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工芸トークオンライン

工芸のことを知りたいけれど、専門用語がいっぱいでなんだか気後れしてしまう…そんな方はいらっしゃいませんか?でも本当に大切なのは、専門用語の奥にある作り手の想い、そしてそれを受け取るセンサーです。
工芸トークオンラインは、参加された皆さんが、ご自身の見る力と感じる心に気づいていただくための時間です。といっても、眉間にしわを寄せなくても大丈夫!工芸の豊かな質感や技術の粋を味わいながら、色・かたち、好き嫌いなど、短く簡単なフレーズからはじめましょう。ときには「ああ!」や「おや?」などの感動詞が、作品のエッセンスを呼び起こすかもしれません。
工芸のことを語れるとちょっとカッコイイです。私たちの内にある伝統と広い世界の共通言語がそこにはあります。ぜひお試しください。

 

◎開催日時:不定期開催

◎開催方法:zoom(ウェブ会議ツール)
※PCまたはタブレットのご使用をおすすめします

◎ご案内担当:国立工芸館ガイドスタッフまたは同研究員

◎ウェルカム!
・工芸館(美術館)での鑑賞に初挑戦
・リピーターさんももちろん大歓迎
・リラックスして作品を見たい
・おうち時間を楽しみたい

◎お申込はこちら:Peatix

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鑑賞素材BOX(デジタル鑑賞教材)

国立美術館所蔵のなかから選りすぐりの作品の高精細画像を、みどころや子どもたちのリアクション、キーワードなどとともにご紹介しています。

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ようこそ!「工芸トークオンライン」へ ―見る力に気づくためのプロセス 今井陽子(国立工芸館主任研究員)

 工芸トークオンラインは、web会議システム(Zoom)を使った鑑賞プログラムです。国立工芸館の所蔵品1点をご紹介し、参加者との対話を重ねていきます。時間は各回40~50分。いつも最後はお名残惜しく、異なる地に暮らす方々とともに作品にかけた花結びを解く気持ちで一期一会のひとときをクローズしています。
 さて、工芸トークオンラインでは毎回複数の画像を用意しています。最初はグンと寄ったクローズアップです。個人差はあれども人の眼の機能は素晴らしく、関心を向けたところに実に素早くピントを合わせていくようです。そんな皆さんの優れた眼の代わりとするのですから、画像の選択と順列組み合わせの検討は重要です。

 ところで工芸は、私たちにとって、とても身近なオブジェクトです。でもあまりに身近すぎて、なんといっても手に取ったり、身体を包まれたりするものだからか、その成り立ちについては見過ごしがちです。むしろいちいちと考えなくてもいい。造形の発端や理屈は模様や肌触りといった感覚的な喜びに換えて、いつの間にか享受させてしまう。それが工芸というものの在り方のようです。
 そうした工芸の鑑賞をクローズアップ画像から展開するのは、まずは日ごろの関係性を一旦断ち切ってしまおうと考えたからでした。平常であれば否応なしに見えてしまう壺や茶わんや箱、着物などの工芸の「種類」。それらのフレーミングがもたらす固定観念より先に、そこで起きているさまざまな現象を味わいましょう。展覧会場では不可能な顔を寄せるほどの間近さで、作品への心理を近接させるプロセスです。

図1 初代宮川香山《色入菖蒲図花瓶》c.1897-1912
国立工芸館蔵
撮影:斎城卓

 図1は実際にプログラムでご覧いただいた画像。最初に注目されたのは植物の美しさでした。「花が柔らかそう」「グラデーションがすごい」「葉っぱはシュッとしている」。発言の都度ファシリテーターがリアクションしながら描述を重ね、それが次の発言を促します。覗き込み、上下左右と走る眼と連動するように処々拡大。新たな発見。「右に(絵が)溶けているみたいなところがある」(図2)。そのわりに葉や花びらに幾筋も引かれた描線は他と変わらずクリアです。「!」「!?」「…これは何?」——感嘆符や疑問符と連なって、「図」優位だった視野のなかで「地」の存在が立ち上りました。
 このようなタイミングで、当プログラムでは情報提供も行います。時間を費やすのはやはり素材技法について。そこが関心に占める大きなところとなるのは確かです。しかし知識の習得は終着点ではありません。「ナニデデキテルノ?」は2016年の所蔵作品展のタイトルでしたが、実のところこれは「何が心を震わせるのか」と同義です。情報は直感でつかんだ事柄を裏付けるための手立ての1つにすぎません。
 それにしても、開始前には半ば腰が引けるように工芸の知識は何もないのだといっていた方々の、指し示す方向のなんと正しいこと。見ることでこんなにも作品に迫れるのかと毎度驚かされます。

図2

 もう一度図2をご覧ください。背景に絵が溶け込むようだったのは、焼きもの(磁器)である本作にかけた釉薬ゆうやくへの光の作用でした。ボディの材質を聞いてまた「?」が浮かびます。「焼きものにこんな風に絵が描けるのだろうか?」。ここで日常の経験も取り込まれます。「絵皿の模様はもっと色がくっきり塗り分けられていたような」。ぜひ自宅の器を触ってみてください。指の腹に模様の凹凸を感じるならばそれは上絵、つまり釉がけして焼成した上に模様を描き、再度焼いて定着させたものです。一方、釉下彩である本作では磁肌に滲むような色彩の妙が可能となり、後からかけた釉薬のガラス質の被膜がソフトフォーカスの効果ももたらして、花弁の柔らかさを一層引き立てました。

図3

 全図に切り替わってまた声があがりました(図3)。「シュッとした」葉の生命感が底から口までほとばしり、ボディの形状と調和して「凛としている」という意見も出てきます。部分は全体を築き、全体は部分に息づく。その行ったり来たりをするうちに、別の回でしたが「作者の頭の中を覗き見たよう」という感想もいただきました。実際に皆さんがグッときたところが作り手の想いと重なり合うことも少なくないのです。見たことへの意識が見る力の拡張・深化を導きます。工芸トークオンラインを通して、そのお手伝いが少しでもできたら嬉しいです。

(『現代の眼』637号より)