平成25年度 インターンシップ生のことば

A 学芸・コレクション Kさん

この1年間通年で行った主な活動は、常設展の展示替えにむけた準備(会場図面の清書、作品の所蔵場所の確認、出品リストや音声ガイドリストの作成)、会場設営のお手伝い(作品の所蔵場所や展示位置をお伝えする、壁にかけた作品の傾きを確認)、そして展覧会の記録(会場図面の決定版をつくり、出品リストや章解説と共にファイリング)でした。展覧会がつくりあげられる過程に少しでも関わったり、現場に立ち会うこと自体初めてだったため、とても新鮮な経験で、外からでは見えない美術館と展覧会の姿をよく知ることができました。
一方、常設展に関わる活動以外では、資料整理や作品調書づくりなどをしました。たとえば、瑛九資料(書簡)の整理を企画展のインターン生と一緒にお手伝いしました。そしてまた、岸田劉生資料の作品調書を作成し、ならびにその貸し出しの際には、作品や資料の状態をチェックしました。前者では、自分が関心を寄せる作家に関するものでしたので、興味深くかつ生き生きとした資料の内容に触れることのできた貴重な機会でした。後者の作品や資料の状態をチェックする作業は、本物を観察しつつ他館の学芸員の方とコミュニケーションをとりながらの実践的な活動で、緊張の中にも責任を感じながら取り組みました。
このインターン活動で知り、体験し、学んだたくさんのことを今後の自分の研究や将来的な職業へ生かしていきたいと思います。ありがとうございました。

A 学芸・コレクション(写真) Kさん

東京国立近代美術館の学芸活動に共感し、インターンに応募しました。一年間の研修では、美術課写真室にてプリントスタディ(写真作品閲覧制度)の運営、写真企画展の準備、コレクションの整理業務の補助的な作業をおもに行いました。インターン初日のことをいまでも鮮明に思い出します。初日は、プリントスタディの希望者の方に写真作品をお見せする作業を任せていただきました。白い手袋をはめて、額に入れられていないマット装されただけの写真作品を、細心の注意を払いながら保存箱から取り出し、閲覧台に並べる。普段であればフレームとガラスでがっちり守られ、一定の距離をとらないと鑑賞できなかった写真作品が、なまなましく間近に、目の前に存在しているという事実に興奮しながらも、作品を取り扱うことにたいする責任を感じた経験でした。そのほかにも、写真企画展の広報用の文章を考えたり、新規収蔵品の作品データを管理したりと、責任ある作業を任せていただきました。一介の学生である私に責任あるさまざまな場を与えてくださった今回の研修をつうじて、インターン活動をふくめた社会教育の施設である美術館が、いかに有り難い存在であるかを実感しています。私自身、いつか美術館で働くことができたならば、今回の担当学芸員の方のように教育的配慮にあふれた学芸員になりたいと強く思っています。ありがとうございました。

B 学芸・企画展 Eさん

私は企画課のインターンとして企画展の基礎となる作品データの整理や広報の補助など、展覧会に関わるさまざまなことに取り組みました。特に印象に残っているのは、「工藤哲巳展」の一連の仕事に携わったことです。最初は作家についてあまり知りませんでしたが、繰り返し作品を見て知識を深めるにつれ作品に愛着がわき、1960 年代当時の様子や同時代の他の作家についても自主的に調べるようになりました。展覧会開催までの各段階で、施工の打ち合わせに参加させてもらったり、展示に立ち会ったりしたことで、他の美術館の学芸員の方や関係する会社の方々とやりとりをしている様子を直に見ることができ企画展業務の幅広さを感じました。また、展示作業は想像以上に集中力を要することでしたが、作品の近くで仕事をしているという実感とともに、構想した美術展が形になっていく喜びを感じ取ることができました。そして、工藤哲巳展の広報活動をお手伝いした際、誰を対象にしどの媒体を使うかということや自分が感じる作品の魅力をわかりやすく発信していくことの難しさを感じました。これらのことを通じて美術館のあり方について考えた充実した1年間でした。今後もこの経験を活かして、より多くの人が美術館に足を運んでもらえるように、学芸員と作品と鑑賞者という三者のつながりについて考えていきたいです。

