展覧会

会期終了 企画展

福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ

会期

会場

東京国立近代美術館本館企画展ギャラリー

謎めいたイメージの中に社会批評をこめた前衛画家の回顧展

福沢一郎(1898-1992)は、1930年代の日本にシュルレアリスムを紹介して前衛美術運動のリーダーとして活躍し、生涯を通じて社会批評を作品として表現し続けました。

「謎めいたイメージ」の中に知的なユーモアをまじえ、社会の矛盾や人びとの愚かさを諷刺的に笑いとばした福沢の多彩な画業を約100点の作品で振り返ります。

本展のポイント

1. 2018年に生誕120年を迎えた福沢一郎。1930年代にフランスのシュルレアリスム(超現実主義)を日本に紹介するとともに、社会批評のメッセージを機知にとんだ表現で描き、前衛美術運動の中心的役割を果たしました。戦時中は弾圧を受けますが、戦後は再び社会批評的な視点から人間群像の大作に取り組み、晩年は文化勲章を受章するなど波乱の人生を歩みました。本展では、油彩87点、素描9点、写真7点の計103点の作品により、多彩な福沢の活動を振り返ります。

2. 福沢は「謎めいたイメージ」の中に込めた知的なユーモアによって、社会の矛盾や人びとの愚かな行いを諷刺的に笑いとばしました。本展は社会の風潮にとらわれない福沢独自の自由な姿勢に着目し、ひとりの画家が時代の中でどのように社会と向き合い表現したのかを今日的視点から見直すことで、彼の作品を再評価していきます。

3. 福沢がその評価を確立した1930年代は、戦争へ傾斜していく中、表現の自由が狭められていった時代でした。エスプリの効いた社会批評をしたたかに続けた福沢の表現は、普遍的な人間批評の実践として、私たちが現在直面している表現や言論をめぐる様々な状況を考えるヒントを与えてくれるでしょう。

4. 会場では展覧会企画者による鑑賞ワークシートをご用意。福沢のシュールでユーモアにあふれたイメージを、いつもとちょっと違った角度から、謎解き気分でご覧いただけます。

展覧会の構成

本展は、福沢一郎が社会に対して、あるいは人間そのものに対して、どのような批評の眼を向け、そして持ち前のユーモアのセンスで作品化していったかを、時代順に10章に分けて紹介します。

1. 人間嫌い:パリ留学時代

福沢一郎は、はじめ彫刻家を志し、1924年から31年までパリに留学しますが、留学中に絵画制作へと進みます。古典から同時代の作品まで幅広い西洋美術研究の上で制作された初期作品には、すでに社会を見つめる個性的な視点が認められます。

2. シュルレアリスムと諷刺

福沢は、パリ留学中にシュルレアリスムの画家マックス・エルンストの作品に出会い、その影響のもとに、古い雑誌の挿絵を奇妙に組み合わせた作品を数多く制作します。不条理なユーモアに満ちたこれらの作品は、1931年の独立美術協会展で発表され注目を浴びました。

3. 帰国後の活動

1931年に帰国した福沢は、パリで身につけたシュルレアリスムの手法を応用しながら、日本の社会にシニカルな視線を向け、独自の諷刺的な作品を描くようになります。彼の立ち位置はプロレタリア芸術とも異なり、あらゆるイデオロギーから自由でした。

4. 行動主義(行動的ヒューマニズム)

1930年代半ば、文学においては小松清がフランスのアンドレ・マルローやアンドレ・ジッドを紹介しながら行動主義(行動的ヒューマニズム)を提唱します。ファシズムに抗して人間精神の自由を守ろうとするこの思想に、福沢は美術家として共鳴し、《牛》(1936年)などを発表して、若手画家たちに影響を与えました。

5. 戦時下の前衛

1939年に美術文化協会を結成するなど前衛画家たちのリーダーとして活躍していた福沢は、シュルレアリスムと共産主義との関係を疑われ、1941年に検挙されます。その後は戦争協力を求められますが、戦時下の彼の活動の真意は、再検証の必要があります。

6. 世相をうつす神話(1)

戦後、活動を再開した福沢は、混乱する世相を、ダンテ「神曲」に託して表現し、また代表作《敗戦群像》(1948年)を発表します。戦前から追求されていたヒューマニズムの姿勢が、戦時下の体験を経て新たな段階に達したといえるでしょう。

7. 文明批評としてのプリミティヴィスム

福沢は1952年に渡欧し、その後ブラジルやメキシコを経由して54年に帰国します。中南米で目撃した人びとや造形物の原初的な生命力は、福沢のイマジネーションを大いに刺激しました。彼はそこに日本には欠けている何かを見出したのでしょう。

8. アメリカにて

福沢は1965年にアメリカを旅します。ちょうど黒人の公民権運動が高まりを見せていた時期でした。自由を求める運動のエネルギーを、福沢は絵画作品の連作の中に描きました。また、ニューヨークの人々を機知にとんだ構図で写真に収めています。

9. 世相をうつす神話(2)

1970年代になると、福沢はふたたびダンテ「神曲」に基づいた地獄の連作に取り組み、さらに「往生要集」をもとに東洋の地獄を、そしてそれらをふまえて、現代の世相を地獄になぞらえてユーモラスに描きました。

10. 21世紀への警鐘

現代社会へのメッセージを、ただの時事諷刺に終わらせるのではなく、古典をふまえて普遍的な人間の問題として表現するという姿勢は、晩年に至るまで一貫していました。展覧会の最後に、21世紀への警鐘を示す作品を紹介します。

福沢一郎 略年譜

開催概要

会場

東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー

会期

2019年3月12日(火)~ 2019年5月26日(日)

開館時間

10:00-17:00(金・土曜は10:00-20:00)
*入館は閉館30分前まで

休館日

月曜(3/25、4/1、4/29、5/6は開館)、5/7(火)

観覧料

一般1,200(900)円
大学生800(500)円

  • ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
  • 高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等をご提示ください。
  • キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は、学生証・職員証の提示により団体料金でご鑑賞いただけます。
  • 本展の観覧料で入館当日に限り、「MOMATコレクション」(4-2F)、「イメージコレクター・杉浦非水展」(2F ギャラリー4)もご覧いただけます。

5月1日(水・祝)は皇太子殿下が御即位されることを祝して入館無料です。

主催

東京国立近代美術館

出品協力

群馬県立近代美術館、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館、一般財団法人福沢一郎記念美術財団

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