展覧会

会期終了 所蔵作品展

近代工芸の百年 : 所蔵作品展

会期

会場

東京国立近代美術館工芸館

概要

近代日本の工芸は、個人の美意識に基づく作品の創造を目指した工芸家たちによって発展し、今日みられるような様々な特色を生み出しました。ひとりの制作者においても伝統と革新とは常に相克し、素材や技法に立ち向かいながら、工芸という枠組みを問い直す試みが工芸の近代化を推し進めていきました。

明治期には輸出や博覧会を主要な目的とする精緻な技巧を凝らした工芸が求められましたが、1920年代に入ると、作者の内面や時代精神が作品に投影されるようになりました。欧米の芸術思潮に影響を受けたモダニズムの作家が活動する傍らで、民芸運動を推進させるグループは、変貌する近代社会のあり方を問いただしました。戦後になると、伝統の再解釈がはじまり、過去に足場を置きながら新しい表現領域への開拓が検証されました。一方、“オブジェ”への挑戦は、存在の根底から揺るがす勢いを既存の工芸に投げつけ、この分野に大きな刺激をもたらしました。今日では、工芸に特有の素材と技法、そしてそのかたちの成り立ちに対する関心が高まり、独自の造形性についてさかんに論議されています。

本展では、時代毎に浮かび上がる作家の思想、素材や技法の解釈、社会的背景等に着目し、日本の工芸100年の流れを約90点の作品によって紹介します。

鈴木長吉《十二羽の鷹》(部分)1893
1893年のシカゴ万国博覧会に出展して好評を博した明治期の工芸を代表する逸品。鋭い観察眼で捉えた鷹の多様な姿が、高度な技術によって巧みに表現されています。

