展覧会

会期終了 企画展

「日本画」の前衛 1938-1949

会期

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会場

東京国立近代美術館本館企画展ギャラリー

概要

社会的にも激動の時期である1930年代後半期、「日本画」の世界において、伝統的美意識による創造に決別し、新たな表現を目指す活動が起こりました。舞台となったのは1938年4月に結成された歴程美術協会です。彼ら「日本画家」たちは、抽象やシュルレアリスムは言うまでもなく、バウハウスの造形理論をも取り込みつつ「日本画」を制作し、その展覧会場にはフォトグラムや工芸、盛花までもが並びました。
 本展覧会は、この歴程美術協会を起点とした「日本画」における果敢な挑戦を、日本で初めて具体化された「前衛」意識と位置づけ、多角的に検証するものです。本展では、これらの「日本画家」たちが交流を深めた洋画家たちとの影響関係も探ります。また、戦争の拡大とともに未完の前衛と化した様相にも触れながら、歴程美術協会の戦後における再興とも言うべきパンリアルの誕生までを扱います。

ここが見どころ

歴程美術協会の活動の全貌が明らかに
初公開作品も充実

歴程美術協会の活動を紹介したこれまでの主な展覧会は、1988年に山口で、99年に京都で開催されたものでした。本展は、99年以降10年あまりにわたり蓄積されてきた研究の成果を、初公開作品を含めてご紹介する、決定版の展覧会です。

洋画もあわせて展示
「日本画」家の「前衛」的活動がよく分かる

靉光、村井正誠、長谷川三郎……歴程美術協会の作家たちは、このような洋画家たちとも交流関係にありました。本展では、彼らをはじめとする洋画家たちの作品もあわせて展示します。彼らの作品と比べてみることで、前衛的な「日本画」とはどのようなものであったかが浮かび上がってきます。

貴重な資料も公開

歴程美術協会展の芳名録には、靉光、福沢一郎、瑛九、柳宗理、東山魁夷など、当時のさまざまな芸術家たちの名前が並んでおり、同協会の活動がいかに注目を集めていたかが分かります。こうした資料によって、同協会とその周辺の「日本画」家の活動を立体的に紹介します。

展覧会構成

I. 「日本画」前衛の登場
本展覧会の冒頭を飾るのは山岡良文《シュパンヌンク》、山崎隆《象》の2点、ともに1938年の作品です。これらの作品の表現は、それまでの「日本画」にはまったく見られない純粋抽象表現でした。

II. 前衛集団「歴程美術協会」の軌跡
Iで紹介した山岡や山崎は歴程美術協会に参加していました。1938年4月に結成された同協会には、岩橋英遠、船田玉樹、田口壮ら「日本画家」以外にも、美術評論家の四宮潤一、自由美術家協会のメンバーでもあった濱口陽三らが含まれていました。同協会展に出品された作品には、抽象やシュルレアリスム、バウハウスなどヨーロッパ・アヴァンギャルドからの影響だけでなく、フォトグラムや陶芸作品、盛花などジャンルを超えた自由な表現が見られました。

III. 「洋画」との交錯、「日本画と洋画」のはざまに
歴程美術協会の山岡、岩橋、船田、丸木位里は、「日本画家」ではありますが、洋画の前衛集団である自由美術家協会にも属していました。また靉光、村井正誠などの洋画家も歴程美術協会展に足を運び、会員と親交がありました。こうした「日本画家」と洋画家の関係は、彼らの作品にもうかがえます。そこには、「日本画」と洋画双方に共通する、まさに前衛と言うべき造形感覚が見て取れます。

IV. 戦禍の記憶
歴程美術協会が結成された時期は、ちょうど太平洋戦争開戦前夜にあたりました。同協会展には、回を重ねるにつれて時局を意識した作品が出品されるようになり、戦線に召集される作家も出てきました。それまでの因習的な「日本画」から脱却しようとした彼らの試みは、このように戦争という時代の大きな波に飲み込まれてしまいました。

V. 戦後の再生、「パンリアル」結成への道
終戦を迎え、1947年ごろから、歴程美術協会の再興を思わせるような動きが「日本画」の画家たちの間に起こりました。その中心人物は、同協会に属していた山崎隆でした。そして48年3月に、山崎、三上誠、星野眞吾らにより「パンリアル」が結成されました。歴程美術協会の活動は、戦後パンリアルによって引き継がれ、「日本画」創造の新たな扉が開かれたのです。

イベント情報

講演会
山野英嗣(京都国立近代美術館学芸課長・本展企画者)
「『日本画』の前衛―『歴程美術協会』を中心に」

日程: 2011年1月29日(土)
時間: 14:00-15:30
場所: 当館地下1階講堂
聴講無料、申込不要、先着140名

カタログ目録情報

開催概要

会場

東京国立近代美術館 企画展ギャラリー

会期

2011年1月8日(土)~2月13日(日)

開館時間

10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
(入館は閉館30分前まで)

休館日

月曜日[1月10日は開館]、1月11日(火)

観覧料

一般 850円(600円) 大学生450円(250円)
※( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。

高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。

※それぞれ入館の際、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。
※本展の観覧料で入館当日に限り、同時開催の「栄木正敏のセラミック・デザイン―リズム&ウェーブ」(ギャラリー4、2F)、所蔵作品展「近代日本の美術」(所蔵品ギャラリー、4-2F)もご覧いただけます。

主催

東京国立近代美術館
京都国立近代美術館

巡回

2010年9月3日(金)~10月17日(日) 京都国立近代美術館(終了) 
2011年2月22日(火)~3月27日(日) 広島県立美術館

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