C 美術館教育 Hさん

教育普及室での1年間は、私にとって未だかつてない程に、四季の移ろいを意識し、感じた1年間でした。
春にインターンとして仲間入りし、すぐに夏休みの子どもたちに向けたプログラムについての検討が始まりました。試作や発表の流れを自ら行い、対象の学年それぞれの子どもの目線になり、技術的・読解力をふまえて可能か、プログラムの一つひとつ過程において、恥じらいや楽しさ等を感じる度合いを検討しました。また、高学年向けのトークラリーにて、一作品のトーカーを任せて頂きました。アントニー・ゴームリーの作品を子どもにトークする原稿を考えることで、ガイドスタッフの皆さんの普段の活動が、いかに難しく、やりがいのある事であるかを実感しました。トークする作品に愛情を持ち、まず自分が作品と向き合い、ありのまま感じてみる。そして、高学年の子どもの目線になり、想定できる言葉を考えてみる。この経験は大変貴重な学びとなりました。真夏になり、元気いっぱいの子ども達が館にやってきました。予想を越えた、楽しそうな顔、分からない出来ないという困った顔を見て、私も一緒に喜び、悩みました。子どもの思ってもみない言葉や制作物に、何でも受け入れる柔軟な心や想像力を感じました。私は、トークでゴームリーを担当したことからの愛着で、日々のインターン活動での所蔵品ガイド見学で通りすがるゴームリー作品の背景で広がる木々の変化、館の日本画室の展示替えのたび、変わる季節を強く感じ、それに付随して、所蔵品ガイド、教育普及室での会話、サマープログラム、学校受け入れの思い出と学びが刻み込まれています。
美術の楽しさを伝えるために、まず子どもから年配の方まで、その立場に立ち、考える。より一層言葉が人に伝わるだけでなく、楽しさや感動を教えられる側学ぶ側ともなれるということを知りました。美術館だからこそ作ることができるコミュニケーション、コミュニティがあるということを改めて感じ、これから社会人となり、その可能性を忘れることなく、いつか活かすような事を仕事で作れたらと思います。

C 美術館教育 Kさん

大学では日本美術史専攻ですが、以前から美術を介して人と人とを繋ぐ教育普及の仕事に興味をもっていました。その仕事を実践的に学ぶことを目標にインターンに参加しました。
子ども美術館では鑑賞・工作の準備、当日の運営補助を行いました。準備段階から当日まで全てに関われたことで、子どもの目線に立って試行錯誤を繰り返しながら、いかに教育プログラムが作り上げられていくのかということを、実践を通して学ぶことができました。
活動日はほぼ毎回、所蔵品ガイドや学校受け入れを見学することができました。ガイドの質問の仕方、参加者の言葉の拾い方と話題の広げ方などは、対話型鑑賞のみならず、人とモノ、人と人とを繋ぐコミュニケーション全てにおいて参考になるものでした。それぞれの個性を活かしたトークが、来館者のより良い鑑賞を支えていることを実感しました。そしてガイドスタッフの皆様がインターンと積極的に交流してくださったこと、研究員とガイドの関係性を間近で見られたことで、美術館を支えるボランティアの活動を深く知ることができ、その重要性を改めて感じました。
この1年間の経験を活かし、インターン活動を通して見えてきた課題に取り組みながら、今後も美術教育や美術館の教育普及の分野に携わっていきたいです。

C 美術館教育 Sさん

人と美術が出会い、関わり合い、更にそこに、互いに学びあい成長しようとする意味での教育が重なるとき、その場で何が起こり得るのか、その先に何が生まれ得るのか。その追求の糧とするべく、1年間美術館教育インターンに取り組んできた。
活動の中でも、日々の所蔵品ガイドへの参加は特に、毎回とても刺激的な時間だった。エントランスでの集合の段階から、1作品ずつトークに参加し、最後の解散まで、ガイド参加者の方々の言葉だけでなく、表情や姿勢、参加者同士の関係などの変化を毎回見続けることができた。参加者が作品の前で発する言葉が素直な柔らかいものになっていったり、逆にとても批評的な内容になっていったり、作品を見る姿勢が、直立不動から徐々に動き、最後には前のめりになっていたり。参加者にとって、作品が見るものから関わりあうものになっていく様を多く目にする時間であった。
また、人々と美術が出会う場を、ガイドスタッフの方々がそれぞれの手法で創り出していく現場に居合わせることも、所蔵品ガイド参観の刺激的な面の1 つであった。上記のような参加者の変化を、時に徐々に、時に突然引き起こす、ガイドスタッフの声や表情、身振り手振りの多様さを観て、人と美術の出会いに教育的な姿勢が関わることの可能性を感じることができた。
インターンとしての1年間は、人が美術に出会い、人と人とが美術のある場で関わることの価値を体感できた1年間だった。

