展覧会
「名工の明治」 : 工芸館開館40周年記念所蔵作品展
会期
会場
東京国立近代美術館工芸館
展覧会について
明治時代、その優れた技術によって帝室技芸員に任命された鈴木長吉(1848-1919)。当館所蔵の《十二の鷹》は彼の代表作の一つで、1893年アメリカ開催されたシカゴ・コロンブス世界博覧会で発表されました。古来より武将たちが好んで行った鷹狩りで用いられる鷹をモチーフに、本物と見紛うリアルな表現と、金、銀、銅、赤銅、四分一といった金属の色を巧みにちりばめた華やかさで、世界の人々を驚かせました。
当館では、数年をかけてこの《十二の鷹》の修復に取り組んできましたが、このたび修復後初のお披露目をいたします。長らく失われていた鉾垂れ(鷹の止まり木に使用される装飾布)も復元され、発表当初の鮮やかな色合いがよみがえりました。「明治150年」にもちなみ、本展では、高い技術力と表現力を兼ね備え明治の精神を今に伝える名工たちの作品もあわせてご覧いただきます。現代の工芸作品も含めた当館所蔵作品約100点を通して、技と表現が現代にいかに継承されたのか、その展開を探ります。
見どころ
修復後初の一挙公開!《十二の鷹》
鷹狩りに用いられる鷹をモデルにした《十二の鷹》は、明治の美術商・林忠正の発注で、制作されたものです。作者である金工家・鈴木長吉は、実際に鷹を飼って写生したり、古い絵画や史料を調べたり、その準備に4年の歳月を費やしたといいます。確かな観察眼によって追及されたリアリティは、羽毛の細かな質感だけでなく、翼を広げた勇ましい姿、爪先を咥えるしぐさ、獲物をにらみつける鋭い視線など、12羽それぞれの、生き生きとした動きに表れています。
一体ずつ近づいて見てみると、羽毛に残された鏨(たがね)の跡から、さまざまな道具が使い分けられていたことが分かります。切り嵌め象嵌によって、金と真鍮が使い分けられた眼球、くちばしの先に漆を用いるこだわりなど、見どころは尽きません。
技の最高峰ー帝室技芸員と同時代の作家たち
京薩摩風の華やかな色彩を背景に、精細な高浮彫りで立体的に表された桜花と鳩の姿。よく見ると、鳩の視線の先には雛鳥を抱えた巣があるのがわかります。作者の初代宮川香山は、鈴木長吉と同じく帝室技芸員として活躍した明治の工芸家で、その作品は、自身の窯の名前をとって「マクズ・ウェア」とよばれ、海外でも珍重されました。
各国の万博で紹介され、輸出品としての需要が増加したこともあり、明治時代は工芸を芸術へ昇華させようという気運が高まりをみせた時代でもあります。
その刺激を受けた工芸家たちは、伝統と西洋文化の融合によって工芸に新しい視点を見出そうと挑戦を続けます。絵画をはじめ幅広い美術的素養により、唐物中心の技法からの脱却をめざした二十代堆朱楊成や、漆芸に科学的視点からアプローチした六角紫水など、明治から大正にかけて活躍した彼らの表現は、後の世代にも大きな影響を残しました。
現代に受け継がれる名工の精神ー人間国宝の作品から
戦後、重要無形文化財制度が発足すると、優れたわざを高度に体得した工芸家が、その保持者に認定されるようになりました(人間国宝)。
色彩が溶け合うように調和して光を放つかのような《燿彩鉢 創生》。にじみやぼかしではなく、微妙に異なる数十にわたる色を一筋ずつ描いて仕上げたものです。「彩釉磁器」の分野で重要無形文化財保持者に認定された三代德田八十吉は古九谷をはじめ伝統的な九谷焼の技法をもとに現代陶芸の要素を融合した表現で、海外の展覧会でも注目を集め日本の工芸の新しい一面を伝えています。
本展ではほかにも、大胆な意匠構成によって格調高い作品を生み出す傍ら、伝統工芸技法の復興と普及、さらに後進の指導にも情熱を傾けた松田権六(蒔絵)のほか、大坂弘道(木工芸)、江里佐代子(截金)らの作品を通じて、明治から脈々と受け継がれてきた日本の工芸の系譜を探ります。
