の四つの段階(幼年期、青年期、成人期、老年期)を描いた10点組の大作で、高さは3メートルを超えます。多様な抽象的形象、画面からあふれでてくるようなパステルカラーの色彩、そして圧倒的なスケールは、観る者を一瞬で引き込み、まるで異空間を漂うかのような唯一無二の体験に誘います。 章立て・主な展示作品 1章 アカデミーでの教育から、職業画家へ ヒルマ・アフ・クリントは1862年10月26日、ストックホルム(スウェーデン)の裕福な家庭の第四子として生まれました。父親のヴィクトルは海軍士官で、天文学、航海術、数学などが身近にある環境は、後のアフ・クリントの制作に大きな影響を与えます。 1882年、アフ・クリントは王立芸術アカデミーに入学、正統的な美術教育を受けることになります。アカデミーは1864年より本格的に女性の入学を認めていたとはいえ、女性のアーティストは当時のスウェーデンではまだ数少ない存在でした。在学中に制作された人体デッサンにおける正確な形態把握、あるいはこの時期に制作されたと思われる植物図鑑のように緻密な写生などからは、彼女が習得した技術の高さを見て取ることができます。 1887年、アカデミーを優れた成績で卒業したアフ・クリントは、主に肖像画や風景画を手がける職業画家としてのキャリアを順調にスタートします。また児童書や医学書の挿画に関わったり、後にはスウェーデン女性芸術家協会(1910年発足)の幹事という実務的な仕事を担ったりと、多方面で活躍を見せました。 2章 精神世界の探求 ヒルマ・アフ・クリントがスピリチュアリズム(心霊主義:人は肉体と霊魂からなり、肉体は消滅しても霊魂は存在し続け、現世へ働きかけてくるという思想)に関心を持ち始めたのは1879年頃、彼女が17歳の時とされています。アカデミーでの美術教育(1882–1887年)と並行しながら、スピリチュアリズムはアフ・クリントの思想や表現を形成し、決定づける要因となっていきます。当時のストックホルムには秘教的思想を信奉する団体がいくつか存在していました。特に影響を受けたのは、ヘレナ・ブラヴァツキー(1831–91)が提唱し、世界的に受容された神智学(しんちがく)でした。アフ・クリントは瞑想や交霊の集いに頻繁に参加し、知識を深めていきます。 1896年、特に親しい4人の女性と「5人(De Fem)」というグループを結成し、以降、1908年頃まで活動しました。彼女たちは交霊術におけるトランス状態において、高次の霊的存在からメッセージを受け取り、それらを自動書記や自動描画によって記録しました。残されたドローイングの数は膨大で、波線の連なりが続くシンプルなものから、植物、細胞、天体など具体的なモチーフが認められるものなどヴァリエーションも多岐にわたります。アフ・クリントはこの体験を通じて、自然描写に根ざしたアカデミックなトレーニングを離れ、新しい視覚言語を生み出し始めます。 3章 「神殿のための絵画」 1904年、アフ・クリントは「5人」の交霊の集いにおいて、高次の霊的存在より、物質世界からの解放や霊的能力を高めることによって人間の進化を目指す、神智学的教えについての絵を描くようにと告げられます。この啓示によって開始されたのが、全193点からなる「神殿のための絵画」です。 「神殿のための絵画」は途中4年の中断期間を挟みつつ、1906年から1915年まで約10年をかけて制作されました。サイズ、クオリティ、体系性、すべての面からアフ・クリントの画業の中核をなす作品群で、〈原初の混沌〉〈エロス〉〈10の最大物〉〈進化〉〈白鳥〉といった複数のシリーズやグループから構成されています。円や四角形といった幾何学図形、花びらや蔓といった植物由来の装飾的モティーフ、細胞、天体を思わせる形態など、実に多様な要素から構成されたこれらの作品群は、そのすべてが、眼に見えない実在の知覚、探求へと向けられています。 〈10の最大物〉 1907年、アフ・クリントは、人生の4つの段階(幼年期、青年期、成人期、老年期)についての「楽園のように美しい10枚の絵画」を制作する啓示を受けます。乾きの早いテンペラ技法*でわずか2か月のうちに巨大なサイズの10点は描かれました。