展覧会

会期終了 企画展

日本彫刻の近代

会期

会場

東京国立近代美術館本館企画展ギャラリー

展覧会について

日本には古来、仏像、神像、建築装飾、置物など、今日「彫刻」と総称されるさまざまな表現が存在しています。しかし、祈りのための彫像や日常の愛玩物ではなく、西洋的、近代的な意味での純然たる鑑賞の対象としての「彫刻」という考え方が本格的に移入されはじめたのは、「絵画」よりも遅く、明治30年代になってからのことでした。それと前後して、象牙の置物や根付などの工芸美術品が外国向けの輸出品としてもてはやされたり、歴史的偉人や事績を顕彰するための記念碑彫刻が推奨された時代などもあり、彫刻というジャンルが、芸術家個人の自由な表現として認められるのは、ようやく明治末年から大正初めにかけて、荻原守衛や高村光太郎らの活躍をみてからでした。
その後、大正から昭和にかけての日本彫刻の歩みも、決して平坦なものではありません。ロダンの弟子のブールデルや、マイヨールらに学んだ彫刻家たちが、20世紀の思潮を持ちかえる一方、伝来の木彫界でもさまざまな変転があり、また戦後になると、多種多様な素材・技法による抽象表現が現われてきました。

この展覧会は、幕末・明治期から1960年代までの近代日本彫刻史を、68名の彫刻家の約100点の作品によって振り返りながら、この分野における「近代」とは何であったかというテーマに、さまざまな角度から光を当てようとするものです。絵画史と比較すると、日本の近代彫刻史を通覧する試み自体が少なく、また、研究成果の蓄積も、残念ながら十分とはいえません。本展が、日本彫刻における近代について改めて見直すきっかけとなり、彫刻芸術の魅力を広く紹介する機会となれば幸いです。

ここが見どころ

日本の近代彫刻100年の100点

まとめて見る機会のなかなか少ない日本の近代彫刻。本展では高村光雲の代表作《老猿》(重要文化財)をはじめ、貴重な作品を数多く各地から集め、明治からの日本近代彫刻100年間の歩みを、100点の作品でたどります。

多様な主題、材質、技法

日本の近代彫刻は、100年の間に多様に展開しました。そのため本展で紹介する作品は、主題も宗教的なものから肖像、動物、そして抽象まで幅広く、素材も木、石、ブロンズ、象牙、鉄、アルミなど多岐にわたります。さらに、高さ3mにも及ぶ竹内久一《神武天皇立像》からわずか7cmの高村光太郎《柘榴(ざくろ)》まで、実に多様な作品が集まります。

カタログを一般書籍として刊行

日本の近代彫刻史の教科書をめざした詳細なカタログを淡交社から一般書籍として刊行。書店でもお求めいただけます。3つの巻頭論文と時代別の8つの論考、そして個別のエピソードを紹介したコラムなど、読み応えのある一冊です。

展覧会構成

I 「彫刻」の夜明け

明治初期に西洋から伝えられた「彫刻」という概念と、それまで日本に存在した仏像や人形や置物などとの間で、作家たちは新しい表現を模索し始めました。こうした黎明期の取り組みを、宮川香山(初代)、高村光雲、石川光明などの作品によって紹介します。

Ⅱ 国家と彫刻

明治20年代頃から、近代国家体制の整備の一環として、権力者の像や歴史や神話と関連する主題の銅像が全国に設置されていきました。高村光雲、竹内久一、大熊氏廣などの作例を、実際の銅像は移動不可能なため、試作品や関連作品、写真などによって紹介します。

Ⅲ アカデミズムの形成

1907(明治40)年開設の文部省美術展覧会(文展)で活躍した新海竹太郎、朝倉文夫、建畠大夢、山崎朝雲らの作品を紹介します。展覧会制度の整備によって、特定の個人を顕彰する銅像的なものから鑑賞のためのものへと、彫刻は変化していきました。

Ⅳ 個の表現の成立

明治時代末から大正時代前期にロダンの芸術が紹介され、作家の個性と内面の表現を重視する新しい彫刻思想が広まりました。高村光太郎、荻原守衛、中原悌二郎、戸張孤雁など、この潮流の中で制作した作家たちの作品を紹介します。

Ⅴ 多様性の時代

大正後期から昭和前期にかけての時期は、ロダンの紹介から時を経て、技法や題材が再検証された時代です。高村光太郎、石井鶴三、橋本平八など、伝統と近代とをめぐって葛藤しながら、個性を探求していった作家たちを紹介します。

Ⅵ 新傾向の彫刻

1920年代に西洋のモダニズムの影響を受け、従来の彫刻概念を変えようとした仲田定之助らの前衛的な作品や、都市の近代化の中で彫刻と建築との総合を目指した団体「構造社」の作家たちの作品を紹介します。

Ⅶ 昭和のリアリズム

ブールデル、マイヨール、デスピオといったロダン以後のフランス近代彫刻の影響を受けながら、大戦間の時代に日本人彫刻家としてのアイデンティティを模索していった高田博厚、柳原義達、佐藤忠良、舟越保武などのヒューマニスティックな作品を紹介します。

Ⅷ 抽象表現の展開

きわめて多様に展開した戦後の抽象表現を「抽象彫刻の草創期」、「転換期――彫刻の「表面」をめぐって」、「物質と空間――1960年代後半~」の三つに分け、堀内正和、建畠覚造、豊福知徳、若林奮らの作品を紹介します。

イベント情報

パネル・ディスカッション

日程

2007年12月8日(土)

時間

13:00-16:00

場所

当館講堂

担当

黒川弘毅(彫刻家、武蔵野美術大学教授)、田中修二(大分大学教育福祉科学部准教授)、古田亮(東京藝術大学大学美術館准教授)、松本透(当館企画課長)

聴講無料、申込不要、先着150名

ギャラリー・トーク

いずれも参加無料(要観覧券)、申込不要

大谷省吾(当館主任研究員)

日程

2007年11月30日(金)

時間

18:00-19:00

場所

企画展ギャラリー

松本 透(当館企画課長)

日程

2007年12月14日(金)

時間

18:00-19:00

場所

企画展ギャラリー

カタログ情報

開催概要

会場

東京国立近代美術館 企画展ギャラリー

会期

2007年11月13日(火)~12月24日(月)

開館時間

10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)
入館は閉館30分前まで

休室日

月曜日 *2007年12月24日(月・振休)は開館

観覧料

一般850(700/600)円、大学生450(350/250)円、高校生250(150/100)円

  • 中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方と付添者1名は無料
    *それぞれ入館の際、生徒手帳、障害者手帳等をご提示ください
  • いずれも消費税込、( )内は前売/20名以上の団体料金
  • 本展観覧券で、当日に限り、「天空の美術」、所蔵作品展「近代日本の美術」もご覧いただけます
  • 観覧券は全国チケットぴあ他、ファミリーマート、サンクスにて取り扱います(一部店舗を除く)
    *前売券は、9月19日(水)から11月12日(月)まで
主催

東京国立近代美術館、日本経済新聞社

巡回

すでに宮城県美術館(2007年8月7日~9月17日)、三重県立美術館(2007年9月26日~11月4日)で開催され、当館が最終会場です

Page Top