開催中の展覧会

  • 2021.7.17 - 9.26 *臨時休館延長に伴い終了しました
  • 所蔵作品展

たんけん!こども工芸館 ジャングル⇔パラダイス

Crafts Museum for Kids & Adults: Welcome to the Jungle!

工芸の森でエネルギーチャージ

小川雄平《陶製黒豹置物》1933年

作品リスト 参考図書リスト

大切なものごとを思い出させてくれたおうち時間。けれど世界は果てしなく、依然私たちの憧れをかきたてます。どこかへ行きたい―そんな時はぜひ工芸館へ。

この夏のテーマはジャングル、そしてパラダイス!

工芸の森を探検しながら、今ふたたび、生の息吹を体感しませんか?

子どもから大人まで楽しめるプログラムも用意してお待ちいたしております。

ジャングル?パラダイス?ジャングル⇔パラダイス!

“ジャングル”と聞いてどんなイメージが浮かびますか?

今なお神秘的に響くこの言葉の由来はヒンディー語のjangal。ちょっと意外ですが、歴史的にインド語系でこの言葉は熱帯雨林などの特定の生態系を指すものではありませんでした。ある本ではジャングルの定義を次のように伝えています:「5年、ひょっとするともっと長く荒地だった場合、そこはジャングルと呼ばれる」。

もっとも、荒れたと見るのはひたすら人間の都合です。ジャングルの勢いは人間を圧倒し、手つかずというよりは手をつけられないというのが正直なところ。ジャングルを眺めながら、ふと、畏怖に似た感覚がよぎったとしても不思議はありません。

ひるがえって工芸に表された自然はどうでしょう。

もようやかたちと成すために整然と刈り込まれた様子はむしろ人工の極致。そのさまは鬱蒼とした森林とは対照的な朗らかさで、たとえるならば“パラダイス”――「囲まれた園」を意味する語のほうがしっくりとくる気もします。

けれどそう簡単に割り切れないのが工芸の奥深さです。どれだけ簡略化し、現実ではありえない組み合わせや、また全然別の物質を用いたとしても、工芸は抜群のデザインと技術とによって、モチーフに選んだ姿かたちや性質までをくっきりとさせるのです。そうして仕上がった“自然”には、もつれるほどに伸び、増え、広がる生命力への憧れや、時には呪術的な願望がこめられ、作品の存在感を際立たせてきました。

自然と人工とのあいだを行き来しながら美を磨き、私たちの生活と支えてきた工芸の魅力を味わいましょう。そこにはきっと、明日への活力に繋がる豊かな世界観が広がっているに違いありません。

「ジャングル⇔パラダイス」展イベント

イベント詳細はこちら

楽しみ方いろいろ

小川雄平《陶製黒豹置物》1933年

・マップを手にジャングルたんけん!

探検の足取りを楽しく記録できるガイドマップは2種類の解説(ワクワク編/探究編)付きです。一緒に組み立て式のジロメガネ(紙製)もお配りします。簡単な仕掛けですが、案外よく見えるとのウワサ…。

 

 ・ジャングル図鑑byキッズ

過去のこども来館者のワークシート「工芸図鑑」から、とっておきのジャングル&パラダイスをご紹介します。絵と言葉で作品を紹介するこどもたちの鋭い視点は思いがけないほど。ワークシートを微笑ましそうに眺めていた大人たちが「!!!」を浮かべながら会場に戻る光景もしばしばでした。

実は展覧会名の「たんけん!こども工芸館」には、こどもたちの「工芸観」、彼らのラディカルな鑑賞手法で工芸をみませんか?というメッセージもこめているのです。

 

・#ジャングルパラダイス

工芸館でのひととき、または散歩中、あるいは自宅の庭や瓶に差した花々にも、ジャングルでパラダイスな景色が潜んでいるかも。あなたが出合った「#ジャングルパラダイス」を発信し、インターネットの世界に生命力に満ちた美とパワーを広げましょう。

たんけんポイント

ジャングルナイト

大島如雲《鋳銅大膽瓶》1907年

ジャングルの夜にうごめく命のしるし。 目を凝らし、耳をすませて歩を進めよう。

アニマルハマル

稲垣稔次郎《木綿地型絵染壁掛 虎》1960年

怖かったり可愛かったりちょっとおとぼけだったり。

どの動物たちも工芸のかたちにぴったりはまり、きっちりカッコイイ。

満開!

