展覧会
ジョセフ・クーデルカ展
会期
会場
東京国立近代美術館本館企画展ギャラリー
概要
ジョセフ・クーデルカ(1938 年チェコスロヴァキア生まれ)は、今日世界で最も注目される写真家の一人です。本展はその初期から最新作までを紹介する展覧会です。
航空技師として働きながら1960 年代初頭に写真を発表し始めたクーデルカは、知人の紹介で撮影を始めたプラハの劇場での写真を通じてチェコスロヴァキアの写真界にその存在を知られるようになります。1967 年には技師の仕事を辞め、フリーランスの写真家として活動を開始。その翌年ワルシャワ条約機構軍のプラハ侵攻を撮影。その写真は匿名のまま西側に配信され、それをきっかけに1970 年、クーデルカは故国を離れました。
当初イギリス、後にフランスを拠点に、チェコスロヴァキア時代からとりくんでいた「ジプシーズ Gypsies1962-1970」や、亡命後にヨーロッパ各地で撮影された「エグザイルズ Exiles 1970-1994」などのシリーズを発表。それらは詩的でありながら独特の強さをもつイメージによって、市井の人々のささやかな人生の陰影をとらえつつ、20 世紀という時代をめぐる文明論的な奥行きをも備えた作品として高く評価され、クーデルカは一躍欧米の写真界でその名を知られるようになりました。
2002 年、クーデルカの初めての本格的な回顧展として、故国チェコ共和国、プラハのナショナル・ギャラリーで開催された本展は、その後トルコやメキシコに巡回しました。アジアでは初の開催となる東京展では、従来展示されなかったヴィンテージ・プリントが加わるほか、1980 年代後半よりとりくんでいるパノラマ・フォーマットの作品による「カオス Chaos 1986-2012」のシリーズを、最新作も含めた新たな構成とし、初期から今日に至るクーデルカの作品世界を紹介します。
ここが見どころ
ジョセフ・クーデルカの回顧展はアジアでは初の開催
企画展ギャラリー(1階)の大空間に、代表的なシリーズ「ジプシーズ」や「エグザイルズ」も含む約280点が展示される、見ごたえ十分な展覧会です。
展覧会にあわせて、図録を出版
豊富な写真に加えて、日本語で文献が読むことのできる貴重な本です。
- 版型:241mm(横)*256mm(縦)
- ページ数204ページ(うち、写真ページ136ページ、文章68ページ)(予定)
同時期開催の所蔵作品展「MOMATコレクション」において、森山大道「にっぽん劇場」(全100点)を展示
クーデルカと同年生まれの森山大道。
初期の代表作「にっぽん劇場」(1968)を展示します。
昨年イギリス、テート・モダンで開催された「William Klein + Daido Moriyama」展にも当館より75点が貸し出し、注目されました。今回は、18年ぶりに全100点を一括展示します。
他にもクーデルカ展の会期中の所蔵作品展には、当館コレクションより多数の写真作品を出品予定です。
展覧会構成
1 初期作品 Beginnings 1958-1961
1961年、クーデルカはプラハの劇場のロビーで最初の個展を開きます。発表されたのは学生時代に手に入れた中古カメラで撮りためた作品群。風景や人物など身近な世界を題材としつつ、フォルムの探求やパノラマ構図の実験など、そこにはその後に展開される作品世界の萌芽を見ることができます。
2 実験 Experiments 1962-1964
演劇雑誌の表紙のために制作された作品群。要素を切り詰め、フォルムを強調し、極端なハイコントラストによって様式化、抽象化された画面は、クーデルカの作品としては一見異色です。しかし、対象の本質をとらえイメージ化するこの「実験」の成果は、後の仕事に確実に受け継がれていきます。
3 劇場 Theater 1962-1970
演劇雑誌での仕事をきっかけに、プラハに新設された劇場の撮影を任されたクーデルカは、単なる記録にとどまらない、独創的な舞台写真へのアプローチを試みます。ときに大胆に様式化、抽象化されたイメージは、同時にその舞台のエッセンスを的確に伝えるものでもありました。
4 ジプシーズ Gypsies 1962-1970
クーデルカはチェコスロヴァキア各地に暮らすジプシーを訪ね、撮影にとりくみます。舞台写真の仕事と並行して撮影されたジプシーのシリーズは、現実の世界を「劇場」としてとらえる独特のヴィジョンをつくりあげるとともに、1975年に刊行された写真集により、クーデルカの評価を確立しました。
5 侵攻 Invasion 1968
「プラハの春」と呼ばれた民主化勢力の台頭に対する反動として、1968年8月、ワルシャワ条約機構軍がチェコスロヴァキアに軍事介入します。首都プラハへの侵攻と市民の抵抗、その一部始終を撮影したクーデルカの写真は、翌年、匿名のまま西側諸国に配信されました。
6 エグザイルズ Exiles 1970-1994
ワルシャワ条約機構軍のプラハ侵攻を撮影したことをきっかけに、1970年に故国を離れたクーデルカは、ヨーロッパ各地を旅しながら撮影を重ねます。1988年にそれらは写真集『エグザイルズ』にまとめられました。亡命者という自身の境遇を反映するように、疎外感やノスタルジーが、シリーズ全体を貫くトーンとなっています。
7 カオス Chaos 1986-2012
1986年、フランスの政府機関の依頼で英仏海峡をめぐる風景を撮影した際、クーデルカは初めてパノラマフォーマットのカメラを使います。以降、産業化によって荒廃した土地、地中海沿岸の古代ローマ遺跡群など、人間の営みと景観をめぐるさまざまなパノラマ作品が発表され、その作品世界は文明論的な奥行きを深めていきます。
作家紹介
ジョセフ・クーデルカ Josef Koudelka
