の検索結果

の検索結果

No image

生誕100年 東山魁夷展

展覧会について 東山魁夷の生誕100年を記念する展覧会を開催します。東山魁夷は、明治41(1908)年に生まれ、東京美術学校の研究科を修了したのち、ドイツ留学をはさんで帝展、文展に作品を発表しました。戦後になって、代表作《道》に見られるような平面的で単純化をきわめた作風へ展開し、風景画家としての独自の表現を確立しました。そして、自然や街を主題に「生」の営みをいとおしむかのように描いた作品、祈りの風景ともいえるほどに沈潜した精神的な深みをうかがわせる唐招提寺御影堂の障壁画などによって、戦後の日本画界に大きな足跡を残しました。 東山魁夷の作品は平明でわかりやすい描写のうちに、清新な抒情性と深い精神性を湛えています。それは徹底した自然観照から生まれた心象風景であり、自身の心の奥底に潜む想いの表白にほかなりません。また同時に、その作品は日本の伝統につらなりつつ、時代に生きる感覚を確かに宿しています。東山芸術が今なお多くの人々の共感を得るのはまさにそれゆえであるといえるでしょう。 本展は、東山魁夷の代表的な本制作101点、スケッチや習作53点(いずれも東京会場の出品数)を出品するものです。唐招提寺御影堂の障壁画からは《濤声》(部分)、《揚州薫風》を展示します。本展では、これらの作品を7つの章に分け、さらに5つの特集をもうけて紹介することで、ともすれば見落とされがちであった東山魁夷の画風の展開や、制作のプロセス、表現の特質などにも迫りたいと考えます。 会期中、展示替があります前期:3月29日(土)~4月20日(日)後期:4月22日(火)~5月18日(日) 混雑状況17(土)、18(日)は終日、混雑が予想されます。平日の午後3時以降は比較的ゆとりがあります。15(木)・16(金)・17(土)の夜間開館をどうぞご利用ください。 *著作権保護のため、画像の転載を禁止します ここが見どころ 代表作が目白押しの大回顧展 東山魁夷の画業を語る上で欠かすことのできない代表作、ほとんどすべてが会場に集結します。また、今まで紹介されることの少なかった作品もあわせて会場に並びます。本制作101点、スケッチ・習作53点(いずれも東京会場の出品数)を数える大展覧会は、これまでの東山の回顧展で最大規模です。東山自身が画業の転機とみとめる《残照》、東山を一躍人気作家へと押し上げた《道》、東山作品のなかで最も人気の高い《花明り》などの重要な作品が、展示替えをおこなうことなく全会期を通して展示されることも、本展の大きな特徴です。 7章構成で東山芸術に迫る 東山魁夷の作風展開ならびに作画傾向に注目し、7章に分けて作品を紹介します。東山芸術の確立期は、これまで自身の言述に従い《残照》を出発点とすることがほとんどでした。しかし、東山の画業初期に見られる写生を基礎におく作風は、《道》以降、簡潔な画面構成による作風へと変化します。このことに注目し、本展では第2章の始まりに《道》を据え、東山の作風展開を作品に即してたどります。全体の章分けは編年的な区分けにとどまりません。第5章では、ともすれば自然の風景ばかりを描いたと思われがちな東山が、若い頃から折りに触れ描いていた町並みや建物を主題とする作品に注目し、その表現の特徴を探ります。 5つの特集展示 特集展示を5つ設け、多角的に東山の芸術に迫ります。5つの特集は次のとおり。特集1「ドイツ留学」、特集2「《自然と形象》と《たにま》」、特集3「白馬のいる風景」、特集4「窓」、特集5「唐招提寺の障壁画」。 白馬は全部で11頭 1972年に描かれた白馬のシリーズ。この展覧会では本制作5点、習作6点を紹介します。そのうち習作は展示替を予定していますが、一度の来館で少なくとも8頭の白馬に出会えます。 唐招提寺からはこの2点 奈良・唐招提寺の御影堂障壁画の制作は、11年あまりにも及ぶ、東山の画業における一大プロジェクトでした。