平成29年度 インターンシップ生のことば

A 学芸・コレクション Sさん

学芸・コレクションのインターン活動では、様々な仕事を通して非常に近い距離で所蔵作品に接することができ、多くのことを学べたと感じています。他館への作品貸出では、貸出前の作品の状態を入念に確認し、新しい傷や染みがある場合には作品カードに記入する仕事を任せていただきました。この仕事を通して、作品も時間の経過によって変化する「もの」であることを再認識しました。展示替えの際には、軸を展示ケース内に掛けるなど、実際に作品に触れる機会を得ることができたことも非常に貴重な体験でした。また収蔵庫内の作品の保管状況を確認する作業では、作品の素材や技法によって保管の方法が異なり、また広さの限られた収蔵庫内で上手く場所を使って収蔵することが美術館にとって重要な問題であることを知り、作品をいかに保存し後世に残していくかということについて考えるきっかけとなりました。こうした活動を通じて、大学で美術史を学んでいる限りでは「観賞して楽しむもの」「研究対象として論じるもの」であった美術作品を、よりリアルなものとして感じることができ、美術作品を今までとは違った視点から見ることができるようになったと感じています。以上のようなインターンを通じて学んだことを存分に活かして、今後美術作品に関わる仕事に携わっていければと考えています。

A 学芸・コレクション Aさん

インターン活動を通して、多くの「現場」に触れさせていただきました。大きく「情報としての作品に関わる現場」と「モノとしての作品に関わる現場」に分けられます。前者は、所蔵作品の展覧会歴をデータベース化する作業、ツイッターのネタを考える仕事、所蔵作品が報道機関に公開・使用された際の記事のクリッピング作業など。後者には、収蔵庫にある作品の場所の確認、展示替えに関する作業(展示図面作成、展示室での展示替の見学)、作品カードへ出陳記録を記入する作業、修復作業の見学、作品の借用・返却の立ち会い、作品の状態チェック補助などがありました。

前者からは、SNSをはじめとし広報のかたちが多様化する中、美術館と作品の情報をどのように発信しているのかを学びました。後者では、作品と美術館のバックヤードを間近でみることができる点でとても貴重な経験ができましたが、一方で限られた空間で作品を保存・展示していくことの難しさなども目の当たりにしました。また、インターン用の机に座っている際、学芸員どうしの会話、外部との電話でのやりとり、会議室での打ち合わせなど、「現場」ならではの生の声をきくことができたことも私にとって大切な体験です。

上に示した「現場」いずれも、美術館と作品の力を最大に引き出す為の工夫にあふれている事を実感した一年間でした。どのようなかたちであれ、この貴重な経験を今後の人生に活かして行きたいと思っています。

B 学芸・企画展 Kさん

美術館の学芸員になりたいという思いで大学院に進学した私は、その実務的な仕事内容や勤務状況の雰囲気を実際に知り、具体的な目標として目指す手がかりを得たいと考えて、インターンに応募しました。

企画展インターンでは、展覧会が出来上がるまでの業務の補助を通じて、それぞれの仕事内容を垣間見ることができました。例えば、出展作品画像の整理、作品調書の作成、広報やイベントの打ち合わせ会議への同席、書誌情報の整理、カタログの奥付の編集、設営撤収作業や作品点検、イベントやワークショップのお手伝いなどが挙げられます。

いずれの業務においても、個性豊かな担当学芸員の方々が、それぞれ展覧会づくりのどこの段階にあるのかを踏まえながら実際のやり方を優しく丁寧に教えてくださったので、毎回の勤務が新鮮で一年間があっという間でした。

これらの業務を通じて、普段来場者として展覧会を訪れただけでは見えにくい要素であると言える、美術館内外の連携についても間近で見る事ができました。そして、広報や教育普及と事務部門、共同主催者のメディアや法人団体、運送会社や設計業者や印刷会社のプロの皆様、作品の所蔵先や作家関係者の方々など、多くの方々の知恵と努力が集合して、一つの展覧会が成り立っていることを改めて実感しました。

さらに、展覧会の骨格である企画内容とコンセプトには、学芸員の方々の専門性やそれぞれのご興味関心、そして綿密な調査や議論の成果が反映されていることを知りました。時には調査旅行や出張のお話をうかがう機会もあり、その準備の様子も垣間見ることができたので、自身がこれから大学院で学んでいくうえで身が引き締まる思いでした。今回のインターンで学んだ経験を活かしながら、今後もさらに精進していきたいと思います。

C 美術館教育 Iさん

一年間のインターンを通じて、おやこでトークや子ども美術館などたくさんの活動に関わらせていただきました。トークラリーや学校受け入れでは、自らトーカーとして子どもたちと作品をよくみてトークする機会もありました。また子どもたちの深い鑑賞を促すセルフガイドも制作しました。これらの現場での活動と並行し、鑑賞教育の理論についても学びました。東近美では理論と実践を共に重要視しているからこそ、実施されているプログラムは、その場限りのものではなく、継続され、そしてさまざまに応用できるとわかりました。