技法やサイズなど、彼女がかつて賞賛したルネサンス期イタリアの祭壇画が持つ荘厳さを彷彿とさせます。 *テンペラ技法:卵などを固着剤として使った絵具で描く西洋絵画の伝統的な技法 アフ・クリントの生きた時代において、彼女が探求した眼に見えない実在とは、精神世界にのみ関わる重要事ではありませんでした。たとえばトーマス・エジソン(1847–1931)やニコラ・テスラ(1856–1943)による電気に関わる発明、ヴィルヘルム・レントゲン(1845–1923)によるX 線の発見、キュリー夫妻(ピエール[1859–1906]、マリー[1867–1934])による放射線の研究など、19世紀後半から20世紀初頭にかけて展開された科学分野における画期的な発明や発見の数々もまた、肉眼では見ることのできない世界の把握に関わるものでした。この時代のスピリチュアリズムなど神秘主義的思想には、こういった科学的実践と共通する探求として、関心が寄せられていた側面があるのです。 この精神的・科学的探究が、20世紀初頭の芸術運動、とりわけ抽象的、象徴的な表現に与えた影響は絶大なものでした。精神的世界と科学的世界、双方への関心を絵画として具現化した「神殿のための絵画」の存在こそ、アフ・クリントが今日、モダン・アートにおける最重要作家の一人として位置づけられる所以です。 〈白鳥〉 具象的な白鳥が抽象的、幾何学的形状に変化し、最後再び具象性に回帰するプロセスが全24点で表現されます。具象と抽象、光と闇、生と死、雄と雌といったアフ・クリントの関心事である二項対立とその解消が、さまざまなレベルで展開していきます。 4章 「神殿のための絵画」以降:人智学への旅 「神殿のための絵画」を1915年に完結させた後、アフ・クリントの制作は、いくつかの展開を見せます。1917 年の〈原子シリーズ〉や1920年の〈穀物についての作品〉などは、自然科学と精神世界双方への関心や、眼に見えない存在の知覚可能性という点において「神殿のための絵画」に連なるものですが、表現としては、より幾何学性や図式性が増しているのが特徴です。 1920年に介護していた母親が亡くなると、以前より関心を寄せていた神智学から分離独立した「人智学(じんちがく)」への傾倒を深め、1920年から30年にかけて人智学の本拠であるドルナッハ(スイス)に幾度も長期滞在します。人智学の創始者ルドルフ・シュタイナー(1861–1925)に、思想面だけでなく作品制作でも強い影響を受けたアフ・クリントは、幾何学的、図式的な作品から、水彩のにじみによる偶然性を活かし、色自体が主題を生み出すような作品へとその表現を変化させていきました。 5章 体系の完成へ向けて 1920年代に始まる水彩を中心とした制作は、人智学や宗教、神話に関わるような具体的モティーフを回帰させながら、晩年まで続きます。なかには《地図:グレートブリテン》のように、上空から見たイギリスへ、南東(ドイツ)から不吉な風を吹きかける人物が描かれた、後の第二次世界大戦を思わせるような予言的作品も残しています。 制作の一方で、1920年代半ば以降、アフ・クリントは自身の思想や表現について記した過去のノートの編集や改訂の作業を始めます。アフ・クリントの後半生においては、この編集者的、アーキビスト的作業が、あるいは制作以上に大事な仕事であったのではないかとも思われます。特に注目すべきは「神殿のための絵画」を収めるための建築物の構想です。制作が完了してからすでに15年以上経過した1930年代にもなお、作品を収める理想のらせん状の建築物について記し、建物内部の具体的な作品配置計画の検討も重ねていました。この神殿が実現することはありませんでしたが、こういった自らの思想の絶えざる編集と改訂の作業は、絵画制作を含むアフ・クリントの仕事全体が、いかに厳密な体系性を目指していたかの証左となるものでしょう。 1944年、1,000点をはるかに超える作品やノート類の資料などすべてを甥に託し、アフ・クリントは81歳の生涯を閉じました。 