展覧会

会期終了 企画展

アンリ・カルティエ=ブレッソン:知られざる全貌

会期

会場

東京国立近代美術館本館企画展ギャラリー

展覧会について

「決定的瞬間」をとらえた写真家として知られるフランスの写真家アンリ・カルティエ=ブレッソン(1908-2004)。
彼は絵画を学んだ後、1930年代初頭に、本格的に写真にとりくみはじめます。35mmカメラによるスナップショットの先駆者として、独特の鋭い感性と卓越した技術を結晶させたその写真表現は、ごく早い時期から、高い完成度を示していました。

1952年に初の写真集『逃げ去るイメージ(Images à la sauvette)』を出版。そのアメリカ版の表題である『決定的瞬間(The Decisive Moment)』は、カルティエ=ブレッソンの写真の代名詞として知られるようになります。
日常のなかの一瞬の光景を、忘れがたいイメージへと結晶させる作品は、同時代の写真表現に大きな影響を与えました。
日本でも1950年代にその仕事が紹介されると大きな反響を呼び、その作品は広く愛されてきました。

本展は、ヨーロッパ以外では初めての巡回であり、日本国内では東京国立近代美術館のみの開催です。本展は、パリのアンリ・カルティエ=ブレッソン財団とマグナム・フォトの協力によって制作されました。
This exhibition has been created by Henri Cartier-Bresson Foundation in Paris in collaboration with Magnum Photos.

ここが見どころ

ヴィンテージ・プリントは今回日本初公開!

カルティエ=ブレッソンは、1947年のマグナム設立以降、撮影に専念するため、暗室作業を信頼できるラボに全面的に任せていましたが、本展ではひとつの章を、本人がプリントした、数十点のヴィンテージ・プリントの紹介にあてています。「カルティエ=ブレッソンの灰色」と呼ばれる独特の中間調のトーンは、この貴重なヴィンテージ・プリントにとりわけ特徴的です。カルティエ=ブレッソンのヴィンテージ・プリントがまとまって展示されるのは、日本では初めての機会となります。

まだまだある日本初公開の資料!

撮影のさまたげになるという理由で、カルティエ=ブレッソンはほとんど自らの肖像を撮らせなかったといいます。本展では、幼少期の家族写真や、各地を取材したときの記者証、さまざまな書簡や手稿など、人間カルティエ=ブレッソンを伝えてくれる多くの初公開資料が展示されます。

油彩やデッサンも! 描くことへの情熱

少年時代から美術に親しんだカルティエ=ブレッソンは初め画家を志し、アンドレ・ロートのアトリエで学びました。また73年頃からはほとんどデッサンに専念するようになります。本展では初期の貴重な油彩に加えて、数十点のデッサンが展示されます。「写真は瞬間の行為であり、素描は瞑想だ」と語ったカルティエ=ブレッソン。油彩や素描には、彼の眼がどのように世界を捉えようとしていたのか、その秘密の一端をうかがうことができるでしょう。

カルティエ=ブレッソンによる最後のメッセージ?!

この展覧会がベルリンに巡回していた2004年8月にカルティエ=ブレッソンは95年の生涯を閉じました。最晩年、自ら企画・構成に関わったこの展覧会は、写真家集団マグナム・フォトの創設メンバーのひとりとして、20世紀を見つめた写真家が、21世紀に遺したメッセージとなりました。

展覧会構成

多角的な章構成

「ヨーロッパ」「アメリカ」「インド」「中国」「ソヴィエト」など、取材した国や地域ごとの章に加えて、「ポートレイト」「風景」といったジャンルによる章、またそうした枠組みをとりはらってよく知られた代表作だけを集めた「クラシック」の章など、この展覧会は、多角的な視点からアンリ・カルティエ=ブレッソンの仕事の全貌をたどります。  

そこで浮かび上がってくるのは、眼の前の世界が完璧な調和をみせる一瞬を捕獲する妥協なき芸術家としてのまなざしや、ガンジー暗殺や中国共産党政権の成立など、適確な時と場所にいあわせて
歴史の分岐点を目撃するというジャーナリストとしてのすぐれた資質です。
   
多角的な視点から、カルティエ=ブレッソンの多面性が見えてくることでしょう。

なお本展ではアンリ・カルティエ=ブレッソンによるフィルムなど、映像作品も展示されています。すべてを見ると、1時間以上かかります。ぜひ、お時間に余裕を持ってご来館ください。

カルティエ=ブレッソンについてのフィルム(約10分)
セルジュ・トゥビアーナ編

1. ジョン・ミリ「友情」 2分44秒
2.ロベール・デルピール「コンタクツ:アンリ・カルティエ=ブレッソン」 1997年 7分〔オリジナル15分からの抜粋〕

カルティエ=ブレッソンによるフィルム(約15分)
セルジュ・トゥビアーナ編

3.アンリ・カルティエ=ブレッソン「生命の勝利」 1937年 5分30秒〔オリジナル49分からの抜粋〕
4. アンリ・カルティエ=ブレッソン「スペインは生きる」 1938年 6分5秒〔オリジナル43分32秒からの抜粋〕
5. アンリ・カルティエ=ブレッソン「帰還」 1944/45年 3分10秒〔オリジナル32分37秒からの抜粋〕

