令和元(2019)年度 インターンシップ生のことば

A 学芸・コレクション Hさん

幼少期に東京国立近代美術館に足繁く通い、自分にとって身近な美術館だったということもありますが、学部の時から写真で作品制作をしていて、自分が行っている展示と、[美術館]の展示がどのように違うのかを知りたかったというのが、今回インターンに応募した理由の一つです。今まで感覚的要素の強い、言葉にできないような展示の見方だったものが、意識的な、自分の言葉ではっきりと考えられるような展示の見方になったことが、一年間で大きく変わった事です。

今年度は、コレクションのインターンが自分だけだったということもあり、写真室だけでなく、美術課の業務も携わる機会が多々ありました。写真室では、プリントスタディーの補助、作品の保管・管理に加え、収蔵作品を目の前で見させて頂くこともありました。作品がどう撮られ、作家のどのような意図が加わり、この一枚になったのか、作品を見ながら作品の中のことまで教えて頂くという、本当に貴重な経験になりました。美術課では、コレクションの会期が変わるタイミングでの図面制作、どの作品が出品されるのか、どこに戻されるのか、自分の作った図面で作業が行われるという、緊張感がありましたが、図面での見方と、実際の見方の変化などを間近で感じる事ができました。展示の入れ替え作業を、何度も見させて頂きました。

一年間、毎回毎回のインターン活動で、自分の中でいい方向に変わっていく感覚がありました。[学芸員]という視点が、遠いものではなく少し近いものなりました。その感覚を忘れずに、自分のこれからに生かしたいと思います。

B 学芸・企画展 Hさん

企画展が出来上がるまでの業務全般として、出展作品の調書や目録の作成、フォトショップなどを用いての作品画像の編集、カタログのテクスト翻訳や校正、出版社や印刷所との会議参加などを行いました。さらには美術館運営のフロー改善のために、日々企画展室に届き山積していく展覧会チラシやギャラリーからのDMなどの仕分け、これらを整頓するための什器やラベル作成なども行いました。いずれの業務も、カタログ制作に対する私自身の興味関心や技術的な能力について聞き取りながら提案していただけたことに、感謝の念でいっぱいです。私は多様な業務が並走するさまに目のまわる思いでしたが、担当学芸員の方々は事あるごとに連絡を綿密に取りあい、機転を利かせて難所を切り抜けて行かれました。できる作業はテキパキと、しかし紙面校閲やデザイン校正などの経験や感性が問題となるところは声をかけあってうーんと悩む。その然るべき減り張りは、講義室では味わえない濃密な時間のなかで、目と手と言葉を培ってくれました。

また研究や将来のことも相談でき、多くの学びや励ましをいただけたことも貴重な経験でした。これから学芸職への応募を控える身において、美術史や美学、博物館学ではなく外国語文学を専攻している私が、いかに視覚美術を語りうるかは喫緊の課題でした。展示替えの期間には職種や館の垣根を超えて、多くの学芸員さんとお話しする機会があり、専攻の強みを生かす助言の一方で、彼らが作品を配架する際の、順番や位置を次々と策定し千変万化の指示を出す、知識と経験と美的感性に裏打ちされた鮮やかな手さばきを見るにつけ、ビジュアル・シンキングの重要性を説得的に体感しました。この一年の経験は、必ずや私の人生選択の試金石となって、いつ振り返っても今後の励みの糧となることを確信しています。

B 学芸・企画展 Yさん

作品の媒体を問わない展覧会をつくることができるような美術館の学芸員になりたく、今回学芸・企画展のインターンとして業務を体験させていただきました。「学芸員になりたい!」という思いは昔から強く持っていましたが、いざその現場に立ち合わせていただくと、何もかもが驚きの毎日でした。

業務内容としては、主に今後行われる展覧会の資料作成、展示作業の見学等々を行いました。展覧会がどのように企画され、作品が選ばれ、展示をされ、運営されていくのか。また、学芸員の方々のどのような視点、思いを通過して展覧会が出来上がっていくのか。その現場を体験させていただいたことで、インターンを経験する以前の自分とは学芸員や展覧会に対する見方や考え方が変化しました。

自身の研究対象が音を扱う作品であることから、そのような作品を展示する難しさは重々承知していましたが、学芸員のみなさまから、いろいろな角度の的確なアドバイスをいただき、大変貴重な時間、知識を得ることができました。また、展覧会が作られる過程を見るなかで溢れ出てくる驚きや疑問に快くこたえていただき、学芸員の方々から学ぶことがたくさんありました。