制作は二期に分けられ、入念な準備のもと1975年に《山雲》(上段の間)、《濤声》(宸殿の間)が、80年に《黄山暁雲》(桜の間)、《揚州薫風》(松の間)、《桂林月宵》(梅の間)が、81年に《瑞光》(鑑真和上坐像厨子扉絵)が完成しました。この展覧会では、《濤声》の一部と《揚州薫風》を、ギャラリー4を御影堂内部に見立てて展示します。 音声ガイドは東山本人が語ります 本展でご利用いただける音声ガイド(有料、500円)は、東山魁夷の作品世界によりよく親しんでいただくために、画家が当館で1968年冬におこなった講演会「私と風景画」の音声記録と、彼が綴った文章を基に構成しました。25作品の解説のうち12作品は、東山の肉声による解説となっています。 展覧会構成 第1章 模索の時代 昭和戦前期から戦後へかけては、東山にとって模索の時代といえます。美術学校を出てドイツに留学、やがて戦争で死を覚悟したなかで見た熊本の風景の美しさや、戦後千葉の鹿野山の夕暮れのなかで自然と深く一つになることのできた体験を通し、東山は風景画家として開眼してゆきます。ここでは1948(昭和23年)の日展出品作《郷愁》までの作品で、自らの世界を探し求めてゆく過程を検証します。 第2章 東山芸術の確立 戦後の混乱で、日本画の世界は厳しい状況に置かれました。しかし、既に風景画家としての立ち位置を明確にしていた東山に、迷いはなかったといえます。もちろん、当時奔流のように流れ込んだ新しい美術思潮に、影響を受けなかったわけではありません。しかしその中で、戦前までに形をなしてきた日本画の表現に確信をもちつつ、自らの資質を生かしたところに東山芸術は確立しました。形態を単純化し、不必要な要素を切り捨てた簡潔な構成に特徴がありますが、そこに至る過程を1950(昭和25)年の日展出品作《道》から1961(昭和36)年の《萬緑新》に辿ります。 第3章 ヨーロッパの風景 1962(昭和37)年、東山はデンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーを旅行しました。この章の作品のほとんどが、その折りに取材した風景を題材にしたものです。どの作品も北欧の雄大で静寂に満ちた、神秘的ともいえる風景をみごとにとらえており、厳しい自然と、力強い生の営みへの強い共感を窺うことができます。ここではとりわけ、水平性や垂直性を強調した構成、背景が湖面に倒影した上下相称の構図が特徴的といえます。 第4章 日本の風景 北欧から帰国後、京都を題材に描いた作品がこの章の中心となります。「京都」は自然と人間の共生がつくりあげた文化そのものであり、その意味では風景といっても、これまで東山が多く描いてきた自然の風景とは大きな違いがあります。円みや柔らかさのある構図や暖かみを帯びた色彩だけでなく、画面を覆う湿り気を帯びた空気に、透明感のある北欧風景とはまったく異なった、いかにも京都らしい雰囲気が色濃く漂っています。 第5章 町・建物 自然の風景を描く画家と思われている東山も、町や建物を主題とする作品を少なからず描いています。この章の中心となるのは、1969(昭和44)年にドイツ、オーストリアを旅行して取材したヨーロッパの古都を描く作品です。この連作で、画面が再び縦方向への動きを強調するものへと変化しているのは、ヨーロッパの石の文化のもつ強固な造形性を意識したゆえでしょう。画面には街に生きる人々の息づかいが感じられ、それは京都の連作とも共通する特徴といえます。この章では「町」をみる東山独自の視線を探ります。 第6章 モノクロームと墨 東山が「墨」の世界の扉を開くきっかけとなったのは唐招提寺御影堂の障壁画制作でした。それまでの表現と異なり、色を抑制してゆく表現は、唐招提寺を取り巻く宗教的雰囲気のなかで、ますます精神性を深めてゆく過程にも重なります。この章では1973(昭和48)年の日展出品作《夕静寂》から唐招提寺障壁画までの作品によって「墨」の世界に至る過程を追います。 第7章 おわりなき旅 唐招提寺障壁画を制作以降も、東山はそれまで描いてきた主題や手法を大きく変えることはありませんでした。