石元泰博展 現在の記憶

     YASUHIRO ISHIMOTO - Remembrance of Things Present
 さだかならぬ雲を撮影してみようという意図で始められた雲の写真。写真家
石元泰博がここ数年自宅の窓から撮り続けている雲の写真は、かたちも明暗も
遠近も見定めがたく、また日時という区切りによる支えも与えられていない映
像の集積として私たちの前に現れます。雲と名指すことすらためらわれるそれ
らは、流れる時間の中で決してとどまることのない、うつろいそのものの写真
と言うことができるかもしれません。

 その雲のシリーズを中心に、秋、雨に濡れたアスファルトの路面に、しみこ
むように朽ちていく落ち葉、路上に捨てられて車のタイヤにつぶされ、すり減
り、錆びていくあき缶、そして東京に雪が積もった数日の間に撮影された雪の
あしあとの三つのシリーズを加えた近作140点によってこの展覧会は構成され
ます。これらはいずれも時間の中で徐々にあるいは刻々と姿を変え、境目をに
じみ出し、うつろいゆくものと言えるでしょう。世界がそのようにしてあるこ
とを見つめる写真家の率直で根源的な作業、それはまた写真を見ることについ
て問い直させるものでもあります。言葉による意味付けに先んじて立ち現れ、
いつも意味の境目をにじみ出てしまう写真というものを、そのようにしてある
ものとして、あらためて見つめること、この展覧会がそのような体験を用意す
る場でありたいと考えています。

 1995年5月に開館したフィルムセンターにおける写真部門の展覧会は、現代
作家の近作による個展をひとつの柱として継続的に開催していく予定です。本
展はその第一回目のものです。



                             展覧会概要


          展覧会名:石元泰博展  現在の記憶
                    YASUHIRO ISHIMOTO   Remembrance of Things Present


      会  期:1996年2月14日(水)−3月30日(土)
           日曜日・月曜日休館 
                    午前10時30分−午後6時(入場は5時30分まで)
          

          会  場:東京国立近代美術館フィルムセンター展示室(7階)
           〒104 東京都中央区京橋 3-7-6 
          NTTハローダイヤル 03-3272-8600


     主  催:東京国立近代美術館


     観 覧 料:一般       200円(170円) 
                      高校生・大学生    120円( 90円) 
                      小学生・中学生     90円( 50円)
                     ●消費税込み ●()内は20名以上の団体料金

 
          担  当:市川政憲,増田玲


          写真等の資料請求:普及係  近藤・大谷
                            TEL:O3(3214)2561
                            FAX:O3(3213)1340


          展覧会担当者へのお問い合わせ:写真係  増田
                                        TEL:03(3561)0823
                                        FAX:03(3561)0830




石元泰博(いしもと やすひろ)
1921年 サンフランシスコに生まれる。
1924年 両親とともに高知県に帰る。
1939年 近代農業を学ぶために単身渡米、カリフォルニア大学農科入学
1946年 シカゴ・ノース・ウェスタン大学建築科に学ぶ。
    同年、日本人写真家ハリー・シゲタの紹介で、アマチュア・カメラクラ
    ブ“フォト・ディアボーン”に入会、ジュリ・ケペシュの『視覚言語』
    などを教材に独学で写真を学ぶ。
1948年 シカゴ・インスティテュート・オブ・デザイン写真学科(通称ニュー・
    バウハウス)に入学。ハリー・キャラハン、アーロン・シスキンに師事。
    在学中に二度、モホリ・ナギ賞を受賞。
1953年 「ファミリー・オブ・マン」展の出品作収集のため帰国。桂離宮の撮影
    を開始。
1957年 日本写真批評家協会作家賞受賞。
1958年 12月渡米、1961年までシカゴに滞在。
1962年 桑沢デザイン研究所教授に就任、1971年まで同校、東京造形大学などで
    写真教育に携わる。
1969年 日本国籍取得。
1970年 毎日芸術賞受賞。
1978年 芸術選奨文部大臣賞受賞。
1983年 紫綬褒章受賞。


主な個展
1953年  ニューヨーク近代美術館
1954年  タケミヤ画廊(東京)
1960年  シカゴ美術館
1961年  ニューヨーク近代美術館
1977ー78年 「曼陀羅」展 西武美術館(東京)、国立国際美術館(大阪)
1982年  「シカゴ、シカゴ」 フォト・ギャラリー・インターナショナル(東京)
1983年  「シカゴ、シカゴ」 フォト・ギャラリー・インターナショナル(東京)
1986年  「街・人・かたち」 フォト・ギャラリー・インターナショナル(東京)
     「シカゴ、シカゴ 1942-1982」 近鉄百貨店(大阪)
1988年  「HANA」 フォト・ギャラリー・インターナショナル(東京)
1990年  「石元泰博写真展 その感性と視覚 1948-1989」有楽町アート・フォーラム
          (東京)
1992年  「落ち葉とあき缶」 フォト・ギャラリー・インターナショナル(東京)
1994年  アルル国際写真フェスティバル
1995年  「雲、紙、雪のあしあと」 フォト・ギャラリー・インターナショナル
          (東京)

主なグループ展
1953年  「現代写真展 日本とアメリカ」 国立近代美術館(東京)
1955年  「ザ・ファミリー・オブ・マン」 ニューヨーク近代美術館
1956年  「今日の写真 日本とフランス」 国立近代美術館(東京)
1960・61・63年 年次秀作展「現代写真展」 国立近代美術館(東京)
1974年  「ニュー・ジャパニーズ・フォトグラフィー」展 ニューヨーク近代美術館
1976年  「The Photographer and the City」 現代写真美術館(シカゴ)
1984年  「芸術としての写真」 国立国際美術館(大阪)
1990年  「東京 都市の視線」 東京都写真美術館
1991年  「日本写真の転換 1960年代の表現」 東京都写真美術館
     「写真の1955-1965」 山口県立美術館
     「Site Work: Archtecture in Photography since early 
      modernism」 フォトグラファーズ・ギャラリー(ロンドン)
1995年  「東京国立近代美術館と写真 1953-1995」 東京国立近代美術館


主な写真集
『ある日ある所』 1958年 芸美出版社
『桂』 文:丹下建三、ワルター・グロピウス 1960年 イェール大学、造形社
『シカゴ、シカゴ』 1969年 美術出版社
『伝真言院両界曼陀羅』 1977年 平凡社
『シカゴ、シカゴ その2』 1983年 キャノンクラブ、リブロポート
『桂離宮』  1983年 岩波書店
『京の手わざ』 1988年 學藝書林
『HANA』 1988年 求龍堂
『伊勢神宮』 1995年 岩波書店

                                              1996.1     
                                              東京国立近代美術館普及係