東京国立近代美術館フィルムセンターは2018年4月1日に東京国立近代美術館より独立し、新しい組織「国立映画アーカイブ」となりました。
こちらは、アーカイブされたフィルムセンターの過去のページです。最新情報は、「国立映画アーカイブ」のホームページをご覧ください。
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会期:2016年3月15日(火)-3月27日(日)
料金:一般520円/高校・大学生・シニア310円/小・中学生100円/障害者(付添者は原則1名まで)、キャンパスメンバーズは無料
会場:大ホール
開映後の入場はできません。
定員=310名(各回入替制)
発券=2階受付
・観覧券は当日・当該回のみ有効です。
・発券・開場は開映の30分前から行い、定員に達し次第締切ります。
・学生、シニア(65歳以上)、障害者、キャンパスメンバーズの方は、証明できるものをご提示ください。
・発券は各回1名につき1枚のみです。
★3月の休館日:月曜日、3月28日(月)-4月4日(月)
フィルムセンターの上映企画「自選シリーズ 現代日本の映画監督」は、1980年代以降の日本映画を牽引してきた映画監督に、自作の中から上映作品を選定していただき、そのデビューから現在までの足跡をたどることによって、現代日本映画の原点を探る試みです。
第4回は、日活ロマンポルノ製作初期の1974年に日活に入社し、藤田敏八、曽根中生らの助監督を務めたのち、78年に異例の若さで監督に昇進し現在に至る、根岸吉太郎監督を取り上げます。根岸監督は脚本の荒井晴彦、田中陽造らとのコンビで才気あふれるロマンポルノ作品を次々に生み、81年、フリーとなりATGで撮った初の一般映画『遠雷』で早くもブルーリボン賞監督賞を受賞。以来、一作ごとに抑制の効いた演出で、さまざまな女と男の姿を見つめ続けてきました。新たなテーマへの挑戦も感じられる2000年代の近作も含め、16作品(12プログラム)を上映します。恒例となった監督のトーク・イベントも実施いたします。
■(監)=監督 (原)=原作・原案 (脚)=脚本・脚色 (撮)=撮影 (美)=美術 (音)=音楽 (出)=出演
■スタッフ、キャストの人名は原則として公開当時の表記を記載しています。
■特集には不完全なプリントが含まれていることがあります。
■記載した上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。
■*印は成人指定作品です。
高校生の敏彦(加納)は封建的な父、浩三(戸浦)と年若い後妻の麻子(山口)と3人暮らし。継母への思慕を募らせる敏彦はその想いを秘かに日記に綴る。やがて、麻子につらく当たる浩三を憎んだ敏彦は父親殺害の計画を企てるが…。監督デビュー作となったロマンポルノ。
高校教師の咲子(風祭)は、警察に補導されたスエ子(太田)の身元引受人に指名される。二人は現在はほとんど接点がなかったが、スエ子は、かつて咲子が秋田で教育実習をした時の教え子だった。そして、その学校で咲子が被害者となった強姦事件の犯人(三谷)の娘だった…。
中平康の映画にインスパイアされたアリスのヒット曲をテーマにした青春映画。バーで働く貧しい青年とパトロンを持つ女性との破滅的な恋を描く。『十九歳の地図』(1979)で衝撃的デビューを果たした本間優二と新人蜷川有紀のぶつかりあうような演技が鮮烈な印象を残す。
軍隊式社員教育でチェーン売上げ全国1位を目指す新宿歌舞伎町のキャバレー。風俗業の猛烈な現場を舞台に、美人ホステスと彼女らを仕切る男たちの哀切極まりない日々をコメディタッチで描く。根岸が『遠雷』の好評のあと、古巣のロマンポルノに戻って持ち味を発揮した。
都市化の波が押し寄せる宇都宮を舞台に、農業にこだわる青年の日々を淡々としたリズムで描く根岸監督初の一般映画。主人公のみならず、すべての登場人物がリアルな存在として立ち上がってくる魅力は根岸映画ならでは。ブルーリボン賞監督賞(同年の『狂った果実』と共に)。
自分の結婚式に遅刻した勉(時任)。式場で待っていた新婦(宮崎)が刺され、結婚は延期に。犯人の女は自爆してしまったが、勉はそれが自分が棄てた過去の女なのではないかと思い悩む。日本人離れした長身、時任三郎の飄々とした身振りを、長廻しで見事に活かした演出が見どころ。
