展覧会
生誕100年 東山魁夷展
会期
会場
東京国立近代美術館本館企画展ギャラリー、ギャラリー4
展覧会について
東山魁夷の生誕100年を記念する展覧会を開催します。
東山魁夷は、明治41(1908)年に生まれ、東京美術学校の研究科を修了したのち、ドイツ留学をはさんで帝展、文展に作品を発表しました。戦後になって、代表作《道》に見られるような平面的で単純化をきわめた作風へ展開し、風景画家としての独自の表現を確立しました。そして、自然や街を主題に「生」の営みをいとおしむかのように描いた作品、祈りの風景ともいえるほどに沈潜した精神的な深みをうかがわせる唐招提寺御影堂の障壁画などによって、戦後の日本画界に大きな足跡を残しました。
東山魁夷の作品は平明でわかりやすい描写のうちに、清新な抒情性と深い精神性を湛えています。それは徹底した自然観照から生まれた心象風景であり、自身の心の奥底に潜む想いの表白にほかなりません。また同時に、その作品は日本の伝統につらなりつつ、時代に生きる感覚を確かに宿しています。東山芸術が今なお多くの人々の共感を得るのはまさにそれゆえであるといえるでしょう。
本展は、東山魁夷の代表的な本制作101点、スケッチや習作53点(いずれも東京会場の出品数)を出品するものです。唐招提寺御影堂の障壁画からは《濤声》(部分)、《揚州薫風》を展示します。本展では、これらの作品を7つの章に分け、さらに5つの特集をもうけて紹介することで、ともすれば見落とされがちであった東山魁夷の画風の展開や、制作のプロセス、表現の特質などにも迫りたいと考えます。
会期中、展示替があります
前期:3月29日(土)~4月20日(日)
後期:4月22日(火)~5月18日(日)
混雑状況
17(土)、18(日)は終日、混雑が予想されます。
平日の午後3時以降は比較的ゆとりがあります。
15(木)・16(金)・17(土)の夜間開館をどうぞご利用ください。
*著作権保護のため、画像の転載を禁止します
ここが見どころ
代表作が目白押しの大回顧展
東山魁夷の画業を語る上で欠かすことのできない代表作、ほとんどすべてが会場に集結します。また、今まで紹介されることの少なかった作品もあわせて会場に並びます。本制作101点、スケッチ・習作53点(いずれも東京会場の出品数)を数える大展覧会は、これまでの東山の回顧展で最大規模です。東山自身が画業の転機とみとめる《残照》、東山を一躍人気作家へと押し上げた《道》、東山作品のなかで最も人気の高い《花明り》などの重要な作品が、展示替えをおこなうことなく全会期を通して展示されることも、本展の大きな特徴です。
7章構成で東山芸術に迫る
東山魁夷の作風展開ならびに作画傾向に注目し、7章に分けて作品を紹介します。
東山芸術の確立期は、これまで自身の言述に従い《残照》を出発点とすることがほとんどでした。しかし、東山の画業初期に見られる写生を基礎におく作風は、《道》以降、簡潔な画面構成による作風へと変化します。このことに注目し、本展では第2章の始まりに《道》を据え、東山の作風展開を作品に即してたどります。
全体の章分けは編年的な区分けにとどまりません。第5章では、ともすれば自然の風景ばかりを描いたと思われがちな東山が、若い頃から折りに触れ描いていた町並みや建物を主題とする作品に注目し、その表現の特徴を探ります。
5つの特集展示
特集展示を5つ設け、多角的に東山の芸術に迫ります。5つの特集は次のとおり。特集1「ドイツ留学」、特集2「《自然と形象》と《たにま》」、特集3「白馬のいる風景」、特集4「窓」、特集5「唐招提寺の障壁画」。
白馬は全部で11頭
1972年に描かれた白馬のシリーズ。この展覧会では本制作5点、習作6点を紹介します。そのうち習作は展示替を予定していますが、一度の来館で少なくとも8頭の白馬に出会えます。
唐招提寺からはこの2点
奈良・唐招提寺の御影堂障壁画の制作は、11年あまりにも及ぶ、東山の画業における一大プロジェクトでした。制作は二期に分けられ、入念な準備のもと1975年に《山雲》(上段の間)、《濤声》(宸殿の間)が、80年に《黄山暁雲》(桜の間)、《揚州薫風》(松の間)、《桂林月宵》(梅の間)が、81年に《瑞光》(鑑真和上坐像厨子扉絵)が完成しました。この展覧会では、《濤声》の一部と《揚州薫風》を、ギャラリー4を御影堂内部に見立てて展示します。
音声ガイドは東山本人が語ります
本展でご利用いただける音声ガイド(有料、500円)は、東山魁夷の作品世界によりよく親しんでいただくために、画家が当館で1968年冬におこなった講演会「私と風景画」の音声記録と、彼が綴った文章を基に構成しました。25作品の解説のうち12作品は、東山の肉声による解説となっています。
