展覧会

会期終了 所蔵作品展

寿ぎの「うつわ」 : 工芸館の漆工コレクションから

会期

会場

東京国立近代美術館工芸館

概要

空気に触れると固まり、堅牢な塗膜となる不思議な液体―漆。漆は、ウルシの木から採取される樹液ですが、乾くと固まるという性質を利用して、芯材に木や麻布を用いたり、また塗面に金銀粉等を蒔きつけて華やかに装飾するなどして、古くからさまざまに活用されてきました。本来液体である漆は、それ自身では確固とした形をもたない存在で、漆単独で形を成すというよりも、他の素材と結びついて新しい姿形を獲得する、「触媒」のような役割を果たしている素材といえます。

強固な保護膜となって器を長持ちさせるという漆の実用面もさることながら、さらにひと手間もふた手間もかけて、作り手たちが形や表面の装飾の美を極めていくのはどうしてなのでしょうか。そこには、完成した漆工芸品がどのように用いられてきたかという、使い手側の事情もあるようです。

現代でも、新年のお祝いをはじめ、特別な席で漆器が用いられる場面を見かけます。「ハレ」の場を演出する道具として、またおもてなしの気持ちを伝える器として、とりわけ漆器が好んで用いられてきました。今なお、漆は私たちの生活のなかで「特別な場所」を占めている、そんな素材といえるのかもしれません。

本展では、漆という素材に脈々と継承されてきた文化的な特質を「寿ぐ」というキーワードで捉え、こうした視点からあらためて当館の所蔵作品約100点で、近現代の漆工芸を考えてみたいと思います。

