展覧会
近代風景~人と景色、そのまにまに~奈良美智がえらぶMOMATコレクション
会期
会場
東京国立近代美術館本館ギャラリー4
見どころ
奈良美智とMOMATの意外なコラボ。 奈良の感性を育んだ作品の数々が一堂に
麻生先生にお願いして松本竣介など、すでに他界した仲間たちの人となりを語ってもらう時、僕は子犬のような眼をして真剣に先生の話を聞いていた
奈良美智
アーティスト、奈良美智がMOMATのコレクションから作品をセレクトします。
大学時代の恩師、麻生三郎や、麻生とともに戦争の時代を生きた松本竣介。村山槐多のたくましい少女像や、奈良が「手袋とスカーフの色が大事」と語る榎本千花俊の女性像。美術史にとらわれることなく好きな作品を選んだら、自然と1910-50年代の人と景色を描く作品にしぼられたといいます。
おもに「人」を描くアーティストと思われがちな奈良ですが、実は街や野原といった「景色」も「人」と同じぐらい重要なものと考えています。「人」と人の外にある「景色」、ふたつが合わさって「風景」になる、と奈良は語ります。
おなじみの名作からふだんあまり展示されない作品まで、約60点がずらりと並びます。奈良が作家、作品に寄せたコメントもご紹介します。奈良美智の目を通して、作品の新しい魅力に出会いましょう。
奈良美智のドローイングも展示されています
《Harmless Kitty》は4F「ハイライト」コーナーに!
所蔵品ギャラリー4F1室「ハイライト」コーナーには、奈良の人気作品《Harmless Kitty》を展示します!
奈良美智のことばを収めた小冊子を無料でさしあげます
会場内にある奈良美智のことばを収めた小冊子を無料でさしあげています。
デザインは青森県立美術館のVIも手がけた菊地敦己さん。
会場のみの限定配布です。
数に限りがあるのでお早めにどうぞ。
奈良美智(なら・よしとも)とは?
1959年青森県弘前市生まれ。武蔵野美術大学で麻生三郎に学ぶ。愛知県立芸術大学大学院修了後ドイツに渡る。1993年、ドイツ国立デュッセルドルフ芸術アカデミーでマイスター・シューラー取得。
近年の展覧会に「奈良美智:君や僕にちょっと似ている」(横浜美術館、2012年)、「Life is Only One/ 無常人生」(アジアソサエティ香港、2015年)など。2016年、アジア・アーツ・アワーズ受賞。
奈良美智のことばより
奈良美智のことばを会場パネルより抜粋してご紹介します。
《銀嶺》は戦時中の作品であり、派手さを抑えたモノトーンの画面なのだが、編み込みの手袋とスカーフに置いた色が画面に生命感を与えている。僕はそのようなセンスが好きだ。軍国主義の暗い時代にあって、ひょいと宙返りして見せるような軽やかさと軟らかさが好きだ
彼の絵にある文学の匂いは、10代の前半に病気で聴力を失い、その2年後あたりから絵を描くようになったという彼の心象風景に重なっていて、音も無く静かに澄んだ形で絵画上に充満している
裸婦と題しながら胸から上だけを描く、そのこそばゆいような表現も好きなのだが、実は流れるような髪の毛の描写がとても魅力的で、自分の眼には眩しく映る
カタログ情報
イベント
キュレーター・トーク
奈良さんの企画をサポートしたMOMATのキュレーターが、展示の見どころについてお話します。奈良さんはどうやって作品を選んだのか、展示作業はどんな風に進んだのか、など、裏話もたくさん。
日時: 2016年9月16日(金) 18:30-19:15
担当: 蔵屋美香(企画課長)
テーマ:「奈良美智がえらぶMOMATコレクション」について、あれこれ
場 所: 2階ギャラリー4
「奈良美智がえらぶMOMATコレクション 近代風景~人と景色、そのまにまに~」展会場
※いずれも参加無料(要観覧券)/申込不要
奈良美智 講演会「彼らの何が自分を惹きつけるのか」
今回の企画について、また自らの作品を育んださまざまなものについて、奈良美智がお話します。 7月18日の「そのⅠ」に続き、10月10日の「そのⅡ」はそれをさらに掘り下げる内容となる予定。
もちろんどちらか一方だけの聴講でもOKです。
【講演内容変更のお知らせ】
7月18日の「そのⅠ」を聞けなかった方がたくさんいらっしゃったこと、当初「そのⅡ」に予定していた話題もこの日出たことなどを踏まえ、講演者の奈良さんとも相談の上、7月18日、10月10日の2回とも基本的に同じ内容でお話することとしました。どうぞご理解、ご了承の上ご参加ください。
日時:
① 2016年7月18日(月・祝) 14:00-15:30 【終了】
「彼らの何が自分を惹きつけるのか そのⅠ」
② 2016年10月10日(月・祝) 14:00-15:30
「彼らの何が自分を惹きつけるのか」(7月18日と同内容)
場所:東京国立近代美術館(本館) 講堂
定員:130名
聴講方法
*各日10:00より1階受付で先着130名様に整理券を配布します。
*開場は開始30分前です。
7月18日「彼らの何が自分を惹きつけるのか そのⅠ」レポート
「自分の作品をかたち作ったものは何なのか、それを紹介したい」と述べて、まずは奈良さんのふるさと、子ども時代の青森県弘前のスライドからスタートです。
犬ぞり、馬車、雪解けの泥道、野原、道端で遊ぶ子どもたち…1960年代だけど、都会とは時差があり、まるで戦後すぐみたいな光景を見て育った。昔はこうしたふるさとの「遅れ」が悲しかったけれど、今はこれが自分の感性を育ててくれたと感謝している、と奈良さん。奈良さん自身の子ども時代の貴重な写真も登場。
