展覧会
かたちのエッセンス:平松保城のジュエリー
会期
会場
東京国立近代美術館工芸館
概要
平松保城(1926- )のジュエリーは、シンプルなかたちのなかに金属のあたたかみをたたえています。その作品は、一本の金属の線から、金属板(面)の仕事へ、量塊へと広がりを見せています。そして、さらにはジュエリーという領域をも越えて、日常で使われる器や、壁面に設置される立体作品へと続いています。空間全体を含み込んだかたちへの意識は、再びジュエリー制作へと視線を戻したとき、平松のジュエリーを特徴づけるエッセンスとなっていることが明らかとなります。
戦時中、学徒兵として軍隊生活を送った経験から、平松は生きることへの切実な思いを抱くようになりました。人間が生きる上で真に価値のあるものを、という願いから、生活の中で使う喜びや楽しさを喚起するクラフトやジュエリーの制作にとくに力を入れて取り組んできました。
1950年代半ば、宝石や貴金属の価値にとらわれず、かたちやデザインに重きをおくコンテンポラリー・ジュエリーが西欧からもたらされると、平松はこのムーブメントに共鳴し、その核となる考え方によって、自身の制作をいっそう盤石なものとしていきます。一方、海外での個展開催などをとおして、平松の作品は、簡潔なフォルムのなかに素材に対する美意識を表現したとして高く評価され、1994年には、金工で名高いドイツのジュエリーアート協会(ハーナウ)から、ヨーロッパ以外では初めて「名誉のゴールド・リング」を授与されました。
本展では、日本の彫金の伝統を継承しつつ、それを現代の感覚で斬新に展開する平松保城の初期から現在に至るまでの約70点の作品で、オブジェ、器、ジュエリーという領域を横断して広がるその造形思考を読み解いていきます。
展覧会構成
◇身体装飾―アート・ジュエリー
1950年代前半、はじめて制作されたリングは、一本のアルミニウムの金属線にリズミカルに鎚目をつけたのみというシンプルなものでした。平松のジュエリーは、文字通り、この一本の金属の線の仕事から、金属板や箔を使った面の仕事へ、そして量塊へと広がっています。金鎚や鏨を用いて、あるいは金銀の箔を手のなかで揉み込みしわをつけるなどして、金属の多様な表情を引き出しています。金属の加工法に伝統的な日本の美意識が息づく彫金技法を身につけた平松ならではの表現と言えるでしょう。
◇生活のなかのかたち―器
このセクションでは、平松の作品の特徴である明快な幾何学形態のルーツを、器制作を例にとって探っていきます。制作プロセスにおいても徹底的にシンプルであることを貫く姿勢から、素材の美と手わざが融合した平松独自の形態が生まれてきます。
◇人・物・空間―立体造形
平松保城は、戦後間もない昭和22年から27年まで、東京美術学校で学びました。戦争体験によって現代社会や生活へと向けられた意識は、やがて人間と物と空間との関係を作品で表すことへと方向を定めていきます。在学中より日展を中心に発表された作品には、パブリックスペースへの設置を前提としたものが多く見られます。空間全体を射程に入れた制作は、以後の平松の作品において基調をなしていきます。
作家紹介
平松保城 略歴
- 1926年4月30日
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大阪市生まれ
- 1947年
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東京美術学校工芸科彫金部に入学(~52年)
- 1950年
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第6回日展
(51~54年、56年) - 1959年
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《エレガント丸盆》がグッドデザイン賞を受賞
個展開催(毎日会館画廊、大阪) 以後国内外で多数開催 - 1964年
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日本ジュウリーデザイナー協会が設立され創立会員となる
- 1970年
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「’70ニュークラフト賞」を受賞
- 1977年
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「東京国立近代美術館工芸館・開館記念展―現代日本工芸の秀作」
- 1978年
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第8回世界クラフト会議京都、メタル部門コーディネーター
- 1983年
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国際公募展「’83国際ジュウリー・アート展」審査員
- 1984年
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東京藝術大学教授に就任(~94年)
- 1990年
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第41回芸術選奨文部大臣賞受賞
- 1994年
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ジュエリーアート協会(ハーナウ)より「名誉のゴールド・リング」を授与される
- 1995年
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通産省デザイン功労者の表彰を受ける
- 1996年
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第24回国井喜太郎産業工芸賞を受賞
- 2001年
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「コンテンポラリー・ジャパニーズ・ジュエリー」展
(クラフツ・カウンシル、ロンドン) - 2006年
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「ジュエリーの今 : 変貌のオブジェ」展
(東京国立近代美術館工芸館)
イベント情報
アーティスト・トーク
平松保城
- 日程
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2008年10月26日(日)
- 時間
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14:00 ‐ 15:00
- 場所
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工芸館会場
ギャラリートーク
当館研究員
- 日程
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2008年11月30日(日)
- 時間
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14:00 ‐ 15:00
- 場所
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工芸館会場
工芸館ガイドスタッフによる鑑賞プログラム
「タッチ&トーク」
- 日程
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会期中の毎週水・土曜日
- 時間
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14:00 – 15:00
※いづれも参加無料(一般の方・大学生は要観覧券)/申込不要
開催概要
- 会場
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東京国立近代美術館 工芸館
- 会期
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2008年10月4日(土)~12月7日(日)
- 開館時間
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10:00-17:00
(入館は閉館30分前まで) - 休館日
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月曜日(10月13日、11月3日、11月24日は除く)、10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)
- 観覧料
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一般200円(100円) 大学生70円(40円)
高校生以下および18歳未満、65歳以上、キャンパスメンバーズ、「MOMATパスポート」、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(原則1名)は無料○入館の際、学生証、障害者手帳等をご提示ください。
○( )は20名以上の団体料金。消費税込。 - 無料観覧日
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10月5日(日)、11月2日(日)、11月3日(月・祝)、12月7日(日)
- 主催
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東京国立近代美術館
- 助成
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財団法人 美術工藝振興佐藤基金
- 協力
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アイティーエル株式会社