晩年になり旅に出ることもほとんどなくなる頃からは、過去の想い出が寄せ来る波のようの繰り返し画面にあらわれ、それまでの抒情性に加えて、どこか夢幻的ともいえる独特の雰囲気が浮かんでくるようになります。それは遠い過去の中を果てることのない遍歴の旅を続ける東山が、さまざまな想いをこめて奏でる追憶の旋律のようでもあります。 イベント情報 講演会 「若き日の東山魁夷」 川崎鈴彦(日本画家) 2008年4月5日(土) 14:00-15:00 当館講堂 当日先着順 150名。聴講無料。 「東山魁夷 画業の軌跡」 尾崎正明(本展企画者・当館特任研究員) 2008年4月19日(土) 14:00-15:30 当館講堂 当日先着順 150名。聴講無料。 関連企画 「東山魁夷展」こどもセルフガイド自然を描く 東山さんは自然をこよなく愛し、たくさんの風景を描き続けました。東山さんのあしあとをたどってみよう! 「東山魁夷展」会期中に来場した小中学生には、東山の作品を見るためのヒントやクイズ、画家に関するエピソードなどを紹介したセルフガイド(解説リーフレット)をプレゼントします。 教職員鑑賞プログラム「生誕100年 東山魁夷展」美術館活用研究会 *学校教職員が対象のプログラムです 2008年4月4日(金) 14:00-15:00(講演)/10:00-20:00(展覧会観覧) 先着150名(要事前申込)申込方法などの詳細はこちらをご覧ください。 カタログ情報 開催概要 企画展ギャラリー・ギャラリー4 2008年3月29日(土)~5月18日(日)会期中、展示替があります前期:3月29日(土)~4月20日(日)後期:4月22日(火)~5月18日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)東山魁夷展会期中の木・金・土曜日は、20:00まで開館します*入館は閉館30分前まで 4月7日(月)、14日(月)、21日(月)、5月12日(月) 一般1300(1100/900)円、大学生900(800/600)円、高校生400(300/200)円●いずれも消費税込、( )内は前売/20名以上の団体料金*前売券の販売は3月28日まで●中学生以下、障害者の方及び付添者1名は無料*それぞれ入館の際、生徒手帳、障害者手帳等をご提示ください●本展観覧券で、当日に限り、所蔵作品展「近代日本の美術」もご覧になれます●とてもお得なチケット情報2月29日までの販売*ペアチケット 1800円2人分の入場券がセットに。切り離して1枚ずつご利用になることも可能です*モディリアーニ展とのセット券 2000円国立新美術館「モディリアーニ展」(3/26~6/9)とのセット券です●チケット取扱チケットぴあ(Pコード:前売687-704, 当日687-705, ペアチケット687-706, モディリアーニとのセット券687-707)、ローソンチケット(Lコード:33454, モディリアーニとのセット券39957)ほか都内主要プレイガイドペアチケット、モディリアーニ展とのセット券はオンラインのみでの販売となります。オンラインチケット(電子チケット)は、引換券です。そのままでは入場できないので、展覧会場入り口にて実券とお引換ください。 東京国立近代美術館、日本経済新聞社 大和ハウス工業 日本興亜損害保険、三菱商事 唐招提寺 長野県信濃美術館 東山魁夷館 2008年7月12日(土)~8月31日(日)

No image

わたしいまめまいしたわ:現代美術にみる自己と他者

