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MOMATコレクション その他 田中功起《ひとつの陶器を五人の陶芸家が作る(沈黙による試み)》「手話とバリアフリー字幕版」(2013/2021年)オンライン無料公開のお知らせ
戻る※オンライン無料配信は終了しました。
このたび、東京国立近代美術館では、幅広い鑑賞の機会をつくるため、所蔵作品である田中功起《ひとつの陶器を五人の陶芸家が作る(沈黙による試み)》(2013年)の「手話とバリアフリー字幕版」(2021年/HDヴィデオ/カラー/サウンド/80分)を制作しました。この映像をオンラインにて無料公開いたします。
「美術館で映像作品を楽しみたい。」
このプロジェクトは、一人のろう者の言葉から始まりました。近年、映画をBDあるいはDVDで鑑賞する際には字幕を選択できる場合があります。また映画館では、ろう者・難聴者・中途失聴者などのアクセシビリティを拡充する目的で、バリアフリー字幕をつけて鑑賞できる場合があります。しかし、美術館などで展示される映像作品に、バリアフリー字幕や手話による映像が付帯する例はたいへん少ない状況にあります。現状、ろう者・難聴者にとって、美術館で映像作品を鑑賞することは高いハードルがあるのです。
2018年6月13日「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律(平成30年法律第47号)」が公布、施行されました。この法律では、「障害者が必要な支援を受けて文化芸術を鑑賞する機会を拡充する必要性」がうたわれています。これに基づき、当館は国立の美術館として、アーティストの田中功起氏の全面的な協力のもと、所蔵作品である《ひとつの陶器を五人の陶芸家が作る(沈黙による試み)》(2013年)の「手話とバリアフリー字幕版」及び「手話についての解説動画」(2021年/HDヴィデオ/カラー/サウンド/本編75分・解説5分、合計80分)を制作しました。
今回、手話とバリアフリー字幕をつける映像作品として選んだ田中氏の作品は、第55回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(2013年)で特別表彰を得た日本館での展示「抽象的に話すこと-不確かなものの共有とコレクティブ・アクト」の出品作の一つであり、国際的に評価の高い作品です。それぞれの出自や境遇、考え方の異なる5人の中国の陶芸家たちが、一つの陶器を協働で制作するプロセスを記録したドキュメンタリー作品であり、カメラを通して見えてくる世界は、まるで社会で暮らす我々の日常を抽象化しているかのようです。
5人の陶芸家のうち男性3人を野﨑誠氏(手話ナビゲーター)、女性2人を佐沢静枝氏(手話ナビゲーター)が演じます。手話の監修は、木下知威氏(手話マップ)が担いました。監督は、田中功起氏です。
また、2020年は、コロナウィルス感染症がひろがりにより、多くのアーティストが展示の機会を奪われました。本プロジェクトはこのコロナ禍での作家支援も兼ねています。
アート作品としての映像に、バリアフリー字幕のみならず手話をつけるという本プロジェクトは、世界的にみても数少ない取り組みです。ろう者・難聴者・中途失聴者の皆さんのみならず、手話やバリアフリー字幕にご関心のある方にも、是非ご覧いただきたいと考えています。今回の取り組みが、今後、インクルーシブな(誰も排除されない)芸術鑑賞の機会が増えていくための一助となることを願っています。
公開期間は2021年3月31日~2022年3月31日まで。無料で、1年間の期間限定的な公開となります。※オンライン配信は終了しました。ご視聴いただいた皆様ありがとうございました。
東京国立近代美術館
2021年3月吉日
トークイベント「沈黙による試みー映像のバリアフリー化について」※手話と日本語字幕入り(事前収録)
日本全国で、聞こえない・聞こえにくい人は約1000万人いると言われています。 昨今、美術館で展示される映像作品は増加傾向にありますが、それらに手話やバ リアフリー字幕(話者名や音声情報を文字で表現したもの)がつく事は殆どありません。よって、聞こえない・聞こえにくい人にとって映像作品を観ることには、大きなハードルがあります。この状況を改善すべく、東京国立近代美術館 は、所蔵の田中功起《ひとつの陶器を五人の陶芸家が作る(沈黙による試み)》 「手話とバリアフリー字幕版」を制作しました。世界的にみても、稀な取り組みです。こちらは2022年3月末まで無料配信しました。このトークイベントでは、この制作を振り返ると共に、ゲストスピーカーを迎えて、改めて映像のバリアフリー化について考えます。
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