展覧会
未来へつづく美生活展 : 1920~2010年代所蔵工芸品に見る
会期
会場
東京国立近代美術館工芸館
展覧会について
今、あらためて、丁寧な「暮らし方」に注目が集まっています。素材や技法に心を尽くし、丹念に作られた工芸作品には、時代を越えて、私たちの生活を折り目 正しく保つことができるように促す力が備わっているようです。日本人の暮らし方が大きく変化するなかで、先人たちはどのような「暮らし」を思い描いて、身 の回りの器や家具に、このような丁寧さ、丹念さを籠めてきたのでしょう。
今回、近代から現代の工芸作品と、あらためて向き合い感じることは、モダンという名の未知への強い憧れが、全体を通底しているのではないかということです。暮らしに近い工芸作品だからこそ、憧れがより濃く現れているのかもしれません。
本 展では、1930 年代・40 年代の当時における生活を垣間見させるような絵画作品も交え、所蔵作品を中心とした約100点を展示します。会場では、ファッション・デザイナーの皆川明 氏、インテリア・デザイナーの中原慎一郎氏とのコラボレーションで構成する展示コーナーも併設します。明治以降、工芸作品に受け継がれている几帳面さ、季 節感、素材による表情の豊かさ、また挑戦的な表現などに焦点をあて、現代の私たちの美学のルーツとなった、心地よい時間を特集します。
スペシャルコラボレーション
本展では、「美生活展」のコンセプトにご賛同いただいたインテリアデザイナーの中原慎一郎氏 (Landscape Products)、ファッションデザイナーの皆川明氏 (ミナ ペルホネン minä perhonen 代表) とのコラボレーション展示をおこないます。
海外のモダニズムの刺激 中原慎一郎氏とのコラボレーション
世界各地から輸入された高価な材料を贅沢に使い手仕事で作られたアール・デコの家具と、対照的に大量生産された強靱な素材(鉄)を理知的に用いて構成されたバウハウスの家具。両者は装飾的な模様を廃し、すっきりとしたデザインという点で同時代的な共通点があります。
機能主義の建築家に影響を受けながら自身の作風を確立させた陶芸家、ルーシー・リー(1902-1995)の作品も交え、インテリア・デザイナーの中原慎一郎氏によるセレクションと会場デザインで構成するコーナーを併設します。
中原 慎一郎 (NAKAHARA Shinichiro ランドスケーププロダクツ代表)
1971 年、鹿児島県生まれ。ランドスケーププロダクツ代表。「Playmountain」「Tas Yard」「BE A GOOD NEIGHBOR COFFEE KIOSK」を展開。店舗設計業務、イベントプロデューサーなど多岐にわたり活動。
■展覧会によせて、中原慎一郎氏にコメントをいただきました。
民芸運動の活動家であった浜田庄司の言葉で「生活者として優れた人」という表現があったのを思い出します。日常生活の中でどう暮らすことでそれに近づくのかを考えさせられました。今の自分にとっては程遠い道のりですが、非常に心に残る表現でした。
ここにあるルーシー・リーの佇まいにもそれが現れています。彼女から発するオーラもですがその背景の家具や調度品にもルーシー・リーの当時の気分がきちんと現れています。彼女の優れた暮らしぶりが伝わってきます。オーストリアの品性ある時代性が彼女の作風にもかなりの影響を与えていたのでしょう。当時の気分とはどんなだったのでしょうね。
様々な写真や書籍、当時の調度品などみてもすごく皆ロマンチスト(?)だったのかなと思ってみたりします。そういう推測がぼくは楽しいです。なくなりつつある技術や手法、慣習もあって寂しく思うこともあります。しかしながら物が残っていることで推測することができます。かすかな手掛かりから新しいものが生まれるヒントを見つけられるかもしれない。そのヒントをもとにぼくらの周りの風景を美しくすることができるような気がします。
工芸作品のある暮らしがひらく未来図 皆川明氏とのコラボレーション
各地の工場と連携して布作りからこだわり制作するファッション・デザイナーの皆川明氏。今回、皆川氏のデザインしたテキスタイルと呼応する所蔵作品をセレクトしていただき、テキスタイルと並陳します。自然、生活、日々の暮らしへのまなざしが、展示された作品をとおして交差し、あらたな光のもとで新しい姿を現します。
展示作品をとおした、クリエイター同士のコラボレーションをご覧下さい。
皆川 明(MINAGAWA Akira 服飾ブランド「ミナ ペルホネン(minä perhonen)」代表)
1967 年、東京都生まれ。オリジナルデザインのテキスタイルによる服作りを特徴としている。ブランド名はフィンランド語で「minä 」は「私」、「perhonen」は「ちょうちょ」を意味する言葉。蝶の羽のように軽やかで美しい図案を作っていきたいという願いがこめられている
■展覧会によせて、 皆川明氏にコメントをいただきました。
