展覧会
平山郁夫:祈りの旅路
会期
会場
東京国立近代美術館本館企画展ギャラリー
展覧会について
展覧会の構成と見どころ
今年、平山郁夫画伯は、77歳の喜寿を迎えられました。また絵を学びはじめてから60年にあたります。本展は、これを記念し、その画業を回顧するものです。
平山画伯は、はじめ、仏教に関する伝説や逸話にもとづく抒情性豊かな作品で大きな注目を浴びました。その後、玄奘三蔵のインドへの求法の道やシルクロードを旅し、そこで繰り広げられた雄大な歴史の流れに感銘を受け、風景としての歴史画ともいうべき独特の画風をつくりあげました。それは奈良・薬師寺の玄奘三蔵院の大壁画となって大きな実を結ぶことになります。近年は日本の文化にも大きな関心を寄せ、日本各地に取材した作品に新しい境地を切り開いています。
こうした平山画伯の旺盛な制作活動の根底にあるもの、それは、広島での被爆を経たうえでの、生きること、生かされていることへの問いかけと、その経験から導かれた平和への切実な祈りです。その想いが率直にあらわされた《広島生変図》、《平和の祈り―サラエボ戦跡》などの作品を見るとき、平山画伯が60年にわたる制作活動において表現しようとしてきたものに、私たちは改めて気づかされるのです。
この展覧会では代表的な作品のなかから約80点が出品されます。「仏陀への憧憬」、「玄奘三蔵の道と仏教東漸」、「シルクロード」、「平和への祈り」の4章構成で、平山画伯の芸術の軌跡をたどります。
会期中展示替えがあります。詳細は下記出品作品リスト をご覧ください。
都合により、次のとおり展示期間が変更になりました。
《流水無間断(奥入瀬渓流)》(no.74):10月14日まで。
《黎明讃岐路 四国霊場八十八番 大窪寺》(no.75):10月16日から
ここが見どころ
画業60年、代表作を一堂に
画業の転機となった《仏教伝来》(1959年)をはじめ、燃えさかる炎に包まれた広島の鎮魂を願う《広島生変図》(1979年)、近作《平成洛中洛外図》(2004年)など、平山郁夫の画業を振り返る上で欠くことのできない代表作が、全国から集まります。
《大唐西域画》7場面13画面を、一挙公開
奈良・薬師寺の玄奘三蔵院伽藍におさめられる《大唐西域壁画》は、平山郁夫が構想から完成まで約30年の月日を費やした畢生の大作です。玄奘三蔵の辿った苦難の道のりを、壮大な大陸西域の風景として描くこの作品を、平山郁夫は壁画完成から7年を経た今年、新たに小品として再制作しました。今春、所蔵館で初公開されたのにつづく、全7場面13画面の一挙公開となります。
シルクロードの過去と現在を巡る旅
平山郁夫は学術調査団へ参加するなどしてシルクロード上の各地へおもむき、長い年月をかけてこの道を、作品によって点から線へと繋いでゆきました。なかには、捨て置かれた廃墟に触発され、文明の栄えたありし日の都市の姿を描いた作品もあります。シルクロードの東と西、過去と現在を巡る旅を、本展でお楽しみください。
大画面の迫力と、繊細な描写
平山郁夫ほど、大画面、ことに屏風形式の作品を精力的に描いている日本画家はいないといっていいかもしれません。そしてその大画面には、実に繊細な描写がなされています。とりわけ1960~70年代の作品に顕著に見られるこの表現は、小さな図版では見て取ることができません。ぜひ、会場でじかに接してご覧ください。
展覧会構成
第1章 仏陀への憧憬
1959年の《仏教伝来》の制作を機に、平山郁夫は1960年代後半にかけて、釈迦の生涯を題材に多くの作品を制作する。しかしそれは信仰の対象としての仏画ではない。描かれているのは釈迦という一人の人間のドラマである。平山は、苦行する釈迦の姿に、被爆の後遺症を背負った自身の人生を重ねあわせることで、劇的であると同時に実感としての生の重みをあわせもった重厚で深みのある画面をつくり出した。これらの作品は次のステップ、玄奘三蔵の歩いた道をたどり、シルクロードを踏破する足がかりともなってゆく。
第2章 玄奘三蔵の道と仏教東漸
平山郁夫は《仏教伝来》の制作以降、玄奘三蔵の足跡を自らたどり、絵画化したいという願いを抱くようになる。それは玄奘の苦難に満ちた旅路と、挫けることのなかった不屈の意志を自らの人生に重ねようとしたのであろう。またそれは、画家としての果てしない道を歩んでいくために意識的に自分自身に課した闘いであったかもしれない。この巡礼にも似た旅から生み出された数々の作品には、成功した玄奘の苦闘や歓喜への共感ばかりではなく、志を半ばに中途で倒れていった多くの僧たちの願いもこめられている。
第3章 シルクロード
シルクロードは、古くから東西を結ぶ交通路であり、文化が行きかう交流の道でもあった。平山郁夫にしてみれば玄奘三蔵の道がシルクロードと重なる以上、この道を歩むことになるのは当然のなりゆきだったろう。平山は、文明や歴史は名もなき一人一人の想いの積み重ねからなると考え、画面にそれをうつしとろうとする。平山の描く風景画や人物画が分厚い歴史の確かな堆積をも感じさせるとすれば、その作品はかつて描かれた伝統的な歴史画とは異なる、平山が新しく切り開いた現代の歴史画ということもできよう。
第4章 平和への祈り
《仏教伝来》と《平和の祈り―サラエボ戦跡》には、平和への願いが率直にあらわされている。平山郁夫が抱く平和への想いは、真理を伝えようと求法の道に殉じた人々やシルクロードの繁栄を支えた名もなき人々の想いを、荒涼とした大地に聞こうとすることとも共通している。また、仏教説話にもとづく連作を描きはじめた頃、原爆で死んでいった人々のために、後世に残るたった一枚の絵を描こうと苦しんだことにもつながっている。平山の制作の根底にあるもの、それは平和への祈りである。
