展覧会
パウル・クレー:おわらないアトリエ
会期
-会場
東京国立近代美術館本館企画展ギャラリー
概要
スイス生まれの画家パウル・クレー[Paul Klee, 1879-1940]は、長らく日本の人々に愛され、これまでにも数多くの展覧会が開催されてきました。それらの展覧会では作品の物語性や制作上の理念が詩情豊かに詠われ、多くの人々にクレーの芸術の魅力を伝える役割をはたしました。
国立近代美術館で初となる今回のクレー展では、今までの展覧会成果を踏まえた上で、これまでクローズアップされてこなかった「クレーの作品は物理的にどのように作られたのか」という点にさまざまな角度から迫ります。この観点から作品を見てみるならば、視覚的な魅力を体感できるのみならず、その魅力がいかなる技術に支えられているのか、ということまでもが明らかになるでしょう。
具体的な「技法」と、その技法が探究される場である「アトリエ」に焦点を絞り、クレーの芸術の創造的な制作過程を明らかにしようする本展において、鑑賞者は、ちょうど画家の肩越しに制作を垣間見るような、生々しい創造の現場に立ち会うことになるでしょう。
スイスのパウル・クレー・センターが所蔵する作品を中心に、ヨーロッパ・アメリカ・国内所蔵の日本初公開作品を数多く含む約170点で構成されます。

展覧会構成
現在/進行形―アトリエの中の作品たち
Making in der Gegenwart – Atelierbilder
クレーは生涯に5つの街にアトリエを構えます(ミュンヘン、ヴァイマール、デッサウ、デュッセルドルフ、ベルン)。
アトリエそして住居の壁には、完成・未完成にかかわらず数多くの自作がかけられていました。それらアトリエの作品群は、多くは画家自身の手によって写真で記録されています。
アトリエ写真とそこにかけられていた作品を紹介し、制作中の画家の試行錯誤を検証します。
プロセス1 写して/塗って/写して―油彩転写の作品
Prozess 1 – Ölpause
クレーが独自に生み出した技法に「油彩転写」があります。
鉛筆やインクで描いた素描を、黒い油絵の具を塗った紙の上に置き、描線を針でなぞって転写した後、水彩絵の具で着彩するという技法です。さらにはそこから、リトグラフや油彩画が制作されることもありました。
先行する素描と油彩転写画を対比することで、この素描と彩色画と版画の間を揺れ動くような技法の秘密に迫ります。
プロセス2 切って/回して/貼って― 切断・再構成の作品
Prozess 2 – Zerschnitt und Neukombiniert
クレーはたびたび、とりあえず仕上げた作品を2つないしそれ以上の部分に切断し、そこから新たな作品を生み出しました。
切断された断片の上下を反転させたり、左右を入れ替えたりというように、新たに組み合わせて再構成し、台紙に貼ってひとつの作品とした事例を紹介します。
プロセス3 切って/分けて/貼って― 切断・分離の作品
Prozess 3 – Teilstücke
プロセス2に引き続き、切断された後に新たに作られた作品を取り上げます。
2つないしそれ以上に分解された部分が、組み合わされることなく、それぞれが独立した作品となった事例を、元のコンポジションの再構成とともに紹介します。
プロセス4 おもて/うら/おもて― 両面の作品
Prozess 4 – Recto/Verso
あまり知られていなかったことですが、かなりのクレー作品の裏面には、何かが記されていたり描かれたりしています。
作品の表と裏の関係を検証し、絵画が二次元的であるだけではなく、三次元的な存在でもありうる可能性を探ります。
過去/進行形―“ 特別クラス”の作品たち
Making in der Vergangenheit – “Sonderklasse”
クレーは、作品リストに記載した作品をある時点以降マーケティングの観点から8つのカテゴリーに分けています。しかしそれらとは別に「特別クラス(Sonderklasse)」というカテゴリーを設け、その作品を非売として手元にのこしました。
自らの制作における試金石的ないし模範的作品と彼が考え、次の新たな作品を生み出す起爆材ともなった作品群を最後に紹介し、生涯にわたる画家の制作の軌跡をとらえ直します。
作家紹介
パウル・クレー|年譜
1879年 12月18日スイス、ベルンに生まれる。
1883年 後にクレーが作った自作の作品リストでNo.1と記載される作品が制作される。
1898年 ミュンヘンに移り、翌年10月ミュンヘン美術アカデミー入学。
1906年 リリー・シュトゥンプフと結婚。
1907年 長男フェリックス誕生。
1912年 カンディンスキーとマルクが前年に結成した「青騎士」のメンバーになる。
1914年 4月北アフリカ、チュニジア旅行。8月第一次世界大戦勃発。
1916年 ドイツ軍新兵として徴兵される。
1919年 2月兵役解除。春、ミュンヘンにアトリエを借りる。この頃から油彩転写技法による制作開始。
1920年 10月ヴァイマール州立バウハウスに教授として招聘される。
1925年 ヴァイマール・バウハウス閉校、デッサウに移転。
1926年 ヴァイマールからデッサウに移住。
1931年 バウハウスを退職。デュッセルドルフ美術アカデミー教授に就任。
1932年 ナチスが第一政党となる。
1933年 デュッセルドルフ美術アカデミーから解雇通告。ベルンの父と姉の家に寄寓。
1934年 キストラー通り6番地の集合住宅に転居。
1935年 晩年の病の最初の兆候が現れる。
1940年 6月29日心臓麻痺のため死去。享年60歳。