展覧会について  ときどき、自分というものの存在が、きわめてあやふやで頼りなく感じられることはありませんか? その不安のようなものは、どこからやってくるのでしょう。 「わたし」というものが最初から存在するのではなくて、「他者」 ― 社会に生きるほかの人々 ― との関係の中でできあがっていくものだとするならば、今日わたしたちが感じる、めまいにも似た存在の不安は、ただのアイデンティティの問題にとどまらないはずです。  「他者」とのコミュニケーションのあり方や、わたしたちをとりまく現実を認識するあり方の変化にも目を向けてみましょう。 価値観が多様化し、それがインターネットなどの高度情報技術によって増幅されることで、「わたし」と「他者」との関係は幾重にも複雑なものとなり、そのために「わたし」という存在は、定めがたいものになってきたのかもしれません。 しかし、このような混沌とした状況は、わたしたちが改めて「わたし」のあり方を考え直すチャンスでもあります。 そのためには、ものを見ること、認識すること、そこから紡ぎあげた思考を他者に伝えること、そういったひとつひとつの行為を、繰り返し吟味する作業が不可欠です。 そして、これらはまさに今日の美術における重要なテーマとして、多くのアーティストによって探究されてきました。 今回の展覧会では、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館のコレクションを中心として、現代において「わたし」の根拠を問い、「わたし」を取りまく世界を認識し、「他者」との新たな関係を切り拓こうとする作品を集めて、それらを複数の視点からご紹介します。主な出品作家(順不同、図版掲載作家は省略):梅原龍三郎、中村彝、岸田劉生、藤田嗣治、谷中安規(たになか やすのり)、麻生三郎、椎原治、靉光、北脇昇、ウォーカー・エヴァンズ、植田正治、浜口陽三、河原温、宮島達男、村上友晴、岡崎乾二郎、ブリジット・ライリー、日高理恵子、フランシス・ベーコン、須田一政、ポール・ストランド、高嶺格(たかみね ただす)、郭徳俊(かく とくしゅん) ここが見どころ さまざまな「わたし」と「他者」の関係を前にして、あなた(観客)もめまいを起こすかも!?5人のキュレーターが各セクションを担当。そのため、いつもとちょっと違う展覧会になるはず?当館だけでなく、国立美術館のコレクションの中からよりすぐった現代美術をご紹介します! カタログ、チラシ、ポスターなどの印刷物はもちろんのこと、会場内のグラフィックデザインもあの服部一成氏がデザイン! 1500㎡に95点を展示(牛腸茂雄の60点組など写真や版画のシリーズものは1点と計上) 2003年当館での個展でも話題をよんだ牛腸茂雄の《SELF AND OTHERS》。全60点を展示! ビル・ヴィオラ、キムスージャ、高嶺格の代表的な映像作品を展示! 展覧会構成 わたしはひとりではない  「本当の自分を探したい」。多くの人がこんな風に言います。しかし本当の自分、たったひとつの揺らぎない自分というものは、果たしてあるのでしょうか。家族といる自分、友人といる自分、ひとりの時の自分。誰もが状況に応じていくつもの自分を使いわけています。そうした複数の自分の束こそが、「本当の自分」の正体なのではないでしょうか。イントロダクションとなるこの章では、大正から昭和にかけて制作されたたくさんの自画像とともに、変装によって自分のイメージを無数に分裂させる注目の若手写真家、澤田知子の作品などをご紹介します。 アイデンティティの根拠  「わたし」が「わたし」であることの確実さ、つまりわたしのアイデンティティ(自己同一性)は、いかにして確保されるのでしょう。このセクションでは、文字や記号を用いて、自己同一性の根拠を探る作品に始まり、複数の対象間に「同一性」を感じ取ること、複数の対象間に「差異」を見出すこと、そういった認識のメカニズムを解き明かすような作品(河原温、高松次郎、村上友晴、岡崎乾二郎、宮島達男)をご紹介します。 暗い部屋(カメラ・オブスクーラ)と「わたし」  暗い部屋に一点のピンホールを穿つことで外界の倒立像が壁面に投影されるカメラ・オブスクーラ(「暗い部屋」の意)の原理と、その延長線上に成立した写真という装置。これらは世界と「わたし」との間に距離を作り出し、世界を離れたところから見つめ、思考する「自己」を切り出します。「暗い部屋」とは、「わたし」の内面に通ずる秘めやかな空間なのです。ここでは、アパートの自室それ自体を「カメラ・オブスクーラ」とすることで外の世界の写真を撮影した伝説の作品、山中信夫の《ピンホール・ルーム》を紹介します。 