「近代工芸の百年」出品作品リスト

展示室①
 作家名(和)作家名(ヨミ)生~没年題名(和)題名(よみ)制作年技法
 鈴木長吉スズキ、 チョウキチ1848~1919十二の鷹じゅうに の たか1893青銅の地に金、銀、赤銅、朧銀による象嵌、鋳造
 喜多川平朗キタガワ、 ヘイロウ1898~1988能衣装唐織黒絵段のういしょう からおり くろえだん1962絹、唐織
 喜多川平朗キタガワ、 ヘイロウ1898~1988刺納朽木文帯しのう くちきもん おび1974絹、刺納
 北村武資キタムラ、 タケシ1935~浅黄地透文羅裂地あさぎじ とうもん ら きれじ1996絹、羅
 木村雨山キムラ、 ウザン1891~1977一越縮緬地花鳥文訪問着ひとこし ちりめんじ かちょうもん ほうもんぎ1934絹、友禅
 森口華弘モリグチ、 カコウ1909~訪問着 薫秋ほうもんぎ くんしゅう1964絹、友禅
 中村勝馬ナカムラ、 カツマ1894~1982一越縮緬地友禅訪問着 縢ひとこし ちりめんじ ゆうぜん ほうもんぎ かがり1961絹、友禅
 志村ふくみシムラ、 フクミ1924~紬織着物 湖北残雪(白)つむぎおり きもの こほくざんせつ ’しろ)1981絹、織
 鎌倉芳太郎カマクラ、 ヨシタロウ1898~1983紺地印金朧型梅花文長着こんじ いんきん おぼろがた ばいかもん ながぎ1962絹、型染、印金
 鈴田照次スズタ、 テルジ1916~1981紬地木版摺松文着物つむぎじ もくはんずり まつもん きもの1972絹、木版染、型染
 平田郷陽ヒラタ、 ゴウヨウ1903~1981洛北の秋らくほく の あき1937木彫、布きせ
展示室②
 作家名(和)作家名(ヨミ)生~没年題名(和)題名(よみ)制作年技法
和室芹沢銈介セリザワ、 ケイスケ1895~1984法然上人御影ほうねん しょうにん みえい1938絹、型染
和室浜田庄司ハマダ、 ショウジ1894~1978刷毛目汲出セットはけめ くみだし せっと1925陶器
和室河井寛次郎カワイ、 カンジロウ1890~1966花鳥図壺かちょうず つぼc.1926磁器
和室富本憲吉トミモト、 ケンキチ1886~1963白磁水指はくじ みずさし1926磁器
 宮川香山ミヤガワ、 コウザン1842~1916色入菖蒲図花瓶いろいり しょうぶず かびん1897-1912 
 七代錦光山宗兵衛キンコウザン、 ソウベイ (7ダイ)1867~1927上絵金彩花鳥図蓋付飾壺うわえ きんさい かちょうず ふたつき かざりつぼ明治時代前期 
 初代永澤永信ナガサワ、 エイシン (1ダイ)1861~1919白磁籠目花鳥貼付飾壺はくじ かごめ かちょう はりつけ かざりつぼc.1877磁器
 ジャン・デュナンデュナン、 ジャン1877~1942球形花瓶(赤)きゅうけい かびん (あか)c.1925銅合金、色漆、鍛造
 磯矢阿伎良イソヤ、 アキラ1904~1987バイオリン・ケースばいおりん けーす1931
 内藤春治ナイトウ、 ハルジ1895~1979壁面への時計へきめん への とけい1927青銅、鋳造
 西村敏彦ニシムラ、 トシヒコ1889~1947銅槌起七宝唐草文巻葉入どうついき しっぽう からくさもん まきはいれunknown銅、七宝
 板谷波山イタヤ、 ハザン1872~1963霙青磁牡丹彫文花瓶みぞれせいじ ぼたん ちょうもん かびん1925磁器
 杉田禾堂スギタ、 カドウ1886~1955用途を指示せぬ美の創案ようと を しじせぬ び の そうあん1930鍛造、鋳造
 ルネ・ラリックラリック、 ルネ1860~1945カーマスコット ロンシャンかー ますこっと ろんしゃん1929ガラス、プレスガラス
 杉浦非水スギウラ、 ヒスイ1876~1965新宿三越落成 十月十日開店しんじゅく みつこし らくせい じゅうがつとおか かいてん1930リトグラフ、オフセット
 A・M・カッサンドルカッサンドル、 A・M1901~1968ノール・エクスプレス(観光)のーる えくすぷれす (かんこう)1927リトグラフ
 ヤン・トーロップトーロップ、 ヤン1858~1928デルフト・サラダ油でるふと さらだゆc.1895リトグラフ
 山川孝次ヤマカワ、 コウジ1828~1882金銀象嵌環付花瓶きんぎん ぞうがん かんつき かびんc.1877銅ほか
12/15~2006/3/5初代宮川香山ミヤガワ、 コウザン (1ダイ)1842~1916鳩桜花図高浮彫花瓶きゅうおうかず たかうきぼり かびんc.1871-82陶器
展示室③
 作家名(和)作家名(ヨミ)生~没年題名(和)題名(よみ)制作年技法
 飯塚琅玕斎イイヅカ、 ロウカンサイ1890~1958花籃 宝殿はなかご ほうでんc.1948
 氷見晃堂ヒミ、 コウドウ1906~1975唐松砂磨茶箱からまつ すなみがき ちゃばこ1964木(唐松)、指物
 黒田辰秋クロダ、 タツアキ1904~1982耀貝螺鈿飾箱ようがい らでん かざりばこ1974漆、乾漆、螺鈿
 加藤土師萌カトウ、 ハジメ1900~1968紅地金襴手菊花文飾壺こうじ きんらんで きっかもん かざりつぼ1961磁器
 金重陶陽カネシゲ、 トウヨウ1896~1967備前花生びぜん はないけc.1958陶器
