「ピーター・ドイグ作品で物語をつくろう!」入選作品発表

【第1週】は、36通のご応募がありました!ご応募ありがとうございました♪
審査の結果、今回は入選作品8点、そのうち「研究員のイチオシ!」作品2点を選出しました。
おしくも入選とならなかった作品のなかにも、すてきな物語がたくさんありました。
まだまだチャンスはあるので、ぜひ【第2週】以降もチャレンジしてみてくださいね!

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第1週の「研究員のイチオシ!」作品が決定しました

 

                        大須賀祈音さん(中学2年生)

《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》
2000-02年、油彩・キャンバス、196×296cm、シカゴ美術館©Peter Doig. The Art Institute of Chicago, Gift of Nancy Lauter McDougal and Alfred L. McDougal, 2003. 433. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

突然、道が開けた。
僕が彼女と海を描きに来たのは、もうこれで何度目だろう。そう、僕らは画家の卵だった。美大が休みのときはどちらともなくさそい合い、よく海に行った。小さな入り江は僕らだけのプライベートビーチだった。彼女が海を描き、僕は山と星を描いた。またあるときは彼女が山と空を、僕は海を描いた。
あるとき、僕は彼女とキスを交わした。彼女は照れたように笑い、なにか言いたげに僕を見つめた。僕らはもう一度口付けをした。
「お待ちしておりました。」
厳かな老人は言った。黄色いコートに黒いハットと奇妙ないでたちだった。だけど僕にはどうでも良かった。
「どうぞこちらへ」
無表情な老人に案内され、僕は彼女と歩いた。ランダムタイルの壁がどっしりと構えた。
僕は、彼女を海に帰した。
彼女は、粉になり、舞いおちていった。


✿✿研究員からのコメント✿✿
衝撃のラストに驚きました。「僕」は二人並んだ人物の左の方ということでしょうか。この作品の前に立つと、砂糖の結晶のような絵の表面に目がいくのですが、粉になって海に帰った彼女だと思って見るとしんみりとしそうです。(教育普及室 細谷)

 

                           ゆあさん(中学3年生)

《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》
2015年、水性塗料・麻、301×352cm、作家蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

天気は快晴。それなのに動物界では百獣の王とも呼ばれているライオンが鬣を垂らして俯いている。落ち込んでいるのか。いやライオンは怯えているのである。
コツコツコツと足音が聞こえる。足音が聞こえるのに周りは誰もいない。誰もいないのに足音が聞こえる。どこから敵が現れるのか、そんな恐怖に百獣の王でもあるライオンが脅えているのである。
「こんな恐怖に襲われるのなら檻の中で過ごした方がマシだ。」そんなことすら思う程に。
そんな時笑い声が聞こえた。楽しい笑い声ではない。バカにするような笑い声。檻の中にいる仲間が「自業自得だな」とバカにしているような。
それを耳にしたライオンは怒りに震えている…のでなく、さらに怯えて震えている。ゆっくりライオンが檻を覗いてみる。ゆっくりゆっくり。やはりだ。誰もいない……。
誰もいないのに誰かの監視下にあるような恐怖。
ライオンは自らまた檻へと戻っていった。


✿✿研究員からのコメント✿✿
ついついライオンに目が行きがちなこの作品ですが、左側に透けて景色に同化している人物や檻の中の人物など、人の気配がします。見えていない誰かの視線を感じているライオンの心情描写に、お話を読んだこちらも考えさせられました。(教育普及室 細谷)

 

  選   

ユニークな作品が勢ぞろい

語り手の目線から書かれた作品もあれば、絵の中の「だれか」になりきったり、
絵の中にはいない「だれか」を想像したりしてつくられた作品もありました!
一つの絵でも、見る人によって、感じ方がちがうのがアートの面白いところです。
ぜひ、いろいろな人の物語を読んでみましょう♪

 

                         余湖夕真さん(中学2年生)

《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

俺の名前は「カール・キャメロン」
趣味は登山。今日は自宅から30キロ離れた標高一四七六メートルのとある雪山を一人で登っていた。冷たい風が顔にあたり、指先や足先の感覚もなくなってきた。体の体温も奪われていく中、標高九八〇メートル。強い吹雪が突然起き、視界が一瞬にして真っ白になった。「おかしい、今日の天気は曇りのち晴れのはずなのに。」つい声に出して言ってしまった。視界が悪い中、標高一〇八〇メートル付近にある山小屋を目指し、思い当たる道を少しずつ進んだ。小屋を目前にした一〇六〇メートル、体力を奪われていく中、足をすべらせてしまった。
目を覚ました時、吹雪はやみ空は曇っていた。辺りを見回すと、雪解け水によって出来た水溜りが紫色に輝いていた。水面の上に立つと、いきなり自信がなくなり、どうしたらいいのか分からなくなってしまった。気付いたらそこは白銀に輝く世界だった。

                          すいかさん(中学2年生)

《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

今日も来たな。今日もこの子は私に足をひたし、私に話しかける。「おはよう」とこの子が言う。空気がひどく冷たく、昨夜から雪が降り続けていた。寒くないかと私が聞く。彼は全身が私につかるように寝てから言った。「寒くないよ。君が僕を包み込んで暖めてくれるから。」私は黙っていた。この子に必要とされている気がして嬉しくなった。木々に話を聞かれるのが恥ずかしいので、小さい声で話そうと思った。会話がないのがもどかしく感じて、今日どんなことがあったか聞いてみた。「今日、学校で席替えがあって、好きな女の子と隣の席になったんだ。」人間と湖の恋が成立しないとは最初から分かっていた。しかし、この子が他の人を好きになるなんて思いもしなかった。気がつけばあたりは暗くなっていた。帰らなくていいの?彼から返事はない。彼は眠っていた。いつもは一緒に寝るのが嬉しいのに、今日はそうじゃなかった。深く眠る彼を包み込みながら、私は泣いた。

                         鈴木民美さん(中学2年生)

《ラペイルーズの壁》2004年、油彩・キャンバス、200×250.5cm、ニューヨーク近代美術館©Peter Doig. Museum of Modern Art, New York. Gift of Anna Marie and Robert F. Shapiro in honor of Kynaston McShine, 2004.All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

ここは、私が小さい頃からよく来てる場所で、町が見わたせる最高の場所なの。
よくお父さんと来てはしゃいでた、そんなお父さんと今は全然話が出来ていない。
子供の頃からとても優しい父で、私が小さい頃にお絵かきをしてプレゼントしたかさを今も使っているの。
無口で優しくて不器用な父がとっても好き。私も、そんな父に似たのか不器用で、感謝の気持ちも伝えられないのが少しさびしいの。でも似た事がうれしくないわけではないよ。
ついに、明日は父の日なのよ。最高のサプライズプレゼントを用意したくて、買い物をしに出かけたら父が歩いてて、その日はとっても晴れていて少し年季の入った小さい頃にあげたかさをさしていたわ。
その姿に、感動して泣きそうになったの。
さて、明日のプレゼントは何にしようかな、かさの次は何がいいかな、そんな事を考えていたらとってもいい物を見つけた。

