平成28年度 インターンシップ生のことば

A 学芸・コレクション Sさん

3000平方メートルにも及ぶ企画展並みのスペースで、どのようにして所蔵作品展(MOMATコレクション)が組み立てられてゆくのかを学びたく、インターンを志望しました。

この1年間、展示会場案の図面・実際の展示会場図面の記入、展示替え作業の見学、作品の出陳記録の記入などを通して、どのようにして展覧会が組み立てられてゆくのかを学びましたが、それだけではなく、美術館の「素顔」は所蔵作品展にあるという、これまでに気づくことのなかった「本質」を学ぶことができました。所蔵作品展は、他館から作品を借りて行われる企画展とは異なり、その館の所蔵作品のみで構成されますが、作品同士の間隔や前後の作品によって、作品が鑑賞者に与える印象は、まるで人間の表情のように無限大に広がることを知りました。

とりわけ、私がインターン活動の中で最も印象に残っているのは、所蔵作品の他館への貸出・返却作業の立ち合いでした。この作業を通して、所蔵作品は自館だけでなく、他館の展覧会を構成する重要な要素であることを学びました。さらに、その際に行う作品状態の点検を通して、作品を後世に残すことの重要さと、それが学芸員の使命であることを痛感しました。

幸運にも、春から学芸員の職に就くことができました。東京国立近代美術館のインターン活動で学んだことを活かし、美術館の「素顔」である所蔵作品展をどのようにして組み立てるかをこれから追究したいと思います。

A 学芸・コレクション Hさん

美術課写真室のインターンでは、作家調査・収蔵庫での作品整理・作品カード管理などの作業を主に担当しました。心に深く残っているのは、一年間を通じて、同じ展示を繰り返し丹念に見るという行為だったかもしれません。毎週の勤務の度に、コレクション展や企画展の展示室を訪れると、前の週には分からなかった違いが見えてくることは、とても新鮮な経験でした。展示替えの期間を経て、新しい展示のために生まれ変わった展示室を見ると、その空間の変貌に驚かされました。それは、繰り返しの鑑賞が与えてくれた発見だったように思います。インターンの期間も半ばを過ぎた頃からは、研究対象として魅かれ続けてきた写真家の収蔵作品についての調査を任されました。館の貴重なコレクションの一角を担う作品群の調査を通じて、より一層の責任感を覚えるとともに、美術館という現場における実践的な調査の手法についても多くのことを学びました。展示替えや収蔵品の撮影、作品の貸出・返却の合間に交わされる会話を通じて、それぞれの学芸員の方々の知識の深さ、微小な単位で指示を出される真剣な態度、運送会社や他館の学芸員の方々との協働性、個性を学びました。目の前で生の作品に触れることで、作品の持つ力に圧倒されるという経験を幾度もしたことは、美術の研究に関わる者として、必ず糧になってゆくと思います。本当にありがとうございました。

B 学芸・企画展 Iさん

企画課インターンでは、主に企画展の準備段階から展覧会後の撤収まで、また、企画展にまつわる広報の仕事を経験させていただきました。過去の展覧会の調査や参考文献の収集、他館への出品依頼の資料作成などを行ったことは、展覧会の根幹となる「調査」の重要さを改めて考える良い機会となりました。また、会期が近くなると、図録に掲載される文章の校正や設営作業の見学、搬入された作品の状態チェックなどを通して、展覧会が作られる過程をより間近で体感することができました。それらに加えて、自分が美術館での仕事について疑問に思っている点を学芸員の皆さんに直接質問することもでき、現場を知る貴重な経験となりました。美術は社会とどのように関わっていけばよいのか、考える上での手がかりを得たいという思いでこのインターンシップに応募しましたが、今まで何となくのイメージしか持っていなかった学芸員の仕事を一年間経験できたことで、様々な専門性が集約されて展覧会が作られていることを改めて実感するとともに、これから自分が養わねばならない能力は何かを考えることもできました。

B 学芸・企画展 Sさん

東京国立近代美術館の企画展は、国内であまり紹介されてこなかった作家の回顧展が多いことが特徴だと考えます。私は研究の蓄積がない作家の展示が企画されるプロセスを知りたいと考え、平成28年度のインターンシップを志望しました。

先行研究が不十分な作家の展覧会の準備をする上で最も重要だと感じたのは、やはり年表や文献リストの作成、資料のスキャン、作品画像の整理などの地道な作業です。資料整理やカタログ校正が曖昧だと後世に間違った情報を伝えてしまうため、最も神経を使って臨んでいると感じました。

次に重要だと感じたのは、より多くのお客様に来てもらうための戦略です。例えば美術館で詩人・吉増剛造氏の作品を展示するという異色の企画展では、作品展示に留まらず毎週のように対談、朗読、音楽演奏、映画上映などが催され、イベントのお手伝いをするなかで、普段美術館に馴染みのない方も来館していると感じました。また一般にはあまり耳慣れない山田正亮という画家の回顧展のプロモーションにおいては、担当学芸員だけではなく事務の方も交えた意見交換の場を初めて設けたり、私自身も一若者として意見させて頂いたりと、全館一体となって知恵を絞る重要性を感じました。