松田権六《蒔絵竹林文箱》1965

松田権六
《蒔絵玉すだれ文盤》1953
増村益城
《乾漆梅花食籠》1967
寺井直次
《金胎蒔絵水指 春》1976
音丸耕堂
《彫漆カトレヤ色紙箱》1992

出品作品リスト

作家名 生没年 題名(和) 題名(よみ) 制作年 技法 所蔵
無記名は当館蔵
第1室
赤地友哉 1906-1984 緑漆金彩八角食籠 みどりうるし きんさい はっかく じきろう 1979
磯井如真 1883-1964 蒟醤草花文八角食籠 きんま そうかもん はっかく じきろう 1956 漆、籃胎、蒟醤
音丸耕堂 1898-1997 彫漆カトレヤ色紙箱 ちょうしつ かとれや しきしばこ 1992 漆、彫漆
角偉三郎 1940-2005 錫帯曲輪六段重 すずおび まげわ ろくだん じゅう 1992 漆、曲輪
佐治賢使 1914-1999 都会 とかい 1960 漆、色漆、螺鈿
鈴木睦美 1942-2009 朱塗楕円大鉢 しゅぬり だえん おおばち 1999
高野松山 1889-1976 群蝶木地蒔絵手箱 ぐんちょう きじまきえ てばこ 1963 漆、蒔絵
高橋節郎 1914-2007 日岡月岡 ひおか つきおか 1989 漆、沈金
田口善国 1923-1998 漆透かし絵 犬 うるし すかしえ いぬ 1985 漆、紙
蒔絵棚 煌めく まきえ たな きらめく 1991 漆、蒔絵、螺鈿
カサブランカ蒔絵飾箱 かさぶらんか まきえ かざりばこ 1994 漆、蒔絵、螺鈿
葉文蒔絵水指 ようもん まきえ みずさし 1996 漆、蒔絵
服部峻昇 1943- 耀貝飾箱 陽光の海 ようがいかざりばこ ようこうのうみ 2003 漆、蒔絵、螺鈿 個人蔵
藤田敏彰 1959- MELT めると 1988 漆、乾漆
前大峰 1890-1977 沈金蝶散模様色紙箱 ちんきん ちょうちらしもよう しきしばこ 1959 漆、沈金
増村益城 1910-1996 乾漆梅花食籠 かんしつ ばいか じきろう 1967 漆、乾漆
松田権六 1896-1986 蒔絵玉すだれ文盤 まきえ たますだれもん ばん 1953 漆、蒔絵
蒔絵槇柏文手箱 まきえ しんぱくもん てばこ 1955 漆、蒔絵
竹文椀 たけもん わん 1967 漆、蒔絵
南祥輝 1921-2006 乾漆盛器 おぼろ月 かんしつ もりき おぼろづき 1983 漆、乾漆
第2室
赤地友哉 1906-1984 曲輪造彩漆盛器 まげわづくり さいしつ もりき 1960 漆、曲輪
稲垣稔次郎 1902-1963 紙本型絵染額面 西陣の正月 しほん かたえぞめ がくめん にしじん の しょうがつ 1958 紙、型染
大西勲 1944- 曲輪造盛器 まげわづくり もりき 2000 漆、曲輪
大西長利 1933- 乾漆の器 大地 かんしつ の うつわ だいち 1986 漆、乾漆
角偉三郎 1940-2005 朱塗曲輪六段重 しゅぬり まげわ ろくだん じゅう 1991 漆、曲輪
溜漆椀 ためうるし わん 1992
小森邦衞 1945- 曲輪造籃胎喰籠 まげわづくり らんたい じきろう 1986 漆、曲輪、籃胎 個人蔵
澤口滋 1925-1997 黒漆塗大鉢 くろうるしぬり おおばち 1986
黒漆塗応器五椀、箸・櫂付 くろうるしぬり おうき ご わん はし、かい つき 1987
新村撰吉 1907-1983 漆皮盤 しっぴ ばん 1960 漆、漆皮、蒔絵
田所芳哉 1912-1993 三彩茶入 さんさい ちゃいれ 1957
十時啓悦 1950- 乾漆輪花菓子器 かんしつ りんか かしき 1986 漆、乾漆
中川哲哉 1897-1976 乾漆盛器 かんしつ もりき 1955 漆、乾漆
増村紀一郎 1941- 乾漆鉢 かんしつ はち 1999 漆、乾漆
増村益城 1910-1996 乾漆朱輪花盤 かんしつ しゅ りんか ばん 1983 漆、乾漆 個人蔵
松波保真 1882-1954 乾漆千段巻中次 かんしつ せんだんまき なかつぎ c.1950 漆、乾漆
松波保真 乾漆菊形中次 かんしつ きくがた なかつぎ c.1952 漆、乾漆
山永光甫 1889-1973 乾漆菊形鉢 かんしつ きくがた はち c.1935 漆、乾漆 個人蔵
三代渡辺喜三郎 1909-1986 茶器 みどり ちゃき みどり 1972
三代渡辺喜三郎 1909-1986 胴張棗 どうはり なつめ 1973
三代渡辺喜三郎 1909-1986 茶器 こま ちゃき こま 1973
三代渡辺喜三郎 1909-1986 折溜中次 おりだめ なかつぎ 1975
三代渡辺喜三郎 1909-1986 竹中次 たけ なかつぎ 1979 漆、竹
音丸耕堂 1898-1997 彫漆紫陽花茶器 ちょうしつ あじさい ちゃき 1994 漆、彫漆
田口善国 1923-1998 水鏡蒔絵水指 みずかがみ まきえ みずさし 1970 漆、蒔絵
田口善国 プラズマ文青貝蒔絵六角香炉 ぷらずまもん あおがい まきえ ろっかく こうろ 1998 漆、蒔絵、螺鈿
松田権六 1896-1986 螺鈿桜文椀 らでん さくらもん わん 1966 漆、螺鈿
六角大壌(穎雄 1913-1973 風炉先屏風 ふろさき びょうぶ 1943 漆、蒔絵 個人蔵
第3室
赤塚自得 1871-1936 蒔絵硯箱 常緑 まきえ すずりばこ じょうりょく 不詳 漆、蒔絵 個人蔵
磯井如真 1883-1964 蒟醤龍鳳凰文八角香盆 きんま りゅうほうおうもん はっかく こうぼん 1955 漆、籃胎、蒟醤
磯井正美 1926- 蒟醤陽炎香盆 きんま かげろう こうぼん 1972 漆、蒟醤