展覧会構成
第1章 模索の時代
昭和戦前期から戦後へかけては、東山にとって模索の時代といえます。美術学校を出てドイツに留学、やがて戦争で死を覚悟したなかで見た熊本の風景の美しさや、戦後千葉の鹿野山の夕暮れのなかで自然と深く一つになることのできた体験を通し、東山は風景画家として開眼してゆきます。ここでは1948(昭和23年)の日展出品作《郷愁》までの作品で、自らの世界を探し求めてゆく過程を検証します。
第2章 東山芸術の確立
戦後の混乱で、日本画の世界は厳しい状況に置かれました。しかし、既に風景画家としての立ち位置を明確にしていた東山に、迷いはなかったといえます。もちろん、当時奔流のように流れ込んだ新しい美術思潮に、影響を受けなかったわけではありません。しかしその中で、戦前までに形をなしてきた日本画の表現に確信をもちつつ、自らの資質を生かしたところに東山芸術は確立しました。形態を単純化し、不必要な要素を切り捨てた簡潔な構成に特徴がありますが、そこに至る過程を1950(昭和25)年の日展出品作《道》から1961(昭和36)年の《萬緑新》に辿ります。
第3章 ヨーロッパの風景
1962(昭和37)年、東山はデンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーを旅行しました。この章の作品のほとんどが、その折りに取材した風景を題材にしたものです。どの作品も北欧の雄大で静寂に満ちた、神秘的ともいえる風景をみごとにとらえており、厳しい自然と、力強い生の営みへの強い共感を窺うことができます。ここではとりわけ、水平性や垂直性を強調した構成、背景が湖面に倒影した上下相称の構図が特徴的といえます。
第4章 日本の風景
北欧から帰国後、京都を題材に描いた作品がこの章の中心となります。「京都」は自然と人間の共生がつくりあげた文化そのものであり、その意味では風景といっても、これまで東山が多く描いてきた自然の風景とは大きな違いがあります。円みや柔らかさのある構図や暖かみを帯びた色彩だけでなく、画面を覆う湿り気を帯びた空気に、透明感のある北欧風景とはまったく異なった、いかにも京都らしい雰囲気が色濃く漂っています。
第5章 町・建物
自然の風景を描く画家と思われている東山も、町や建物を主題とする作品を少なからず描いています。この章の中心となるのは、1969(昭和44)年にドイツ、オーストリアを旅行して取材したヨーロッパの古都を描く作品です。この連作で、画面が再び縦方向への動きを強調するものへと変化しているのは、ヨーロッパの石の文化のもつ強固な造形性を意識したゆえでしょう。画面には街に生きる人々の息づかいが感じられ、それは京都の連作とも共通する特徴といえます。この章では「町」をみる東山独自の視線を探ります。
第6章 モノクロームと墨
東山が「墨」の世界の扉を開くきっかけとなったのは唐招提寺御影堂の障壁画制作でした。それまでの表現と異なり、色を抑制してゆく表現は、唐招提寺を取り巻く宗教的雰囲気のなかで、ますます精神性を深めてゆく過程にも重なります。この章では1973(昭和48)年の日展出品作《夕静寂》から唐招提寺障壁画までの作品によって「墨」の世界に至る過程を追います。
第7章 おわりなき旅
唐招提寺障壁画を制作以降も、東山はそれまで描いてきた主題や手法を大きく変えることはありませんでした。晩年になり旅に出ることもほとんどなくなる頃からは、過去の想い出が寄せ来る波のようの繰り返し画面にあらわれ、それまでの抒情性に加えて、どこか夢幻的ともいえる独特の雰囲気が浮かんでくるようになります。それは遠い過去の中を果てることのない遍歴の旅を続ける東山が、さまざまな想いをこめて奏でる追憶の旋律のようでもあります。
イベント情報
講演会
「若き日の東山魁夷」
- 講師
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川崎鈴彦(日本画家)
- 日程
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2008年4月5日(土)
- 時間
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14:00-15:00
- 場所
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当館講堂
当日先着順 150名。聴講無料。
「東山魁夷 画業の軌跡」
- 講師
