展覧会
ハニワと土偶の近代
会期
会場
東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
古(いにしえ)の地層から出土するハニワや土偶のイメージは日本中に浸透し、いまや押しも押されもせぬキャラクターと化しているといっていいでしょう。出土遺物は、美術に限らず、工芸、建築、写真、映画、演劇、文学、伝統芸能、思想、さらにはテレビ番組にいたるまで、幅広い領域で文化現象を巻き起こしてきました。戦後、岡本太郎やイサム・ノグチによって、それまで考古学の資料として扱われていた出土遺物の美的な価値が「発見」されたというエピソードはもはや伝説化しています。なぜ、出土遺物は一時期に集中して注目を浴びたのか、その評価はいかに広まったのか、作家たちが「遺物」の掘りおこしに熱中したのはなぜか――本展は美術を中心に、文化史の舞台に躍り出た「出土モチーフ」の系譜を、明治時代から現代にかけて追いかけつつ、ハニワや土器、土偶に向けられた視線の変遷を探ります。
展覧会のポイント
1 ハニワ・土偶ブームの裏側、掘りおこします
きっと誰もが子どもの頃に出会い、身近な存在として親しんできたハニワや土偶。それらが歴史教科書の冒頭に登場するようになったのは、実は遠い昔のことではなく、「芸術」として語られるようになったのも近代以降のこと。 美術品を鑑賞しながらハニワ・土偶ブームの裏側が見えてくる、一粒で二度おいしい展覧会です。
2 考古図譜からマンガまで
本展の大きな特徴はとりあげる時代とジャンルの幅広さ。出土品を克明に描いた明治時代のスケッチから、果てはマンガまで。 ハニワと土偶があらゆる文化に連なっていることを知ると、美術館を出た時、景色が少しだけ変わってみえるかもしれません。にぎやかな展示にご期待ください。
3 ハニワと土偶のメガネで未来が見える
遺物をめぐるブームにはいつも容易ならぬ背景があり、今後もきっと繰り返されるでしょう。 本展は過去の回想に留まらず、これから起こり得ることの示唆にもなるはずです。古(いにしえ)から未来が掘り出される!
展覧会構成・主な展示作品
序章 好古と考古 ―愛好か、学問か?
「古(いにしえ)を好む」―古物を蒐集し、記録し、その魅力を伝える「古物愛好」は近代以前も存在し、江戸時代後期には「好古家」と呼ばれる人たちが活躍しています。一方、明治の初めに西洋のお雇い外国人たちによって「考古学」がもたらされました。序章では「好古」と「考古」と「美術」が重なりあう場で描かれた出土遺物を紹介します。描き手の「遺物へのまなざし」を追体験しつつ、「遺物の外側に何が描き込まれているか」にもご注目ください。「異」なるものが交じり合う、近代の入り口付近の地層が浮かび上がってくるでしょう。まずは古と近代が出会う違和感をお愉しみください。
1章 「日本」を堀りおこす ―神話と戦争と
近代国家形成において、ハニワは「万世一系」の歴史の象徴となり、特別な意味を持つようになりました。各地で出土した遺物が皇室財産として上野の帝室博物館に選抜収集されるようになると、ハニワは上代の服飾や生活を伝える視覚資料として、歴史画家の日本神話イメージ創出を助ける考証の具となります。考古資料としてではなく、ハニワそのものの「美」が称揚されるようになるのは、1940年を目前にした皇紀2600年の奉祝ムードが高まる頃——日中戦争が開戦し、仏教伝来以前の「日本人の心」に源流を求める動きが高まった時期でした。単純素朴なハニワの顔が「日本人の理想」として、戦意高揚や軍国教育にも使役されていきました。
2章 「伝統」を掘りおこす ―「縄文」か「弥生」か
1950年代は日本中の「土」が掘りおこされた時代です。敗戦で焼け野原になり、その復興と開発のためにあらゆる場所が発掘現場となりました。考古学は、実証的で科学的な学問として一躍脚光を浴びるようになります。出土遺物は人々が戦争体験を乗り越えていく過程において、歴史の読み替えに強く作用した装置といえるでしょう。対外的な視線のなかで「日本的なるもの」や「伝統」への探求が盛んに行われたのは、自国のアイデンティティ再生という内発的な動機のみでは語ることのできない、複合的な理由を含むものでした。コンクリートやアスファルトに置き換えられていく風景の中で、「土」の芸術はどのような意味をもったのでしょうか。
©2024 The Isamu Noguchi Foundation and Garden Museum/ARS, NY/ JASPAR, Tokyo E5599
3章 ほりだしにもどる ―となりの遺物
考古学の外側でさまざまに愛でられたハニワや土偶のイメージは、しだいに広く大衆へと浸透していきます。特に1970年代から80年代にかけてはいわゆるSF・オカルトブームと合流し、特撮やマンガなどのジャンルで先史時代の遺物に着想を得たキャラクターが量産されました。それはまた、縄文時代や古墳時代の文化は「日本人」のオリジンに位置づけられるという自覚を、私たちがほとんど無意識のうちに刻み込まれているということでもあります。本展は、そのような自覚をあらためて“掘り出す”ような現代の作品によって締めくくられます。「ハニワと土偶」という問題群は、地中のみならず、私たちのすぐ身の回りに埋蔵され、確実に今日へと連なっているのです。
courtesy of ANOMALY
カタログ
展覧会公式図録は、2024年10月8日(火)より展覧会特設ショップ、ミュージアムショップで販売いたします。
「ハニワと土偶の近代」公式図録
価格:3,000円(税込)
仕様:B5変形
頁数:308ページ
- 以下サイトで通販を受け付けます。
開催概要
- 会場
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東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
- 会期
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2024年10月1日(火)~12月22日(日)
- 休館日
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月曜日(ただし10月14日、11月4日は開館)、10月15日、11月5日
- 開館時間
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10:00-17:00(金曜・土曜は10:00-20:00)
- 入館は閉館の30分前まで
- 観覧料
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一般 1,800円(1,600円)
大学生 1,200円(1,000円)
高校生 700円(500円)- ( )内は20名以上の団体料金、ならびに前売券料金(販売期間:8月1日~9月30日)。いずれも消費税込。
- 中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。
- キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は、学生証・職員証の提示により団体料金でご鑑賞いただけます。
- 本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)もご覧いただけます。
- チケット
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-東京国立近代美術館の窓口において、9月3日以降の開館日に限り前売券の販売をおこないます。(お得なチケット各種は販売しません。)
-当日券の窓口購入は混雑が予想されるため、事前のチケット購入がおすすめです。
-前売券やオンラインチケット・各種プレイガイドでのご購入方法は本展公式サイトをご確認ください。 - 主催
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東京国立近代美術館、NHK、NHKプロモーション、毎日新聞社
- 協賛
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JR東日本、光村印刷
アクセシビリティへの取り組み
どなたさまにもゆっくり作品を鑑賞いただけるよう心がけています。
- 受付でのご案内
- 車椅子、ベビーカーの貸し出し
- 受付での筆談ボード
- 会場内の写真撮影(一部の作品を除く)
- 補助犬同伴可
- 手荷物用コインロッカー
- お身体が不自由な方のための駐車場
- 館内に座って休める場所
- 多目的トイレ
- 救護スペース
- 授乳室