[HOME] [UP] 年間展覧会スケジュール Click me!
[Flier]
特別展

        現代美術への視点               
         
        絵画、唯一なるもの

        PAINTING - SINGULAR OBJECT


        現代美術への視点    絵画、唯一なるもの

 われわれにとってとても身近で、自明な存在として感じられる一方で、いざ近づこうとすれば茫洋としてとらえ難く、じわじわとその不思議さを析出させてくる。絵画とはそのようなものではないでしょうか。

 当館の『現代美術への視点』シリーズでは、1984年以来これまでに三回にわたって、さまざまな切り口から我々の同時代の美術をとらえることを試みてきました。今回は、その四回目として、現代の絵画に焦点をあてます。数百年の歴史を背景にもちながら日々、同時代からもまた、様々なものを鋭敏に摂取しつつ含蓄を深めていく絵画という表現形式の今日的なあらわれを明らかにしたいと考えます。

今日の絵画のひとつの原型ともいえるアド・ラインハートの1950年前後の作品から、今日まで30年以上も質の高い絵画作品を描き続けてきたブライス・マーデン、山田正亮、村上友晴、常に様々な問題を提起してみせるゲルハルト・リヒター、アメリカのロス・ブレックナー、そして、それぞれに独創的な仕事を展開する日本の作家達による絵画のうちから選りすぐった作品を展示します。

 これらの画家たちはそれぞれがまったく独特な世界を築きあげているのですが、ひとつ共通しているのは、長方形のキャンバスに絵具を塗り重ねるという伝統的かつシンプルな方法にこだわり続けているというところです。描くことへの性急な欲望を抑制し、塗るという原初的、即物的な行為を突き詰めた果てにこそ、実は初めて何かが描かれ得るのです。しかしながらそれは決して彼らが伝統の所産のうえにあぐらをかいてしまっているということではありません。そういう作品には生きて動いているという感じは持ち得ないでしょう。むしろ逆に、かれらは、この形式に敢えて執着し続けることの意味を繰り返し繰り返し自問しているはずです。ダダイズムやマルセル・デュシャンにはじまる反芸術、反絵画の思潮からの逃れ難さを今日最も痛切に感じ取っているのは、実はかれらに他ならず、その造形の営みは常に、描く行為の無根拠さという深淵と背中合わせにあるのです。それでいて、かれらは描きつづけることができるのであり、しかもその結実としての作品はわれわれを動かします。強靭な意志によって描きつづけているというよりは、あたかも「絵画」の導きによってそうせざるを得ないというようにそれは生み出され、堆積します。

 絵画の「終焉論」が度々語られてきました。しかし、同時代に生きるものとして、安易に絵画の死を語ってしまうことは早急に過ぎるのではないでしょうか。また、絵画の終焉論というもの自体がいつも、進歩と革新の連続を要請して止まない近代的な発展史観を背景に潜ませてもいるように思えます。各々の作品はそれとは無関係に、まずはただ ”ある”だけなのです。もちろん、だからといって「終焉」をただ単純に否定し、絵画の未来を楽天的に顕揚しようとするものでもありません。肝心なのは、美術は発展しなければならないという思い込みをともかく取り払い、眼前にある具体的な絵画を真にみるという、ともすれば忘れられがちな作業に改めて集中することではないでしょうか。この展覧会は、二者択一的で単線的な発想を安易に適用することなく、いま絵画において起こりつつあることを見極めようとする試みに他なりません。

[TOP]


                                展覧会概要


       展覧会名:現代美術への視点  絵画、唯一なるもの


         会期・会場:1995年11月3日(金)〜12月17日(日)
                    東京国立近代美術館
                     1996年1月5日(金)〜2月12日(月)
                    京都国立近代美術館

                    月曜日休館<但し1月15日は開館、翌16日休館・2月12日開館>
                    午前10時−午後5時<入場は午後4時30分まで>


          主  催:東京国立近代美術館・京都国立近代美術館


          入 場 料:大人                  790円(650円)
                      高校生・大学生        450円(330円)
                      小学生・中学生        330円(180円)
                     *()内は20名以上の団体料金
                      *無料観覧日:11月3日(金)

