コレクション
屋根の熱気に吹きつけられ、祖父の顔は頭蓋骨のようにもう色褪せて見える。ところで彼は何といったのでしたっけ?灼熱の焼きごてを眼に入れられようとしたときに。「僕の美しいお友達、火よ。もう少しやさしくお願いします」。大丈夫。安心なさって。姉は日傘を取りにいき、祖父は指先をまるく尖った舌で冷やしていた。
岡﨑乾二郎2002
基本情報
- 作品名
- 屋根の熱気に吹きつけられ、祖父の顔は頭蓋骨のようにもう色褪せて見える。ところで彼は何といったのでしたっけ?灼熱の焼きごてを眼に入れられようとしたときに。「僕の美しいお友達、火よ。もう少しやさしくお願いします」。大丈夫。安心なさって。姉は日傘を取りにいき、祖父は指先をまるく尖った舌で冷やしていた。
- 作家名
- 岡﨑乾二郎 作家詳細
- 制作年
- 2002
- 収蔵方法
- 購入
- 素材・技法
- アクリリック
- 支持体
- キャンバス
- 作品サイズ(cm)
- 180.0×130.0×5.0
- 作品番号
- O01136
作品解説
2枚の画面(※)を、時間をかけて眺めてみましょう。たとえば画面上辺中央の緑の「7」のような形。どちらの画面にもそっくりなものがあります。あるいは画面向かって左下隅の糸切ばさみのような形。色やタッチや背景をなす別のタッチは違っても、やはり同じ形をしています。こうして、色やタッチ、タッチ同士の分割を変えながら、2枚の画面がほぼ同じ構図を持っていることが徐々にわかってきます。ここでは勢いのあるタッチは、決して「激情」で描かれたものではなく、じっくりと思考された末に生み出されたものなのです。タイトルはどうでしょう?違う話を語っているのに、火、熱、老人など共通する要素があります。また、地の文→「セリフ」→地の文という構成も一緒です。つまり、絵画面もタイトルも、似ているようで異なる二つの要素間の関係で出来ているのです。最終的に、つやつやとした絵具の盛り上がりを持つ、物質感のあるこの絵画の本当の経験は、2枚の画面と二つのタイトルの間を忙しく往復する、見る者の視線の運動(当然まったく物質感を持ちません)の中にしか立ち現われて来ないのかも知れません。
※https://www.momat.go.jp/collection/o01137