展覧会
ウィリアム・ケントリッジ 歩きながら歴史を考える:そしてドローイングは動き始めた……
会期
会場
東京国立近代美術館本館企画展ギャラリー
展覧会について
ウィリアム・ケントリッジ(1955年南アフリカ共和国生まれ、ヨハネスブルグ在住)は、「動くドローイング」とも呼べるアニメーション・フィルムの制作によって、1980年代後半より現在にいたるまで現代美術における映像表現を牽引し続けているアーティストです。
ケントリッジの映像作品は、木炭とパステルで描いたドローイングを部分的に描き直しながら、1コマ毎に撮影する気の遠くなるような作業から生み出されるものです。絶えず流動し変化し続けるドローイングの記録の連鎖から生まれる彼のアニメーションには、消しきれない以前のドローイングの痕跡が残され、堆積された時間の厚みをうかがわせる重厚さにあふれた表現となっています。
日本での展覧会は、ケントリッジとの3年間にわたる緊密な協力と広範な準備作業を経て実現されるもので、我が国では初の個展となります。19点の映像作品、36点の素描、63点の版画によりケントリッジの活動の全貌を紹介します。
ここが見どころ
展覧会のポイント
◇ドローイングをコマ撮りした独自の手描きアニメーションにより、現代美術における映像表現を牽引する南アフリカ出身のアーティスト、ウィリアム・ケントリッジ。待望の国内初個展。
◇1970年代末の初期作から、2008年制作の近作までを網羅した約120点の作品により、アーティストの全貌が明らかに。
◇オペラ(ショスタコーヴィチ)、初期映画(ジョルジュ・メリエス)、人形劇、影絵芝居など、バラエティに富んだテーマの作品は、美術ファンにとどまらず、多くの観客を魅了。
YouTubeでの動画紹介のご案内
下記のホームページ(「YouTube」内、京都国立近代美術館のチャンネル)で、ウィリアム・ケントリッジの映像作品(抜粋)をご覧いただくことができます。
展覧会構成
ウィリアム・ケントリッジの作品は南アフリカの歴史と社会状況を色濃く反映しており、自国のアパルトヘイトの歴史を痛みと共に語る連作《プロジェクションのための9つのドローイング》は、脱西欧中心主義を訴えるポストコロニアル批評と共鳴する美術的実践として、1995年のヨハネスブルグ・ビエンナーレや1997年のドクメンタ10を契機に世界中から大きな注目を集めるようになりました。
しかし彼の作品を冷静に注意深く解読すると、その政治的外見の奥で、状況に抗する個人の善意と挫折、庇護と抑圧の両義性、そして分断された自我を再統合しようとする努力とその不可能性など、近代の人間が直面してきた普遍的かつ根源的問題を、執拗に検証し語り続けていることが分かります。ケントリッジ自身が「石器時代の映画制作」と呼ぶ素朴な制作技法に固執していることも、それが近代の物語(ナラティヴ)生成の原点、あるいは歴史を遡りながら植民地主義の病理を啓蒙主義の中に探ろうとする彼の強い意志によるものと理解すべきなのかもしれません。
精緻なセル画アニメやCGが主流である現代にあって、ケントリッジの素朴なアニメーション技法はその対極に位置していますが、彼の力強い表現は、ドローイングのコマ撮りアニメーションがいまだに有力な表現手法となり得ることを証明しており、1990年代中頃から彼の作品は、世界中の若い世代の美術家たちに大きな影響を与え続けています。
いま世界で最も注目を集める美術家の一人であるケントリッジは、2009年3月のサンフランシスコ近代美術館を皮切りに、フォートワース近代美術館(テキサス)、ノートン美術館(フロリダ)、ニューヨーク近代美術館、アルベルティーナ美術館(ウィーン)、イスラエル美術館(エルサレム)、ステデリック美術館(アムステルダム)を会場に、大規模な世界巡回展が進行しています。
日本での展覧会は、ウィリアム・ケントリッジとの3年間にわたる緊密な協力と広範な準備作業を経て実現されるもので、我が国では初の個展となります。南アフリカの歴史を扱った代表作《プロジェクションのための9つのドローイング》(1989–2003)から、ショスタコーヴィチのオペラ『鼻』を題材にした最新作の《俺は俺ではない、あの馬も俺のではない》(2008)まで、フィルム・インスタレーション4点を含む19点の映像作品と、36点の素描、63点の版画によりケントリッジの活動の全貌を紹介します。
作家紹介
1955 年生まれ。南アフリカ共和国ヨハネスブルグ在住。ヨハネスブルグの大学において政治学を学んだ後、パリのエコール・ジャック・ルコックにおいて演劇を学ぶ。1980 年代末から、素描をコマ撮りした手描きアニメーション・フィルムを制作・発表する。1997 年ドクメンタ10、98 年サンパウロ・ビエンナーレ、99 年ヴェニス・ビエンナーレ、カーネギー・インターナショナル、2000 年広州ビエンナーレ、2001 年横浜トリエンナーレ、2002 年ドクメンタ11、08 年シドニー・ビエンナーレに参加。2009 年から2011 年にかけて、サンフランシスコ近代美術館、フォートワース近代美術館、ノートン美術館(フロリダ)、 ニューヨーク近代美術館、アルベルティーナ美術館(ウィーン)、 イスラエル美術館(エルサレム)、ステデリック美術館(アムステルダム)を巡回する展覧会が開催中である。また、俳優、演出家、著述家など多彩な分野でも活躍している。
イベント情報
講演会
ジェーン・テイラー(批評家、作家/シカゴ大学客員教授・本展カタログ執筆者)
- 日時
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2010年1月10日(日)
- 場所
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14:00-15:30
- 担当