          担  当:市川政憲,本江邦夫,松本透,中林和雄,都築千重子

          写真等の資料請求:普及係  近藤,大谷
                            TEL:03(3214)2561
                            FAX:03(3213)1340

  *アド・ラインハートおよびブライス・マーデンの作品の複製掲載使用許可に
      ついては下記で著作権管理を代行しておりますので、個別にお問い合わせ下
      さい:
        SPDA美術著作権協会 〒104 中央区銀座1-13-9栄楽ビル4階
                               tel03-5250-4516 / 17 

          講 演 会:<自作を語る>スライド・レクチャーと質疑応答(通訳つき)
           11月7日(火)本館講堂にて
           2:00      開場
           2:15-3:30 ロス・ブレックナー氏
           3:45-5:00 ブライス・マーデン氏
                      詳細につきましては、お問い合わせ下さい。

[TOP]
出品作家11人の略歴
アド・ラインハート  Ad Reinhardt
1913年ニューヨーク州バッファローに生まれる。1943年以来ニューヨークおよびヨーロッパの画廊で個展。1966年ニューヨーク、ジューイッシュ・ミュージアムで個展。1967年没。1972年デュッセルドル市立美術館他でヨーロッパ巡回の個展。1980年ニューヨーク、グッゲンハイム美術館で個展<アド・ラインハートと色彩>。1991年ニューヨーク近代美術館、ロスアンジェルス現代美術館で回顧展。ニューヨーク近代美術館、テート・ギャラリー他各国主要美術館に所蔵多数。厳格に芸術の純粋性を説く論客としても知られた。

山田正亮  Masaaki Yamada
1930年東京生まれ。1950年東京府立工業高専卒業。1953年、長谷川三郎に師事。佐谷画廊、ギャラリー米津を中心に個展多数。国内の美術館に所蔵作品多数。1981-82年の「1960年代現代美術の転換期」展(東京国立近代美術館/京都国立近代美術館)に出品。1990年には、『山田正亮作品集』が美術出版社から刊行されている。1950年代から一貫して絵画のみにこだわり、ストライプ、グリッド、クロスといった基本的な要素を独自の論理で展開させながら描き続けてきた。

ゲルハルト・リヒター  Gerhard Richter
1932年旧東ドイツのドレスデンに生まれる。1961年デュッセルドルフに移住。1963年以来欧米各地の美術館、画廊で個展多数。1972年ヴェニス・ビエンナーレで文化人48人を写真をもとに描いた作品を発表。1986年デュッセルドルフ、クンストハレ他巡回の個展。1989年ドイツ赤軍メンバーの獄中での死を記録写真をもとに描いた<18 Oktober, 1977>を発表。1991年テート・ギャラリーで個展。1994年ボン、マドリッド等巡回の個展。具象、抽象両方の作品を並行して制作し続け、カラーチャートを作品化するなどのコンセプチュアルな仕事もあるなど、問題提起的な多面性を持ちながら、それらを常に絵画という形式に基づかせた仕事を展開してきた。

ブライス・マーデン  Brice Marden
1938年ニューヨーク州ブロンクスビルに生まれる。1963年以来、ニューヨークおよびヨーロッパの主要画廊で個展多数。1975年ニューヨーク、グッゲンハイム美術館、1981年アムステルダム、ステデリック美術館、ロンドン、ホワイト・チャペル・アート・ギャラリーで個展。1991年ボストン美術館所蔵の様々な時代の作品と自作を組み合わせて展示。同年ニューヨークDIA財団ギャラリー他で、カリグラフィーに基づく大作のシリーズ<Cold Mountain>を発表。ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、テート・ギャラリー、ポンピドーセンター他に所蔵作品多数。いわゆるミニマル・アートの文脈で語られたこともあったが、長く持続してきたその仕事はいまや一流派との関わりといった域を超えて、絵画の歴史との息の長い対話ともいえるものになっている。現在、特に画家たちに最も注目されている。本展覧会を機に来日、講演を予定。

