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萬鉄五郎展

 東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、岩手県教育委員会と朝日新聞社 は、没後七十年にあたる1997(平成9)年に「萬鉄五郎展」を開催するこ とになりました。

 1953(昭和28)年、東京国立近代美術館において、展覧会「四人の作 家」のひとりとしてとりあげられ、これが戦後はじめての本格的な回顧展とな りました。それ以来、今日まで、各地でたびたび萬鉄五郎の回顧展が開催され てまいりました。その間、萬鉄五郎研究は深められ、日本近代美術史にしめる 位置も大きなものとなり、またその作品も、ひろく親しまれるようになってま いりました。

 萬の没後七十年を記念して企画された今回の展覧会は、多くの作品のなかか ら精選し、彼の芸術の真価を問おうとするものであります。とくに、この展覧 会では、今日までの萬鉄五郎研究の成果をふまえつつ、新たな知見をくわえた うえで、単なる網羅的な回顧展とはことなったものにしたいと思います。その 大きな特色とは、その生涯の各時期を下記のように三章にわけて、彼が抱きつ づけた芸術の問題と近代日本美術史の問題とを重ねあわせながら、その軌跡を あとづける点にあります。こうした視点にたつことができるのも、それだけ萬 鉄五郎のひとつ、ひとつの作品が、今日の私たちにとって、多くの問題をなげ かけているからだと思われます。

I フュウザン会時代  後期印象派絵画の受容

 東京美術学校で学んだ外光派表現と離別して、後期印象派絵画から影響を受 けるという飛躍とフュウザン会への参加(1912年)、それは一人の前衛画 家の誕生を告げるものでした。同時に、「裸体美人」(1912年)をはじめ とするこの時期の作品は、日本の近代美術につねにまつわる受容の問題を考え るときに、多くを示唆するものであります。

II  土沢時代     前衛と土着(東北)性

 萬は、1914年秋から16年初めまで、東京をはなれ、郷里岩手県東和町 土沢で制作に没頭しました。その間は、後期印象派以後の新しいヨーロッパ美 術、すなわち同時代の美術に感応しながら、独自の造型思考を深めていきまし た。それは、キュビスムを志向するとともに、風土に密接にむすびついた表現 となっていきました。ここで鮮明となる土着(東北)性とは、当時にあって最 も前衛的なキュビスムという「近代」(モダン)から生まれたものと対局にあ る要素だといえます。いわば、この時代は、「近代」と「土着性」という両極 が、萬というひとつの個性のなかで、融合されようとしていたといえます。同 時に苦闘にみちたこの融合こそが、彼の芸術の核を形づくっていたといえるで しょう。

III 茅ケ崎時代    日本的な油彩表現としての「洋画」の形成

 萬は再度上京した後、1919年から没年まで、神奈川県茅ケ崎市ですごし ました。その間は、ヨーロッパの前衛美術の摂取から距離をおきながら、「東 洋回帰」と自身で言うように、南画などの伝統絵画に関心を深めていきました。 この大きな展開からは、東西両洋の美術をふまえた独自の表現主義的な作品が 生まれました。それは、大正期後半の洋画界にみられた日本的な油彩画への志 向と、無縁ではなかったといえます。萬が求めた日本的な油彩画ー「洋画」と は、どのようなものであったのか。そして、その作品の近代日本美術のなかで の位置を考えたいと思います。


展覧会概要

展覧会名: 萬鉄五郎展
Tetsugoro Yorozu
会 期: 1997(平成9)年3月15日(土)―5月11日(日)
月曜日休館 ただし5月5日(月)は開館、翌6日(火)が休館
午前10時−午後5時(入場は、午後4時30まで)
夜間開館:毎週金曜日午後8時まで(入場は、午後7時30分まで)
会 場: 東京国立近代美術館
〒102 東京都千代田区北の丸公園3-1
tel.03-3272-8600(NTTハローダイヤル)
http://www.momat.go.jp/(インターネット・ホームページアドレス)

(本展終了後、次の会場に巡回します)
京都国立近代美術館1997(平成9)年5月20日―6月29日
岩手県立博物館 1997(平成9)年7月11日―8月24日

主 催: 東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、岩手県教育委員会、朝日新聞社
観 覧 料: 料金未定
一般    円 (  円)
高校生・大学生   円 (  円)
小学生・中学生   円 (  円)
* 消費税込み *()内は20名以上の団体料金
担 当: 市川政憲、尾崎正明、蔵屋美香(東京国立近代美術館)/島田康寛、 山野英嗣(京都国立近代美術館)/田中淳(東京国立文化財研究所)/ 斉藤里香(岩手県教育委員会事務局文化課)/小野公久、津田真希子 (朝日新聞社文化企画局企画第一部)
報道・広報窓口、お問い合わせ先:
朝日新聞社文化企画局 津田真希子 (写真等の資料請求先は、朝日新聞社へ)
〒104-11中央区築地5-3-2
tel.03-5540-7450 fax03-3546-1894.

東京国立近代美術館 企画・資料課 普及係 都築千重子・大谷和香子
tel.03-3214-3305(直通) fax.03-3213-1340

展覧会担当者へのお問い合わせ:
蔵屋美香、尾崎正明(東京国立近代美術館)
tel.03-3214-2561(代表) fax.03-3213-1340