E 工芸館・学芸全般 Tさん

学芸職を志望している私にとり、この一年間のインターン活動はとても充実したものとなりました。毎週行われる対話型鑑賞プログラムでは、ガイド補佐として解説ボランティアの方々の取り組みを間近で繰り返し見学する機会を得ました。作品に触れたり、ガイドの問いかけに答えるうちに、初めは硬かった参加者の方々の表情が、次第に興味津々としてくる変化が印象的でした。また、ガイドスタッフ養成講座の記録係を通して、プログラムの構成方法やトーキングスキルを学ぶと同時に、鑑賞者が主体的に作品と向き合い、驚きや発見を自由に発言できる環境を整えることが、クリエイティブな鑑賞の場を実現するために重要であることを理論と実践の両面から学びました。さらには、研修開始以前より携わってみたいと考えていた、展覧会カタログに掲載される用語解説の執筆もよい経験となりました。限られた字数の中で過不足なく説明することの難しさを知る一方で、学んだことを自分の言葉で伝えられる喜びを感じることができました。活動が学芸業務全般の一通りの経験に終わらず、実り多きものとなったのは、スタッフの一人として迎えて頂けたからだと感じています。この一年間の活動を通して得た達成感や自らの至らなさを反省する気持ちは、将来希望の職に就けたときに、原点となって私を支えてくれることと思います。

E 工芸館・学芸全般 Oさん

1 年という工芸館でのインターンの期間に私は、様々なことを学び体験致しました。
電話対応からはじまり、「ボディ3」展では、実際に『箱の男』という作品を同じインターン生と一緒に展示させていただきました。ケースがないため、その点も考慮しつつ配置を考えるのは難しく、何度も組み立てては練り直しを繰り返しました。
夏休みには、こどもタッチ&トークという体験プログラムの補助として参加させていただき、主に記録係として子ども達が見せる一瞬の表情をカメラにおさめました。毎回、作品に対して違う反応を見せるその子どもたちの着眼点に驚かされ、新たな気づきもありました。
展示替えでは、特に染織の展示を学ばせていただきました。隣の作品との間のあけ方や、左右の傾きなどによって、鑑賞した際に受ける印象がガラリと変わっていきます。作品の良さを損なわないよう、十分配慮が必要だと感じました。
夏の指導者研修運営補助は、一番印象に残りました。ワークによって考えるべき美術教育の一端を見ることができましたし、アートカードを使用したゲームを先生たちに提供した経験は、数少ない機会であったからです。実際にどうアートを感じてもらうか考える機会にも繋がりました。
最後に、この研修で企画展の舞台裏を知ることができ、多くの作品に触れ、体験プログラムを通して作品に触れる人々の感じ方の違いも学ぶことができました。ありがとうございました。

E 工芸館・学芸全般 Nさん

学部でデザインについて学んでいたことも有り、工芸を主軸にデザインのコレクションを保有する工芸館でのインターンを希望しました。美術館の運営や作品の取り扱いなど、現場での実践を通じて学芸に携わる仕事がどのようなものなのか経験することができたのはもちろんのこと、美術館が教育の場としてどのような「役割」を担っているのか見直す研修となりました。工芸館は「タッチ&トーク」という独自の教育・鑑賞プログラムを行っています。このプログラムでは参加者は作品を見るだけでなく、実際に触ることで得た気づきを鑑賞につなげることで、さらに深く工芸の魅力を味わうことができます。今期はこのプログラムでガイドを務めるボランティアスタッフの養成研修が行われ、美術館教育に携わる人間を育む現場に立ち会うことができました。工芸館では教育に携わる人材育成も美術館が提供する教育プログラムの質に直結する重要な任務だとしています。インターン研修を通じて、知識や経験を増やすだけでなく、それを人々と共有する喜びと美術館教育の多面的な可能性を感じ、将来的に美術館で職を得たいという気持ちを一層強くいたしました。

