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現代の眼 オンライン版 資料紹介|杉浦非水旧蔵資料

廣川晶子 (工芸課主任研究員)

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杉浦非水旧蔵資料

国立工芸館アートライブラリでは、所蔵作家であるグラフィックデザイナー杉浦非水(1876–1965)が生前収集していた旧蔵資料を約400点所蔵しています。これらは1997年にご遺族から作品の一括寄贈を受けた際に作品と一緒に寄贈されたものであり、非水による作品制作の過程や図案研究を辿ることのできる貴重な研究資料と言えます。

詳細については2019年に行った展覧会「イメージコレクター・杉浦非水展」図録巻末にある「旧蔵本リスト」で確認できますが、資料は主に2種類に分けられます。ひとつ目はスクラップ資料で、雑誌やお菓子の包み紙などが切り取られテーマごとにまとめられているものです。スクラップは製本された冊子体のものと切り取られたままの状態のものとに分かれています。冊子体の製本は非水自らが行っており、それぞれのノートの表紙に書かれたタイトルに関連する切り抜きが丁寧に貼り付けられています。切り抜きのまま保管されていたものは、やはりそれぞれの封筒に「鶏」「馬の一」などと書かれ分類ごとにまとめられていました。封筒に入れられていたものは整理の際に一枚ずつ保存用ファイルに封入し、非水の分類ごとに中性紙箱で保管しています。

ふたつ目は出版された一般書籍です。和書だけでなく洋書も収集しており、英語やドイツ語、フランス語など複数の言語の書籍がありました。書籍の内容は、植物図鑑や文字フォントデザインなど図案創作の参考としていたと推測されるもののほかに『シートン動物記』や『イソップ物語』のような子供用のものまで多岐にわたります。またそれぞれのページには非水が残したメモ書きも確認でき、実際にそれらの書籍をかなり読み込んでいたことが伺えます。

状態が悪いものや書き込みが多くあるものについては、資料の保存を優先し非公開としていますが、展示利用というかたちでご覧いただくことができます。また、資料のデジタル化をはじめ、データの整理も進めています。デジタルデータの公開により研究資料としてさらなる有効活用ができればと考えています。

また、一部資料については一般公開しており、ライブラリで閲覧が可能です。アートライブラリで公開している杉浦非水旧蔵資料については下記で一覧がご覧いただけます。

杉浦非水旧蔵資料の展示(「テーマ展示 本と暮らす」会場風景より)|撮影:石川幸史 
杉浦非水旧蔵資料の展示(「テーマ展示 本と暮らす」会場風景より)|撮影:石川幸史 

(『現代の眼』640号)

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