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現代の眼 オンライン版 資料紹介|松田権六旧蔵資料 

頓宮佑佳 (工芸課研究補佐員)

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図2-1
図2-2
図3-1
図3-2
図3-3
図4
図5-1
図5-2

本稿では日本の近代工芸を牽引した漆芸家・松田権六(1896–1986)が旧蔵した資料の一部を紹介し、アーカイブズ資料としての一端にも触れていきます。本資料は松田のご遺族から寄贈された資料群で、当館が松田の自宅兼仕事場から運び出し、アーカイブズの非公開資料として管理しています。その内容は図案、漆芸技法や古美術研究の直筆原稿、手帳、写真、行政文書、新聞や雑誌の切り抜きなどで構成されます。これらは松田の活動によって生じた記録であり、日本の近代工芸史を補完する貴重な資料群と言えるでしょう。

「▢工製作法 松田教官」(図1)とある裁断した厚紙で覆われた資料は、漆工に関する素材や機器の説明書、東京美術学校(現・東京藝術大学)漆工科の試験問題、漆芸に関する研究文書などで構成されます。以下で紹介する資料は、この束に保管されているものです。

図1

「外筥の話」(図2-1, 2)には、茶道の遠州えんしゅうごのみ不昧ふまいこうごのみそれぞれの外箱の作成方法や用いる素材、構造が記されています。文面に「越野氏述」とあり、伝聞を書き留めたことが推測できます。

「切金彩色之製作」(図3-1, 2, 3)には、きりかね師の齋田梅亭(1900–81)が、1948(昭和23)年12月12日に国立博物館(現・東京国立博物館)の講堂で行ったとされる、截金の製法や保存法などの講義内容が記されています。截金は仏教美術や工芸において金箔を用い文様を表す技法で、松田はこの講演会に参加し、見聞を深めたのかもしれません。筆跡から截金の隅々まで会得しようとした様子が窺えます。

「国立博物館正倉院御物展観」(図4)は、1949(昭和24)年10月30日〜11月13日 の期間、国立博物館(同上)にて開催された正倉院御物特別展の出陳宝物について、同年11月14日に記したと思われるスケッチです。《銀薫爐ぎんくんろ》《ぎんへい脱箱だつのはこ》(いずれも正倉院蔵)などのフォルムをさらりと描き、傍らに素材や構造を書き留めています。松田は宮内庁の委託により、1953~55(昭和28~30)年にかけて正倉院髹漆品の調査に関わっていましたが、それ以前から関心を寄せていたことが分かります。

「漆の精製」(図5-1, 2)では、漆の精製方法を記しています。文面で「ナヤシ」と言われる漆の撹拌作業について触れており、この内容は著書『うるしの話』にも登場します

松田権六旧蔵資料の特徴として、直筆原稿に関しては、用紙に青色や黒色のペンと鉛筆を併用し、見聞した物事や心得、備忘などを反芻して記していることが挙げられます。執筆時期を特定できる原稿は少なく、現状として、原稿とひとまとめにされた行政文書の日付や、用紙そのものの情報による推測に留まっています。また、松田は1945(昭和20)年4月に空襲によって当時の自宅を失い、多くの資料を焼失したため、それ以前の日付であれば松田が戦後に書き起こした可能性も考えられ、執筆時期の特定には調査を重ねる必要があります。

図6 松田権六旧蔵資料の一部

本資料の多くは松田自身が作成、取得した文書等で構成され、それらを封筒や紙箱などにまとめ、資料によっては更に紐で束ねた状態で残されていました。旧蔵者が資料に付した原秩序を把握することは容易ではありませんが、本資料の場合、松田が関わった事柄の変遷によって資料がおおまかに仕分けられており、松田の来歴と資料の現状から一定の秩序を見出すことができます。また、それらを束ねる紐は、工芸の作品箱に掛ける紐と同様の結び方で厳密に残されており、この点からも松田が資料整理に関わった可能性が見えてきます。

現在、本資料は調査の途上にあり、松田が残した資料の継承だけでなく、原秩序を維持した体系的な管理を進めています。

紹介資料一覧

図表番号管理番号箱番号資料名年月日枚数作成者
図16030000006工製作法 松田教官1松田権六
図2-1, 26035200006外筥の話昭和29年5月28日4松田権六
図3-1, 2, 36035400006切金彩色之製作昭和23年12月12日5松田権六
図46035800006国立博物館正倉院御物展観昭和29年10月14日1松田権六
図5-1, 26036600006漆の精製不詳10松田権六
図6006松田権六旧蔵資料(一部)松田権六、東京都教育委員会など

註 
 文面に東本願寺とあるが、齋田家は西本願寺専属の截金仏画師で齋田梅亭はその六代目である。『日本美術年鑑 昭和57年版』東京国立文化財研究所、1984年、276頁
 『日本美術年鑑 昭和22–26年版』美術研究所、1952年、35頁
 松田権六『うるしの話』岩波書店、1964年、31–34頁

『現代の眼』641号)

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