イベント情報
講演会
「ウラのウラを読む — パウル・クレーの両面作品」
柿沼万里江[チューリヒ大学・本展カタログ執筆者]
日程: 2011年6月4日(土)
時間: 13:00-14:30
場所: 東京国立近代美術館講堂
申込不要・聴講無料(先着140名)
「パウル・クレーと自然のアトリエ」
奥田修[パウル・クレー・センター研究員・本展カタログ執筆者]
日程: 2011年7月16日(土)
時間: 13:00-14:30
場所: 東京国立近代美術館講堂
申込不要・聴講無料(先着140名)
対談+朗読会
クレーをめぐるお話と詩の朗読(仮題)
谷川俊太郎[詩人]+岡﨑乾二郎[美術家]
日程: 2011年6月26日(日)
時間: 13:00-14:00
場所: 東京国立近代美術館講堂
要申込(応募者多数の場合は抽選)聴講無料(140名)
申込方法
郵便往復はがきの「往信用裏面」に郵便番号・住所・氏名・電話番号を、「返信用表面」に郵便番号・住所・氏名を明記のうえ、下記までお申し込みください(はがき1枚につき1名まで)。
締切|6月4日[土](当日消印有効)
申込・問合せ先|〒116-0013 日本郵便荒川支店私書箱22号「対談+朗読会」係
電話|03-5777-8600(ハローダイヤル)
コンサート
申愛聖[バイオリン]+三間早苗[チェロ]
日程: 2011年6月12日(日)
2011年6月25日(土)
時間: 13:00-13:30
場所: 東京国立近代美術館講堂
申込不要・入場無料(先着140名)
演目など詳しくは展覧会ウェブサイトをご覧ください。
トークショー(有料)
茂木健一郎のクレーを巡る旅
パウル・クレーが〈画家〉になった瞬間
茂木健一郎[脳科学者]
聞き手|鈴木芳雄[エディター/クリエイティヴ・ディレクター]
日程: 2011年6月24日(金)
時間: 19:00-20:30
場所: 日経ビル6階・日経カンファレンスルーム(東京・大手町)
開催場所は当館ではございません
有料イベントです
申込方法|イープラスにてチケット発売
発売時期、購入方法は展覧会ウェブサイトをご覧ください
カタログ目録情報
開催概要
- 会場
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東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
- 会期
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2011年5月31日(火)~7月31日(日)
|ご来館いただくお客様へ|
・開館日、開館時間変更の可能性があります。ご来館前に本ページ、ハローダイヤル 03-5777-8600にて最新情報をご確認ください。・出品者からの貸出し条件により、室温を低く設定(20℃程度)しております。
ご観覧の際は、上着など羽織るものをお持ちいただくことをお勧めいたします。・一部作品に展示替があります。
前期:5月31日(火)―6月26日(日)
後期:6月28日(火)―7月31日(日) - 開館時間
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10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
土曜も夜間開館します。
6月と7月で開館時間が異なりますのでご注意ください。
6月|金・土曜は18:00まで開館
7月|金・土曜は20:00まで開館
入館はそれぞれ閉館の30分前まで - 休館日
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月曜日[7月18日は開館]
- 観覧料
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一般 1500円(1100円) 大学生 1100円(800円) 高校生 700円(400円)
※( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
※それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。※本展の観覧料で入館当日に限り、同時開催の「路上」(ギャラリー4、2F)、所蔵作品展「近代日本の美術」(所蔵品ギャラリー、4-2F)もご覧いただけます。
お問い合わせ=ハローダイヤル 03-5777-8600
- 主催
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東京国立近代美術館
日本経済新聞社 - 後援
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スイス大使館
- 協賛
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NEC
損保ジャパン
大日本印刷
東レ
りそな銀行 - 協力
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パウル・クレー・センター(ベルン)
スイス インターナショナル エアラインズ
日本航空
スイス政府観光局 - 助成
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スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団