工藝というものは、作家の個人的な暮らしや社会背景から生まれる物への哲学、創造、技と、人間が過去から積み重ねた文明、文化が融合した美の産物のように思える。作家は、自身の生命の持ち時間内に習得し得る美意識を、自らの暮らしから獲得し、技を鍛錬し、その表現を確固たる独自性に昇華させ、表現に値する材料を用い、叡智によって造形へと変換している。込められる技と意識は、秘めた労とそこに至るまでの時間と共に、物の生命力として光を放つ。それらは時代背景の中から造作される動機を持ちながらも時代を超越した美を保ち続ける。その永続的な物の生命力こそ、人間が古代から道具や物を作るという行為に魅了され続けている根源的な理由なのではないだろうか。その様に工藝が内に永遠の美を宿すものである事をいつまでも大切に思い、時の流れの中で美と生活への探求を喜びとして持ち続けることを、現代の暮らしにおいて大切に繋いでいきたい。
宣伝美術はサン・アドの葛西薫氏 × 安藤隆氏
本展の宣伝美術は、サン・アドの葛西薫氏 × 安藤隆氏が手がける豪華な構成となっています。
イベント
ギャラリートーク
当館研究員が鑑賞のポイントを分かりやすく解説します。
- 日程
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2016年1月17日(日)、2月14日(日)
- 時間
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14:00~15:00
- 場所
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工芸館
※申込不要、参加無料(要観覧券)
タッチ&トーク
工芸館ガイドスタッフによる鑑賞プログラム。注目の若手作家から人間国宝が手がけた作品や制作工程資料などに触れながら鑑賞する〈さわってみよう コーナー〉と、時代背景や作家の情報などの豊富なエピソードをまじえて作品のみどころをご紹介する会場トークとの2部構成で、さまざまな角度から展覧会を ご案内します。
- 日程
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会期中の毎週水・土曜日 ※1月2日(土)はお休み
- 時間
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14:00~15:00
- 場所
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工芸館会場
※申込不要、参加無料(要観覧券)
開催概要
- 会場
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東京国立近代美術館工芸館
- 会期
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2015年12月23日(水・祝) – 2016年2月21日(日)
- 開館時間
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10:00 – 17:00
※入館時間は閉館30分前まで - 休館日
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月曜日(1月11日は開館)、年末年始(12月28日[月]-2016年1月1日[金・祝])、1月12日[火]
- 観覧料
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一般210円(100円)
大学生70円(40円)
※( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、友の会、賛助会員、キャンパスメンバーズ、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
※それぞれ入館の際、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、会員証、障害者手帳をご提示ください。 - 無料観覧日
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2016年1月2日(土)、1月3日(日)、2月7日(日)
- 主催
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東京国立近代美術館
- 工芸館へのアクセス
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東京メトロ東西線竹橋駅 1b出口より徒歩8分
東京メトロ半蔵門線,東西線,都営新宿線九段下駅 2番出口より徒歩12分住所: 東京都千代田区北の丸公園1-1
詳しくは、アクセスをご参照ください。