 

                      ふじよし まいさん(小学2年生)

《赤いボート(想像の少年たち)》2004年、油彩・キャンバス、200×186cm、個人蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

「ひみつのしま」
ある日、六人の子どもたちが、ふねにのっていると、見たこともないしまに、まよいこみました。
ふねからおりて、しまの森の中に入っていくと、マンゴーやぶどう、びわなど、たくさんのフルーツがありました。
六人はそれからまい日、ふねにのって、しまにかよいました。
しまではまい日、フルーツをたくさん食べて、たくさんおどりをおどりました。
しまのことは、おとなたちにはないしょにしました。

                         小西瑠美さん(中学3年生)

《ピンポン》2006~08年、油彩・キャンバス、240×360cm、ローマン家©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

自然に囲まれて卓球を行うことは、わしの最上級の楽しみである。ここは自然と一体となって猛特訓できる唯一の場所なのじゃ。
もう何時間ここで練習しただろうか?この日焼けがその精進を重ねていった長さを物語っている。球があることを意識してラケットを振り続けていると、周りは黒や青となってぼやけて見える。
「相手がいない」だと?相手なんぞいらん。スポーツなんか、必ずしもボールとか相手だとかそういうものを必要としない。真の敵というのは自分自身だからだ。

 

                        宮崎夏奈子さん(小学1年生)

《ピンポン》2006~08年、油彩・キャンバス、240×360cm、ローマン家©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

ある日、おじさんがジャングルおんせんに行きました。ジャングルおんせんは、かべにジャングルのえがかいてあるおんせんです。えを見ながらおんせんに入ります。
おじさんがおんせんに入ろうとすると、むこうからだれかやってきました。「やっほー」それは、おじさんのともだちでした。二人はいっしょにおんせんに入ることにしました。
かべには森やとりのえがかかれていて、とおくには山も見えます。ほんとうにジャングルの中でおんせんに入っているようです。
おんせんからでるとともだちが、「たっきゅうやろうぜ!」といいました。おじさんはさんせいしました。おじさんはたまをとおくにうってしまいました。ともだちがたまをとりに行きました。
おじさんはつぎこそはと、かまえます。「きた!!」おじさんはたまをうちました。ところがたまはともだちのおでこにあたってしまいました。ともだちはおこりませんでした。二人ともわらいました。

【第2週】は、77通のご応募がありました!ご応募ありがとうございました♪
審査の結果、今回は入選作品12点、そのうち「研究員のイチオシ!」作品3点を選出しました。
今週は特に中学生の作品が多く集まりました。力作ばかりのため、研究員は断腸の思いで選んでいます。
【第3週】も絶賛募集中ですので、ぜひお話づくりを楽しみながらご参加ください!

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第2週の「研究員のイチオシ!」作品が決定しました

 

                          K・Mさん(高校1年生)

《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》
2000-02年、油彩・キャンバス、196×296cm、シカゴ美術館©Peter Doig. The Art Institute of Chicago, Gift of Nancy Lauter McDougal and Alfred L. McDougal, 2003. 433. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

空の鞄を背負い歩みを進めると、薄緑の平野の先には大きな青い湖が静かに広がっていた。オーロラを歪めた空に鈍く光る白。門扉を挟む二人の男。飴玉を埋め込んだような白い石壁は大きく曲がり、その先にはまた別の景色が広がっているのだろう。
きっとこの世界について何か知っている筈だろうと近づいてみると、青い服の男が声を掛けてきた。「通行料の石を。」何を言っているんだと言いかける口を一旦閉じて聞き返す。「石?」すると男はまた同じ言葉を繰り返した。「通行料の石を。」ふと鞄に重さを感じて開けてみれば、なんと空だった筈の中身がオレンジ色の石に置き換わっている。試しに青い男に差し出すと、彼は石を壁に埋め込んだ。なるほど、こうしてこの石壁は出来ていたのか。
門扉から一歩足を踏み出すと黄色い男が声を掛けてくる。「いってらっしゃいませ。」藍色の湖は不気味な程に澄んでいる。この世界に別れを告げるにはまだ早そうだ。


✿✿研究員からのコメント✿✿
作品の水や空の情景描写が秀逸。とくにカラフルな石垣と人物二人の関係を、通行料と門番という役割で読み解く発想力は思わず膝を打ちました。これからの展開を読みたくなる作品。(企画展室 山田)

 

                         篠原灯子さん(小学2年生)

《スピアフィッシング》2013年、油彩・麻、288×200cm、作家蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

ある日、二人の人げんは、たびに出た。みどりのふねをこいでね。一人がこう言った。
「どこまでこいで行くの?」
もう一人がこたえた。
「どこまでも。さ」
ほそくなったみか月がでている。一人がもう一人に、黄色いレインコートをさし出した。雨がふってきたのだ。一人はレインコートをもらうと、それにくるまってねむったのであった。もう一人は、よるのいきをすいこみ、はきだして、ふねをこぐのをやめて、ねむったのであった。


✿✿研究員からのコメント✿✿
ドイグさんの作品がいろいろな物語を想像させるように、印象的な会話によってこの人たちは家族なのか友だちなのか、どうして旅に出たのかとイメージが広がります。絵の中の空気感を表すのに「レインコート」を使うのが絶妙です。(企画展室 山田)

 

                     鈴木リアーナ萌香さん(中学2年生)

《スピアフィッシング》2013年、油彩・麻、288×200cm、作家蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

僕はこれから海に行く。でも、空は真っ暗だ。何でこの時間に行くって。魚が寝静まる頃が最高の瞬間だからだ。
外に出る頃には少し明りが入っていた。緑のボートに乗ってさあ、出発だ。そう思った時、後に女の子がいるのが目に入った。何でこんな時間に女の子が。
「どこから来たの?」
返事は返ってこない。本当は無視して行きたかった。でも、
「乗る?」
女の子は無言で乗り込んだ。いよいよ出発だ。女の子は不思議そうにこちらを見ている。会話が無いので一人で来ている感じだ。僕は勢いよく海に飛び込んだ。
海面に顔を出すと、ボートには誰もいなかった。周りを見渡しても誰もいない。いったい女の子はどこに行ったのか、それとも、元々いなかったのか、その答えは誰もわからない。


✿✿研究員からのコメント✿✿
緑色のボートに乗った女の子の希薄な気配が味わえるお話でした。本当は無視して行きたかったのに乗せてあげる僕は、いい人なのか魔が差したのか。女の子がちゃんと水面に映っているか確認してしまいました。(教育普及室 細谷)