一週間後に渡米を控えた女子大生(薬師丸)と、ボディガートを任された探偵(松田)。やがて二人は殺人事件に巻き込まれ…。薬師丸ひろ子が大人への脱皮を印象づけたラストシーンは公開当時、大きな話題となった。
夫が単身赴任中の家族に突如巻き起こった離婚騒動。愛人がいると夫(田中)に告げられ、二人の息子を気遣う妻(十朱)は平穏な別れをと願うが…。根岸自らの希望で森田芳光に脚本を依頼し初タッグが実現。お互いの長所が活きた。報知映画賞監督賞。
婚約者と別れ、市役所も辞め、宙ぶらりんな日々を送る青年(時任)が、同じ町に自分そっくりの男が出現したことから次々とトラブルに巻き込まれていく。根岸は『遠雷』で親友同士がふとしたきっかけで真逆の運命を辿ってしまうのを描いた時から、「この世にはもう一人の自分がいるのでは?」というテーマに惹かれたという。
酒と女とギャンブルに目がない演出家の憲一(小林)は、現場で知り合った照明助手の里子(及川)とデートを重ね、遂に結婚する。結婚後も夜遊びをやめない憲一だが、やがて里子が白血病に侵されてしまったことを知る。伊集院静の自伝的短篇集の一篇を映画化。
あるジャーナリストの殺害によって封印された有名バイオリニストの過去。その死からひも解かれた10年前の殺人事件に翻弄されるヤクザ者(役所)と刑事(渡辺)。『砂の器』的な物語ではあるが、根岸はウェットにならず、過剰に語りすぎず、クールかつ骨太に男二人の対決を浮かび上がらせる。日本映画批評家大賞作品賞。
東京に出たものの、事業に失敗し、打ちひしがれて故郷の帯広に戻った学(伊勢谷)に、実家で「ばんえい競馬」の厩舎を経営する兄(佐藤)は“勝てない馬”ウンリュウの世話を任せる。ウンリュウはなぜか学になつくのだった。傷ついた人間の心情を馬に静かに重ね合わせていく演出が清々しい。第18回東京国際映画祭サクラグランプリ、キネマ旬報日本映画監督賞。
薫(ミムラ)は10歳の頃の夏休みを回想する。母親(鈴木)が家を出て行き、父親(古田)は薫と弟の面倒をみるためと愛人のヨーコ(竹内)を家に連れ込むが、自由な気風に溢れたヨーコは幼かった薫の心に静かな革命をもたらしていく。当初根岸は16mmでの撮影を模索したという。そのせいか、自由かつ風通しの良さも感じられる佳篇となった。日本映画批評家大賞監督賞。
標題作に加え、太宰の複数の小説を合わせて映画化。戦後の貧しい時代の東京を舞台に、放蕩生活を送るくせに妻に嫉妬深い小説家(浅野)と、そんな夫に苛まれつつも類い稀な生活力で明るく生きる妻(松)との日々を描く。深刻な物語の端々に、落語のような、あっけらかんとしたユーモアが漂う。モントリオール世界映画祭最優秀監督賞、キネマ旬報ベスト・テン第2位など。
三島由紀夫生誕90年を記念して、三島の戯曲「近代能楽集」から2篇を映像化したもの。オールセットで演劇的な制約を受け入れて演出することで、根岸は三島の書いた言葉そのものの美しさと、それを発する俳優の魅力を際立たせようとしている。
■作品によって開映時間が異なりますのでご注意ください。
■*印は成人指定作品です。
※根岸監督のトーク・イベントの詳細は、こちらをご覧ください。
■根岸吉太郎監督トーク・イベントのお知らせ(2016.3.10 更新)
*入場無料(トーク・イベント前の上映をご覧になった方は、そのままトーク・イベントに参加することができます。トーク・イベントのみの参加もできます。)
*追加情報は随時、ホームページ・館内掲示などで告知致します!
3月15日(火)15時の回 『狂った果実』『キャバレー日記』上映後
ゲスト:荒井晴彦氏(『キャバレー日記』脚本)
3月19日(土)13時の回『雪に願うこと』上映後
ゲスト:伊勢谷友介氏(『雪に願うこと』主演)
3月20日(日)16時の回「近代能楽集『葵上』『卒塔婆小町』」上映後
ゲスト:柄本佑氏(「近代能楽集『葵上』」出演)
3月24日(木)15時の回『サイドカーに犬』上映後
ゲスト:松本花奈氏(『サイドカーに犬』出演)
3月26日(土)12時の回『狂った果実』『キャバレー日記』上映後
ゲスト:岡田裕氏(『狂った果実』『キャバレー日記』プロデューサー)
白鳥あかね氏(同、スクリプター)