カタログ ヒルマ・アフ・クリント展 図録  刊行日:2025年3月4日価格:3,850円(税込) 仕様:A4変型、無線綴じオープンバック製本頁数:288ページ 言語:日本語、英語 発行:日本経済新聞社 目次 彼方よりの絵画|三輪健仁(東京国立近代美術館)  図版 1 章 アカデミーでの教育から、職業画家へ 2 章 精神世界の探求 3 章 「神殿のための絵画」4 章 「神殿のための絵画」以降:人智学への旅5 章 体系の完成へ向けて 認識の階梯:ヒルマ・アフ・クリントの絵画|岡﨑乾二郎(造形作家、評論家) 資料 ストックホルムの人智学協会におけるヒルマ・アフ・クリントの講演(1924 年12月6日頃) 人智学協会における絵画作品の紹介に際しての前置き(1937年4月16日) ヒルマ・アフ・クリントとその作品  年譜主要参考文献 作品リスト 展示風景 撮影:三吉史高 開催概要 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー 2025年3月4日(火)~6月15日(日) 月曜日(ただし3月31日、5月5日は開館)、5月7日 10:00-17:00(金・土曜は10:00-20:00) 入館は閉館の30分前まで 一般  2,300円(2,100円)大学生 1,200円(1,000円)高校生 700円(500円) ( )内は20名以上の団体料金、ならびに前売券料金(販売期間:1月21日~3月3日)。いずれも消費税込み。 中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は、学生証・職員証の提示により団体料金でご鑑賞いただけます。 本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)、コレクションによる小企画「フェミニズムと映像表現」(2Fギャラリー4)もご覧いただけます。 東京国立近代美術館の窓口では会期中の開館日に限り当日券を販売いたします。前売券の販売はございません。 前売券やスペシャルチケット、オンラインチケットや各種プレイガイドでのご購入方法は本展公式サイトをご確認ください。 下記の美術展・映画との相互割引を実施。チケット売り場でご購入の際、チケット/半券のご提示で、1枚につきヒルマ・アフ・クリント展当日券1枚を100円割引いたします。 美術展 「西洋美術、どこから見るか?」国立西洋美術館(上野公園)  「没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ」サントリー美術館(六本木)  「異端の奇才―ビアズリー」三菱一号館美術館(丸の内)  「ミロ展」東京都美術館(上野公園) 「岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」東京都現代美術館(木場公園)※4/29より、東京都現代美術館の3展セット券は適用外 映画 「見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界」ユーロスペース(渋谷) *使用前のチケット・使用後の半券いずれもご利用可能です。 *購入後の割引はできません。 *オンラインチケットのご購入に割引は適用されません。 *映画との相互割引については、高校生は対象外です。 *そのほかの割引との併用不可。  東京国立近代美術館、日本経済新聞社、NHK 大林組、DNP大日本印刷 ヒルマ・アフ・クリント財団 スウェーデン大使館

下村観山展

展覧会概要 日本画家・下村観山は紀伊徳川家に代々仕えた能楽師の家に生まれ、橋本雅邦に学んだのち、東京美術学校に第一期生として入学しました。卒業後は同校で教鞭を執りましたが、校長の岡倉天心とともに辞職、日本美術院の設立に参加しました。 出品作品点数約150件、関東では13年ぶりの開催となる今回の回顧展では、狩野派、やまと絵の筆法を習得して若くから頭角を現した観山が、2年間のイギリス留学を通して世界をまたにかけた幅広い視野を身につけ、画壇を牽引する存在へと成長する軌跡を示します。そこからは、盟友の横山大観、菱田春草らとともに明治という新時代にふさわしい絵画を切り拓こうとした観山のひたむきな姿が浮かび上がってきます。 