 

  選   

物語を読みくらべてみよう

第2週は、主人公の心の変化をていねいに書いた物語が目立ちました。
一つの絵に対するさまざまな物語たちは、どこか似ているようでも、
読んだあとに絵を見たときの気持ちがまったくちがってきます。
どの物語を読んでも”なんだかそんな風に見えてくる”のが不思議です。

 

                         長谷里紗さん(中学2年生)

《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

「あの日」

「水の上に立ってみたい。」そう思ったことはないだろうか。
僕はあの日、水の上に立ってた。たぶん。
あの時のことはいまいちおぼえていない。冬の日、雪がつもっていた。雪だらけの山道、僕は一人で歩いていた。進んでいくと、池なのか、水溜りなのか、かなり大きな穴の中に水が入っていた。そのすぐ近くには、金色の木が、一本はえていた。まるで、僕たちの世界とは、全くちがう世界のようだった。もちろん水の表面は、こおっていた。その時、僕は、何を思ったのか、水の上に立とうとしていた。いや、立てた。大きな穴の真ん中に立った時、まるで異世界だった。自分のうつった水の表面には、自分と、何らかの全てがうつっているきがした。
あの時の景色は今でも忘れられない。世界には、見えているようで、見えていないことがたくさんあることを知った。
そんな夢を見た。

                         齋藤愛佳さん(中学2年生)

《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

「僕の中の君」

「たった今、親友がこの世を去った。」そう伝えられた時、僕は真っ先にこの場所へ来た。
ここは、僕と親友だけの秘密の場所だ。僕たちの思い出の場所。春は、日が暮れてもずっと話していた。夏には、一緒に水浸しになったな。秋は背中を合わせて本を読んだ。つい昨日は、雪に寝そべって星を眺めたね。これからもずっと僕の隣にいると思っていた。
どうして君なの。どうして僕ではないの。どうして君が死ななければならなかったの。太陽は僕を慰めるように照っている。でも僕を慰めることができるのは君だけだよ。君はどこにいるの。この湖の中にいるのだろうか。いるのだったら顔を見せてよ。声だけでもいいから。これから先、僕はどう生きたらいいの。君に会いたい、もう一度だけ。
その時、湖に一瞬、微笑んでいる君の姿が見えた。
「君は僕の中にいたんだね。」

                          ぷりんさん(高校1年生)

《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

一段と冷え込む今日、僕は家を飛び出した。今思えばくだらない理由で飛び出してきたものだ。無我夢中で走って気がついたらここにいた。下は氷張りで無様な僕が映し出される。ここは寒い、家に帰りたい。そう思って辺りを見渡しても枯れかけた木が冷たく僕を見下ろすだけだった。なんで家を飛び出しちゃったんだろう。いつもなら暖かい暖炉の前で母さんのスープをすすっていただろうに。ふいに寂しくて涙が出てきた。もうすぐ夜が来る。ここで一夜過ごすなんて無理だろう。氷の向こうの僕の顔が歪んだ。

                         會澤椛蓮さん(中学2年生)

《オーリン MKⅣ Part2》1995~96年、油彩・キャンバス、290×200cm、ヤゲオ財団コレクション、台湾©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

初雪の降る平野で朝早くから競争が行われていました。それは坂を勢いよく滑り、最後おもいきりジャンプするのです。そのジャンプの高さで皆は競いあったのでした。
そこに一人コートもニット帽もしていない貧乏な男の子が来ました。名も知らない少年に皆は戸惑いやがてひそひそとしゃべりだしました。
周りの目を気にもとめず滑りだした少年はなんと今までの誰よりも高く飛んだのです。これに驚いた皆は少年を囲みこの上ない記録だと褒め称えました。
少年は生まれた時から一人で人とのしゃべり方も分かりませんでした。それでも何か温かみを感じ嬉しい気持ちでいっぱいになったのでした。

                        平野いろはさん(中学2年生)

《オーリン MKⅣ Part2》1995~96年、油彩・キャンバス、290×200cm、ヤゲオ財団コレクション、台湾©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

僕は世界で戦えるようなスキー選手を夢見て日々練習している。
僕が住んでいる町は雪が少ない。だけど、親友と同じ夢を見て、フォームなど必死になって努力を続けている。本格的なスキー場には年に一度行けるか行けないかぐらいの頻度だ。「おお!」親友が歓声を上げた。僕は生まれて初めての記録を出し、高く宙へ舞った。今までにない感覚。僕は今、この瞬間、自信で満ち溢れた。その後もスキー漬けの日々が続いた。そして、初めての大会。僕は緊張でいっぱいだった。これまでに無いほど高く飛んだ。体がふわっとしたような気がした。僕はいつのまにか3段の表彰台の一番上に立っていた。夢ではないか?僕は咄嗟に頬をつねった。痛い。実感がみるみる湧いてきて笑顔に溢れた。
これから僕が世界と戦うなんて誰も予想もしていなかった。

                          福永 愛さん(中学3年生)

《オーリン MKⅣ Part2》1995~96年、油彩・キャンバス、290×200cm、ヤゲオ財団コレクション、台湾©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

最近私は怒られてばかりである。理不尽な理由で怒られ謝らされる、それの繰り返しだ。そんなつまらない日々から抜け出したい。しかし何をすれば良いのか。
そんなことを思いながら私は歩き続ける。目的地などない。
そんな時目に入った。そうだ、スキーだ。昔、周りも呆れるほどよくやったものだ。だから、スキーは得意な方でもある。一発、大きく飛んで周りに見せつけてストレスを発散してやる。そう決心した私はもちろん道具などあるはずもないので全てレンタルした。借りる時不思議そうな顔で見られたがスキーをすることに興奮していた私はそんなことに気づくはずもなかった。
思いっきり勢いをつけ飛んだ。ん、なんか感覚が違う。そして異常なまでの視線を感じる。
そう、そこには雪がなかった。

                         田辺春音さん(中学2年生)

《赤いボート(想像の少年たち)》2004年、油彩・キャンバス、200×186cm、個人蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

僕たちは今、手作りの船に乗って向こう側の岸へとすすんでいる。自分たちの手で作った船ということもあって、乗れるのはせいぜい六人ほどだが、沈むことはなく、しっかりと船の役わりをはたしている。
ここは赤道付近に位置する南国で、一年中朝から晩までとてもあつい。でも船に乗って川を渡っている時は不思議なことに、少しだけすずしく感じる。まわりにある水のおかげだろうか。
そしてなぜ、僕たちが船で向こうの岸へ行こうとしているのかというと、食料となる、ヤシの実をとるためだ。僕たちが住んでいるほうにはヤシの木があまり生えていないため、わざわざむこう岸まで渡らないといけない。でも、このヤシの実はとてもおいしい。
僕たちは、毎日、ヤシの実をとるために船で向こうの岸へとわたっているのだ。