田嶋悦子《cornucopia 08-Y2》2008年

花、花、花、ときどき実。 作り手も鑑賞者も魅了してやまない植物たちの最高の姿を満喫したい。

 

*会期中一部展示替えがあります。

(前期:7月17日~8月22日、後期:8月24日~9月26日)

開催概要

会場:
国立工芸館(石川県金沢市出羽町3-2)
会期:
2021年7月17日(土)- 2021年9月26日(日)
*臨時休館延長に伴い終了しました
臨時休館:7月31日(土)- 9月26日(日)
開館時間:
9:30 - 17:30
※入館は閉館の30分前まで
*夜間開館日:
7月23日(金)、24日(土)、30日(金)、31日(土)
8月6日(金)、7日(土)、13日(金)、14日(土)
は20:00まで開館いたします。
中止となりました。
休館日:
月曜日(8月9日、9月20日は開館)、8月10日(火)、9月21日(火)
チケット:
新型コロナウイルス感染症予防対策のため、事前予約制(日時指定券)を導入します。
こちらから来館日時をご予約いただけます。
※お電話でのご予約はお受けしておりません。
※会場では当日券を販売しています。ただし、ご購入の列にお並びいただく場合やご入館時に販売予定枚数が終了している可能性もございますので、オンラインでの事前のご予約・ご購入をお薦めいたします。
※10名以上での来館をご希望の場合は、事前にお問い合わせください。(050-5541-8600/ハローダイヤル)
観覧料:
一般  300円(250円)
大学生 150円( 70円)
※( )内は20名以上の団体料金および割引料金
※いずれも消費税込
〇無料対象:高校生以下および18歳未満、65歳以上、MOMATパスポート・学パスをお持ちの方、友の会・賛助会員の方、MOMAT支援サークルパートナー企業(同伴者1名まで、シルバーパートナーは本人のみ)、キャンパスメンバーズ、障害者手帳をお持ちの方と付添者(1名)
〇割引対象:石川県立美術館・金沢21世紀美術館・石川県立歴史博物館・石川県立伝統産業工芸館(いしかわ生活工芸ミュージアム)・金沢市立中村記念美術館・金沢ふるさと偉人館の主催展覧会入場券半券、ならびにSAMURAIパスポート (一般のみ)を窓口で提示した方。
主催:
東京国立近代美術館

プレスリリース >>


連携事業

【中止】講座「たんけん!こども工芸館を考える」

子どもが作品を見て書いた絵や紹介文などを通して、工芸を活用した鑑賞教育について一緒に考えます。

 日付:2021年9月19日(日)
 時間:14:00~15:00
 会場:国立工芸館 多目的室
 講師:今井 陽子(国立工芸館主任研究員)
 主催:兼六園周辺文化の森等活性化推進実行委員会
 問い合わせ先はこちら

※石川県の感染状況等に関するモニタリング指標のステージ4「感染拡大緊急事態」への引き上げ及び「まん延防止等重点措置」の適用に伴い、上記の日程・会場に変更となりました。中止となりました。

たんけん!こども工芸観:Crafts Museum for Kids & Adults 今井陽子(工芸課主任研究員)

 工芸館にとって、夏は子どもたちと一緒に工芸を考える時季です。初めて対象を子どもとするプログラムに取り組んだのが2002年でしたから、今年でちょうど20回目の夏となります。この間、簡易的なウェブページを皮切りに、印刷物、そしてイベントと、毎年少しずつ種類や回数を増やしていきました。
 展覧会を設定から見直そうという声はわりと早い段階に上がりました。まずは子どもに親しみやすいモチーフを選ぶ(2004年)、鑑賞プログラムの総称「こども工芸館」を展覧会名に据え、玩具やフィギュアの系譜学も視野に入れて楽しさを全面に打ち出す(2005年)、子ども・一般の対象ごとの2本立て(2007、09年)などの試行を重ねたのち、2010年からは工芸の本質を問いながら、そのまま子どもたちにポーンと投げ渡すようになりました。今年の「ジャングル⇔パラダイス」展もその流れにあります。