中盤からは美術のお話に。
武蔵野美術大学から愛知県立芸術大学へ、そしてデュッセルドルフ芸術アカデミーへ。学生時代は、なるべく感情に引きずられず、色やかたちの組立で作品を見ようとしたそうです。
たとえば萬鉄五郎の《裸婦(ほお杖の人)》は、画面四隅の処理がぜんぶ違うことで空間の広がりが生れている。また熊谷守一の《畳の裸婦》は、畳の長辺約180センチに比して女性の身体がとても大きい。でも、畳の四角と人体との画面上の関係を見てこうしたんじゃないかなあ。次々に出る正確な読み解きに感嘆のため息が。でも奈良さんいわく、これは勉強すれば身につくもの。ここから先をどうするかが個々のアーティストに問われます。
武蔵野美術大学時代の恩師、麻生三郎と、麻生さんの仲間で奈良さんが敬愛する画家、松本竣介のお話も。麻生さんの作品《子供》(1945)は、弘前にいたような子どもで肌の感じも匂いもわかる、ウソがない、と感じたそう。松本竣介の《工場付近》(1943)も、街にものが少ないので本質がわかる、たとえば壁など、固いものが固いとちゃんと伝わる、と指摘。両作品はどちらも第二次世界大戦中から終戦直後に描かれたもの。困難な時代の作品に反応するのは、やはり「戦後すぐみたいだった」子ども時代の弘前に通じる要素が多くあるためでしょう。そのへんは、たとえ表面上作風が似ていても、もっと豊かな時代に育った下の世代の人たちとはまったくちがうはずだ、とのことでした。
奈良さんによれば、惰性でやっていると自分を自分でまねした感じになる。だからダメと思ったら作品をつぶし、自分を追いこむ勇気が必要、とのことです。作品の制作過程を記録したスライドでは、ほぼできあがっていた作品を塗りつぶし、まったく違う作品を生み出すようすが紹介されました。最初に丸を描いたり四角を描いたりし、そこから偶然にしたがって描き進めることも多い、出てきて初めてわかることがある、との指摘にも納得です。
また、ある作品を描く際、身の回りに置いていたものを並べて撮影しためずらしい写真も紹介。奈良さんの場合、戦時下の日系人を撮った写真集やボブ・ディランのCDなど、一見画面に直でつながらないようなものがほとんどを占めるとか。こうした例を知ると、せまい領域に閉じこもらず、美術の外に広がる世界からさまざまな刺激を得、それを美術作品に落とし込む、という奈良さんの制作態度がわかってきます。
最後の質問タイムを含め、1時間半の予定を30分延長し、2時間の熱い熱い講演会となりました。奈良美智さん、おつかれさまでした。
開催概要
- 会場
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ギャラリー4
- 会期
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5月24日(火)-11月13日(日) 8月8日(月)-15日(月)は休館です
- 開館時間
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10:00-17:00 (金曜日、土曜日は10:00-20:00)
※入館は閉館30分前まで - 休室日
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月曜日[ただし7月18日、9月19日、10月10日の祝日は開館]、7月19日(火)、8月8日(月)-15日(月)、9月20日(火)、10月11日(火)
- 観覧料
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一般 430円 (220円)
大学生 130円 (70円)- 高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、友の会・賛助会会員、MOMAT支援サークルパートナー企業(同伴者1名迄。シルバー会員は本人のみ)、キャンパスメンバーズ、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
- それぞれ入館の際、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、会員証、職員証、障害者手帳等をご提示ください。
- ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
- お得な観覧券「MOMATパスポート」でご覧いただけます。
- キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は学生証または教職員証の提示により無料でご覧いただけます。
- 本展の観覧料で、入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(所蔵品ギャラリー、4-2F)もご観覧いただけます。
- 無料観覧日
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毎月第一日曜日 [ 6月5日(日)、7月3日(日)、8月7日(日)、9月4日(日)、10月2日(日)、11月6日(日)] および11月3日(木、文化の日)
- 主催
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東京国立近代美術館