                          関 玲音さん(中学2年生)

《ピンポン》2006~08年、油彩・キャンバス、240×360cm、ローマン家©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

「一人の男」

俺は今、日本からはなれたところに暮らしている。日本の東京と比べればビルも無いしコンビニだってない。でも東京とは違うところがある。それは家の近くに、小さな卓球台があるところだ。俺は毎朝起きてからすぐにここに来る。家族は生まれたときからいなくて、友達もいない、誰とも話したこともない。だから俺は、いつも一人で卓球をしているんだ。
そんなある日、いつものように一人で卓球をしていたら、一人の男の人が急にボールを返してきた。俺は驚きながらも相手に返した。俺らは何回も打ち合った。この日は楽しくて時間を忘れて打ち合っていた。
それから次の日も、その次の日もその人とボールを打ち合った。やがてその人とは、人生で初めての「友達」というものになった。俺はこの時、近くに喋れる人がいることが、どんなに幸せなのかと初めて思った。

                         河田嶺至さん(小学2年生)

《スピアフィッシング》2013年、油彩・麻、288×200cm、作家蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

僕は昔から漁をして魚を食べてた。僕の船は世界にたったひとつしかないエメラルドグリーンの船だった。ある日僕はかわいらしい女性と会って、やがて僕たちは愛し合うようになった。時が経ち僕たちは婚礼の式をあげた。一ヶ月ほどたった頃、僕は妻と漁をしに行った。そして、魚をたくさんとってたくさん食べた。彼女と結婚して五年間たってその日の朝、妻が唸りだした。その一時間後、救急車が来て病院までとばした。そしてそのまた一時間後、かわいらしい男の子の赤ん坊が生まれた。十三年ほど過ぎた頃だったかな、その息子と初めて漁をしたのは。息子は僕のオレンジ色のウエットスーツを受け継いでくれた。漁の腕前はすごいもんだ。

【第3週】は、62通のご応募がありました!ご応募ありがとうございました♪
審査の結果、今回は入選作品13点、そのうち「研究員のイチオシ!」作品3点を選出しました。
今週は「ピーター・ドイグ展」を担当した桝田主任研究員も審査に加わっています。
【第4週】もステキなお話をお待ちしています!

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第3週の「研究員のイチオシ!」作品が決定しました

 

                         北澤陽菜さん(高校2年生)

《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

また来たのか。君は毎日俺に会いに来ては友達ができないだとか、親に叱られるだとか、聞かされるのはこれで何回目だ…?こちらの身にもなってほしい。君は俺に比べたら充分幸せ者じゃないか。俺なんて友達をつくるどころかこの凍った湖から出ることすらできないのに。
そんなことを考えながら黙って彼の話を聞いていると、不意に彼が「僕は君になりたい…。」と言った。あぁ、そうか、最初からこうすれば良かったんだ。俺は彼に手を伸ばす。……「なぁ、湖の中の居心地はどうだ?」


✿✿研究員からのコメント✿✿
少しこわい結末から星新一のショートショートを思い出しました。絵は入れ替わる前なのか、それとも後なのか。それによって見方が変わりますね。(企画展室 桝田)

 

                         谷本優真さん(小学4年生)

《赤いボート(想像の少年たち)》2004年、油彩・キャンバス、200×186cm、個人蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

このジャングルには、時々「人間」と呼ばれる生物がやってくる。その「人間」とやらは、実に奇妙だ。なんたって、バランスの取りにくい二足歩行なんだ。しかも歩くだけじゃなくて、走ることまでできる。僕に追いかけられて、逃げ切れるほど速くはないけど。
さらに、やる事も奇妙だ。このジャングルをあんな風にしちゃうなんて。ジャングルは、最初からあんな奇妙じゃなかった。あれは、「人間」がゴミを捨てたりして荒らしたせいなんだ。おかげで、葉の色も幹の色もおかしくなって、木もぐねぐねと曲がり始めた。最近は川まで緑色に濁ってしまった。いずれ茶色になるだろう。
おっと、自己紹介が遅れたね。僕は、ジャガー。水の中でも速く泳げるし、地上も速く走れる。だから、僕は見張っているんだ。今日もまた「人間」が舟に乗ったまま、こちらを見ている。あいつらがもし上がってくるなら、追っ払ってやる。なぜかって、それは僕のすみかを汚すからさ。


✿✿研究員からのコメント✿✿
絵を見る視点を語り手(ジャガーの目線)として捉えているところが良いですね。「人間」たちも不安そうに見えます。(企画展室 桝田)

 

                          わたしさん(中学2年生)

《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》
2015年、水性塗料・麻、301×352cm、作家蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

「助けなきゃ、僕の大事な友達!」足音を忍ばせてそっと近づく。そう、あれはほんの三十分前のこと。僕は毎日の日課である散歩をしていたんだ。すると突然後ろから何か大きな物がぶつかってきた。僕はその場に倒れ込み、気がついたら幽霊になっていた。訳も分からずその場に立ちつくしていると、どこからかサイレンの音が聞こえてくる。「○○近くで野生のライオンの目撃情報がありました。みなさん気をつけて下さい。」僕の友達がいる場所の近くだ、そう思って急いで駆けつけると、最悪なことにすでにライオンはそこにいた。もし彼がすぐ近くにライオンがいることを知らなかったらどうしよう。彼が襲われるのだけは阻止しなきゃ。でもドアのすぐ前には腹を空かせたライオンがいる。僕はそっと後ろから近づく。幽霊になっても何故か気配を消そうと必死になってしまう。そのとき、ドアがゆっくりと開き始めた。待ってくれ、ドアの前にはライオンが…「危ない!」


✿✿研究員からのコメント✿✿

突然、透明人間になった僕。友達を助けるためにライオンに近づく、緊迫した場面の臨場感がよく伝わります。ドアの小窓には確かに「友達」らしき人影が。この後どうなるのか気になりますね。(教育普及室 浜岡)

 

  選   

読む前に絵をじっくり見てみよう

お話に目をとおす前に、自分の眼でドイグさんの絵を見てみましょう。
できれば美術館の展示室で本物の作品を。すみずみまで観察するといろいろな発見があるはず。
そんな点と点とがつながって、あなただけのストーリーが紡ぎだされていきます。
さて、今週の入選作品をお楽しみください!