さらに、日本の古画や中国絵画の研究の成果、本人のルーツでもある能を主題とした絵画制作、時の政財界人とのサロンのようなネットワークにもスポットを当て、様々な角度から観山芸術の魅力に迫ります。これにより、明治から大正へと時代が移り変わる中で絵画のあり方に改めて向き合った観山が、自己表現のための芸術とはまた別の、作品を手に取る個人ひいては社会とともに生きる絵画を追い求めていったことが明らかになるでしょう。 ※会期中、一部の作品の展示替えを行います。 前期展示:3月17日(火)~4月12日(日) 後期展示:①4月14日(火)~5月10日(日)     ②4月14日(火)~4月26日(日)     ③4月28日(火)~5月10日(日)  下村観山(1873 - 1930) 見どころ 1. 誰もが圧倒される“超絶筆技”を味わう 狩野派、大和絵、琳派、中国絵画そして西洋絵画まで、東西の伝統的な絵画表現を徹底的に学び、自由自在に筆を操った観山。今もなお、その繊細な筆技は他の追随を許さないほどです。  2. 観山芸術の意義を再検証-作品の意味を読み解き、成り立ちを探る―  よく見ると和洋折衷の不可思議な表現、ミステリアスなモチーフなど、観山の作品には気になる部分がたくさんあることが分かります。そこには技法の他に、その作品を描くことになった経緯(作品の成り立ち)も関係しています。これらをひとつひとつ解きほぐすことで作品の示す意図を明らかにし、それを通じて観山芸術の意義を再検証します。 3. 大英博物館蔵、英国留学時の観山作品が里帰り 新しい日本の絵画には色彩の研究が必要だと考え、日本画家初の文部省留学生としてイギリスへ留学した観山。現地で親交を深めた小説家で東洋美術研究家のアーサー・モリソンに贈った自作(大英博物館蔵)が里帰り!作品からは、海外経験を通じ観山が考えた「日本画のあり方」をも感じていただけます。  展示風景 撮影:木奥惠三 撮影:木奥惠三 撮影:木奥惠三 撮影:木奥惠三 撮影:木奥惠三 撮影:木奥惠三 撮影:太田信明 撮影:木奥惠三 撮影:太田信明 撮影:木奥惠三 撮影:木奥惠三 撮影:木奥惠三 カタログ 下村観山展 図録 刊行日:2026年3月17日 価格:3,500円(税込)仕様:A4変型頁数:304ページ言語:日本語、一部英語発行:日本経済新聞社 目次 「伝統」の発見と行き先、絵画のあり方―観山芸術再考  中村麗子観山さん、おかえり―生誕地、和歌山から紐解く画家への軌跡  宮本久宣 図版 第1部 画業をたどる――生涯と芸術 第1章 若き日の観山(1873–1902 誕生・上京~修業時代~日本美術院への参加)第2章 西洋を識る(1903–1905 イギリス留学)第3章 飛躍の時代(1906–1913 帰国~日本美術院再興前夜)第4章 画壇の牽引者として(1914–1931 日本美術院再興~死没) 第2部 制作を紐解く――時代と社会 第1章 何をどう描いたか―不易流行第2章 なぜこれを描いたか―日本近代と文化的アイデンティティ第3章 作品の生きる場所、作品がつなぐもの 論考・資料 観山の古画理解―中国絵画を中心に  板倉聖哲下村観山と能  小林健二主要作品解説年譜文献目録 出品目録  開催概要 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー 2026年3月17日(火)~5月10日(日) 月曜日(ただし3月30日、5月4日は開館) 4月19日(日)まで10:00–17:00(金曜・土曜は10:00–20:00)4月21日(火)~5月10日(日) 9:30–17:00(金曜・土曜は9:30–20:00) 入館は閉館の30分前まで 4月21日(火)~5月10日(日)は混雑緩和のため30分開館時間を前倒しいたします。音声ガイド、単眼鏡レンタル、特設ミュージアムショップも9:30からご利用いただけます。 但し、所蔵作品展「MOMATコレクション」、常設ミュージアムショップは10:00より開場 一般  2,000円(1,800円)大学生 1,200円(1,000円)高校生 700円(500円) ( )内は20名以上の団体料金、ならびに前売券料金(販売期間:1月20日~3月16日)。いずれも消費税込み。 