この一年を通じて学んだ「未踏の領域に挑戦するための執念や緻密さ」、「時代に合わせて従来のやり方を変える柔軟性」を忘れず、後世の研究に貢献し、多くの人々にとって魅力的な展覧会について考え続けていきたいと思います。

C 美術館教育 Mさん

作家の考える「芸術」「美」と、鑑賞者の考える其れとの間の距離を、もう少し縮めることは出来ないだろうか。そう思い、美術館の教育普及に興味を持ちました。

本インターンで見学させて頂いた数々のギャラリートークにおいて、鑑賞者の方々は、「この絵はどうして描かれたのだろう?」という疑問まで、自然と導かれて行きました。ガイドスタッフの方々の丁寧な対話術により、鑑賞者と作者が一瞬出会うような時間が生まれ、それが鑑賞となるのだと思いました。

しかし、自らがトークを実践する中でその印象に少し変化がありました。二者が近付くことは確かに鑑賞の充実を図ることが出来ますが、必ずしもそれが全てではありません。例えば子どもの感性は、作者からどんどん離れていっても、自分の世界を構築することができます。知らない人の知らない作品に、平気で自分のタイトルをつけることが出来るのです。トーカー側が参加者の新鮮な言葉に影響を受ける機会は度々あり、その様な場面からこのことを強く感じました。対話というツールが、ここまで美術鑑賞の幅を広げるのだと、とても強い印象を受けました。

「対話」という形により、美術鑑賞の充実と誰にでも可能な美術鑑賞を実現し得ること、それを得て美術は社会において多くの可能性を持つこと。インターンで私が得たこれらの見解はまだ「気付き」に過ぎませんが、ここから更に勉強して行きたいと強く思うようになりました。

C 美術館教育 Oさん

長いようであっという間だったインターン活動がもうすぐ終わろうとしています。正直、まだまだやりたいというのが本音です。一年を通して、美術館で行われている美術教育関係のプログラムに参加できたことは大変貴重な体験でした。

毎日行われる所蔵品ガイドから、学校やクラス単位で訪れるスクールプログラムの受け入れ、KIDS MOMAT、おやこでトーク、夏の指導者研修…どれも内容の濃いものばかりでした。こうしたプログラムを通して、来館者のみならずガイドスタッフさんや学校の先生とも多くのコミュニケーションをとれたことも収穫の一つです。夏の指導者研修では、普段滅多に関わることの出来ない、日本全国の図工美術の先生方や美術館の教育普及の方から、学校や美術館で行われている鑑賞教育について直接お話しをうかがえました。この研修で得たものが、後日行われた小中学生向けのギャラリートークにも生かせたのではないかと感じています。

普段は見学しているギャラリートークに一度トーカーとして参加させていただきました。

作品の選定からトークの内容まで自分で考えて計画を練りますが、実際は参加者の意見によりトークの流れは大きくブレていきます。参加者の意見をうまくキャッチして、投げ返すことは容易ではありません。まったく予想外の展開が起きることもあります。しかし、参加者によって毎回まったく別のトークが行えることが、ギャラリートークの面白いところです。

鑑賞する人の数だけ鑑賞教育でできることがあるのだと強く感じた一年でした。今後もまだまだ変化を続けていく鑑賞教育の行く末を見守ると同時に、そのために私自身何ができるのか考えていきたいと思います。

E 工芸館・学芸全般 Aさん

工芸館のインターンを終えて、私は学芸業務について広く知ることができました。主に教育普及や展覧会準備、広報活動に携わりました。

教育普及では、実際に作品を手に取り作品理解を様々な角度から深める「タッチ&トーク」が大変興味深いものでした。素材を知ることで、さらに工芸作品の良さを知ることができると思いました。展覧会準備では、日本と西洋の近代工芸に関する展覧会に携わりました。展覧会コンセプトの設定から展覧会会場での展示に至るまで、どのように展覧会の見せ場を作るのかという点が参考になりました。広報業務では、集客を意識した段階的な広報活動が行われており、展覧会の成功も広報活動によって支えられていることを感じました。

インターンを通して様々な経験をさせていただき、美術館の役割について考えることができました。インターンで学んだことを活かし、今後も学芸員として精進してゆきたいと思います。1年間ありがとうございました。

E 工芸館・学芸全般 Hさん

私は本インターンシップで資料整理や展示準備、ワークショップ補助等を行いました。特に記憶に残っている活動は夏休みに行ったこどもタッチ&トークや陶芸ワークショップです。こどもを対象としたワークショップは、大人を相手にするよりも様々な面で配慮が必要であり、学ぶことも多くありました。こどもの視線の高さを考えた視線の合わせ方や、作品に触れる際にどこまで補助を行えばいいのか、どのように補助をすればいいのかといった点は中々上手くできませんでした。他には企画展の展示変え作業が初めての経験であった為、多くの事を学ばせていただきました。漆を使った作品に対しての慎重な取り扱いや、反対にとても大きく、重量のある作品を館内で組み立てた際には多くの人で協力する必要があるなど、作品毎に適切なやり方があると知りました。