磯矢阿伎良 1904-1987 はないかだ文様長手文庫 はないかだもんよう なが てぶんこ 1934 漆、蒔絵
太田儔 1931- 籃胎蒟醤文箱 蝶 らんたい きんま ふばこ ちょう 1986 漆、籃胎、蒟醤
大場松魚 1916-2012 平文千羽鶴の箱 ひょうもん せんばづる の はこ 1973 漆、金、銀、平文
高野松山 1889-1976 牡丹木地蒔絵手箱 ぼたん きじまきえ てばこ 1956 漆、蒔絵
高橋節郎 1914-2007 陽春賦 ようしゅんふ 1985 漆、沈金
田口義明 1958- 蒔絵棗 金魚 まきえ なつめ きんぎょ 2004 漆、蒔絵
田口善国 1923-1998 日蝕蒔絵飾箱 にっしょく まきえ かざりばこ 1963 漆、蒔絵
二十代堆朱楊成 1880-1952 彫漆六華式平卓 ちょうしつ りっかしき ひらしょく 1915 漆、彫漆
中野孝一 1947- 蒔絵箱 秋野 まきえばこ あきの 1986 漆、蒔絵 個人蔵
前大峰 1890-1977 沈金芒絵飾箱 ちんきん すすきえ かざりばこ 1959 漆、沈金
前史雄 1940- 沈金箱 朝霧 ちんきん はこ あさぎり 1998 漆、沈金
松田権六 1896-1986 華文蒔絵網代盆 はなもん まきえ あじろ ぼん 1959 漆、藍胎、蒔絵
松田権六 1896-1986 蒔絵螺鈿有職文飾箱 まきえ らでん ゆうそくもん かざりばこ 1960 漆、蒔絵、螺鈿
松田権六 1896-1986 蒔絵竹林文箱 まきえ ちくりんもん はこ 1965 漆、蒔絵、撥鏤
室瀬和美 1950- きすげ蒔絵小箪笥 きすげ まきえ こだんす 1991 漆、蒔絵
室瀬春二 1911-1989 秋苑文飾箱 しゅうえんもん かざりばこ 1970 漆、蒔絵
吉田源十郎 1896-1958 乾漆柘榴之図硯箱 かんしつ ざくろ の ず すずりばこ 1926 漆、乾漆、蒔絵 個人蔵
六角紫水 1867-1950 金胎蒔絵唐花文鉢 きんたい まきえ からはなもん はち c.1935 漆、金胎、蒔絵
第4室
大場松魚 1916-2012 平文宝石箱 ひょうもん ほうせきばこ 1958 漆、蒔絵、平文
大場松魚 1916-2012 平文小箪笥 ひょうもん こだんす 1963 漆、蒔絵、平文
小椋範彦 1958- 乾漆割貝蒔絵飾箱 半夏生 かんしつ わりがい まきえ かざりばこ はんげしょう 1997 漆、乾漆、蒔絵、螺鈿
片岡華江 1889-1977 螺鈿鷺之図漆箱 らでん さぎ の ず うるしばこ 1959 漆、蒔絵、螺鈿
黒澤千春 1949-2008 銀平文螺鈿箱 薄氷 ぎんひょうもん らでんはこ うすらい 1986 漆、銀平文、螺鈿
黒澤千春 1949-2008 螺鈿平文銀葉文箱 らでん ひょうもん ぎんようもん はこ 1993 漆、螺鈿、銀平文
黒澤千春 1949-2008 銀杏文蒔絵箱 いちょうもん まきえ はこ 1993 漆、蒔絵
黒田辰秋 1904-1982 耀貝螺鈿飾箱 ようがい らでん かざりばこ 1974 漆、乾漆、螺鈿
黒田辰秋 1904-1982 螺鈿白蝶縞中次 らでん しろちょう しま なかつぎ c.1974 漆、螺鈿
佐々木英 1934-1984 蒔絵彩切貝短冊箱 尾瀬の朝 まきえ いろきりがい たんざくばこ おぜ の あさ 1982 漆、蒔絵、螺鈿
田口義明 1958- 切貝蒔絵飾箱 彩羽 きりがい まきえ かざりばこ さいう 1991 漆、蒔絵、螺鈿
田口善国 1923-1998 野原蒔絵小箱 のはら まきえ こばこ 1968 漆、蒔絵、螺鈿
田口善国 1923-1998 海蒔絵飾箱 うみ まきえ かざりばこ 1981 漆、蒔絵、螺鈿
田口善国 1923-1998 とくさ蒔絵切貝水指 とくさ まきえ きりがい みずさし 1984 漆、蒔絵、螺鈿
寺井直次 1912-1998 極光 きょっこう 1956 漆、卵殻
寺井直次 1912-1998 夕顔書類箱 ゆうがお しょるい はこ 1957 漆、卵殻
寺井直次 1912-1998 金胎蒔絵水指 春 きんたい まきえ みずさし はる 1976 漆、金胎、蒔絵、卵殻
二代礪波宗斎 1918-2004 蒔絵花の図箱 まきえ はなのず はこ 1968 漆、蒔絵、卵殻
並木恒延 1949- しじま しじま 2007 漆、蒔絵、卵殻、螺鈿
松田権六 1896-1986 蒔絵鷺文飾箱 まきえ さぎもん かざりばこ 1961 漆、蒔絵、卵殻
三好かがり 1954- 彩切貝蒔絵硯箱 流氷 いろきりがい まきえ すずりばこ りゅうひょう 1985 漆、蒔絵、螺鈿
第5室
伊藤裕司 1930- 気韻憧憬 きいん どうけい 1996
大西忠夫 1918-2007 我拝師山 がはいしざん 1977 漆、彫漆
鈴木雅也 1932- 連鎖するかたち れんさ する かたち 1973 漆、アクリル
高橋節郎 1914-2007 森響 しんきょう 2002 漆、沈金、螺鈿
並木恒延 1949- 絹の水 きぬ の みず 1989 漆、蒔絵、螺鈿
服部峻昇 1943- 耀貝二曲屏風 水面に映る陽光 ようがい にきょく びょうぶ みなも に うつる ようこう 2007 漆、蒔絵、螺鈿
番浦省吾 1901-1982 双象 そうしょう 1972
番浦省吾 1901-1982 海どり うみどり 1973
東端真筰 1913-1978 氷鳥衝立 ひょうちょう ついたて 1962 色漆 個人蔵
久本元 1948- 精和 せいわ 1986 漆、乾漆
古伏脇司 1961- 草舟 98-01 くさふね 98-01 1998 漆、石膏、乾漆

