令和5年度 インターンシップ生のことば
A 学芸・コレクション Oさん
もともと所蔵作品展「MOMATコレクション」が好きで毎会期足繁く通っていたため、その展示を作り上げている諸業務について実践的に学びたいという思いから、コレクション部門を志望しました。
インターンシップの活動ではコレクションに関わる多様な業務を間近で拝見し、時にお手伝いしながら、たくさんの学びの機会をいただくことができました。なかでも所蔵作品展については、会期が始まるまでのあいだに必要な多くの準備や調整について知ることができ、そしてダイナミックかつ繊細、なおかつスピーディーに進められる展示作業はとても刺激的なものでした。また、他機関への作品貸出や購入・受贈、作品情報の調査など、その他の様々な業務についても見学させていただき、学芸業務の幅広さと奥深さに触れることができました。
そうした活動を通して、研究員のみなさまから伺ったお話や、業務上の、あるいは日常的な所作からも非常に多くのことを学ばせていただきました。学芸員としてどのような視点を持ち、いかに振る舞うべきなのか――自分自身もこれから学芸職に就き仕事を続けていくにあたり、たくさんの大切なヒントを頂戴したと感じております。
一年間、大変有意義な時間を過ごすことができました。お忙しいなかご対応いただいた研究員、職員のみなさまに、深く御礼申し上げます。
B 学芸・企画展 Hさん
一年間のインターンシップ活動では、作業中のコミュニケーションや、研究員の方々の着眼点をしっかり見逃さないようにしながら活動に従事しました。
展覧会には、様々な形で参加させて頂きました。キャプション校正やExcelでの作品データのまとめ、図録年譜作成等デスクワークを始め、展示替え・展示会場準備、撤収作業や作品貸出の見学等非常に貴重な体験をすることができました。デスクワークでの作業は、緻密さ、丁寧さが問われ、美術館を運営していく上でこうした活動の積み重ねが大事だと改めて感じました。また展示替え・会場準備、撤収作業見学時に、点検や掃除を体験し、全体の流れを実践的に学べました。会場内では、作品移動時や、梱包時の確認作業、点検内容共有において、綿密なコミュニケーションが交わされており、とても興味深かったです。
課題としては、企画展案の作成に取り組みました。企画書、作品リスト、展示図面を作成するというもので、内容を練るのに少し悩むこともありました。また完成したら、中間発表・最終発表で、実際に研究員の方々にプレゼンを通して企画展の内容を説明します。企画して終わりではなく、その展示をする意義を論理的に分かりやすく伝えることの難しさを痛感しました。
企画課でのインターンシップ活動を通して、美術館の様々な舞台裏を知ることが出来ました。非常に貴重な経験をさせて頂き、心より感謝申し上げます。
B 学芸・企画展 Mさん
インターンシップの活動では、企画展の搬入出や内覧会・イベントの補助、カタログ作成のお手伝いなど実際の現場を通してその内実を知ることができました。さらに学芸員の方々が展示に向けて指揮を執る様子やコミュニケーションの取り方を目の当たりにし、授業や本では学べない貴重な経験をさせて頂きました。その中でいろいろな立場の人々と意見を交わしながら問題を解決していく必要性や、相手への配慮と助け合う姿勢の重要性を痛感しました。
分野別課題では展覧会の企画を考え、企画書、作品リスト、図面を作成しました。初めは自分の関心領域ばかりに偏った企画内容でしたが、企画展室の学芸員の方々のアドバイスをいただき、展示室の大きさと展示したい作品とのバランスや作品解釈のあらゆる可能性を意識するようになりました。そして困ったときには些末な事から曖昧な質問まで受け入れて下さり、大変感謝しております。私一人では気づけない発見や学びから、視野を広げることができました。
東近美で過ごした一年間は実践的な学びだけでなく、美術や展示に対する考え方にも変化を与えて頂きました。この経験を忘れずに、学芸員を目指して精進したいと思います。そして何より活動終了まで無事に漕ぎつけたのは、最後まで温かくご指導くださった学芸員の皆さまのご高配にほかなりません。本当にありがとうございました。
C 美術館教育 Kさん