F フィルムセンター・学芸全般 Tさん

私は6 月から9 月にかけての4 ヶ月間、フィルムセンターでのインターン研修を受けることとなりました。
[中略]私が最初に配属されたのは情報資料室でした。情報資料室で与えられた仕事はプレス資料整理であり、寄贈された映画のチラシをNFCD と呼ばれるデータベースに入力するための準備作業でした。具体的には作品名や興行館名をExcelでまとめ、さらにテキストファイルにまとめるというものでした。映画のチラシは40~50 年ぐらい前のものから最近のもの、誰もが知る有名なものから知る人ぞ知るもの、邦画・洋画と様々な種類がありました。これらの名称等をExcelにまとめる作業は、修士論文の実験データを解析する際にExcel に打ち込む行為と似ているので、ある意味得意分野であり、さくさく進ませることができました。[中略]邦画だけ終わればよいと言われたところを、邦画どころか洋画の最後まで終わらせてしまいました。非常にキリがよく終わらせることができ、私はとても満足しました。またこの作業のほかにも図書室の書架にある昔のパンフレットの整理も行いました。このようにフィルム以外の資料に直接触れることができ、1 ヶ月と短い間でしたが楽しく情報資料室での研修を受けることができました。
次に配属されたのは事業推進室でした。この部屋ではさまざまな種類の仕事をこなしました。NFC カレンダーに載せる作品のタイトルやスタッフ名の入力、雑誌や新聞に掲載されたフィルムセンターに関しての記事のファイリング、原稿の校正、等々。それらの仕事の中でも一番印象に残り楽しかったのがこども映画館に関するものでした。一般の子供連れの方々を招き行うこの上映会は、サークルの上映会と通ずるものがあり今回の研修で一番面白いイベントでした。私は当日使われる映像の制作などの準備を行い、上映会当日は会場の撮影と受付を担当しました。特に受付ではフィルムのプレゼントを行っていたので、子供たちのフィルムに対しての直の反応を見ることができました。フィルムどころかおそらくビデオも知らないであろう今の子供たちがフィルムをもらった時の、何だろうとキョトンとしたり、好奇心から目を輝かせたりする素直な反応は見てて面白く、このような姿を見ていると事業推進室の業務に共に参加できてよかったなと思いました。
そして最後に配属されたのが映画室でした。映画室では基本的に保管されているVHS のラベルに書かれた番号をNFCDに入力する作業を行いました。パソコン作業という点では他の部屋と変わらないのですが、映画室では神奈川の相模原分館の見学やデジタル復元された作品の試写等、館外に出ることが非常に多かったです。相模原分館ではこのインターンを受けるきっかけとなったテレビ番組で取材していた実際のフィルムの保管庫を見ることができました。分館の新館は画面サイズやフィルム幅などの映画に関する物事をデザインに取り入れていて非常に綺麗な建物だと感じました。また保管庫内は一定温度湿度に保たれ、セキュリティは幾重にも敷かれており、私の想像以上にフィルムは厳重に守られているのだととても感心しました。さらに、重要文化財である「紅葉狩」のフィルムなど所蔵フィルムを見せていただき、貴重な体験をすることができました。またデジタル復元作品の試写では主に小津安二郎監督の「彼岸花」と「秋日和」の2 作品を観ることができました。[中略]後日レンタルDVD で改めて作品を観ましたが、試写で見たものとはまるで画質が異なりました。試写でのフィルムのほうが画質が圧倒的に優れており、フィルムがデジタルメディアに対し劣るものでは決してないことを実感しました。2 ヶ月間の映画室での研修は映画の良さ、そしてフィルムの良さを改めて知ることができました。
[中略]フィルムを管理し整理し将来に残すことは、映画の文化を伝えることであり、そして文化とは先人たちが将来に伝える有形または無形の思いである。その思いに大小や優劣はあるかもしれないが、それを残さず遍く伝えることが後人たちの義務である。その義務の重要性を再確認できたこの研修は、私にとって非常に有益なものでありました。

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