 

                         岩竹まえさん(中学3年生)

《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

彼は反応が鈍いせいで、またしても仲間の目にした美しきものを見逃してしまった。それはユキウサギだ。仲間が歓声をあげる中、彼だけはそちらを振り向けずにいた。結局その姿を捉えられなかった。
今朝の出来事を思い返すうちに、彼は自己嫌悪に陥ってゆく。あてもなく歩き続け、山を越えた先の小さな湖に辿り着いた。気分が沈むと必ず来る場所だ。冷たい湖にそっと足を踏み入れた。いつも通りに湖の真ん中まで進んだ。
突然、強い北風が吹くと、彼は別世界にいた。
そこには黒く澄んだ瞳をもち、凛々しく真っ直ぐに立っている男がいた。寒い冬の柔らかな陽光に照らされて眩しく輝いていた。
男に見入っていた彼はふと我に返った。その男は湖面に映る自らの姿だったのだ。彼は純真さという自分の美点を思い出した。そして、はにかんだように微笑み、しばらく湖の中に立っていた。雲間から暖かい光が降り注いできた。

                          サキコさん(中学3年生)

《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

自分を映すものが嫌いだった。鏡も水面も。
あの日、愛犬のハルは水難事故で亡くなった。でも、僕がもっと強かったら死なずにすんだ。その日から自分を映すものが嫌いになった。ちっぽけで弱い自分に気付いてしまうから。もう泣かない。そう思っても涙を溜め、落ちないように我慢している自分が水溜りに映る。あの日から何も変わっていない。かっこ悪い。
ある冬の日、気付くとハルが亡くなった池の浅瀬に足を踏み入れていた。またちっぽけな自分の姿を水面に見た。大好きだったハル。ごめんね。ごめんね。自然と気持ちが溢れてきた。目の前がぼやける、違う、これは水面が揺れているからだ。僕が泣いているんじゃない。でも、溢れた涙は止まらなかった。ふと顔を上げるとまるでさっきとは違う景色に見えた。池が涙を吸収し寄り添ってくれているような気がした。水に映る僕も少し強くなったような気がした。
ねぇ、ハル、僕もう泣かないよ、ホントだよ。

                      はしもとみちるさん(中学2年生)

《オーリン MKⅣ Part2》1995~96年、油彩・キャンバス、290×200cm、ヤゲオ財団コレクション、台湾©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

ある日あったスキージャンプ大会。みんな大会がおわり、帰り始めたころ突然とんだ男の人が1人いた。しかも、大会で優勝した選手よりもあきらかに高くとんでいる。まだその場に残っていた人は目をみひらいた。しかし、その飛んでいる、ういている本人はというととても無表情。一回とんだあと、何もなかったかのようにその場を去っていった。それを見ていたこの大会で優勝した男は、何かを思い出した。三年前、一番のライバルだった奴だ、と。その男は突然姿を消し、そして今、もっともっと上達して、帰ってきたのだと思った。彼の心は燃えたことだろう。

                         斎藤美月さん(小学6年生)

《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》
2000-02年、油彩・キャンバス、196×296cm、シカゴ美術館©Peter Doig. The Art Institute of Chicago, Gift of Nancy Lauter McDougal and Alfred L. McDougal, 2003. 433. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

「鏡の湖」

太陽が沈み星が点々と光りだしたとき、一軒の家の中に光がともった。
森は黒くその家は特に目立っていた。中には、家に住むおじさんとその友達がいた。
「これから何しようか」
おじさんは聞いた。友達との時間は無駄にしたくはない。しかし、やることが思いつかない。
「一息入れて散歩でもしよう」
友達が言った。
二人は家から続く長い橋を渡った。湖には、たくさんの星が鏡のように映し出されている。
二人は門を出て歩き出した。外は肌寒い。しかし、夜とは思えない明るさ。
「きれいな景色だね」
「冬にしか見れない景色だよ」
会話をしていたらもう門に戻ってきた。その時二人は驚くものを見た。
遠くの方にオーロラが輝いていたのだ。何色も色を変え、湖もその様子を映していたので湖まで虹色に輝いていた。
その様子を二人はオーロラが消えるまで眺めていた。

 

                         水性ペンさん(中学2年生)

《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》
2000-02年、油彩・キャンバス、196×296cm、シカゴ美術館©Peter Doig. The Art Institute of Chicago, Gift of Nancy Lauter McDougal and Alfred L. McDougal, 2003. 433. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

手が届きそうな程の星が輝く夜のこと、突然現れた細くて長い道を、動物達は距離をとって見つめます。ここは世界の片隅にある、自然豊かで静かな場所。葉の色が変わっても、葉が落ちても、それはそれは美しい景色なのです。一年中変わらない澄んだ空気。しかし今夜はいつもと違う、何かが起こる、そんなことを動物達はささやいています。道が現れると同時にオーロラが空を覆い隠し、まるでこの世界ではないようです。すると道から、2人の老人が歩いてきました。
「やっとだ。やっと着いたぞ!もうこの道何年歩いてきたんだ?10年、20年、30年…。」
「子どもの頃に別の世界に行ってみたいと言って、方法を見つけるまでは早かったがなあ。」
「こっちの世界は魔法使えるやつおらんらしい。」
「ほう、色々と不便そうじゃな。」
ここは世界の片隅にある、自然豊かで静かな場所。そして、この世界と別世界をつなぐ道の、入口である。

 

                         澤田結奈さん(高校1年生)

《ラペイルーズの壁》2004年、油彩・キャンバス、200×250.5cm、ニューヨーク近代美術館©Peter Doig. Museum of Modern Art, New York. Gift of Anna Marie and Robert F. Shapiro in honor of Kynaston McShine, 2004.All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

ある夏の日に、少し年のとった男性が橋を渡っている。外は晴れているのに、なぜかさをさしているのだろうか。今にも道に倒れてしまいそうだ。この男性は、奥さんとケンカをしてしまい、家を出てきてしまい何か体力をつけるために食べものをさがしている。これ以上、日に当たると倒れてしまいそうなので、ゴミ箱に捨ててあったぼろぼろのかさをひがさがわりにして歩いている。どうしようもないからこのままUターンして家に帰ろうか。と自分の影をみながら考えているそうだ。

                         一般生徒さん(中学2年生)

《ラペイルーズの壁》2004年、油彩・キャンバス、200×250.5cm、ニューヨーク近代美術館©Peter Doig. Museum of Modern Art, New York. Gift of Anna Marie and Robert F. Shapiro in honor of Kynaston McShine, 2004.All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

久しぶりにここに来た。ここは僕が子供の頃に住んでいた場所だ。この場所があんまり変わってなくて少し安心した。でも子供の頃を思いだすと、少し、ほんの少しだけ寂しいような気がした。ここから見える景色も相変わらずきれいだった。けれど子供の頃より儚く見えた。僕は思い出に浸りながら少し歩いた。今の生活や環境に不満があるわけではない。むしろ楽しいくらいだ。子供の頃が特別僕の人生で充実していたとも思わない。けど僕はまたここに来ようと思った。

                         海野愛乃さん(中学2年生)

