令和6年度 インターンシップ生のことば

A 学芸・コレクション Eさん

このインターンに応募した動機として、元々自分の所属大学に設置されている作品資料の管理施設でのアルバイトの経験があり、そのような資料整理・作品保存といった学芸員の業務に関心があったこと、そして東京国立近代美術館の豊富な所蔵作品がどのように管理・運営されているのか実践的に学びたいと考えたことです。

業務では、最初に作品シートの記入や書類整理、倉庫内の清掃など、日常のルーティンワークを経験しました。こうした日々の業務を経験することで、細かな日々の作業が美術館の運営を支える重要な役割を果たしていることを実感しました。

また、コレクション展の展示替えにも関わらせていただきました。単に作品を入れ替えるだけでなく、作品の水平さを細かく確認したり、展示室のライティングを微細に調整するなど、展示には細やかな作業が求められることを実践的に学べました。展示はただ並べるだけではなく、作品を最適な状態で見せるための工夫が細部まで行われていることを実感しました。作品を直接触る機会はそこまでありませんでしたが、それでも一部の作品の梱包を実際に行わせていただきました。

この経験を通じて、美術館での仕事に対する理解が深まり、自分のキャリアビジョンもより明確になりました。この1年間、学芸員の業務という大変貴重な経験をさせていただき、本当にありがとうございました。

A 学芸・コレクション Nさん

前年度にインターンをしていた美術館は所蔵作品を持たない館であり、所蔵作品の保存や活用といった美術館業務を学びたいと考えたことからコレクション部門のインターンへ応募しました。活動を通して、美術館におけるコレクションの扱い方やそれに伴う作業の内実、美術館の活動継続のために求められる視点などを学ぶことができたと振り返ります。

所蔵作品展の準備や展示替えの際はもちろん、作品の貸出・返却時や収蔵庫の整理の際にも美術館が作品という「もの」を扱う場所であることを改めて感じさせられました。作品の大きさや重さ、素材や状態によって常に様々な対応が要求されており、今まで具体的にイメージできていなかった、作品を扱うことの特徴を知りました。

また、学芸員の方々からご自身の経験を踏まえた様々なお話を伺うことができたことも貴重な時間で、自分はどのような学芸員になりたいかということを考えさせられる経験でした。さらに、美術館で働く際には研究や論文だけではなく、作品の扱い方や自分の眼と身体感覚に基づいた心地よい展示の実現といった、現場での経験でしか身に付けることのできない力も求められると実感しました。このインターンシップへの参加が私の学芸員を志す意志を一層強いものにしたことは間違いありません。お忙しい中でこのような機会を提供してくださった研究員の方々に改めて感謝申し上げます。

B 学芸・コレクション Yさん

2024年度、学芸・コレクション、写真室のインターンとして活動させていただきました。インターン活動に志望した動機として、写真に絞ったインターンは全国的に見てもなかなか得ることが出来ない機会であることに加え、そのような中で、13,000点以上の様々なジャンルの作品を収蔵する国立美術館という場所で、写真というメディアがどのように保存、管理され、活用されているかについて学びたいと考えた経緯がありました。

写真室での活動では、プリントスタディの準備や当日の補助(見学)、貸出作品および返却作品の点検、展覧会出展作品の額装と展示を終えた作品の片付け、作品を管理する作品カードの記入等々、様々な業務に関わらせていただきました。プリントを直接扱う作業は緊張しましたが、間近で見るプリントの美しさや、担当研究員の方から、作品の来歴や特徴などを作業の合間に教えていただいたことは強く印象に残っています。また、写真室の活動だけでなく、美術課全体の会議やコレクション展の展示替えの作業にも参加させていただき、研究員の皆さまが、日々どのようなことを目指し活動され、また研究をされているのか、間近で見ることが出来たことは何事にも変え難い経験でした。インターンの活動という非常に短い時間の中ではありましたが、多くの情報と経験をいただいたと感じております。このような貴重な機会をいただきましたこと、東京国立近代美術館の皆さまに改めて感謝申し上げます。一年間、ありがとうございました。

B 学芸・企画展 Kさん

美術鑑賞、美術展示作りおよび研究成果の展示による公開方法について実践的に学びたいと思い、本インターンシップに参加しました。

今年度に開幕した3つの展覧会を中心に、様々な経験をさせて頂きました。企画・広報に関する会議や展示作業の現場見学に加え、資料スキャニング、年譜まとめ、図面作成等の作業を通して、バックヤードでの仕事に実際に関わることができました。企画展示部門以外にも、美術館教育部門のイベント補助および学芸・コレクション部門の収蔵品作業見学を通して、美術館の全般的な活動について多面的に学ぶことができました。

企画展示部門の課題では、自身の展示を立案し、企画書・作品リスト・図面を作成しました。難しい課題でありながら、自身の興味あるテーマを深掘りする機会となり、中間および最終発表で学芸員の方々から貴重な指摘やコメントを頂きました。そのフィードバックのおかげで、選択したテーマを新しい観点から見ることができ、展示企画に関して深く勉強できました。

この一年間、東近美の学芸員および職員の皆様には丁寧かつ優しくご指導頂きました。皆様との交流を通じ、教室では得られない多くのことを学びました。美術館・博物館に関する知識および観点を大きく成長させることができ、学芸員を目指す私にとって非常に貴重な経験でした。心よりお礼申し上げます。

C 美術館教育 Iさん

1年間を通して、前半は主にボランティアであるガイドスタッフによる一般向けの所蔵品ガイド(対話鑑賞)や小中高の生徒が対話鑑賞を体験する学校受け入れプログラム、こども向けのイベント「こどもまっと」の見学・補助といった東近美の教育普及活動を学びました。対話鑑賞の見学では、参加者の自由な意見を聞きながら鑑賞することで作品がそれまでと全く違う姿で見えてくる体験に恵まれました。「こどもまっと」で関わったこどもと美術館の建物を探検する「MOMATまるごと探検隊」では、こどもの行動力・観察力において想像以上の感性豊かさに驚かされました。

対話鑑賞の準備に必要な資料を整理する作業にも携わり、ガイドスタッフがこれまで扱った作家や作品に関する資料を蓄積した作家ファイルは今後のガイドに役立つ重要なツールであることを学びました。

定期的に行われるガイドスタッフの例会やフォローアップ研修にも参加し、教育普及室との円滑な連携やガイドのスキルアップが図られていることを知りました。

後半では、前半に学んだことを活かし、一般向けの対話鑑賞の実践に取り組みました。サポートを受けながら、作品観察、作家ファイルを利用した作品知識の習得、流れを想定したプランに沿った実践練習を積み重ねて準備しました。実践を通じて、自由な対話を目的とした鑑賞の裏では綿密な準備が必要であること、鑑賞者の深い対話を促すための問いの投げ方の難しさを実感しました。

教育普及活動って何?からスタートしたインターン活動でしたが、様々なプログラムを体験させていただき、社会と美術館をつなぐひとつの架け橋となっていることを学びました。教育普及室をはじめとする職員の皆様、貴重な経験ありがとうございました。

Page Top