揺らぐ身体  通常わたしたちは、視るという行為を、絶対的かつ知的な行為と考えることで、日々を送っています。しかしその前提は、ちょっとしたことで打ち崩されてしまいます。ここでは、草間彌生、ブリジット・ライリー、日高理恵子、金明淑(キム ミョンスク)の大きな絵画が4点、展示されます。それらは一見シンプルな作品ですが、前にすると、くらくらして、「視る」という行為が本来どれだけ身体的であるか、実感されるのです。 スフィンクスの問いかけ  「朝には四つ足、昼には二本足、夜には三つ足で歩くものは何か」というスフィンクスの謎かけはあまりにも有名です。ここでは、絵画(フランシス・ベーコン)と彫刻(舟越桂)で表されたスフィンクスによって、その問いかけの意味を、考えていただきます。謎かけの答えは、オイディプスによって「人間」と明らかになったわけですが、しかしその英雄自身は、スフィンクスと出会う前に父を殺し、後には母と交わった悲劇の人物(男性)でもあったことを忘れてはなりません。 冥界との対話  「わたし」の生成にとって、人間に組み込まれた不可避の「死」というプログラムは決定的な役割を果たします。しかし、その「死」は直視することを躊躇させるような深い闇としてあるために、社会は、「死」を「生」の充実に転化する装置として「物語」や「宗教」を必要としてきたのでしょう。死は、個人の生を際立たせると同時に、それを個人というレベルを越えた集合的な記憶や感情と結びつけるのです。ここではビル・ヴィオラのヴィデオ・インスタレーション《追憶の五重奏》や、須田一政の写真「風姿花伝」(シリーズ、出品は一部)が展示されます。 SELF AND OTHERS  1983年に36歳で早世した写真家、牛腸茂雄の残した連作《SELF AND OTHERS》全60点をまとめて展示します。写された人々の多くは、こちらをまっすぐに見つめています。そのまなざしの集合体にとらえられたとき、わたしたちは「他者」との距離に思いを巡らさずにはいられないでしょう。 「社会と向き合うわたし」を見つめるわたし  自画像から始まったこの展覧会は、再び作者自身の姿を表した作品群で終わります。しかしこのセクションで展示される作品は、いずれもただの自画像ではありません。他者と向き合い、関わろうとする自分の姿を、もうひとりの自分が冷静に見つめ、対象化し、ときにユーモアを交えて表しているかのようです。 イベント情報 ギャラリー・トーク 担当キュレーター5人によるリレー式ギャラリー・トーク 2008年2月8日(金) 18:00-19:30 企画展ギャラリー 蔵屋美香(当館主任研究員)三輪健仁(当館研究員)鈴木勝雄(当館主任研究員)保坂健二朗(当館研究員)大谷省吾(当館主任研究員)*以上は大まかな順序になります 参加無料(要観覧券)、申込不要 「写真と<わたし>」 2008年2月22日(金) 18:00-19:00 企画展ギャラリー 竹内万里子(当館客員研究員、写真批評家) 参加無料(要観覧券)、申込不要 カタログ情報 B4の大きなカタログは、服部一成氏によるもの!「わたしいまめまいしたわ 現代美術にみる自己と他者」展のカタログのデザインは、チラシやポスターと同じく服部一成(はっとりかずなり)氏によるものです。服部氏の仕事は多岐にわたります。「キユーピーハーフ」(1997-)、「キリン淡麗グリーンラベル」(2002-05)、「オンワード 組曲」(2000-01)などの広告キャンペーンのアートディレクション 。『流行通信』誌リニューアル(2002-04)のアートディレクションとロゴデザイン。そのほか、パッケージデザイン、ブックデザイン、CDジャケットデザインなどなど。美術展では、森美術館の「ビル・ヴィオラ展」(2006)や川村記念美術館の「ハンス・アルプ展」(2005)や横浜美術館「中平卓馬展」(2003)などのグラフィックデザインが知られており、当館でも「ドイツ写真の現在 ― かわりゆく「現実」と向かいあうために」展(2005)を手がけていただきました。