《ピンポン》2006~08年、油彩・キャンバス、240×360cm、ローマン家©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

火を噴いたゴリラがこちらに突進してくる、そして飛びかかる!なんていうシーンで目が覚めた。ふと上を見るとダレカが心配そうにのぞき込んでいる。いや正確には彼の透明な顔がのぞき込んでいるような気がした。
ダレカに会ったのは50年前。まだ10才だった私は1人で卓球をしていた。しかし1人では寂しかったから「誰か遊ぶ人いないかな」と呟いたのだ。もちろん誰もいないと思っていたから「ここにいるよ。ダレカっていうんだ。」と返事が返ってきたときには驚いた。しかしすぐに透明人間の子供だという彼と私は仲良くなったのだ。
「今日も卓球、やるかい?」いつものように彼は聞いてきた。いつからだろうか。毎朝彼とこうして過ごすのが習慣になっていた。そしてなぜかそうすることが無性に嬉しかった。もしかしたら変わらない友情を感じれるからかもしれない。
私達は裏庭の思い出の詰まった卓球台へ行くといつものように、真剣にでも楽しく打ち合い始めた。

 

                        まーちゃんさん(中学1年生)

《スピアフィッシング》2013年、油彩・麻、288×200cm、作家蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

ここは夢の世界。人は寝ている間、夢の世界に来ている。そして、目が覚めると、もとの世界へと戻っていく。境界線を越えて、帰るのだ。たいていの人は、自分でも気づかないうちに帰っていくから、境界線がどこにあるかを知らない。知っているのは、番人だけだ。番人は、自分で帰らない人たちを、帰らせる仕事をしている。

私はもう何日もここにいる。気がついたら、ここに立っていた。なぜか、オレンジ色のウェットスーツを着ている。しばらく立ちすくんでいた私は、近くに島があることに気がついた。もしかしたら、誰かいるかもしれないと思って、島に上がった。しかし、島には誰もいなかった。島を一巡りした後、私はボートに戻った。すると、ボートの上に女の子が座っている。彼女は、黄色いコートを羽織り、うつむいている。何故だかわからないが、彼女を追い出そうとは思わなかった。

                          おはなさん(高校1年生)

《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》
2015年、水性塗料・麻、301×352cm、作家蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

「もう動けねー。」俺は元々動物園に居たライオンだ。毎日ご飯を与えられ、寝て、人間に見られるそんな毎日が嫌になっていた。ある日俺の飼育員がいつものようにご飯を持って来た。だがそこには俺の大好物の馬肉が無かった。俺は毎日イライラしていたものが爆発して脱走してしまった。あの時は、無我夢中で走っていたから何も思わなかったが今後悔している。後先も考えずに脱走してしまったこと。結果今俺は腹ペコで動けず、ヘトヘトだった。帰りたいと思ってもここがどこかも分からない。俺はここで死ぬのかと思ったら怖くなった。「神様。もうあんなこと思わないから帰してくれ…。」俺は気づかなかった。後ろから聞こえてくる足音に。

 

【第4週】は、98通のご応募がありました!ご応募ありがとうございました♪
審査の結果、今回は入選作品16点、そのうち「研究員のイチオシ!」作品4点を選出しました。
物語の募集は終了しましたが、これからも「ピーター・ドイグ展」をはじめ
東京国立近代美術館の企画をお楽しみいただけたら嬉しいです。

 ⇒応募の方法はこちら

 

第4週の「研究員のイチオシ!」作品が決定しました

 

                         緑川修平さん(中学1年生)

《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

僕の住む町は、寒い小さな町だ。自然が豊かで大人はチーズとワインを楽しんでいる。子供たちは、毎日、温かいミルクとパンを楽しんでいる。この町は森が多く町の至る所に木々がありとても静かな町だ。そのはずれに小さな湖みたいな池がありその池の近くを毎日散歩することが日課である。そこによく見かけるおじさんの行動がいつも気になっている。凍った池を足でなぞっている。僕はその姿が楽しそうにも見えなにかを打ちけそうとしているようにも見えていた。それが不思議で気になってしまう。別に見なければいいものを。でもやっぱり気になってしまう。この光景を何度見ただろうか。声をかけようとするが聞きそびれている。もし声をかけたら毎日の散歩がかわってしまう。明日もこの寒い朝におじさんは立っているだろうかなどと思い何となく散歩が楽しみになってきている今日この頃。


✿✿研究員からのコメント✿✿
「気になるけど話しかけられない」という小さな葛藤を、僕が楽しんでさえいる様子が面白いですね。この絵が僕の眼に映る光景だと思うと、おじさんが気になって自然とじっくり見てしまいます。(教育普及室 浜岡)

 

                        野村遼大郎さん(中学1年生)

《ラペイルーズの壁》2004年、油彩・キャンバス、200×250.5cm、ニューヨーク近代美術館©Peter Doig. Museum of Modern Art, New York. Gift of Anna Marie and Robert F. Shapiro in honor of Kynaston McShine, 2004.All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

いつも男は漁が終わった午後過ぎにトラガレット・ロードを歩いている。この時間の風は発電所の鼻を刺すような臭いを海へ運んでくれる。車道の向かいにメソジスト教会と治安裁判所があり、その先の街路の角に目当てのレストランがある。今日みたいな日はテラス席からグリルを眺めつつ珈琲の香りを楽しむのが最高だ。
脇のラペイルーズ墓地の古びた墓や共同墓が雑然と並んでいるのが壁越しに目に入る。子供の頃、暗くなったこの歩道で祖父母の手を握ると優しい笑顔があったのを思い出す。その二人も今はこの壁の向こうにいる。海に向かって吹く乾いた風にスティールパンの陽気な音色が重なった。今日は帰りに花束を買おう。


✿✿研究員からのコメント✿✿
壁沿いの道を取り巻く建物と匂い、音、空気へと情景が広がりますね。お洒落アイテムがたくさん出てきて小説のワンシーンのようです。(教育普及室 細谷)

 

                         星野夏葉さん(中学3年生)

《スピアフィッシング》2013年、油彩・麻、288×200cm、作家蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

「お嬢さん。ここの魚を食べると体の中の悪いやつが消えて元気になるんだ…元気になりたいんだろう?ほら、これを食べるんだ…」
「はい…」

幼い頃からひ弱だった私は人生の殆どを病院で過ごしてきた。けれど今日の夜、このオレンジ色の男が突然私の目の前に現れて、こう言った。
「病院から出て元気になりたくないか?」
正直、病院ばかりの生活にうんざりしてた私は、この男の言葉を信じて、病院から逃げ出してきた。
そして今、この魔女のスープみたいに気味の悪い湖にやって来た。

