展覧会

会期終了 企画展

エモーショナル・ドローイング:現代美術への視点 6

会期

会場

東京国立近代美術館本館企画展ギャラリー

展覧会について

東京国立近代美術館は、国際交流基金と京都国立近代美術館との共催により、「現代美術への視点6 エモーショナル・ドローイング」展を開催します。この展覧会は、アジア、中東出身の作家16組の作品により、今日のアートにおけるドローイング的表現の現状や可能性を検証しようとするものです。

そこには、30代前半の若手から、すでにアジアの、あるいは今日のアート界を代表するようになっているアーティストまでが含まれています。

出品作品が用いている技法はさまざまです。紙の上に線を中心にした形象を描く狭義のドローイングはもちろんのこと、水彩、アニメーション、インスタレーションなどが展示されます。

内容も多岐にわたっています。顔をモティーフにしたもの、幼少期の記憶に基づいたもの、日記的な表現、深層心理を引き出そうとしているもの、子どもの落書きに触発されたもの、イメージが生み出す連想を楽しむもの、花や鳥を描いたもの、日々生まれてくる着想を描きとめたものなどなど。

もちろん、そこには共通点があります。それは、彼らの作品が、ドローイング特有の脆弱(ぜいじゃく)さ、未完成であることを許すおおらかさ、あるいはどんな表現ジャンルにおいてもつくられるという意味での根源的な在り方に寄り添うことで、自らの感情や情動を引き出そうとしているところです。

彼らが目指しているもの、それは、よりよく完成・完結している点で評価されるアートではなく、感情・情動を引き出し、それをなまなましく定着させる点において評価されるアートです。そのような、理性よりも感性をより重視する作品が、今日、とりわけアジア、中東の世界においていかなる位置を占め、またどんな意義を持っているか、それを検証するべく、あるいはご紹介するべく、この展覧会は生まれました。

なお本展は、東京国立近代美術館が1984年より開催しているシリーズ「現代美術への視点」の第6回目にあたります。

作家紹介

Leiko Ikemura レイコイケムラ

1951年三重県生まれ。セビリア美術大学卒業。ベルリンとケルンに在住。現在ベルリン美術大学教授。豊田市美術館、リヒテンシュタイン美術館、レックリングハウゼン美術館、ウルム美術館、ヴァンジ彫刻庭園美術館など個展多数。今年は、8月末から、シャフハウゼンのMuseum zu Allerheiligenで個展を開催する。本展では、「波 風 存在」(2004)、「樹の愛」(2007)、「顔」(2008)の三つのシリーズを出品する(各12点、16点、30点を展示)。彼女が持つ想像力の多様性をじっくりと味わえる空間となるだろう。

Amal Kenawy アマル・ケナウィ

1974年 エジプト・カイロ生まれ、カイロ在住。カイロの芸術アカデミーでファッションデザインを、シネマ・インスティトゥートで映画を、ヘルワン大学で絵画を学ぶ。2006年には第1回カナリア建築・アート・ランドスケープ・ビエンナーレ(スペイン)と第1回シンガポール・ビエンナーレ、2007年にはアラブ首長国連邦のシャルハ・ビエンナーレ8と第2回モスクワ・ビエンナーレといったように、近年立て続けに国際展に参加している。シャルハ・ビエンナーレでは最高賞を受賞した。森美術館に巡回した「アフリカ・リミックス」では共同名義で出品していたのも記憶に新しい。今回、単独名義では日本初となる。
本展では、アニメーションを用いた新作の映像作品《Empty Skies – Wake Up》(約7分)を発表する。

Avish Khebrehzadeh アヴィシュ・ケブレザデ

1969年テヘラン(イラン)生まれ、ワシントンDC在住。アサッド大学(テヘラン)で数学を、ローマ美術アカデミーで絵画を、コーコラン美術学校で写真を、コロンビア特別区大学で哲学を学ぶ。イスタンブール・ビエンナーレ、ヴェネツィア・ビエンナーレ、フリーズなどグループ展、国際展への出品多数。2008年、ローマ現代美術館(MACRO)などでの個展が注目を集めた。出品作の《中庭》は、ドローイング+アニメーションの多層構造を持つヴィデオ・インスタレーション。イランを代表するコレクション、ホナート美術館(Honart Museum)の所蔵である。日本初紹介。

