展覧会

会期終了 企画展

人間国宝の日常のうつわ:もう一つの富本憲吉

会期

会場

東京国立近代美術館工芸館

《色絵更紗模様飾皿》1941年(九谷にて)富本憲吉記念館蔵

展覧会要旨

富本憲吉(1886-1963)は、「色絵磁器」で第一回の重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝に認定され、陶芸界で二人目となる文化勲章受章者となった陶芸家です。日本の近代陶芸の歴史においても、個人の美意識に基づく作品の制作を初めて成し遂げた先駆者として名高く、欠くことのできない存在です。作陶では「模様から模様をつくらず」という言葉を生涯の信念とし、写生にもとづく数々の優れた文様を創作し、それらを作品に描きました。作品については、白磁・染付・色絵・金銀彩などに代表される極めて格調高い作品群が中心であり、また多くの人々がそれらを思い浮かべることでしょう。

その富本が、奈良の安堵村で本格的に作陶活動を始めて間もなくの1917年に、「私は今年から出来得る限り安価な何人の手にも日常の生活に使用出来る工芸品をこさえたいと思い出しました。このことは私に取って随分重大なことで、今後の私の進むべき道に非常な関係があることと思います」という文章を残しています。

このような、かなり早い時期から日常のうつわに強い関心を寄せていたことはあまり周知されていません。その後の富本は、その気持ちを具現化するかのように、信楽(滋賀)で作陶を行ったのを皮切りに、波佐見(長崎)・益子(栃木)・瀬戸(愛知)・九谷(石川)・京都など、国内各地の窯業地に赴き、その地でつくられた既製の素地に独自の模様を描いて、日常の生活に結びついた陶磁器の制作を積極的に行いました。その活動は窯業地における陶磁器生産にも大きな影響を与えたのです。

本展では、富本が「安い陶器」、あるいは「万民のための安価な陶器」と呼んだ、量産を目的につくられた日常のうつわを広く紹介します。またあわせて、それらと同じ時代に富本が生み出した白磁や染付、色絵・金銀彩の代表作も展示し、その活動に求めた富本の想いを探ります。

《染付清涼里小景図八角鉢》
1922年(安堵にて)
富本憲吉記念館蔵
《染付柘榴模様土瓶・湯呑》
1923年(安堵にて)
富本憲吉記念館蔵
《鉄描銅彩柘榴模様大皿》
1929年(信楽にて)
富本憲吉記念館蔵

主な出品作品および出品点数

《染付清涼里小景図八角鉢》1922年(安堵にて)富本憲吉記念館蔵
《染付柘榴模様土瓶・湯呑》1923年(安堵にて)富本憲吉記念館蔵
《鉄描銅彩柘榴模様大皿》1929年(信楽にて)富本憲吉記念館蔵
《色絵銀彩野葡萄模様土瓶》1930年(波佐見にて)富本憲吉記念館蔵
《土焼野葡萄模様小瓶》1930年(益子にて)富本憲吉記念館蔵
《朱泥イッチン野葡萄模様皿》1932年(瀬戸にて)個人蔵
《白磁珈琲セット》1933年(安堵にて)東京国立近代美術館蔵
《色絵薊模様皿》1936年(九谷にて)富本憲吉記念館蔵
《色絵更紗模様飾皿》1941年(九谷にて)富本憲吉記念館蔵
《色絵柳模様角鉢》1942年(九谷・祖師谷にて)東京国立近代美術館蔵
《色絵五弁花模様旅行用急須》1951年(京都にて)東京国立近代美術館蔵
《色絵風花雪月字角皿》1951年(京都にて)東京国立近代美術館蔵
《色絵染付花字皿》1951年(京都にて)東京国立近代美術館蔵
《白磁大壺》1957年(砥部・祖師谷にて)富本憲吉記念館蔵
《色絵金銀彩羊歯模様八角飾箱》1959年(京都にて)東京国立近代美術館蔵