「でもその魚…本当に体にいいんですか?こんな綺麗とは言えない湖にいる魚なんて食べられません。」
「そんなこと言うんじゃない。食べるんだ…」
「そんな…私嫌です。」
「食べるんだ。」
「怖い…」
「口を開けろ…」
「はい…」
パクっ…ウエっ
何この味。毒みたい。あっ、あっ…あれ?目の前が暗くなっていく…

「お嬢さん。手術無事成功しましたよ。」
目を開けるとそこは病院だった。


✿✿研究員からのコメント✿✿
良薬は口に苦し。あやしさ満点なのに、謎の男と少女の会話はどこか可笑しくて何とも不思議なお話です。毒の味がするという魚はどんなビジュアルなのか気になります。(教育普及室 浜岡)

 

                           すーさん(中学3年生)

《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》
2015年、水性塗料・麻、301×352cm、作家蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

見えているものだけしか信じない?そんな君に良いモノをあげよう。これだよ、この玉を通して世界を見てごらん。ね、色々見えてきたでしょう?わからない?じゃ、教えてあげる。黄色い建物のそばを歩いている男の人。よく見ると透けてるよね。あの人、もう亡くなっているんだよ。何か未練があったのか、まださまよっているんだ。あっ、目の前にライオンがいるね。傷だらけだし相当弱ってるね。魂がぬけかけている。痩せているし、食べ物がなくて町まで来ちゃったのかな?扉の内側にも人が見えるって?玉がなくても見えるはず。輪郭もしっかりしているし、彼らは実体で、生きている人だよ。
これでわかったよね、この世は実体のものと実体じゃないものがまじりあってるんだ。あなたの周りにも…


✿✿研究員からのコメント✿✿
実体のあるものとないもの、見えているものといないもの。一枚の絵の中でいくつもの層が重なっている感じがお話で楽しめました。(教育普及室 細谷)

 

  選   

さまざまな見方を試して鑑賞を深めよう

ドイグさんの他の絵を見たり、絵の制作方法を調べたりしたあとに
ふたたび見なれた絵に向き合うと、見え方が変わってきて新たな発想が生まれます。
そうやって鑑賞を深めてみるのも面白いですよ!

 

                         梶山詩苑さん(中学1年生)

《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

真冬のある日、雪がしんしんと降る中で男の子が湖の上にたたずんでいました。私は、こんなに寒いのに何をやっているのかと思ったら、ふと違和感を覚えました。こんなに寒いのにもかかわらず、湖の水が凍っていなかったのです。男の子の立っている場所の水はうずを巻いていて、水は凍っていないことを表していました。それにもう1つ不思議なことに気づきました。いつもの湖よりも明らかに水深が浅いのです。もとから水深が深い湖ではありませんが、少なくとも男の子の腰の位置までは水があったはずです。おそらくこの男の子はそれらの謎が気になり、湖に来たのでしょう。私もこの謎が気になったので、行ってみることにしました。湖にはまだ男の子がいたため、まず男の子の所に向かおうとした瞬間男の子が消えてしまいました。驚いた私は、下を見ると水はいつもの水深にもどっており、私はぬれた服を着がえようと急いで家にもどると湖は凍っていました。雪は吹雪に変わり辺は一層寒くなりました。

                         渕田葵愛さん(中学1年生)

《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

ある日、由弦(ゆずる)は山に囲まれた村の別そう地にやってきた。由弦は毎年のように別そう地に来ている。だが、今回珍しい水たまりがあった。そして、水たまりを見て疑問に思った。なぜあの水たまりは、あんなに太陽が反射して光っていて、風がおだやかに水たまりをゆらしているのか。自然でこんな美しい現象が起こるのかと由弦は思った。歩いて実際に見てみることにした。水たまりの中を入ってみたいので、長靴をはいた。水たまりの中に入ってみると、思ったよりもまったくイメージが違っていた。ものすごくきれいでキラキラ輝いていた。風もちょうどよく吹いていてまるで水たまりと風が美しい音色を奏でているみたいだった。それを感じた由弦は感動しておもわず声を出した。
「なんてきれいなんだ。人生の中で初めて見た芸術作品だ。」と言った。
由弦は、この現象を「世界一美しい金の輝き」と名付けた。

 

                           ぴとさん(高校3年生)

《ブロッター》1993年、油彩・キャンバス、249×199 cm、リバプール国立美術館、ウォーカー・アート・ギャラリー©Peter Doig. National Museums Liverpool, Walker Art Gallery, Presented by the John Moores Family Trust 1993. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

広い水たまりの淵へ向かう

はらはら

「ああ、だからか」

ゆらゆら
行き場がなくて、呟く
ぽつ

一方向
なんでこんなに綺麗なんだろう

たぷり

全人類が好きなようでずっと1人を好きでいる

「わたしはもっと、自由な気がする」
どぷ

じわり

水が沁みてくる足もとが許せない

「帰ろう」

はらはら
はらり

 

                          猪飼 菫さん(小学3年生)

《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》
2000-02年、油彩・キャンバス、196×296cm、シカゴ美術館©Peter Doig. The Art Institute of Chicago, Gift of Nancy Lauter McDougal and Alfred L. McDougal, 2003. 433. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

森の湖の近くに古いお城が建っていました。寒い冬の夜です。雪が降っています。
遠くでふくろうがやさしい声で泣いています。
二人の男の人がお城の裏口に出てきました。二人ともコートを着ています。二人はやさしいえがおで、旅人をでむかえます。
旅人は、いろいろな国を周って、春に植える種をくばっています。毎年、オーロラが夜空に見える冬の終わりに、こっそりやってきます。
「どうぞ。」二人は旅人をお城にそっと招き入れます。
三人はお城に続く細い道を歩いていきました。

 

                         竹内結菜さん(中学1年生)

《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》
2000-02年、油彩・キャンバス、196×296cm、シカゴ美術館©Peter Doig. The Art Institute of Chicago, Gift of Nancy Lauter McDougal and Alfred L. McDougal, 2003. 433. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

2020年に海に沈んだ幻の「神のオーロラ島」の物語。この小さな島国オーロラ島でしか見られない星空は「神の天の川」と呼ばれ、その姿は、美しくゆらめくオーロラに蛍のようにきらきらと輝く沢山の星が夜空一面に広がっていました。そこに存在感のある月の姿もありました。そして、「神の天の川」には「カメレオン海」と呼ばれる海にその姿を映し、ここに訪れた人々は「第2の宇宙みたい」と夜景を満喫していました。そして、もっとこの国を知ってもらおうと、国王のクリスが「カメレオン海」に「神の天の川」に沿って橋をかけました。その後、観光客が増え、経済が発展しました。そしてこの国は「宇宙の国」と呼ばれ有名になりました。やがて、だんだん地球温暖化が進み、オーロラ島は沈んでいきました。そして、2020年の1月にとうとう島は完全に沈み、「カメレオン海」の中央には、橋だけが残りました。そうしてオーロラ島は、「幻の神のオーロラ島」と呼ばれるようになったそうです。