一年間を通して、一般の来館者向けの対話鑑賞やこども向け・親子向けのプログラム、学校団体受け入れなどを見学したりスタッフとして参加させていただいたりしました。プログラムは当日の参加のみならず、事前にレクチャーをいただき準備作業にも参加し、終了後にアンケートを読みました。その過程では、各プログラムの構成のねらいや観察を促す工夫など、鑑賞教育に重きを置く東近美の教育普及インターンだからこそ学べたことが多くありました。
後期の自由課題では、当館の事業の一環である「所蔵品ガイド」(対話鑑賞)の実践を設定しました。前半期の見学からの学びを活かし、助言をいただきながら、作家や作品について調査することから対面とオンライン両方での対話鑑賞の実践までを経験することができました。
また、セルフガイドなどの教材を準備する作業やアートカードの体験からは、問いの表現や様々な視点で作品を見られる仕組みなど、教材に込められた観察を促す工夫を学びました。
他にも、特別支援学校の受け入れや先生へのヒヤリング、ガイドスタッフの研修に参加したことが、インクルーシヴな受け入れ態勢を作ることや対話鑑賞ファシリテーターの心構えについて具体的に考え理解を深める機会となりました。
今年度は美術館教育の現場に身を置かせていただいた学び多き貴重な一年間でした。お世話になった職員の皆様には多大なる感謝を申し上げます。本当に有難う御座いました。
D 図書資料 Yさん
大学院在学中に、幸いにもアートライブラリを見学させて頂く機会がありました。その見学の際に、日本の近現代美術に対する調査研究の基盤を構築し、利用者と貴重な資料をつなぐ役割を担う業務に大変魅力を感じ、インターンシップに応募いたしました。
1年間の研修のなかでは、まず導入として美術を主題とした専門図書館であるアートライブラリと、他の図書館との役割の相違点について教えて頂いた上で、アートライブラリにおける自館資料・図書・展覧会カタログ・雑誌それぞれの業務について、司書の方々から個別にレクチャーをして頂きました。主に毎週土曜の現場での作業では、アートライブラリが所蔵している資料を活用した目録作成や、展覧会カタログの受入作業、エフェメラ資料のファイリングなど多岐に渡る貴重な業務を経験させて頂きました。また研修の一環として、美術図書館連絡会(ALC)に加盟している他の美術図書室を実際に見学し、レポートを執筆するという課題に取り組みました。さらに1月には、「抽象と幻想」展のVRイベントのお手伝いをさせて頂き、アートライブラリでの資料保存の取り組みが現代の美術館活動の可能性を大きく広げていることを学びました。こうした研修での学びを今後就職する図書館の現場で活かせるように精進してまいります。
最後になりましたが、貴重なインターンシップの機会を与えて下さった東京国立近代美術館職員の方々に心より感謝を申し上げます。
E 国立工芸館・学芸全般 Aさん
大学で陶磁器制作をしていた私は、国立工芸館での仕事を実践的に学ぶことで、多くの人々と工芸を結びつける方法を多角的に知りたいと考え、研修に参加しました。
遠方から参加することを配慮していただいた上、非常に多岐に渡る学芸業務の一端を経験させていただきました。 一年を通して、展示をはじめとした作品の扱い方や保管資料の整理、作品貸出の立ち合い、広報活動まで、現場の動きを間近で学びました。
特に、工芸トークオンラインには何度も参加させていただき、そのたびに発見がありました。ガイドさんの問いかけ方や見せ方ひとつ一つの工夫で、参加者のユニークな意見がたくさん引き出されるため、一瞬も気を抜くことができませんでした。
また、ワークショップやイベントの企画準備にも関わらせていただきました。 セルフガイドなど、作品をみる前の準備や工夫が徹底されていて、美術館の教育普及業務の現場を体感することができました。ワークショップでは、準備を進めながら何度もシミュレーションをして臨みましたが、予想を超える子どもたちの思い切りのある制作に感銘を受けました。
今回のインターンを通じて、美術館と作品を支えるその背景には、多くの関係者の存在と多くの地道な仕事の積み重ねがあることを実感でき、大変貴重な経験となりました。
このような多くの学びと出会いの機会をいただけましたこと、心より感謝申し上げます。