中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。 キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は、学生証・職員証の提示により団体料金でご鑑賞いただけます。 本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展 「MOMATコレクション」(4-2F)もご覧いただけます。 観覧券は美術館窓口(当日券のみ)と公式チケットサイト(e-tix)で販売いたします。 東京国立近代美術館、日本経済新聞社、テレビ東京、BSテレビ東京 ライブアートブックス 神奈川県立歴史博物館、横浜美術館 国立能楽堂、ビクセン 和歌山県立近代美術館:2026年5月30日(土)~7月20日(月・祝) 

アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦

展覧会概要 新しい時代を象徴していた女性の美術家は、なぜ歴史から姿を消してしまったのか。1950年代から60年代の日本の女性美術家による創作を「アンチ・アクション」というキーワードから見直します。当時、日本では短期間ながら女性美術家が前衛美術の領域で大きな注目を集めました。これを後押ししたのは、海外から流入した抽象芸術運動「アンフォルメル」と、それに応じる批評言説でした。しかし、次いで「アクション・ペインティング」という様式概念が導入されると、女性美術家たちは如実に批評対象から外されてゆきます。豪快さや力強さといった男性性と親密な「アクション」の概念に男性批評家たちが反応し、伝統的なジェンダー秩序の揺り戻しが生じたのです。本展では『アンチ・アクション』(中嶋泉[本展学術協力者]著、2019年)のジェンダー研究の観点を足がかりに、草間彌生、田中敦子、福島秀子ら14名の作品およそ120点を紹介します。「アクション」の時代に別のかたちで応答した「彼女たち」の独自の挑戦の軌跡にご注目ください。 出品作家 赤穴桂子(1924-98)、芥川(間所)紗織(1924-66)、榎本和子(1930-2019)、江見絹子(1923-2015)、草間彌生(1929-)、白髪富士子(1928-2015)、多田美波(1924-2014)、田中敦子(1932-2005)、田中田鶴子(1913-2015)、田部光子(1933-2024)、福島秀子(1927-1997)、宮脇愛子(1929-2014)、毛利眞美(1926-2022)、山崎つる子(1925-2019) 見どころ 1 最新の研究に基づく歴史の見直し 女性美術家の再評価が進む近年、本展では『アンチ・アクション─日本戦後絵画と女性画家』(ブリュッケ、2019年、第42回サントリー学芸賞受賞/『増補改訂 アンチ・アクション—日本戦後絵画と女性の画家』筑摩書房、2025年)の著者・中嶋泉氏の全面的な協力により、ジェンダー研究の観点から日本の戦後美術史に新たな光を当てます。本展カタログには、同研究の第一人者であるイギリスの美術史家グリゼルダ・ポロック氏のインタヴューも収載します。 2 初公開作品 関係者のご協力と本展のための綿密な調査により、赤穴桂子、多田美波、宮脇愛子らの、これまで紹介されていなかった初期作品や、未発表作品を展示します。各作家たちの知られざる創作と、新たな魅力に出会える貴重な機会です。 3 充実した情報 「アンチ・アクション」のコンセプトを一望できる年表を掲示するとともに、本展に関わる様々なトピックを紹介するガイドを会場で配布。わかりやすく、多面的に、作家たちの活動や時代背景などを知ることができます。 4 ダイナミックな展示 ライトを用いた立体作品や天井高に迫る3.3mの絵画など、新たな時代に躍り出た作家たちのダイナミックな作品が一堂に会します。時代を共有する14名の作品が有機的につながる空間を体験できます。 作者のことば (…) 猫も杓子も絵具をぶつけたり、たらしたり、盛り上げたりのアンフォルメル旋風が吹きまくって、あたかも、へこんだり、でっぱったりのどろどろの絵でなければ時代遅れのようにいわれていました。