展覧会
崩壊感覚
会期
会場
東京国立近代美術館 ギャラリー4
展覧会について
展覧会の構成と見どころ
観る者の郷愁を誘う古代遺跡、戦争や災害による破局の光景、時間の経過とともに風化し、朽ちていく物質の姿、そして自己の境界が溶け出すような感覚に怯える人間の有り様。これら「崩壊するもの」のイメージは、20世紀以降の美術の底に絶えず流れていたといえます。
言うまでもなく、その背景には「戦争の世紀」と呼ばれる20世紀に、人類が引き起した幾多の災厄があります。その夥しい瓦礫の山は、もはや失われた過去を夢想させるロマンチックな「廃墟」ではありえません。それはトラウマのように常に現在形で私たちの生を呪縛してくるのです。また80年代、バブル経済の繁栄に酔いしれていた日本に起こった「廃墟ブーム」もこの文脈で考察すべき現象でしょう。大規模な再開発によって次々と古い建物が解体されていったこの時期、都市に出現した束の間の建築の死が、世紀末の終末論的ヴィジョンと重ね合わせられて、妖しい魅力を放っていました。
これだけの例をみても、いかに「崩壊するもの」のイメージが時代や社会と密接に関連していたかがわかるでしょう。この展覧会では、約20名の作家による様々な「崩壊感覚」を集め、それらの多様な意味の広がりを、過去・現在・未来の時間の相と照らし合わせながら検討していきます。
展覧会構成
解体する世界像
「戦争の世紀」20世紀を覆う不穏な空気の中で、時代の変化を鋭敏に察する美術家は、人間を中心とする統一された世界像が瓦解したことを見抜いていました。「破壊」や「断片」のイメージがむしろリアリティーを獲得するのです。
自然と人工物の拮抗
石造りの建築が長い年月を経て風化した廃墟と異なり、日常眼にすることのできる些細なものが崩れていく過程。そこに必ずしもはかなさの美を読み取る必要はないでしょう。むしろ自然と人工物との果てしのない攻防に注目。
溶けだす自己
私たちを襲う「自分がなくなってしまう」という感覚。それは、死に対する意識のみならず、他者との関係において成り立つ「自己」の境界の曖昧さをも示しているのでしょう。
記憶装置としての建築
打ち棄てられた建築の壁や床に染み込んだ、かつての住人の気配。瀕死の建築の荒れ果てた室内は、生々しい人間の情念が依然としてそこに息づいていることを気づかせてくれます。
カタロストロフィとの遭遇
関東大震災と阪神大震災。天変地異による近代都市の崩壊を目の当たりにした表現者がとった行動は。日本画家池田遥邨のデッサンと宮本隆司の写真を比較。
イベント情報
アーティスト・トーク
第12回アーティスト・トークは、宮本隆司さん(写真家)
- 日程
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2007年8月24日(金)
- 時間
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18:30-19:30
- 場所
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2F ギャラリー4(参加無料(要観覧料)、申込不要)
ギャラリー内で作品を前に、作者自身にお話をうかがう好評企画「アーティスト・トーク」。12回目となる8月24日(金)は、写真家宮本隆司(みやもと りゅうじ)さんをお迎えします。
「崩壊感覚」展出品の「神戸1995」シリーズの作品を前に、作者自身に創作の秘密について語っていただきます。
夕刻からの開催になりますので、みなさまぜひ竹橋までお越しください。
キュレーター・トーク
- 日時
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2007年8月26日(日)11:00-12:00
2007年10月5日(金)18:00-19:00 - 場所
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ギャラリー4
- 担当
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鈴木勝雄(当館主任研究員)
カタログ情報
開催概要
- 会場
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東京国立近代美術館 ギャラリー4
- 会期
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2007年8月18日(土)~10月21日(日)
- 休室日
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8月20日(月)、8月27日(月)、9月3日(月)、9月10日(月)、9月25日(火)、10月1日(月)、10月15日(月)
- 観覧料
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一般420(210)円、大学生130(70)円、高校生70(40)円
中学生以下・65歳以上・障害者手帳をお持ちの方と付添者1名は無料。- それぞれ入館の際、学生証、健康保険証、運転免許証、障害者手帳などをご提示ください。
- ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
- 本展のチケットで、当日に限り、所蔵作品展「近代日本の美術」もご覧いただくことができます。
- お得な観覧券「MOMATパスポート」でご観覧いただけます。
- 無料観覧日
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9月2日(日)、10月7日(日)
*「崩壊感覚」展、所蔵作品展「近代日本の美術」のみ。「平山郁夫 祈りの旅路」展(9月4日~10月21日)は観覧料が必要です。 - 主催
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東京国立近代美術館