今回は、出品作品が多数あることなどから全点掲載とはなっていませんが、B4という大きな版型をいかして、図版が迫力あるものとなっていたり、作品同士を対比しやすくなっていたりするだけでなく、服部氏ならではのグラフィックがページが表1・表4以外にも施されていて、見ごたえのあるカタログとなっています。 B4版 縦36.4×横25.7cm/52p(表1~表4を含む) pp.6-13 わたしはひとりではない (蔵屋美香)pp.14-19 アイデンティティの根拠 (三輪健仁)pp.20-21 暗い部屋(カメラ・オブスクーラ)と「わたし」 (鈴木勝雄)pp.22-25 揺らぐ身体 (保坂健二朗)pp.27-29 スフィンクスの問いかけ (保坂健二朗)pp.30-33 冥界との対話 (鈴木勝雄)pp.34-39 SELF AND OTHERS (蔵屋美香)pp.40-45 「社会と向き合うわたし」を見つめるわたし (大谷省吾)pp.46-47 作品リスト 本体1200円(税込) 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー 2008年1月18日(金)~3月9日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)入館は閉館30分前まで 月曜日 *2008年2月11日は開館し、翌12日は休館 一般420円(210円) 大学生130円(70円) 高校生70円(40円) 中学生以下、65歳以上、キャンパスメンバーズ、MOMATパスポートをお持ちの方、障害者手帳等をお持ちの方と付添者1名は無料。それぞれ入館の際、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 *( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。*本展の観覧料で、当日に限り、所蔵作品展「近代日本の美術」と「特集 国吉康雄」もご覧いただけます。 2008年2月3日(日)、3月2日(日) 東京国立近代美術館 本展は当館のみでの開催となります

No image

日本彫刻の近代

展覧会について 日本には古来、仏像、神像、建築装飾、置物など、今日「彫刻」と総称されるさまざまな表現が存在しています。しかし、祈りのための彫像や日常の愛玩物ではなく、西洋的、近代的な意味での純然たる鑑賞の対象としての「彫刻」という考え方が本格的に移入されはじめたのは、「絵画」よりも遅く、明治30年代になってからのことでした。それと前後して、象牙の置物や根付などの工芸美術品が外国向けの輸出品としてもてはやされたり、歴史的偉人や事績を顕彰するための記念碑彫刻が推奨された時代などもあり、彫刻というジャンルが、芸術家個人の自由な表現として認められるのは、ようやく明治末年から大正初めにかけて、荻原守衛や高村光太郎らの活躍をみてからでした。その後、大正から昭和にかけての日本彫刻の歩みも、決して平坦なものではありません。ロダンの弟子のブールデルや、マイヨールらに学んだ彫刻家たちが、20世紀の思潮を持ちかえる一方、伝来の木彫界でもさまざまな変転があり、また戦後になると、多種多様な素材・技法による抽象表現が現われてきました。 この展覧会は、幕末・明治期から1960年代までの近代日本彫刻史を、68名の彫刻家の約100点の作品によって振り返りながら、この分野における「近代」とは何であったかというテーマに、さまざまな角度から光を当てようとするものです。絵画史と比較すると、日本の近代彫刻史を通覧する試み自体が少なく、また、研究成果の蓄積も、残念ながら十分とはいえません。本展が、日本彫刻における近代について改めて見直すきっかけとなり、彫刻芸術の魅力を広く紹介する機会となれば幸いです。 ここが見どころ 日本の近代彫刻100年の100点 まとめて見る機会のなかなか少ない日本の近代彫刻。