作家紹介
平山郁夫 略歴
1930(昭和5)年 6月15日、広島県豊田郡瀬戸田町(現尾道市瀬戸田町)に生まれる
1945(昭和20)年 学徒勤労動員の作業中、広島陸軍兵器支廠で被爆
1947(昭和22)年 東京美術学校(現東京藝術大学)に入学
1952(昭和27)年 同校を卒業、前田青邨に師事
1953(昭和28)年 第38回院展に《家路》が初入選、以後入選を重ねる
1959(昭和34)年 第44回院展に《仏教伝来》を出品し、高く評価される
1964(昭和39)年 日本美術院同人に推挙される
1973(昭和48)年 東京藝術大学教授に就任する
1984(昭和59)年 奈良・薬師寺の玄奘三蔵院壁画制作に着手
1989(平成元)年 東京藝術大学学長に就任する
1993(平成5)年 文化功労者として顕彰される
1996(平成8)年 日本美術院理事長に就任する
1997(平成9)年 故郷の瀬戸田町に平山郁夫美術館が開館
1998(平成10)年 文化勲章を受章する
2000(平成12)年 12月31日、玄奘三蔵院《大唐西域壁画》完成
2007(平成19)年 東京国立近代美術館と広島県立美術館で回顧展を開催
イベント情報
講演会
「平和への祈り」
- 講師
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平山郁夫
- 日程
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2007年9月20日(木)
終了しました。 - 時間
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14:00-15:00
- 場所
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学術総合センター・一橋記念講堂 (東京都千代田区一ツ橋2-1-2)
定員500名。聴講無料。要申し込み。
「平山郁夫の人と芸術」
- 講師
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尾崎正明(当館副館長・本展企画者)
- 日程
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2007年9月29日(土)
終了しました。 - 時間
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14:00-15:30
- 場所
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当館講堂
聴講無料。定員150名。
カタログ情報
開催概要
- 会場
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東京国立近代美術館 企画展ギャラリー
- 会期
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2007年9月4日(火)~10月21日(日)
- 開館時間
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10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
入館は閉館30分前まで - 休室日
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9月10日(月)、9月25日(火)、10月1日(月)、10月15日(月)
*9月17日(月・祝)、18日(火)、24日(月・振休)、10月8日(月・祝)、9日(火)は開館いたします - 観覧料
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一般1,300円(900円)、大学生900円(600円)、高校生500円(350円)
中学生以下、および障害者(付添者は原則1名まで)の方は無料。
それぞれ入館の際、生徒手帳、障害者手帳等をご提示ください。
*( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
*本展の観覧券で、入館当日に限り、同時開催の「崩壊感覚」(2F ギャラリー4)、所蔵作品展「近代日本の美術」(4-2F)もご覧いただけます。
*観覧券は東京国立近代美術館の他、チケットぴあ、ローソンチケット、イープラス、CNプレイガイドなどでもお求めいただけます。 - 主催
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東京国立近代美術館、読売新聞東京本社
- 後援
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財団法人 文化財保護・芸術研究助成財団
- 協賛
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日本サムスン、光村印刷
- 巡回情報
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広島県立美術館 2007年11月2日(金)~12月24日(月・振休)