図1

 図1は寺井直次の《極光》[註1]を鑑賞した未就学児の成果です。これは「ジャングル⇔パラダイス」展のレビューを執筆していただいた冨田康子氏(工芸課客員研究員・2004年当時)考案のプログラム「動物にがおえ大会」エントリーシートの1枚で、「動物のモチーフ」展の出品作を写生して「すきな理由」を添えて掲示する趣向でした。注目したのは「きつねがすきだから」というあどけない言葉とは対照的な厳しい線の集積で、作品上で狐を表す無数の卵殻のカケラが、厚紙に刻み込む勢いで描き込まれました。指先で凹凸を辿れるほどの圧がかかった線描は、卵殻の微細な曲面を保持した集合体にざわめく心情を映しながら、作品の制作工程とシンクロする視線の軌跡を伝えています。

図2

 翌年の「動物とあそぼう」展と同時開催の大人用陳列からは、生野祥雲斎しょうのしょうんさいの《白竹一重切華入 くいな笛》[註2]の「にがおえ」が、8歳の子によってもたらされました。すきな理由は「いろがすき」。青竹を加熱や天日干しして水分油分を除去すると防虫防腐防カビを期待できますが、この工程で一緒に葉緑素が抜けて、白竹の呼称が与えられます。とはいえこの技法が長く続いたのは、ただ機能本位ではないのかもしれません。最先端とされる技術でデジタル画像を作る際、今でもカラーチャートをフレームに納めることがありますが、はたしてそのような処置でこの子が惹かれた美意識の伝統、「白」一字に託された意義を構築できるでしょうか。祥雲斎は節を2つ残して切断し、開口部を設けただけの限定的な造形要素に、青竹とはまた別種の清新さを宿す美の様態を収斂させました。後年、本作の「竹がきれいすぎる」ことに注視した11歳が、竹に作用する光を茶・黒・黄の色鉛筆と紙の地色で描出しようと試みたのも興味深い反応です(図2)。

 「動物にがおえ大会」エントリーシートは、その後「みんなでつくる工芸図鑑」と呼び名を変え、工芸館にとって重要なプログラムへと成長しました。参加した子ども自身の内面だけで鑑賞が完結せず、他者に向けてアウトプットする意識が客観と強調の両極に働いて、「図鑑」カードという成果物の充実を促進させているようです。もちろんすべての事柄が子どもの自覚のままに出てきた訳ではありません。が、彼らの直感が放った光は工芸をみずみずしく浮かび上がらせ、知識や既成概念で縛られがちな大人の価値観を揺るがす契機になり得ると確信しています。
 その後当館では、子どもたちの鑑賞へのレスポンスとして「イロ×イロ」「ピカ☆ボコ~オノマトペで読みとく工芸の魅力」「こどもとおとなのアツアツこうげいかん」などの展覧会をリリースしていきました。2019年の「みた?—こどもからの挑戦状」はいわば子どもたちとの共同研究の中間報告です。過去の「図鑑」カードの紹介動画は大人を会場へとUターンさせ、一方、子どもたちもまた発奮して大量のカードをかきあげました。お名残りに来てくれたリピーターのなかには、自身の成長を実感した子もいたようです。
 残念ながら、昨年に続き今年も鑑賞活動は制限せざるを得ません。そんな時節だからこそ、生活感情の特殊と普遍とがないまぜとなって形成される工芸という文化を明日につなぐべく、道を探っていきたいと思います。

 


1 https://search.artmuseums.go.jp/records.php?sakuhin=2926
2 https://search.artmuseums.go.jp/records.php?sakuhin=5

「たんけん! こども工芸館 ジャングル⇔パラダイス」
金沢移転後初の「こども工芸館」に寄せて 冨田康子(横須賀美術館学芸員)