イベント
トークイベント
ギャラリートーク&写真撮影会
田籠善次郎氏・大塚紀子氏(ともに諏訪流鷹師)によるギャラリートーク&オオタカとの写真撮影会
- 日程
-
2018年3月18日(日)
- 時間
-
14:00~15:00
- 場所
-
工芸館会場(トーク)、前庭(撮影会)
※申込不要(ただし、撮影会は先着40名まで)
当日13:00より、工芸館1F受付横で撮影会の整理券を配布します。
※参加無料(要観覧券)
※写真撮影会はトーク後、工芸館前庭で約30分間を予定しています。
※悪天候の場合は、トークのみ実施。撮影会は中止します。
※鷹の性質上、原則として、距離を置いた場所からの撮影となります。 自撮棒、三脚等の使用はご遠慮ください。
※撮影に使用するカメラは各自でご用意ください。
※撮影は静止画のみでお願いいたします。
※鷹の体調を考慮して、当日やむを得ずイベントを中止することがございます。あらかじめご了承ください。
ギャラリートーク
当館研究員が鑑賞のポイントを分かりやすく解説します。
- 日程
-
2018年4月1日(日)、22日(日)
- 時間
-
14:00~15:00
- 場所
-
工芸館2階
※申込不要・参加無料(要観覧券)
タッチ&トーク
工芸館ガイドスタッフによる鑑賞プログラム。注目の若手作家から人間国宝が手がけた作品や制作工程資料などに触れながら鑑賞する〈さわってみよう コーナー〉と、時代背景や作家の情報などの豊富なエピソードをまじえて作品のみどころをご紹介する会場トークとの2部構成で、さまざまな角度から展覧会を ご案内します。
- 日程
-
会期中の毎週水・土曜日
- 時間
-
14:00~15:00
- 場所
-
工芸館2階
※申込不要、参加無料(要観覧券)
MOVIE+TOUCH&TALK 【申込制】※受付は終了しました
映画上映とタッチ&トークを組み合わせたイベント「MOVIE+TOUCH&TALK」を開催します。
- 日程
-
会期中の毎週水・土曜日
- 時間
-
14:00~15:00
- 場所
-
工芸館2階
お申し込み方法等詳細は、公益財団法人ポーラ伝統文化振興財団のHPでご覧ください。
開催概要
- 会場
-
東京国立近代美術館工芸館
- 会期
-
2018年3月1日(木)-5月27日(日)
- 開館時間
-
10:00 – 17:00
※入館時間は閉館30分前まで - 休館日
-
月曜日(3月26日、4月2日、4月30日は開館)
- 観覧料
-
一般250円(200円)
大学生130円(60円)
※( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、友の会、賛助会員(同伴者1名まで)MOMAT支援サークルパートナー企業(同伴者1名まで、シルバー会員は本人のみ)、キャンパスメンバーズ、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
※それぞれ入館の際、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、会員証、社員証、障害者手帳をご提示ください。 - 無料観覧日
-
3月4日(日)
4月1日(日)
5月6日(日)
5月18日(金)国際博物館の日 - 主催
-
東京国立近代美術館
※都合により展示作品、展示期間が変更される場合がありますのでご了承ください。
「明治150年」関連 展覧会(京都国立近代美術館)
「明治150年」にちなみ、京都国立近代美術館では、日本画家の手がけた図案に着目して、明治期の日本画と工芸を紹介する展覧会を開催します。
「明治150年展 明治の日本画と工芸」
京都国立近代美術館 にて開催
2018年3月20日(火)-5月20日(日)