Kim Jungwook キム・ジュンウク

1970年ソウル生まれ。ソウル在住。1994年徳成女子大学美術学部絵画専攻東洋画科卒業。2006年ソウルのギャラリー・スケイプ(Gallery Skape)で個展。2007年ソウル市立美術館の「韓国の絵画 1953-2007」展に選ばれるなど、韓国注目のアーティストのひとりである。
今回は、韓紙に墨で顔を描いた2000年から2008年までの作品を、6点出品(うち3点は新作)。日本初紹介となる。

Jose Legaspi ホセ・レガスピ

1959年マニラ生まれ。マニラ在住。サント・トマス大学で動物学を、また同大学院で生物化学を学んだ後、フィリピン大学美術学部で学ぶ。第4回アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2002)、シンガポール・ビエンナーレ(2006)など国際展、グループ展への参加多数。日本での紹介は、「アンダー・コンストラクション」展(2002、国際交流基金フォーラムほか)以来、久しぶりである。
今回は、作家自ら選んだドローイング485点を、インスタレーション的に展示する。

Nalini Malani ナリニ・マラニ

1946年カラチ(現パキスタン)生まれ。ムンバイ在住。ニュー・ミュージアム(2002-03、ニューヨーク)、ピーボディ・エセックス博物館(2005-06、マサチューセッツ州セーラム)、アイルランド近代美術館(2007、ダブリン)で個展を開催するなど、名実ともに、インド、あるいはアジアを代表するアーティストである。
今回は、《記憶:記録/消去》(1996年)と《染み》(2000年)とこれまでの代表的なアニメーション作品を発表する。なお《染み》は福岡アジア美術館でレジデンスを行った際の制作作品である。

Nara Yoshitomo 奈良美智

1959年弘前市生まれ。栃木県在住。愛知県立芸術大学大学院修了後、デュッセルドルフ芸術アカデミーにて学び、A.R.ペンクのクラスでマイスターシューラーを取得する。ここ数年の個展をあげても、吉井酒造煉瓦倉庫(2006)、金沢21世紀美術館(2006)、マラガ現代美術館(2007)、デンハーグ現代美術館(2007)、バルティック(2008、ニューカッスル)などと数多い。
本展では、1987年以降2008年までのドローイング131点と、新作の小屋《My Drawing Room 2008, bedroom included》(grafとの共同制作)を発表する。

Julião & Manuel Ocampo
ジュリアオ&マニュエル・オカンポ

マニュエルは1965年ケソン・シティ(フィリピン)生まれ。マニラ在住(国籍はアメリカ)。ジュリアオはその息子。ドクメンタ(1992)、リヨン(2000)、ヴェネツィア(2001)、ベルリン(2001)、セビリア(2004)などのビエンナーレ、国際展に数多く参加。アメリカにおけるアジア系アーティストとして、世田谷美術館など、日本でも紹介されている。今回は、これまでのバロック的とも称された作風をがらりと変えて、息子ジュリアオと現地制作したインスタレーションを発表する。

S. Teddy D. S. テディ D.

1970パダン(インドネシア)生まれ。ジョグジャカルタ在住。スラカルタとジョグジャカルタのインドネシア芸術大学で学ぶ。インドネシアを中心に、絵画、インスタレーションのほか、パフォーマンスを制作、発表。「AWAS!インドネシアの新しい現代美術」(2000)や「アンダー・コンストラクション」(2002)を通して日本でも紹介されている。今回はこれまで描きためてきたドローイングから43点を出品。

Sakagami Chiyuki 坂上チユキ

本展では、1970年代から新作までのドローイングを、12点出品。

Pinaree Sanpitak ピナリー・サンピタック

1961年バンコク生まれ。筑波大学芸術専門学群デザイン専攻視覚伝達コース卒業。女性の乳房や胴体をモティーフにした作品で知られる。第3回アジア・パシフィック・トリエンナーレ(1999)など国際展への参加多数。「東南アジア来るべき美術のために」展(1997)や「第2回福岡アジア美術トリエンナーレ」(2002)など、日本での紹介も数多い。
今回は、1990年から2008年まで描いたドローイング多数を、壁にかけるのではなくて、テーブルに載せる形で出品する。

Mithu Sen ミトゥ・セン

1971年ブルドワン(インド)生まれ。デリー在住。ヴィスヴァバーラティ大学大学院(シャーンティニケターン)で絵画を学んだ後、グラスゴー美術学校に留学。1998年AIFACS(国際美術家連盟アジア太平洋地域会議)絵画部門賞を受賞。インドを中心に作品を発表してきたが、2006年、2007年とニューヨークのボセ・パシアで個展を開催して好評を博す。
今回は、国際交流基金のJENESYSプログラムにより徳島県の阿波紙ファクトリーに滞在し、そこで制作した大きな和紙をベースにした、新作のインスタレーション、《翻訳で失われるものはなにもない》を発表する。