 国立工芸館の所蔵品展「たんけん! こども工芸館 ジャングル⇔パラダイス」は、金沢移転後としては初、そして「東京国立近代美術館工芸館」の時代から数えれば20回目となる、工芸館恒例の夏の子ども向け企画である。
 展示は、「ジャングルナイト」「アニマルハマル」「満開!」の3つの章と、ラウンジおよび「芽の部屋」に展開された二つのインスタレーションによって構成されている。「ジャングルナイト」は夜を、「アニマルハマル」は動物を、「満開!」は植物や虫をイメージさせる作品が、所蔵作品を中心に200点ほど集められている。
 一般に、動物や植物は、子ども向け展示の定番ともいえるテーマで、同館のこれまでの子ども向け企画でも、動物(04、05年)や植物(12年)をテーマとした展示が行われてきた。もとより、工芸という領域において、動植物は重要な意匠モティーフであり、それらに関わる作品を集めた展示は、工芸の名品展として、ある意味、王道を行くものともいえる。
 とはいえ、本展企画者の意図が、単なる動植物モティーフの紹介を超えたところにあるのは、「ジャングル⇔パラダイス」というタイトルからも明らか。自然性そのものの象徴として「ジャングル」という語を置き、その対極に、人間の理想郷としての「パラダイス」を置いて、その両者を行き来する「⇔」の中に、工芸という営みを位置づけてみようというのが、おそらくは、タイトルに込められた企画者の意図ではないかと推測する。
 展示の導入部分となる「ジャングルナイト」の章は、文字どおり、闇あるいは夜を思わせる作品から成る。「闇」のイメージを通して、未知なるものとしての自然を感じ取ってもらおうという企てであろう。入ってすぐの展示空間では、中島直美《Nature’s Talk 2005–grenouille–》の発するカエルの声が途切れることなく響き、妖しい気配に満ちている。さらに、最初に目に入る古伏脇司、三浦景生、越智健三らの陰りを含んだ作品が、その先の未知の世界を予告するかのようである。この雰囲気は、展示室の手前に置かれた橋本真之の作品、および展示の中間地点に設けられた斎城さいき卓、谷口よしみによる「芽の部屋」のインスタレーションにも共通する。それが繰り返し提示されているのは、本展が、そのタイトルに「たんけん!」の語を含むことからも察せられるように、知られざる世界への誘いを重要なテーマとしていることと無縁ではないだろう。
 続く「アニマルハマル」と「満開!」の章は、トラならトラ、鳥なら鳥で、共通するモティーフの作品どうしを並べて見せていくスタイル。といっても、単純なモティーフ分けではない。魚の横に水を意匠化した作品が並ぶなど、イメージが次々と展開していくような構成を通じて、工芸が総体としてもっている造形的な多様性が、存分に伝わる展示となっている。同時に、それらの意匠がもつ洗練性は「荒ぶる自然」としての素材感を対比的に浮かび上がらせる。ここでも鑑賞者は、「ジャングル⇔パラダイス」の「⇔」の部分をおのずから体験することになるだろう。
 では、このような工芸鑑賞の機会が、子ども、とりわけ、ここで主要な対象として想定されている4、5歳から小学校低学年くらいまでの子どもに対して、積極的に開かれていることの意義は、何だろうか。
 一つ挙げておきたいのは、まず、子どもたちが、工芸の鑑賞者として、きわめて高いポテンシャルをもっているのではないか、ということ。これは、本展の企画者である工芸館主任研究員・今井陽子氏が、「みんなでつくる工芸図鑑」を例に引きながら述べておられることとも通じるものである[註]。触覚と視覚の連動にすぐれ、かつ植物や動物といった意匠との親和性が高く、さらには、一つのモティーフから次々と連想を展開していく面白さをよくよく知っているという意味で、工芸作品に対する子どもたちの感度の良さに驚かされることは少なくない。本展も、もし感染症の影響がなければ、きっと多くの子どもたちが、モティーフの親しみやすさに誘われて、そのすぐれた鑑賞力を発揮していたことだろう。
 「鑑賞」とは、美的感性を高める機会であると同時に、いや、それ以上に、さまざまな知覚を連動させた探求と思索の場であり、他者との共感を育む場でもある。ここで仮に、これまでの「こども工芸館」での実例が示すとおり、工芸に対する子どもたちの感受性が、実は、一般に思われているよりも、はるかに鋭いものであるとしよう。仮にそうであるならば、工芸鑑賞は、子どもたちが「鑑賞」という名の有益な学びを実践するにあたっての、きわめて良質な端緒となりうるはずだ、と言っては言い過ぎだろうか。

 


教育普及レポート 今井陽子「たんけん! こども工芸観」
https://www.momat.go.jp/cg/exhibition/jungle_2021/#section1-4

図1 会場風景(展示室1「ジャングルナイト」)

図2 会場風景(展示室2「アニマルハマル」)