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講堂(地下1階)
- ジェーン・テイラー(Jane Taylor)氏 略歴
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シカゴ大学(アメリカ)客員教授、ウィトワーテルスラント大学(南アフリカ共和国、ヨハネスブルグ)名誉教授。キュレーター、批評家、作家として幅広く活動する。ウィリアム・ケントリッジについての著述多数。また、南アフリカとアメリカにおいてケントリッジの展覧会のキュレーションを担当し、ケントリッジの舞台作品『ユビュと真実委員会(Ubu and the Truth Commission)』ならびにドクメンタ委嘱、ケヴィン・ヴォランス作曲、ケントリッジ監督の歌劇『ゼーノの告白(The Confessions of Zeno)』の台本を執筆している。最近では新作の小説『移植の男たち(The Transplant Men)』(クリス・バーナード医師による世界初の心臓移植について)を発表。また、ケントリッジが過去15年間に渡りコラボレーションを続けている人形劇団についての本、『ハンドスプリング人形劇団(Handspring Puppet Company)』を編集した。現在、ケントリッジによるショスタコーヴィチのオペラ『鼻』のプロダクション(2010年、ニューヨークのメトロポリタン・オペラにて初演予定)についての本を執筆中である。
*聴講無料・申込不要(先着150名)
河本信治(京都国立近代美術館学芸課長、本展企画者)
- 日時
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2010年1月30日(土)
- 場所
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14:00-15:30
- 担当
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講堂(地下1階)
*聴講無料・申込不要(先着150名)
ギャラリー・トーク
担当学芸員によるギャラリー・トーク
- 日時
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2010年1月22日(金)
2010年2月5日(金) - 場所
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18:00-19:00
- 担当
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企画展ギャラリー (1F)
*いずれも参加無料(要観覧券)・申込不要
カタログ情報
- 初邦訳となる作家本人のテキストを多数含む充実の内容。
- 日本語で読めるケントリッジの書籍としては、今後最重要となること間違いなしです。
- フル・バイリンガル、220ページのヴォリュームで2000円(税込)
カタログ内容
作家本人によるテキスト
- 「恩寵の状態にある美術、希望の状態にある美術、包囲の状態にある美術」(1986年)
- 「影の礼讃」(2001/2002年)
- 「ジョルジュ・メリエスに捧げる7つの断片、擬似風景(アメリカの夜)、月世界旅行」(2003年)など
論文
- 「展覧会を紹介する―待ちながらウィリアム・ケントリッジを考える」(河本信治)
- 「芸術家の肖像」(ジェーン・テイラー)
- 「身体の介在、イリュージョンとリアリティー:映画とメリエスへのオマージュ」(神谷幸江)など
開催概要
- 会場
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東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
- 会期
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2010年1月2日(土)~2月14日(日)
- 開館時間
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10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
※入館は閉館30分前まで - 休室日
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月曜日[2010年1月11日(月・祝)は開館]、1月12日(火)
- 観覧料
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一般 850円(600円) 大学生450円(250円)
※( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
※それぞれ入館の際、学生証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。※本展の観覧料で、当日に限り「早川良雄」展(ギャラリー4、2F)と所蔵作品展「近代日本の美術」(所蔵品ギャラリー、4-2F)もご観覧いただけます。
- 主催
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東京国立近代美術館、京都国立近代美術館
- 後援
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南アフリカ共和国大使館
- 巡回
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京都国立近代美術館:2009年9月4日(金)~10月18日(日)【終了】
広島市現代美術館:2010年3月13日(土)~5月9日(日)