Aditi Singh アディティ・シン

1976年グワハティ(インド)生まれ。ムンバイ在住。インターナショナル・スクール・オブ・アート(イタリア・モンテカルロ)、ペンシルバニア美術アカデミー修士課程(フィラデルフィア州ペンシルバニア)、ニューヨーク・スタジオ・スクールで学ぶ。
今回は、花を描いた静謐なドローイング4点と、鳥の群れを描いた40点組のインスタレーション的なドローイングを出品する。

Shooshie Sulaiman シュシ・スライマン

1973年ムアール(マレーシア)生まれ。クアラルンプール在住。マラ工科大学を卒業後、現在同地でアーティスト・ランのオルタナティヴ・スペースを運営する。2007年のドクメンタに参加。
今回は、そのドクメンタでも出品された日記的なドローイング(彼女はどこかへ出かけるとき、いつもそれをケースに入れて持ち歩く)を16点出品するほか、短期滞在型のパフォーマンスを行う。 

Tsuji Naoyuki 辻直之

1972年静岡県生まれ。東京造形大学美術学科Ⅱ類 (彫塑コース)卒業。神奈川県横浜市在住。2004年には「カンヌ国際映画祭」監督週間に《闇を見つめる羽根》が招待上映された。また2007年には、愛知県芸術文化センター・オリジナル映像作品として制作された《影の子供》が、アナーバー映画祭で奨励賞を受賞。2007年のパラソル・ユニット(ロンドン)でのグループ展、横浜美術館での上映会(「動く絵」の冒険)、2008年のアート・バーゼルにおけるコルヴィ=モーラ(Corvi-Mora)のブースでの紹介など、アートの領域における評価も急速に高まりつつある。
今回は、木炭ドローイングによるアニメーションを二点発表。ひとつは《影の子供》(約18分)、もうひとつは新作《エンゼル》(約6分)で、後者は日本初公開となる。

Ugo Untoro ウゴ・ウントロ

1970年プルバリンガ(インドネシア)生まれ。ジョグジャカルタ在住。インドネシア芸術大学(ジョグジャカルタ)で学ぶ。インスタレーションや絵画を中心に発表する一方で、詩も描き、詩画集も出している。全身に刺青をしているが、自らのアトリエを若手アーティストに開放するなど、当地では兄貴分的な存在である。今回は、描きためていたドローイング34点を出品。

イベント情報

アーティスト・トーク

マニュエル・オカンポ+ピナリー・サンピタック+ミトゥ・セン

日程

2008年8月26日(火)

時間

14:00-16:00

場所

企画展ギャラリー *参加無料(要観覧券)、申込不要

スクリーニング&トーク

辻直之

日程

2008年9月13日(土)

時間

14:00-16:00

場所

講堂(地下1階) *聴講無料、申込不要(先着150名)

シンポジウム

「ドローイング再考  テクネーとアートのはざまで」

日程

2008年9月27日(土)

時間

13:00-16:00

場所

講堂(地下1階) *聴講無料、申込不要(先着150名)

主催

東京国立近代美術館、国際交流基金

パネリスト(50音順)

金井直(信州大学人文学部准教授)
斎藤環(精神科医、爽風会佐々木病院精神科診療部長)
ヤン・ジョンム(韓国芸術綜合学校美術院美術理論科准教授)
中林和雄(当館企画課長)
保坂健二朗(当館研究員、本展キュレーター)*モデレーター

ギャラリー・トーク

保坂健二朗+中村麗子(当館研究員、本展キュレーター)

日程

2008年9月5日(金)
2008年9月19日(金)
2008年10月3日(金)

時間

18:00-19:00

場所

企画展ギャラリー *参加無料(要観覧券)、申込不要

カタログ情報

開催概要

会場

東京国立近代美術館 企画展ギャラリー

会期

2008年8月26日(火)~10月13日(月)

開館時間

10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
(入館は閉館30分前まで)

休室日

月曜日(9月15日と10月13日は開館、9月16日休館)

観覧料

一般 850(600)円/大学生 450(250)円
*( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
高校生および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料。

入館当日に限り、「壁と大地の際で」と所蔵作品展「近代日本の美術」もご観覧いただけます。

主催

東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国際交流基金

協賛

日本航空

巡回

京都国立近代美術館:
2008年11月18日(火)~12月21日(日)

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