 

                           橋本さん(高校1年生)

《ラペイルーズの壁》2004年、油彩・キャンバス、200×250.5cm、ニューヨーク近代美術館©Peter Doig. Museum of Modern Art, New York. Gift of Anna Marie and Robert F. Shapiro in honor of Kynaston McShine, 2004.All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

「元気かな。」俺は今、久しぶりに実家に帰っている最中だ。
夏の暑い中、小さい頃の記憶を思い出しながら、足を進める。
今では、うるさいと感じるセミの鳴き声もなんだか良いものだと思える。
ジリジリとした暑さのせいで汗が止まらない。せかす気持ちと裏腹に足が思うように動かない。なぜかこの景色に目をうばわれてしまったからだ。
「変わったな。」また俺は足を進めた。

 

                         利倉遙日さん(中学2年生)

《ラペイルーズの壁》2004年、油彩・キャンバス、200×250.5cm、ニューヨーク近代美術館©Peter Doig. Museum of Modern Art, New York. Gift of Anna Marie and Robert F. Shapiro in honor of Kynaston McShine, 2004.All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

私は世界中を旅する写真家だ。今、とある町のはずれにある港町におとずれている。船が行き交うだけあって市場には新鮮な魚たちが沢山並んでいた。私は市場の活気あふれる人々を写真に収めたあと、すこし歩いていくうちに沢山の写真を撮ることができた。辺りを見渡すと橋のような大きな一本道が私の目にとまった。ここでは不思議な感覚につつまれながら、あるおじいさんに目線が集中した。空は晴れているのにかさをさしている。しかも、そのかさは女もののぼろぼろなバラ柄のかさ。彼は人の目線をきにもせず真っすぐ歩いている。すこし彼の姿を目でおっていると急にぴたっと彼は止まり、そうするとこちらに手まねきして私を呼んだ。そして彼はいきなりおっとりとした口調でしゃべりだした。
「この壁は思い出なんだ。ここを通った人々のさまざまな思いが染み込んでいるんだよ。」そう言うと彼はかさをさして歩いていった。私は彼の思い出と彼の後ろ姿を写真に収めた。ここには私の思いでも染み込んでいる。

 

                                  かわさん

《ピンポン》2006~08年、油彩・キャンバス、240×360cm、ローマン家©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

俺はスポーツが好きだ。なんてったって、自慢の筋肉があるからな。長距離走は苦手だが他の種目には自信がある。今日は友達と卓球だ。卓球を外でってなんか変な感じだが、久々だからすごくワクワクする。でも、やってみたものの、俺がサーブをしてから球が戻ってこない。力強くやりすぎた。戻ってくるまで弱く打つ練習だ。

 

       本当は殻に閉じこもっていたいオカモノアラガイさん(中学3年生)

《スピアフィッシング》2013年、油彩・麻、288×200cm、作家蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

僕はいつもと同じ時間にいつもと同じように魚を捕りに行った。何か違うことがあったとするなら上弦の月だったことかな。浜についたら池の近くに小学生くらいの黄色い服を着た女の子が座ってた。こんな夜中になんでひとりでいるんだろ…と思いながら、心配だったので一声だけ掛けた。「お母さん達、心配するよ?早く帰りなね」と。すると「うん」とだけいって立ち去っていったから僕はすぐにいつも通りに潜った。帰り道、女の子がいなくなっていたので安心していたら、池に浮いているものに目が行った。黄色の服。僕は走って帰った。女の子はどんな顔だった?どこへかえっていった?それだけが思い出せない。

                         吉井麗実さん(高校1年生)

《スピアフィッシング》2013年、油彩・麻、288×200cm、作家蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

舟の方にオレンジ色の男の人と女性がいる。実はこれ結婚プロポーズのシーンだ。男の人は女性に結婚指輪を見せてプロポーズしようとして答えを待っていたところ、女の人がはいと言った瞬間突然突風が吹いて指輪が飛ばされて海に落ちてしまった。あれないと思い周囲を見回したときに指輪が浮かんでいる。その時だった。大きな魚が指輪を食べてしまう。男の人は指輪を取り戻そうと大きな魚を倒しに槍とロープを持ち、海に潜った。すると魚が目の前にいてまず槍を魚の表面に刺してそれからロープで巻き付けた。しばらくすると魚が弱ってきて魚が今まで食べてきたであろうものを口から出した。指輪は無事見つかった。男は神様にお礼をして女性のほうに向かった。見つかったよと言うと女性はなんて勇敢だと涙を流した。そしてあの後、夫婦は幸せに暮らしたとさ。

                         江原寧々さん(中学3年生)

《スピアフィッシング》2013年、油彩・麻、288×200cm、作家蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

上は「天国」
下は「地獄」

「あなたはどちらへ行くつもりなのでしょうか。」
黄色い死神が聞いてきた。
「私の格好を見ての通りですよ、察して下さい。」素潜りの格好をした赤い男が呆れた様子で、黄色い死神を嘲笑する。
黄色い死神は赤い男が船の底に行くと察した。
黄色い死神はふと思った。(鎌で仕留めてやろう…人間は邪魔だ…)

1週間後、黄色い死神が変わり果てた姿で陸地に打ち上げられてているのを近隣の住民が発見した。
そう、あの赤い男は素潜りをする理由で船に相席した訳では無いのだ。20XX年の小さな三日月から来た素潜りをする人に変装した宇宙人だったのである。
赤い男は黄色い死神を殺す前にふと思った。(銛で仕留めてやろう…過去の人は邪魔だ…)
黄色い死神の思考がはたらく前に仕留めてしまったのである。

 

                         染井寿野さん(高校2年生)

《ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)》
2015年、水性塗料・麻、301×352cm、作家蔵©Peter Doig. Collection of the Artist. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120

I氏は目が覚めると、自分の体がないことに気がついた。いや、I氏の体は消えて、透明人間になっていたのだ。
「こいつはしめたぞ。」
I氏はそう言うや否や、さっさと町へ出て行った。今のI氏の頭の中はあれやこれやとイタズラが浮かんでくるばかりだった。
町は海に近いところにあったため、灯台が町の近くに立っていた。だが、この灯台は普段、関係者しか立入りができなかった。I氏も灯台に登って町を見おろしたいと思っていた。そこでI氏は灯台に登り、町を見ると、黄色い家の傍に橙の毛むくじゃらがいるのを見つけた。
「あいつは獅子じゃないか」
I氏はすぐに灯台から降りて、黄色い家へ向かった。行く途中、I氏には獅子の尾を摑み、驚かすことを思い付いた。I氏は獅子の後ろからそっと近付き、にんまり笑って…。
朝、起きたI氏の手に獅子の人形がいた。