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尾崎正明(本展企画者・当館特任研究員)
- 日程
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2008年4月19日(土)
- 時間
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14:00-15:30
- 場所
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当館講堂
当日先着順 150名。聴講無料。
関連企画
「東山魁夷展」こどもセルフガイド
自然を描く
東山さんは自然をこよなく愛し、たくさんの風景を描き続けました。
東山さんのあしあとをたどってみよう!
「東山魁夷展」会期中に来場した小中学生には、東山の作品を見るためのヒントやクイズ、画家に関するエピソードなどを紹介したセルフガイド(解説リーフレット)をプレゼントします。
教職員鑑賞プログラム
「生誕100年 東山魁夷展」美術館活用研究会
*学校教職員が対象のプログラムです
- 日程
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2008年4月4日(金)
- 時間
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14:00-15:00(講演)/10:00-20:00(展覧会観覧)
先着150名(要事前申込)
申込方法などの詳細はこちらをご覧ください。
カタログ情報
開催概要
- 会場
-
企画展ギャラリー・ギャラリー4
- 会期
-
2008年3月29日(土)~5月18日(日)
会期中、展示替があります
前期:3月29日(土)~4月20日(日)
後期:4月22日(火)~5月18日(日) - 開館時間
-
10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
東山魁夷展会期中の木・金・土曜日は、20:00まで開館します
*入館は閉館30分前まで - 休室日
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4月7日(月)、14日(月)、21日(月)、5月12日(月)
- 観覧料
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一般1300(1100/900)円、大学生900(800/600)円、高校生400(300/200)円
●いずれも消費税込、( )内は前売/20名以上の団体料金
*前売券の販売は3月28日まで
●中学生以下、障害者の方及び付添者1名は無料
*それぞれ入館の際、生徒手帳、障害者手帳等をご提示ください
●本展観覧券で、当日に限り、所蔵作品展「近代日本の美術」もご覧になれます
●とてもお得なチケット情報
2月29日までの販売
*ペアチケット 1800円
2人分の入場券がセットに。切り離して1枚ずつご利用になることも可能です
*モディリアーニ展とのセット券 2000円
国立新美術館「モディリアーニ展」(3/26~6/9)とのセット券です
●チケット取扱
チケットぴあ(Pコード:前売687-704, 当日687-705, ペアチケット687-706, モディリアーニとのセット券687-707)、ローソンチケット(Lコード:33454, モディリアーニとのセット券39957)ほか都内主要プレイガイド
ペアチケット、モディリアーニ展とのセット券はオンラインのみでの販売となります。オンラインチケット(電子チケット)は、引換券です。そのままでは入場できないので、展覧会場入り口にて実券とお引換ください。 - 主催
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東京国立近代美術館、日本経済新聞社
- 特別協賛
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大和ハウス工業
- 協賛
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日本興亜損害保険、三菱商事
- 特別協力
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唐招提寺
- 巡回
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長野県信濃美術館 東山魁夷館 2008年7月12日(土)~8月31日(日)