 石黒宗麿イシグロ、 ムネマロ1893~1968黒釉葉文茶碗こくゆう はもん ちゃわんc.1955陶器
 石黒宗麿イシグロ、 ムネマロ1893~1968千点文茶碗せんてんもん ちゃわんc.1940-45陶器
 荒川豊蔵アラカワ、 トヨゾウ1894~1985志野水指しの みずさし1958陶器
 富本憲吉トミモト、 ケンキチ1886~1963色絵金銀彩四弁花文飾壺いろえ きんぎんさい しべんかもん かざりつぼ1960磁器
 浜田庄司ハマダ、 ショウジ1894~1978失透釉格子文角皿しっとうゆう こうしもん かくざら1958陶器
 松田権六マツダ、 ゴンロク1896~1986蒔絵鷺文飾箱まきえ さぎもん かざりばこ1961漆、蒔絵、卵殻
 野口光彦ノグチ、 ミツヒコ1896~1977鈴をもてる児すず を もてる こc.1950桐、木彫、胡粉仕上げ
 生野祥雲斎ショウノ、 ショウウンサイ1904~1974白竹一重切華入 くいな笛しろたけ ひとえぎり はないれ くいなぶえ1967
 加守田章二カモダ、 ショウジ1933~1983曲線彫文壺きょくせん ちょうもん つぼ1970陶器
 岩田藤七イワタ、 トウシチ1893~1980黒牡丹くろぼたん1964ガラス、宙吹き
 音丸耕堂オトマル、 コウドウ1898~1997彫漆銀連糸茶入ちょうしつ ぎんれんし ちゃいれ1963漆、彫漆
 赤地友哉アカジ、 ユウサイ1906~1984曲輪造彩漆中次まげわづくり さいしつ なかつぎ1973漆、曲輪
 田口善国タグチ、 ヨシクニ1923~1998野原蒔絵小箱のはら まきえ こばこ1968漆、蒔絵、螺鈿
 本野東一モトノ、 トウイチ1916~1996構造の風景 Aこうぞう の ふうけい A1956綿、蝋染
 本野東一モトノ、 トウイチ1916~1996構造の風景 Bこうぞう の ふうけい B1956綿、蝋染
 安原喜明ヤスハラ、 キメイ1906~1980焼締花器 港やきしめ かき みなと1954陶器
 鈴木治スズキ、 オサム1926~2001フタツの箱ふたつ の はこ1964陶器
 越智健三オチ、 ケンゾウ1929~1981樹想じゅそう1970鉄、鍛造
 亀倉雄策カメクラ、 ユウサク1915~1997東京オリンピックとうきょう おりんぴっく1962     (1990 reprint)グラビア
12/14~2006/3/5八木一夫ヤギ、 カズオ1918~1979黒陶 環こくとう かん1967土器
展示室④
 作家名(和)作家名(ヨミ)生~没年題名(和)題名(よみ)制作年技法
 熊倉順吉クマクラ、 ジュンキチ1920~1985力つきてちから つきて1969陶器
 十二代三輪休雪 (龍作)ミワ、キュウセツ (12ダイ) (リョウサク)1940~白嶺蓋物はくれい ふたもの1984陶器
 中村錦平ナカムラ、 キンペイ1935~日本趣味解題/宇空ノ中央右寄リにほん しゅみ かいだい/うくう の ちゅうおう みぎ より1988陶器
 柳原睦夫ヤナギハラ、 ムツオ1934~黒オリベペロット瓶くろおりべ ぺろっと びん1997陶器
 栗木達介クリキ、 タツスケ1943~銀緑彩文陶・壺態 IIIぎんりょくさいもん とう こたい III1988陶器
 藤田敏彰フジタ、 トシアキ1959~MELTめると1988漆、乾漆
 重松あゆみシゲマツ、 アユミ1958~骨の耳’96-1ほね の みみ 96′-11996陶器
 川口淳カワグチ、ジュン1951~Box-Pandoraぼっくす ぱんどら1994磁器、タタラ、色絵金彩
 高橋禎彦タカハシ、ヨシヒコ1958~うごくものうごく もの2004ガラス、宙吹き
 上原美智子ウエハラ、 ミチコ1949~カスリ布かすり ぬの1997絹、絣
 築城則子ツイキ、 ノリコ1952~小倉縞木綿帯 分水嶺こくらじま もめん おび ぶんすいれい2004綿、織
 須藤玲子スドウ、 レイコ1953~折り紙プリーツおりがみ ぷりーつ1997ポリエステル、型による手折、ヒートセット
 中島晴美ナカシマ、 ハルミ1950~苦闘する形態 V-1くとうする けいたい Ⅴ-11995陶器
12/15~2006/3/5三代徳田八十吉トクダ、 ヤソキチ (3ダイ)1933~燿彩鉢 創生ようさい はち そうせい1991磁器
12/15~2006/3/5藤田喬平フジタ、 キョウヘイ1921~2004虹彩こうさい1964ガラス、宙吹き
展示室⑤
 作家名(和)作家名(ヨミ)生~没年題名(和)題名(よみ)制作年技法
 古伏脇司コフシワキ、 ツカサ1961~草舟 98-01くさふね 98-011998漆、石膏、乾漆
 田嶋悦子タシマ、 エツコ1959~Cornucopia02-XIこるぬこぴあ 02-XI2002陶器、ガラス
 橋本真之ハシモト、 マサユキ1948~運動膜・切片群うんどうまく せっぺん ぐん2004銅板、鍛造
 四谷シモンヨツヤ、 シモン1944~解剖学の少年かいぼうがく の しょうねん1983紙、木、ガラス、毛、布、皮
 小名木陽一オナギ、 ヨウイチ1931~赤い手ぶくろあかい てぶくろ1976綿、織
 深見陶治フカミ、 スエハル1947~遥カノ景 <望>はるか の けい <ぼう>1993磁器

