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現代の眼 教育普及 「MOMATまるごと探検隊」ができるまで  

齊藤佳代 (企画課研究員)

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2023年から始まった「Family Dayこどもまっと」は、子どもが声をあげて泣いても笑っても大丈夫と謳い、子どもたちの初めての来館や、育児を理由に一時的に美術館から足が遠のく人々の来館を支援する取り組みである。ベビーカー置き場や授乳室増設といった環境整備に加え、来館する子どもとその保護者のためのプログラムを展開しているi。本事業には初年度から大きな関心とニーズが寄せられ、以後毎年継続して実施されている。 

2024年より教育普及室は新たに「MOMATコレクション発見隊」と「MOMATまるごと探検隊」の2種類のプログラムを開始した。「MOMATコレクション発見隊」は、スタッフiiとの気軽な会話を通して展示作品をみるもので、当館の定例プログラム「所蔵品ガイド」iiiなどで行っている対話を用いた鑑賞を応用したものである。一方「MOMATまるごと探検隊」は展示室を除く美術館の建物内外で行うもので、本稿ではその設計意図と改良の過程について述べる。 

「MOMATまるごと探検隊」が目指したもの

美術館の役割や魅力は展覧会や作品をみることにとどまらない。本プログラムは東京国立近代美術館(以下、当館)を「まるごと」体験することを目的とし、展示室以外にあるリソースに着目して構成した。ライブラリやミュージアムショップなどの美術館の施設、建築や屋外の空間、さらには当館の沿革も取り入れ、参加者の子どもたちが美術館とはどんな場所なのかを身体感覚を伴って実感することを目指した。 

たとえば当館の建築は谷口吉郎によるもので、梁や柱の意匠など造形的な特徴がある。中庭などには屋外彫刻もある。プログラム参加者のほとんどは未就学児であることから、空間や光、影、素材などに対して彼/彼女らの身体感覚を誘発し、好奇心を喚起するプログラムになるよう設計した。 

この身体感覚や好奇心を導くツールが「探検カード」である。カードの表面には写真1点が配され、屋外彫刻や館内の椅子などの「物」、建物の一部や特定の「場所」などが写されている。参加者はカードを手がかりに館内外をめぐり、写真の対象を探し当てた後、その物や場所を観察・体感することを目的にデザインした。 

初年に明らかになった課題

初年(2024年)の2日間の実施を通して、参加者の活動が観察や体感に至らず、写真に写った対象を「探し当てること」自体が目的化する傾向が確認された。要因として、以下の2点が挙げられる。 

1点目は探検カードのデザインにクローズアップ写真を多用したため、被写体の全体像の想像が難しくなってしまったことである。その結果参加者のエネルギーが「それを探すこと」に集中し、発見後に対象をよくみたり体感したりする体験に結びつきにくかった。2点目は運営面でのスタッフ間の認識共有が不十分だったことだ。スタッフがプログラムの趣旨と目的を十分に共有できておらず、対象物をみつけることがゴールとなってしまい、その場所でのさらなる活動へとつなげることが結果的に困難となった。  

2年目の更新 

  1. 探検カードのデザイン改良 

2年目(2025年)は、参加者が対象を想像しやすいよう、全体を写した写真や周囲の景色を含む写真を増やした。また、正方形に正円の写真をレイアウトした「のぞき穴」のようなデザインによって、探検でみつける対象が浮かび上がるような効果をねらった。さらに天地のない円形の写真を回転させながら対象を探ることで、探検カードを手にした瞬間から好奇心が喚起されるように工夫した。 

図1
  1. 運営面の見直し 

2025年には事前にスタッフ向けの説明会を実施し、プログラムの趣旨や進行方法について議論する機会を設けた。この場を通して探検カードを使ったアクティビティに加え、スタッフ自身の言葉で当館の魅力を伝えることが子どもたちの実感を補強するうえで重要であることが共有された。2025年の現場ではプログラムの趣旨理解がスタッフの裁量を拡げ、彼/彼女らのやりがいと参加者の満足につながった。 

2年にわたり実施した「MOMATまるごと探検隊」は、館の建築や沿革を扱う「ようこそ!MOMATへiv」やボランティアとの協働による勉強会「MOMATたてものと沿革勉強会(仮)」の発足へとつながり、当館の新たな魅力を伝える活動の萌芽ともなっている。

参考:表1

「Family Day こどももまっと」は、独立行政法人国立美術館が行う「おでかけ国立美術館」の一つで、2024年からAdobe財団の助成を受け行っている。
おでかけ国立美術館
https://odekake.artmuseums.go.jp(2026年6月10日)
「Family Day こどもまっと」紹介動画
https://www.momat.go.jp/learning/kids-family(2026年6月10日)
本稿にてプログラムに従事した者をスタッフと称するが、これはMOMATガイドスタッフ(当館ボランティア)に加え、教育普及室内外職員とインターンを指す。
2003年から実施している当館の定例プログラム「所蔵品ガイド」 https://www.momat.go.jp/learning/guided-tour(2026年6月10日)
東京国立近代美術館を初めて訪れた方を対象に建物と沿革、コレクションの特徴を30分でコンパクトに伝える「ようこそ!MOMATへ」を2024年「美術館の春まつり」で実施した。 https://www.momat.go.jp/events/20250319(2026年6月10日)

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