美術館は美術を現代の人々の関心との関連のなかで捉え直す大切な場であるということを再確認し、学芸員の皆様の手によってこの空間ができあがっていることをひしひしと感じた1年間でした。

C 美術館教育 Mさん

学芸員を志す人は美術史や理論を学んでいる人が多く、大学で制作活動をしてきた私はコンプレックスを強く感じていました。また社会経験も少なく人前に立つことも苦手な性格だったので、美術館教育の現場で何か出来るのだろうかと半信半疑の中、1年間のインターン生活が始まりました。

インターンでは毎週、所蔵品ガイドの見学と、教育プログラムの補助をさせていただきました。後半からは教育プログラムの記録映像制作をさせていただきました。1年を通して、参加する立場・受け入れる立場・普及する立場といった3方向の体験ができたと感じています。所蔵品ガイドでは、何度も見た作品でもトーカーによって見え方が変わるため、日に日に作品への関心が増していきました。この奥深さを誰かに伝えたいという思いになった時、教育が教育に繋がるのだと何時も気付かされ、励まされました。その思いはプログラム運営へも繋がり、プログラムに迎えるこどもたちや参加者の方にも同じ体験をしてもらいたいという目標を持って準備や当日運営の補佐をすることができました。映像制作では、プログラム内容を客観的によく振り返り、どんなところを見せていくのか学芸員の方にアドバイスをいただきながら、制作していきました。

こうして振り返ると、たくさんの経験をさせていただいたと同時に、自分のミスや欠点に落ち込むことも多くありました。しかし職員の皆様は何時も真摯に私と向き合ってくださり、失敗をした時も次はもっといい働きをしようと前向きに活動に取り組むことができました。東近美で得たこの気持ちと学びを忘れず、よりよい教育者になれるようこれからも精進いたします。1年間ありがとうございました。

E 工芸館 Oさん

インターンでは、多岐に渡る学芸業務の入り口を経験させていただきました。キャプションの試作、展示室の照明、寄贈作品の記録や埃の除去等を行い、学芸員には広汎な知識や洗練されたセンスだけでなく、手先の器用さ、体力も求められると実感しました。

更に工芸作品の魅力を写真家の眼を通して引き出す撮影、また自身の作品を寄贈された作家の深い理解と協力に基づくタッチ&トーク、さらには所蔵品展「パッション20」でのギャラリートークでは、作家と館が協働することで、館の活動が高度化する現場を体感できました。

またガイドスタッフ、監視・警備・清掃を担う方々と関わる機会もあり、各自の仕事や学芸員との連携を知ったことで、おぼろげながらも、館の運営という包括的な視野を持てたのではと思っています。警備担当の方から温かい声をかけていただいたこともあり、お客様だけでなく、共に館を支える方々に対して、自分はどんな貢献ができるかを考えるようにもなりました。

この一年間で得た学びと感動を糧に、将来学芸員として作家・作品・お客様のために尽くしていきたいという思いを強くしました。今後はインターンを通して見えてきた私の課題、事務能力と注意力の欠如を改善し、学芸員になるための努力を重ねていきます。

インターンで関わった皆様には大変お世話になりました。心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

E 工芸館 Fさん

今まで工芸の分野に携わることの少なかった私にとって、この一年間のインターン活動は大変有意義な体験でした。学芸員の授業を履修している時は、理論から実習までさまざまな知識を身につけてきましたが、工芸館という場で、私は理論を踏まえて現場で活動することで、さらにより多くのものを勉強することができました。

大学では体験・実践できないこと、作品の扱い方から保管資料の整理や展覧会準備補助まで、また教育普及プログラムの参加やサポートなど、たくさんのことを間近で経験させていただきました。

その中でも、教育普及に関わる夏のイベントはとても印象的でした。「こどもタッチ&トーク」に参加する時に、私も子供たちと同じ新鮮な気分でした。大人とはまた違って、子供たちの斬新な視点からの感想や発見など、自分にとっても勉強になりました。芸術は本当に身近なものであることを実感しました。新しいことを体験し、さらに興味を持つことになる。それこそが教育普及プログラムの意味でしょう。

これまで学んだことを今後も活かし、さらなる成長を目指し努めて参ります。

一年間本当ににありがとうございました。