ここが見どころ

喜多川平朗 《能衣装唐織黒絵段》 1962

江戸時代の能装束をもとに作られた唐織。絣の手法による黒と紅の段替わりの地に金糸をふんだんに使った波文、さらに松や帆掛舟が多彩な色糸を用いて織り出され、格調高い味わいを醸し出しています。

藤田喬平 《虹彩》 1964

吹きガラスのボディを覆うように、溶けて流れるガラスが冷え固まる瞬間のさまを留めています。作者は「瀧の落ちるなかに虹の彩りが見える一瞬」をガラスの素材・技法の特性に託し、表現を試みました。

加藤土師萌 《紅地金襴手菊花文飾壺》 1961

加藤土師萌は中国陶磁のさまざまな技法を研究し、高度な技術を身につけました。こうした厚手の金箔をつかった作品は、技術的にはひじょうに難しいものです。赤色を下地に金で菊の花をあらわした、絢爛たる作品です。

内藤春治 《壁面への時計》 1927

この作品には、ヨーロッパで流行していたアール・デコの影響が反映されています。昭和初期には、伝統に捉われず、斬新な作品を作り出す工芸家があらわれ、「構成派」と呼ばれました。

イベント情報

ギャラリートーク

2005年12月18日(日)、2006年1月22日(日)、2月12日(日)

タッチ&トーク(ボランティアによるガイド)

会期中の毎週水・土曜日
「さわってみようコーナー」で人間国宝をはじめとするさまざまな作家由来の道具・資料や、参考作品などを手にとってご覧いただいた後、会場で見どころやさまざまなエピソードをご紹介します。担当者によってご紹介する作品が変わりますので、何回ご参加いただいてもお楽しみいただけます。

各トークともいずれも午後2時から、工芸館会場にて行います 参加費は無料(入館に際しては観覧料が必要です)

開催概要

会期

2005年12月10日(土)―2006年3月5日(日)
月曜日休館

*なお、年末年始のスケジュールは次のとおりです:
12月29日(木) ―1月1日(日)は休館
1月2日(月)、1月3日(火)は開館、以後は平常どおり
*1月9日(月)は開館し、翌10日(火)は休館します

開館時間

午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)

会場

東京国立近代美術館工芸館
〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園1-1
東京メトロ東西線「竹橋駅」下車徒歩8分(1b出口)
東京メトロ東西線・半蔵門線・都営新宿線「九段下駅」下車徒歩12分(出口2)

主催

東京国立近代美術館

お問い合わせ

電話03-5777-8600(ハローダイヤル)

観覧料

一般200円(100円)/大学生70円( 40円)/高校生40円( 20円)
( )内は20名以上の団体料金、いずれも消費税込み
小・中学生および65歳以上は無料
無料観覧日 2月5日(日)、3月5日(日)

併設

人間国宝・巨匠コーナー

日英の近代を代表する陶芸作家の名作ほか、当館所蔵作品の粋を集めたコーナーです。

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