いくらそれがフランスの新しい傾向とはいえ、女の子のヘアスタイルではあるまいし、右にならえで、同じ絵を描けたものではありませんし、日本の画壇の浅薄さに、がっかりしていました。 (芥川(間所)紗織)「私のアメリカ留学記」『美術手帖』 1963年2月 アクション・ペインティングのメッカ、テンス・ストリートの全盛期に住んで、わたしは彼らの時代の波にのって、アクション・ペインティングをやったわけではないの。その只中に立って、その正反対の、アクション・ペインティングの否定をただちにやったわけ。                 (草間彌生)谷川渥「増殖の幻魔—彼女はいかにして時代を駆け抜けたか」『美術手帖』 1993年6月 (…) 現代の「世界」に生きるものは、単に人間的であるものよりも、むしろ無機質化されたものとの、直接的な触れ合いによって、新鮮なより強い感動を受けるのではないでしょうか。 (福島秀子)「未知のものへの探求」『美術批評』 1957年1月 カタログ アンチ・アクション展 図録  刊行日:2025年10月29日価格:3,630円(税込)  仕様:並製 判型:B5頁数:290頁  言語:日英併記  発行:株式会社青幻舎 目次 中嶋泉(大阪大学大学院人文学研究科准教授)「「アンチ・アクション」──女性の美術家と日本の戦後抽象画 」グリゼルダ・ポロックインタヴュー──作品は「何をしているのか」 (聞き手:中嶋泉)「アンチ・アクション」年表 「アンチ・アクション」相関図  図版 成相肇(東京国立近代美術館主任研究員) 「どうしてドン・キホーテは帰ってきたか──アンチ・アクションの射程」千葉真智子 (豊田市美術館学芸員)「見えないものの潜在力」鈴木慈子(兵庫県立美術館王子分館 横尾忠則現代美術館学芸員)「のこぎりを引く女性──具体とアンチ・アクション」江上ゆか(兵庫県立美術館学芸員)「絵は変わらない──大橋コレクションをめぐって」能勢陽子(東京オペラシティアートギャラリーシニア・キュレーター)「美術史を描きなおす複数の線──「アンチ・アクション」展によせて」 作品リスト参考文献 展示風景 撮影:木奥恵三 開催概要 2025年12月16日(火)~2026年2月8日(日) 東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー 月曜日(ただし1月12日は開館)、年末年始(12月28日~1月1日)、1月13日 10:00-17:00(金・土曜は10:00-20:00) 入館は閉館の30分前まで 一般2,000円(1,800円)大学生1,200円(1,000円)東京国立近代美術館(当日券)、公式チケットサイト(e-tix)にて販売。*いずれも消費税込。*()内は20名以上の団体料金。*高校生以下および18歳未満、障害者手帳をご提示の方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。*本展の観覧料で入館当日に限り、同時開催の所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)もご覧いただけます。 観覧券は美術館窓口(当日券のみ)と公式チケットサイト(e-tix)で販売いたします。 「ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー」展(東京都現代美術館)との相互割引を実施します。チケット売り場でご購入の際、チケット/半券のご提示で、1枚につき「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」展当日券1枚を100円割引いたします。 ・いずれも 1 枚につき 1 名 1 回限り有効。 ・他の割引との併用はできません。 ・オンラインチケット購入時に割引はできません。各館での当日券購入時のみ有効です。 ・使用前の観覧券、使用後の半券、オンラインチケット QR コード、購入履歴のメール、いずれもご利用可能です。 東京国立近代美術館、朝日新聞社 豊田市美術館:2025年10月4日~11月30日 兵庫県立美術館:2026年3月25日~5月6日 050-5541-8600(ハローダイヤル)

Page Top