本展では高村光雲の代表作《老猿》(重要文化財)をはじめ、貴重な作品を数多く各地から集め、明治からの日本近代彫刻100年間の歩みを、100点の作品でたどります。 多様な主題、材質、技法 日本の近代彫刻は、100年の間に多様に展開しました。そのため本展で紹介する作品は、主題も宗教的なものから肖像、動物、そして抽象まで幅広く、素材も木、石、ブロンズ、象牙、鉄、アルミなど多岐にわたります。さらに、高さ3mにも及ぶ竹内久一《神武天皇立像》からわずか7cmの高村光太郎《柘榴(ざくろ)》まで、実に多様な作品が集まります。 カタログを一般書籍として刊行 日本の近代彫刻史の教科書をめざした詳細なカタログを淡交社から一般書籍として刊行。書店でもお求めいただけます。3つの巻頭論文と時代別の8つの論考、そして個別のエピソードを紹介したコラムなど、読み応えのある一冊です。 展覧会構成 I 「彫刻」の夜明け 明治初期に西洋から伝えられた「彫刻」という概念と、それまで日本に存在した仏像や人形や置物などとの間で、作家たちは新しい表現を模索し始めました。こうした黎明期の取り組みを、宮川香山(初代)、高村光雲、石川光明などの作品によって紹介します。 Ⅱ 国家と彫刻 明治20年代頃から、近代国家体制の整備の一環として、権力者の像や歴史や神話と関連する主題の銅像が全国に設置されていきました。高村光雲、竹内久一、大熊氏廣などの作例を、実際の銅像は移動不可能なため、試作品や関連作品、写真などによって紹介します。 Ⅲ アカデミズムの形成 1907(明治40)年開設の文部省美術展覧会(文展)で活躍した新海竹太郎、朝倉文夫、建畠大夢、山崎朝雲らの作品を紹介します。展覧会制度の整備によって、特定の個人を顕彰する銅像的なものから鑑賞のためのものへと、彫刻は変化していきました。 Ⅳ 個の表現の成立 明治時代末から大正時代前期にロダンの芸術が紹介され、作家の個性と内面の表現を重視する新しい彫刻思想が広まりました。高村光太郎、荻原守衛、中原悌二郎、戸張孤雁など、この潮流の中で制作した作家たちの作品を紹介します。 Ⅴ 多様性の時代 大正後期から昭和前期にかけての時期は、ロダンの紹介から時を経て、技法や題材が再検証された時代です。高村光太郎、石井鶴三、橋本平八など、伝統と近代とをめぐって葛藤しながら、個性を探求していった作家たちを紹介します。 Ⅵ 新傾向の彫刻 1920年代に西洋のモダニズムの影響を受け、従来の彫刻概念を変えようとした仲田定之助らの前衛的な作品や、都市の近代化の中で彫刻と建築との総合を目指した団体「構造社」の作家たちの作品を紹介します。 Ⅶ 昭和のリアリズム ブールデル、マイヨール、デスピオといったロダン以後のフランス近代彫刻の影響を受けながら、大戦間の時代に日本人彫刻家としてのアイデンティティを模索していった高田博厚、柳原義達、佐藤忠良、舟越保武などのヒューマニスティックな作品を紹介します。 Ⅷ 抽象表現の展開 きわめて多様に展開した戦後の抽象表現を「抽象彫刻の草創期」、「転換期――彫刻の「表面」をめぐって」、「物質と空間――1960年代後半~」の三つに分け、堀内正和、建畠覚造、豊福知徳、若林奮らの作品を紹介します。 イベント情報 パネル・ディスカッション 2007年12月8日(土) 13:00-16:00 当館講堂 黒川弘毅(彫刻家、武蔵野美術大学教授)、田中修二(大分大学教育福祉科学部准教授)、古田亮(東京藝術大学大学美術館准教授)、松本透(当館企画課長) 聴講無料、申込不要、先着150名 ギャラリー・トーク いずれも参加無料(要観覧券)、申込不要 大谷省吾(当館主任研究員) 2007年11月30日(金) 18:00-19:00 企画展ギャラリー 松本 透(当館企画課長) 2007年12月14日(金) 18:00-19:00 企画展ギャラリー カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー 2007年11月13日(火)~12月24日(月) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)入館は閉館30分前まで 