はじめ約100点

富本憲吉 略歴

1886年、現奈良県生駒郡安堵町東安堵に富本豊吉の長男として生まれる。1904年、東京美術学校図案家に入学し、2年目から建築、室内装飾を専攻する。1908年にロンドンへ私費留学し、ウィリアム・モリスの思想に強い関心を抱く。また、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館に通い、所蔵されている工芸品のスケッチを行う。1910年帰国。この年、生涯の友人となるバーナード・リーチと出会う。その後、リーチとの交流から楽焼に熱中し、1915年には安堵の自宅近くに本焼の窯と住居兼工房を築き、本格的に作陶活動を始める。一時期、柳宗悦の思想に共感して、民藝運動に参加する。しかし、しだいに独自の価値観による作陶を貫くようになる。1926年、東京・祖師谷に移住。1946年からは京都で活動を行う。この間、信楽・益子・波佐見・瀬戸・九谷で作陶を行い、既成の素地に独自の模様を描いた日常食器を制作する。1950年京都市立美術大学陶芸家教授に就任。京都では、自作による量産品に加え、「平安窯」や「富泉」の銘で富本のデザインによる日常食器の頒布会を行う。1955年に「色絵磁器」で第一回重要無形文化財保持者に認定され、1961年には文化勲章を受章した。

《朱泥イッチン野葡萄模様皿》
1932年(瀬戸にて)
個人蔵
《白磁珈琲セット》
1933年(安堵にて)
東京国立近代美術館蔵

イベント情報

ギャラリートーク:工芸課研究員による

12月19日(日)

「陶芸家、富本憲吉について」
辻本 勇(富本憲吉記念館館長)

1月 9日(日)

「富本憲吉の日常のうつわ」
唐澤昌宏(工芸課主任研究官)

1月16日(日)

「富本憲吉先生の思い出(仮称)」
柳原睦夫(陶芸家、大阪芸術大学教授)

2月 6日(日)

「近代陶芸と富本憲吉」
金子賢治(工芸課長)

2月20日(日)

「富本憲吉の量産について」
木田拓也(工芸課研究員)

《色絵薊模様皿》
1936年(九谷にて)
富本憲吉記念館蔵
《色絵柳模様角鉢》
1942年(九谷・祖師谷にて)
東京国立近代美術館蔵
《色絵五弁花模様旅行用急須》
1951年(京都にて)
東京国立近代美術館蔵
《色絵風花雪月字角皿》
1951年(京都にて)
東京国立近代美術館蔵
《色絵染付花字皿》
1951年(京都にて)
東京国立近代美術館蔵

タッチ&トーク(ボランティアによるガイド)

会期中の毎週水・土曜日
「さわってみようコーナー」で当館所蔵品に関する制作工程の資料や参考作品などを通して、さまざまな素材・技法の持ち味をお楽しみいただいた後、会場に並ぶ作品の見どころやさまざまなエピソードをご紹介します。

*各日とも午後2時から工芸館会場にて
*参加費は無料(入館に際しては観覧料が必要です)

人間国宝・巨匠コーナー

近代工芸やデザインを代表する作家の作品を紹介するコーナーです。陶磁、ガラス、漆工、木・竹工、染織、人形、工業デザインなど、様々なジャンルから選りすぐった名品をお楽しみください。(展示替えあり)

開催概要

展覧会名

人間国宝の日常のうつわ ― もう一つの富本憲吉
[同時開催:所蔵作品展 近代日本の陶芸]

会期

2004年12月11日(土)~2005年2月27日(日)

開館時間

午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)

休館日

毎週月曜日〔ただし1月3日(月)、10日(月)は開館、1月11日(火)は休館〕、
年末年始(12月29日~1月1日)

主催

東京国立近代美術館

会場

東京国立近代美術館工芸館
〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園1-1

観覧料

一般200円(100円)、大学生70円(40円)、高校生40円(20円)、
小・中学生および65歳以上は無料。
( )内は、20名以上の団体料金。いずれも消費税込み。
*無料観覧日:1月2日、2月6日

交通

東京メトロ東西線「竹橋駅」1b出口徒歩8分
東京メトロ東西線・半蔵門線・都営新宿線「九段下駅」2番出口徒歩12分

お問い合せ

03-5777-8600(NTTハローダイヤル)、
http://www.momat.go.jp/

《色絵金銀彩羊歯模様八角飾箱》
1959年(京都にて)
東京国立近代美術館蔵
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