カルティエ=ブレッソンへのオマージュ(約1時間)

6.サラ・ムーン「アンリ・カルティエ=ブレッソン ― 疑問符」 1994年 37分
7.ロベール・デルピール「現行犯」 1967年 22分 

作家紹介

アンリ・カルティエ=ブレッソン Henri Cartier-Bresson (1908-2004)

1908年フランス、セーヌ=エ=マルヌ県シャントルーに生まれる。画家を志しパリでアンドレ・ロートに学んだ後、31年から翌年にかけアフリカ象牙海岸に滞在中に写真を撮り始め、小型カメラ「ライカ」で撮影したスナップショットが注目される。30年代後半には映画監督ジャン・ルノワールの助手を務めるなど映画制作に従事。第二次大戦中は従軍し、ドイツ軍の捕虜となるも脱走、レジスタンス活動に加わり、大戦末期にはパリ解放などを撮影した。戦後47年にロバート・キャパらと写真家集団マグナム・フォトを結成、以後インドや中国、アメリカ、旧ソヴィエト(当時)、そして日本など、世界各地を取材した。52年に初の写真集を出版、そのアメリカ版の表題『決定的瞬間(The Decisive Moment)』は、カルティエ=ブレッソンの写真の代名詞として知られることになる。スナップショットによって、日常のなかの一瞬の光景を、忘れがたい映像へと結晶させる作品は、同時代の写真表現に大きな影響を与えた。70年代以降はドローイング制作に専念、2004年フランス南部の自邸で死去した。

イベント情報

講演会

「チョートク、カルティエ=ブレッソンを語る」

日程

2007年6月30日(土)

時間

14:00-15:30

場所

講堂

担当

田中長徳(写真家)

聴講無料、申込不要、先着150名

「アンリ・カルティエ=ブレッソンと日本」

日程

2007年7月21日(土)

時間

14:00-15:30

場所

講堂

担当

増田玲(当館主任研究員)

聴講無料、申込不要、先着150名

カタログ情報

正方形というちょっと珍しい版型です

本展にあわせて小さめのカタログを発行いたします。
 デザインは、BEAMSのメンズカタログ(2005-06年秋冬コレクション)などで注目を集めている今井千恵子氏(n.b graphics)。
 正方形のハードカバーという珍しい版型で、透明のケース付き。出品点数約350点(写真作品)のうち、掲載点数は30点と少なめですが、中条省平氏(学習院大学教授、フランス文学者)のエッセイや、フランス語から訳出したアンリ・カルティエ=ブレッソンによる「決定的瞬間」、そしてもちろん、展覧会担当者によるテキストを収めており、読み応えのある内容になっています。

版型・頁数

20×20cm/119p

目次

p.8 メッセージ(マルティーヌ・カルティエ=ブレッソン)
p.9 Message(Martine Cartier-Bresson)
p.10 序(ロベール・デルピール)
p.11 Preface(Robert Delpire)
pp.12-13 なまなましい存在感、幾何学的な静謐さ(中条省平)
pp.15-84 図版
[コラム]
 カメラと撮影
 HCBとプリント
 若き日のHBC(1):1920年代のパリで
 若き日のHBC(2):旅の日々
 HBCとマグナム・フォト
 HBCとジャーナリズム
 写真集『決定的瞬間』
 再び絵画へ
pp.87-95 決定的瞬間(アンリ・カルティエ=ブレッソン)
pp.96-103 アンリ・カルティエ=ブレッソンと日本(増田玲)
pp.104-113 Henri Cartier-Bresson and Japan(Rei Masuda)
pp.114-116 略年譜

定価

1800円(税込)

開催概要

会場

東京国立近代美術館 企画展ギャラリー

会期

2007年6月19日(火)~8月12日(日)

開館時間

午前10時~午後5時
金曜日は午後8時まで
(入館は閉館30分前まで)

休室日

月曜日 *2007年7月16日(月・祝)は開館、翌17日(火)は休館

観覧料

一般800(700/600)円、大学生400(300/200)円、高校生250(150/100)円

  • 中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方及び付添者1名は無料
    *それぞれ入館の際、生徒手帳、健康保険証、運転免許証、障害者手帳等をご提示ください
  • いずれも消費税込、( )内は前売/20名以上の団体料金
  • 前売券は全国チケットぴあ他、ファミリーマート、サンクスで6月18日まで取り扱います(一部店舗を除く)
  • 本展観覧券で、当日に限り、「アンリ・ミショー展」、「所蔵作品展 近代日本の美術」もご覧いただけます
主催

東京国立近代美術館、マグナム・フォト東京支社、アンリ・カルティエ=ブレッソン財団、日本経済新聞社

協賛

あいおい損害保険、大日本印刷、ライカカメラジャパン

協力

エールフランス航空

巡回

本展は日本国内での巡回はありません

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