展覧会

会期終了 企画展

現代の布:染と織の造形思考

会期

会場

東京国立近代美術館工芸館

展覧会概要

人と布との関係は実に深く、長いものです。衣料、あるいは室内装飾として、布は、 私たちの生活を幾重にも取り巻いてきました。とくに、衣料を通して得た触覚の経験 は、私たちが布を視る際に強く働きかけてきます。布の表面で展開される文様のさま ざまなかたちや色を堪能しながら、目は、知らず知らずのうちにその構造の内側にま で入り込んでいって、実際に手を伸ばす前から、柔らかい、あるいはしなやかである といった風合いを味わっています。さらに、それらを着用に及んだときの温湿度さえ にも推量は及びます。幾世代もかけて培われた記憶が、それぞれの素材や技法が提示 するであろう肌触りや機能を予期させるのでしょう。

しかし、こうした親しみ深さが、布を鑑賞の対象とするときの妨げともなりかねない のです。触感というきわめて直接的な感覚が優位に立つほどに、視覚からの情報が後 方に回されることも少なくありません。のみならず、もっとも問題となるであろうこ とは、布が、その本来の目的ゆえに、多くの場合、何かへと転用されるべきもの、加 工を待つ素材として捉えられてきたことではないでしょうか。

戦後、染織による造形は著しい変貌を遂げ、既成の枠に納まりきらない作品の数々を 指して、ファイバー・ワーク、ファイバー・アートとする新しい用語が生まれまし た。それは、染織の、とくに織りの手法によって作家の自我を明かにしようとする試 みでした。複雑な織りの妙味が作り手の意思を表出し、多くの場合立体へと向かいな がら、力強く、個性的なかたちが探求されました。そこでは、布という旧来の形式と 概念とは、むしろ、背後に追いやられていたように思います。しかし、その中心的舞 台であったローザンヌのタピストリー・ビエンナーレにおける活動が停止するのと前 後して、そこで繰り広げられた創作の見直しがはかられるようになりました。そして それとともに、布という染織によるもっとも基本的な形式についてのもまた、論議に 上るようになってきたのです。

人と布とが綾なしてきた歴史の流れを受けて、布は、今日の芸術の領域においてどの ように位置づけるべきでしょうか。作家たちは布をどのように解釈し、自らの造形思 考を組みたてているのでしょうか。

ここで気づかされるのは、作り手たちが、布本来の意味、その形式、そしてそれを成 り立たせるための素材や技法の制約という外在する理路と、自らの内面に高まる創作 の意思とを協調させながら取り組んでいることです。彼らが作る布は、必ずしも実用 に供するものばかりではありません。あるいは使ったとしても存在し得るひとつのか たちとして志向された布は、作家とその周囲をとりまくものとの界面にある新しく提 示された皮膚のようなものと言えるかもしれません。

今展では、文様やテクスチャー、素材や技法の新たな認識が布をいかにして生成さ せ、そこに内在する意識が外部へと滲出し、さらに、空間へと作用するなど、布のさ まざまなかたちを並べ、そこに映し出された時代の息吹を探りたいと思います。14 名による約70点。

出品予定作家(敬称略・五十音順)

新井淳一、上原美智子、岡野優、川井由夏、北村武資、久保田繁雄、小宮康正、須藤玲子、土屋順紀、福本繁樹、福本潮子、藤野靖子、堀内紀子、八幡はるみ

イベント情報

ギャラリートーク

2001年9月22日(土)

上原美智子氏(出品作家)

2001年10月13日(土)

須藤玲子氏(出品作家)

2001年10月27日(土)

当館学芸員

午後2時から工芸館会場にて

開催概要

会期

2001(平成13)年9月22日(土)~11月18日(日)〈月曜休館〉
午前10時00分~午後5時(入館は、午後4時30分まで)
9月24日(月)、10月8日(月)は開館、翌日休館

会場

東京国立近代美術館工芸館
〒102-0091東京都千代田区北の丸公園1-1

交通

東西線「竹橋駅」下車徒歩8分(1b出口)
東西線・半蔵門線・都営新宿線「九段下駅」下車徒歩12分(出口2)

主催

東京国立近代美術館

観覧料

一般:830円(680円)
高校生・大学生:450円(330円)
小学生・中学生:330円(180円)
*消費税込み
*( )内は20名以上の団体料金

無料観覧日

11月3日(祝・土)

お問い合わせ

電話03‐3272‐8600(NTTハローダイヤル)
http://www.momat.go.jp/(東京国立近代美術館ホームページ)

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