東近美でインターンをしたからこそ、得られた経験が数多くありました。東近美は、とても柔軟で、変化を恐れることがない美術館であると感じました。また現状で満足するのではなく、館全体で現代において美術館はどう在るべきなのかと突き詰め、より良くするために更なる改善や挑戦が常に行われていることも知ることが出来ました。教育普及の現場においても、より多くの人に作品を「よくみる」機会を持ってもらうために新たな試みが、多くの方との連携によって実行されていました。

インターンは大変貴重な経験でした。今後の活動の中で、このインターンの経験を生かして行きたいと思います。

C 美術館教育 Kさん

大学の博物館教育学の授業で東近美の教育普及活動についての話をきき、漠然と美術教育に興味を持ち学びたいと思いインターンに応募しました。

現場で学べることは、想像をはるかに超えるものでした。日々行われるプログラムを見学させていただいた時は、来館者が作品をみた時にどのようなことを感じるのか、人の数だけこたえがある面白さや、居合わせた人同士の考えがつながることで鑑賞が深まることなど、多くのことを吸収できました。また、その鑑賞をふかめるきっかけとなるトーカーの問いかけや「対話」がこの鑑賞の要になっていることを体感しました。

そして、見学だけでなく実践の機会を度々いただくことができたことで、より学びが深まりました。特に小学生に2作品のギャラリートークをしたことが印象に残っています。それまでの見学や学芸員さんからの御助言をもとにプランをたてて挑みましたが、プラン通りには行かないこともあり回毎にトーク内容は異なるものとなりました。しかしそれは美術作品を前にしたときに生じた感想・対話という生ものゆえのことであり、大変興味深く、楽しみながら一緒に鑑賞を行うことが出来ました。

様々な対象に向けての美術教育関係のプログラムを、一年間通して体感させていただけた大変貴重な日々でした。教育普及室での活動を通して学んだことをこれからに活かしてまいります。

D 図書資料 Yさん

アートライブラリは自館の展覧会資料を保存するだけでなく、様々な作家の資料を記録しています。この資料は展覧会を開く際、説明文などを書くための資料になったりします。館内電話で資料の問い合わせがあったりするのをみて、ライブラリは美術館の縁の下の力持ちなのだと感じました。また、自館の資料だけでなく閉鎖することになってしまった美術館から資料を寄贈されることもあります。私が関わった仕事はこの寄贈された資料のアーカイブ製作です。具体的には寄贈された資料を分類し検索しやすいようOPACに登録するというものでした。

初め、アーカイブを作るといわれた時は雑誌やカタログを一覧にするのだと思っていました。しかし、実際の資料の殆どは展覧会ハガキやパンフレット・写真・新聞の切り抜きでした。これらをOPACに登録できるようにするにはまずは典拠をとって正確な情報にする必要があります。不確かな情報では資料としての価値がなくなってしまうからです。しかし典拠をとるには、資料が古かったり情報が欠けていたりしていてとても難しく一つ一つに時間がかかってしまいました。けれど、その分達成感があり一日が終わるごとに充実感がありました。いつか自分が関わった作業が誰かの役に立つのかもしれないという実感があったからです。

幸運にも私は春から学校図書館での職を得ることが出来ました。そこでの仕事は完成された情報の中から求められたものを探し提供をするのだと思います。その際、情報を確かなものにし提供する側に立ったこの一年間の経験は何物にも代えがたいものになると感じています。このような機会を与えて下さり本当にありがとうございました。

F フィルムセンター・学芸全般 Kさん

留学先のストックホルム大学でスウェーデン映画協会のアーカイヴについて学んだ際、日本からの留学生として自国の現状について実地で知識を深めたいと考え、フィルムセンターでのインターンシップに応募しました。

最初の配属先の事業推進室では、実際の上映会にサポートとして立ち会うとともに、企画上映の準備として、HP・プログラムの校正・上映作品の紹介文執筆・海外作品の人名表記チェック・来年度の上映候補作品の下調べなどを行いました。次の映画室では、フィルムの運用管理やデータベースの内容修正などに加え、相模原分室にて可燃性フィルムの検査作業への立ち会いや保存庫の見学など、アーカイヴならではの非常に貴重な経験をさせていただきました。最後の情報資料室では、ノンフィルム素材のコレクションの見学、寄贈パンフレットの整理・登録作業などを通じて、日本における映画受容の歴史を垣間見ることができました。

活動期間中は、研究員の方々の該博な知識に触れ、今後の自分の研究意欲を刺激される日々でした。また、デジタル化の中で忘れてはならない映画というメディアの本来の物質性、それと不可分な技術の継承の重要さを改めて実感し、自分の中の「映画」の概念がより豊かになったように思います。各配属先で専門領域のスウェーデン映画に関連した業務を用意していただき、知識を広げられたことも大きな収穫でした。夏休みを利用した1ヶ月半の短い期間でしたが、非常に学びが多く充実したインターンシップでした。

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