美術館では幅広い層の多くの人が利用する施設であり、学芸員にはコミュニケーション能力が重要であると再認識しました。また、私のインターンシップの目的であった美術館における教育普及活動については、ワークショップ等で実際に体験することが重要であり、ただ作品を見るだけでなく、直に触ることでこどもが何を考え、感じるのかということを考えていかなければならないと思いました。本インターンシップを通して美術館が作品を展示するだけの場ではなく、積極的に活動を行っていく施設なのだと改めて考えさせられました。

E 工芸館・学芸全般 Kさん

工芸館のインターンシップにおいては、学芸員業務のさまざまな側面を体験することができ、大変貴重な機会となりました。作品の取り扱いなどの学芸員特有の技能だけでなく、電話応対や来客対応、基本的な機器操作や資料等の作成などといった、どのような形で社会に出るとしても欠かせない能力が身につきました。

私が一年間の研修を通じて美術館の大きな役割の一つは、作品と人間を繋ぐことだと実感しました。工芸館においては、来館者は展示されている作品を観賞するだけでなく、タッチ&トークという定期イベントを通して作品を直接手で触れて観賞することが可能です。そのイベントの補助を行いつつ参加者の様子を見ていると、やはり展示室で観賞を行っているだけでは引きだせない反応も多数確認することができ、こうした教育普及活動の重要性を感じました。

また、学校行事の一環として団体で来館した児童・生徒の鑑賞授業や、美術の教員研修にも参加した経験から、教育普及活動を学校現場で行うにあたっては、教員との連携も欠かすことができないと学びました。美術の授業として教室内での鑑賞活動には限界があると多くの教員が感じている一方で、なかなか美術館へ鑑賞活動を行う時間を取ることができない実情があると教員研修で伺い、強い問題意識を持つきっかけとなりました。

この研修の経験を通じて得たさまざまな技能や考え方を今後の人生においても生かしていきたいと思います。一年間お世話になりました皆様に心より御礼申し上げます。

F フィルムセンター・学芸全般 Kさん

院生生活1年間を通して映画研究の基盤となるのは古典作品なのではと考えたことをきっかけに、古典作品に触れる機会を求めてフィルムセンターのインターンシップに応募しました。

大まかな研修活動を記すと、事業推進室ではホームページ作成や資料・雑誌から情報を集める作業などを通して上映・企画に関わる事業のサポートを体験しました。映画室では、研究員の方がロシアのフィルム保存機関で集めた情報を整理するという、一般学生が滅多に携われないであろう機会に恵まれました。情報資料室ではパンフレットや脚本等の整理を行い、フィルムと同様に重要な保存物であるノンフィルム資料にも触れることができました。ほかにも相模原分館での研修、試写会や映画関係施設の見学に同行させていただくこともありました。

このようにみると多様な研修内容ではありますが、一方で作業としては「地味」なものが多かったです。そうした地味な作業は、資料とひたすら向き合うという院生生活にも似た感覚があり、日々コツコツと続けていく大変さをフィルムセンターでも改めて実感しました。また、日本で唯一の国立映画機関であるフィルムセンターですが、研究員・職員の方々の仕事も決して派手なものではなく、地道な作業が多いことに驚き、その細かな作業が実を結んで「保存」という結果につながるのだということもこのインターン活動を通して感じることができました。

フィルムセンターでの経験は、単なる就労体験以上のもので、またインターンシップ応募の目的をも越えた経験となり、今後の選択肢が広がったように思います。そして、ここでの経験を残りの学生生活や論文執筆にも活かしていきたいです。

F フィルムセンター・学芸全般 Mさん

東京国立近代美術館フィルムセンターでのインターンを希望した理由は大学院での映画の研究を進めるうちに日本における映画史料の保存について関心を持ち、そのような史料の保存活用を行う日本の中心機関であるフィルムセンターの仕事は実際どのようなものなのかを知りたいと考えたためです。

最初に配属された事業推進室では上映会準備や上映映画の確認、紹介文などの執筆を行いました。上映会準備では映画雑誌や書籍などを探し、これを基に文章を作り上げていくため大学で学んだ史料収集などを活用できました。次に配属された映画室ではNFCDの管理に関わらせて頂きました。NFCDにまだ入力されていない作品内容を入力したり、寄贈された小型映画の調査、整理をするなどしました。また相模原にある分館に行く機会もあり、実際に収蔵庫や寄贈された映画の確認作業などを見学しました。最後の配属先となった情報資料室ではパンフレットなど紙史料の管理に携わらせて頂きました。こちらも入力作業や整理が中心でしたが、展示会準備にも携わらせて頂き、照明の調整作業など実習ではあまり触れる機会の無いものをやらせて頂き、とても良い経験になりました。

全体としては入力や整理といった裏での地味な作業が多かったですが、こういった作業によって映画史料の保存や上映、研究といった外部からのアクセスなどを支えていることが分かりました。今回学んだことを今後も活かしていきたいと思います。