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現代の眼 MOMAT支援サークル 設立から6年を経て─現状と今後について

境雅実 (独立行政法人国立美術館ファンドレイジング担当)

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美術館入口の石垣に設置されているプラチナパートナーのプレート

東京国立近代美術館は2016 年、企業に特化した美術館支援制度として「MOMAT支援サークル」を設立しました。これまでの国立美術館は、美術館サイドがご寄附という形で受動的にご支援を受けることが一般的でしたが、MOMAT支援サークルでは、企業と美術館、双方が求め、望むところを叶えるような相互関係を「オーダーメイド」で築いていけるよう制度設計をしました。例えば本制度では、3 種類のパートナープランをご用意し、ご支援いただく金額に応じて様々な特典をご提供していますが、パートナー企業は、支援の形態や充当先、美術館が提供する特典などを、それぞれのニーズによって選んだり、カスタマイズしたりすることができます。

また、パートナー企業同士が美術館に集まり、出会い、新しいビジネスが生まれる、新しい付き合いが始まるような展開を期待し、制度の名称を、人と人とが集い交流する場所という意味で「サークル」としました(英語の名称は「MOMAT Corporate Partnership」です)。そして、支援企業を「パートナー」と呼んでいます。設立から6 年が経ち、現在のパートナー企業は15社となりました。

さて、新型コロナウイルス感染症の感染が確認されてから早2年が経過しました。美術館も感染予防や感染拡大防止に努め、入館者数を制限するための事前予約制度の導入や、入口での検温、手指の消毒、館内でのマスク着用のお願いなど、対策を徹底させています。また、2020年4月と2021年5月には、1ヶ月を超える臨時休館を経験しました。こうして、企画していた展覧会の中止や、会期の変更を余儀なくされ、また開館できても人数制限により入館者数が激減する事態となり、美術館の運営は非常に厳しくなりました。コロナ禍においては、多くの企業が減収に苦しんでおられますが、こうした厳しい状況
においても、パートナー企業からのご支援が途絶えることはなく、変わらぬご支援をご継続いただいていることは、大変貴重で非常にありがたいことです。設立時に作成したパンフレットの中で、「MOMAT支援サークルは、パートナー企業の皆様と、効果的な長期にわたる関係を発展させていくことのできるシステムを目指します」と発信しています。まさにこの目標が現実のものとなったことを実感した2年でした。

一方、特別鑑賞会やプライベートイベントの実施、パートナー企業の社員の皆様やクライアントに向けてご提供しているコレクション展の無料鑑賞などは、人と人との接触を減らすことを求める感染予防対策や、美術館の臨時休館により物理的にご利用が不可能となるなど、コロナ禍においてはご支援に対する特典をほとんどご利用いただけない状況が続いており、新しい生活様式やウィズコロナの時代に適応するような新しい形の特典を考える必要性を感じています。

数年前より、これまで嗜好や趣味として捉えられていたアートが、ビジネスに必要な要素として企業研修や個々人のビジネスパーソンのスキルアップに取り入れられることが増えています。また、ご支援の目的も純粋な支援という形から、本業と連携できる形での支援を望む企業も増えてきています。こうした時流に乗り遅れることなく、パートナーの期待に応えられるよう、7 年目を迎える本制度もより充実させていきたいと思っています。

最後に、長きにわたり東京国立近代美術館をご支援くださっているすべてのパートナー企業に厚く御礼を申し上げます。

エントランスに設置された支援企業のプレート

[プラチナパートナー]
木下グループ
ラグジュアリーカード
株式会社三井住友銀行
東海東京証券株式会社
[ゴールドパートナー]
三菱商事株式会社
大日本印刷株式会社
アバントグループ
[シルバーパートナー]
鹿島建物総合管理株式会社
丸紅株式会社
パシフィックコンサルタンツ株式会社
日本電子株式会社
セイコーホールディングス株式会社
三井住友海上火災保険株式会社
タカラレーベングループ
月島倉庫株式会社
(2022年1月現在)


『現代の眼』636号

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