1938 年チェコスロヴァキア、モラビア生まれ。1961 年プラハ工科大学卒業。技師の仕事のかたわら舞台写真などを撮影。またチェコスロヴァキア各地でジプシーたちを撮影。1968 年ワルシャワ条約機構軍のプラハ侵攻を撮影。その写真は、本人および家族への報復の懸念から、P. P.( 「プラハの写真家」のイニシャル)名義で発表され、1969 年、匿名のまま国際報道クラブによりロバート・キャパ賞が授与された。1970 年に英国に移住。1971 年国際的な写真エージェンシーである「マグナム」に加入(1974 年正会員)。1980 年渡仏。1987 年帰化。『ジプシーズ』(1975 年)、『カオス』(1999 年)などの写真集や展覧会多数。
1978 年には優れた写真家に贈られるナダール賞を受章、またアンリ・カルティエ= ブレッソン賞(1991 年)、ハッセルブラッド国際写真賞(1992 年)など多くの写真賞を受賞しているほか、フランス芸術文化勲章(1992 年シェヴァリエ、2002 年オフィシエ)、チェコ共和国功労章(2002 年)を授与された。
カタログ情報
イベント情報
ジョセフ・クーデルカ展 ポスタープレゼント実施!
12月7日より、12月中の毎週土曜日、日曜日および祝日、先着20名様(各日)に、ジョセフ・クーデルカ展のポスターをプレゼントしております。ご希望の方はインフォメーションカウンターの係員に、本展のチケット半券をご提示の上、ポスター希望の旨お伝えください。
*1名様1枚まで
*配布枚数は各日20枚となっております。各日、配布枚数に達し次第終了となります
飯沢耕太郎氏による追加講演会が決定しました!
講演者|飯沢耕太郎(写真批評)
講演タイトル|ジョセフ・クーデルカの写真世界
日程: 2013年12月7日(土)
時間: 14:00-15:30
場所: 東京国立近代美術館 講堂(地下1階)
共催|マグナム・フォト東京支社、チェコセンター
*開場は開演30分前
*申込不要、参加無料(先着140名)
現在、東京国立近代美術館で開催中の「ジョセフ・クーデルカ展」は、1938年にチェコに生まれ、世界有数のドキュメンタリー写真家となった彼の、日本で最初の本格的な回顧展です。そこには、大胆で、実験的な初期作品、彼の名前が一躍知られるようになったソ連軍のプラハ侵攻を撮影した「侵攻」(1968年)、放浪の民の生と死を見つめ続けた「ジプシーズ」(1962-1970年)、故国を脱出して亡命者となったクーデルカの孤独感が色濃い「エグザイルズ」(1970-1994年)、パノラマカメラでヨーロッパ各地の風景を撮影し、神話的といえるような映像に昇華させた「カオス」(1986-2012年)など、代表作約300点が並んでいます。クーデルカが写真家として、大きく変動する時代と社会にいかに対峙していったかを、作品をスライド上映しつつお話ししたいと考えています。本講演に先立ち、短い時間でしたがクーデルカ本人にインタビューする機会がありました。そこで聞いた面白いエピソードも紹介します。(飯沢耕太郎)
講演会
増田玲(当館主任研究員/本展企画者)
日程: 2013年11月16日(土)
時間: 14:00-15:30
場所: 東京国立近代美術館 講堂(地下1階)
*開場は開演30分前
*申込不要、参加無料(先着140名)
ギャラリー・トーク
小林美香(当館客員研究員)
日程: 2013年11月29日(金)
時間: 18:00-19:00
増田玲(当館主任研究員/本展企画者)
日程: 2013年12月20日(金)
時間: 18:00-19:00
いずれも、企画展ギャラリー(1階)にて
※申込不要、参加無料(要観覧券)
開催概要
- 会場
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東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
- 会期
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2013年11月6日(水)~2014年1月13日(月)
- 開館時間
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10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
- 入館はそれぞれ閉館の30分前まで
- 休館日
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毎週月曜(12月23日、1月13日は開館)、12月24日(火)、年末年始(12月28日(土)-1月1日(水・祝))
- 観覧料
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850(600)円
大学生450(250)円- ( )内は20名以上の団体料金、いずれも消費税込。
- 高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
- 上記料金で入館当日に限り、同時開催の「現代のプロダクトデザイン-Made in Japanを生む」展、所蔵作品展「MOMATコレクション」および、工芸館で開催の「クローズアップ工芸」、「日本伝統工芸展60回記念 工芸からKOGEIへ」もご覧いただけます。
- 主催
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東京国立近代美術館、マグナム・フォト東京支社
- 後援
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チェコ共和国大使館、チェコセンター
- 協賛
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ライカカメラジャパン株式会社
- 協力
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日本航空