村上友晴  Tomoharu Murakami
1938年東京生まれ。1961年、東京芸術大学美術学部日本画科卒業。雅陶堂ギャラリー、ギャラリー・シマダ、横田茂ギャラリーなどを中心に個展多数。また、アメリカ、ドイツなど海外での展覧会にも数多く出品。ペインティング・ナイフを用いて黒の絵の具を極少量づつ画面に付着させていく作業を数年間にわたって積み重ねていくその作品は、視線を吸い込むような独特な存在感をもち、知性のみによって発想されるいわゆるモノクローム絵画とは全く違う世界を作る。

長沢秀之  Hideyuki Nagasawa
1947年埼玉県生まれ。1972年、武蔵野美術大学卒業。1979年以来かねこ・あーとギャラリー、鎌倉画廊他で個展。1989年、FBCギャラリー(福井)、1992年、ギャラリーNWハウス、1993年、スカイドア・アートプレイス青山、1993年および1995年、南天子ギャラリーSOKO他で個展。1994年北九州市立美術館の第3回北九州ビエンナーレに出品。近年の作品は何れも<風景ー >にはじまるタイトルがつけられ、個とし成立する人間とそれに対する他者としての「風景」を描くという問題意識から生じている。

高見澤文雄  Fumio Takamizawa
1948年、長野県生まれ。1971年、多摩美術大学絵画科油彩画専攻卒業。 1971年以来主要画廊での個展多数。1974年第11回日本国際美術展に、眠りにつこうとする作家自身が羊を数える声を録音した作品を発表するなど、記憶の問題にまつわる様々な形態の作品を作ってきた。近年はそれらを踏まえながらも絵画に集中し、1992年、ヒノギャラリー、スカイドア・アートプレイス青山、1993年、95年:ヒノギャラリー他で個展。

ロス・ブレックナー  Ross Bleckner
1949年ニューヨークに生まれる。1975年以来欧米の主要画廊で個展多数。1988年サンフランシスコ近代美術館で個展。1989年ミルウォーキー美術館、ヒューストン現代美術館、ピッツバーグ、カーネギー美術館、東京、アキライケダギャラリーで個展。1990年チューリヒ・クンストハレ他ヨーロッパ巡回の個展。1995年グッゲンハイム美術館で個展。ニューヨーク近代美術館他主要美術館に所蔵作品多数。フォーマルな絵画でありながらそこにはさまざまな生々しい具象的イメージもがはらまれ、現代のアメリカの社会の状況をそこに写しだしているとも見て取れる。今回、この展覧会を機に来日、講演の予定。

根岸芳郎  Yoshro Negishi
1951年、長野県岡谷市生まれ。1973年、武蔵野美術大学油絵科卒業。1977 ボストン美術館付属美術学校卒業。1979年帰国。1983年以来個展多数。1991年、アート・サイト(福井)、1994年、スカイドア・アートプレイス青山、ギャラリー山口で個展。現在1年間の予定でパリで研修中。

小林良一  Ryoichi Kobayashi
1957年、栃木県佐野市生まれ。1987年、東京造形大学美術学科卒業。1994年のヒノギャラリーでの個展で注目を集め、同年のかわさきIBM市民文化ギャラリーに続き、今年8-9月資生堂ギャラリーで個展。「現代美術の展望 VOCA展'95,─新しい平面作家たち」(上野の森美術館)、「視ることのアレゴリー 1995:絵画・彫刻の現在」(セゾン美術館)にも出品。

小林正人  Masato Kobayashi
1959年、東京生まれ。1984年、東京芸術大学美術学部卒業。佐谷画廊を中心に個展。また、1989-90年の「現代美術への視点 色彩とモノクローム」(東京国立近代美術館/京都国立近代美術館)に出品。近年は木枠に張られたキャンバスを自明の出発点とせず、絵の具を塗り込めながら徐々にキャンバスを張っていくという方法によって、新たな絵画の境地を模索している。