イベント情報

アーティスト・トーク

■小森邦衞(漆芸家)

日程:2012年12月23日(日)

■並木恒延(漆芸家)

日程:2013年1月27日(日)
漆の制作実演を行います。作品にもちいられる技法の数々を間近でご覧いただけます。

時間

 14:00‐15:00

場所

工芸館会場

※申込不要、参加無料(要観覧券)

ギャラリートーク

当館研究員が鑑賞のポイントを分かりやすく解説します。

唐澤昌宏(東京国立近代美術館工芸課長)

日程

2013年2月10日(日)

時間

14:00‐15:00

場所

工芸館会場

※申込不要、参加無料(要観覧券)

■タッチ&トーク

工芸館ガイドスタッフによる鑑賞プログラム。作品の見どころを、展示室で作品を鑑賞しながら解説する<トークコーナー>と、著名作家の作品や資料・制作工程資料などを実際に手にとったりさわりながら鑑賞いただける<タッチコーナー>とでご案内します。

日程

会期中の毎週水・土曜日

時間

14:00‐15:00

場所

工芸館会場

※申込不要、参加無料(要観覧券)


講演会

室瀬和美(漆芸家)
横溝廣子(東京芸術大学大学美術館准教授)
北村仁美(当館主任研究員)

日程

2014年1月12日(日)

時間

10:30-12:00

場所

東京国立近代美術館(本館) 地下1階 講堂

※10:00開場
※申込不要、参加無料(先着150名)


ビデオ上映

協力:公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団

・12月11日(火)~12月24日(月・祝)
うつわに託す―大西勲の髹漆―

・12月25日(火)~1月12日(土)
変幻自在-田口善国・蒔絵の美

・1月13日(日)~1月26日(土)
磯井正美のわざ―蒟醤の美―

場所: 工芸館2F休憩室

*12月18日(火)午前中、1月2日(水)は上映をお休みします。
*そのほか展示室の状況などにより上映スケジュールを変更・休止する可能性がございます。予めご了承ください。

開催概要

会場

東京国立近代美術館 工芸館

会期

2012年12月11日(火)~2013年2月11日(月)

開館時間

10:00-17:00
(入館は閉館30分前まで)

休館日

月曜日(12月24日、2013年1月14日、2月11日は開館)、12月28日(金)~2013年1月1日(火・祝)、1月15日(火)

観覧料

一般200円(100円) 大学生70円(40円)
※( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。

高校生以下および18歳未満、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
※それぞれ入館の際、学生証、運転免許証等の年齢のわかるもの、障害者手帳をご提示ください。

※お得な観覧券「MOMATパスポート」でご覧いただけます。
キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示により無料でご覧いただけます。

東京国立近代美術館 開館60周年記念企画
★2013年1月14日(月・祝)まで!誕生日は無料★

開館60周年を記念して、ご自身の誕生日当日にご来館いただいた方は、無料で入館いただけます。券売窓口で、誕生日のわかる証明書(免許証等)をご提示ください。(2013年1月14日(月・祝)まで)

HAPPY BIRTHDAY TOGETHER!!

無料観覧日

2013年1月2日(水)、1月6日(日)、2月3日(日)

主催

東京国立近代美術館

主催

NHK、朝日新聞社

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