月曜日 *2007年12月24日(月・振休)は開館 一般850(700/600)円、大学生450(350/250)円、高校生250(150/100)円 中学生以下、障害者手帳等をお持ちの方と付添者1名は無料*それぞれ入館の際、生徒手帳、障害者手帳等をご提示ください いずれも消費税込、( )内は前売/20名以上の団体料金 本展観覧券で、当日に限り、「天空の美術」、所蔵作品展「近代日本の美術」もご覧いただけます 観覧券は全国チケットぴあ他、ファミリーマート、サンクスにて取り扱います(一部店舗を除く)*前売券は、9月19日(水)から11月12日(月)まで 東京国立近代美術館、日本経済新聞社 すでに宮城県美術館(2007年8月7日~9月17日)、三重県立美術館(2007年9月26日~11月4日)で開催され、当館が最終会場です

No image

天空の美術

展覧会について 星空を見上げ、はるか遠い世界に思いをめぐらせることはありませんか。また、流れる雲に思いがけないかたちを見出すことはありませんか。ひとは古くから、天空の世界に刺激を受けてきました。とりわけ美術家たちは古くから、この世を超えた世界へのあこがれを託したり、かたちも重さもない空の高さや星の光をいかに表すか追求したりと、さまざまなかたちで表現を行ってきました。この展覧会では、20世紀初頭から今日までの、空や星、雲をテーマにした絵画・写真・オブジェ約40点を集め、ご紹介します。 下記の作品については、展示期間が限定されていますのでご注意ください。 北脇昇《劫火2》10月27日‐11月18日《月2》11月20日‐12月2日《劫火1》12月4日‐12月24日 野村仁《'moon' score(月の譜)dec. 19, 1975~ dec. 31, 1976》10月27日‐11月18日《'moon' score(月の譜)jan. 1, 1977 ~ jan. 27, 1977》11月20日‐12月24日 展覧会構成 彼方へ ひとは空を見上げるとき、地上で営まれる日常生活から離れ、人間の尺度を超えた無限の広がりや時間の流れに思いをはせています。モダンな和服姿の女性たちが天体望遠鏡をのぞきこみ、彼方へと視線を投げる、太田聴雨《星をみる女性》。切手にもなった人気作品です。他に自らと姉、恋人をオリオン座の三つ星に見立てた関根正二の《三星》(1919年)や、アメリカの作家ジョゼフ・コーネルが星への旅を夢想して作ったオブジェ《ウィーンのパン屋》(1950年)などを展示します。 定点観測 刻々と移り変わって二度と同じすがたをとることのない雲。そして、何万年ものあいだ変わらぬ秩序で回転を続けてきた星たち。一瞬と永遠という、一見相反するものをとらえるため、ひとは定点観測――雲や星を長い期間同じ精神的な構えから見続けること――という方法を見出しました。アメリカ写真の父、アルフレッド・スティーグリッツが雲を写した名作「イクィヴァレント」シリーズ、「イクィヴァレント」へのオマージュとして撮り始められた川田喜久治の「ラスト・コスモロジー」シリーズ(トップ画像)、月の動きを五線譜上の音符に見立てた野村仁《‘moon’ score(月の譜)1979.1.1》(1981年)など、おもに写真の連作によって表現された雲と星のすがたをご紹介します。 光をつかまえる 絵具とキャンバスという物質を、青空とそこに満ちる光という手に触れることのできないものに変換しようとした、小林正人の《絵画=空》。今回は作家自身のセレクションにより、《絵画=空》を、制作の原点である卒業制作《天使=絵画》(1984年、個人蔵)と共に展示します。 イベント情報 キュレーター・トーク 2007年11月11日(日)11:00-12:002007年12月21日(金)18:00-19:00 ギャラリー4 蔵屋美香(当館主任研究員) いずれも参加無料(要観覧券)、申込不要 アーティスト・トーク 本展出品作家である小林正人さんのアーティスト・トークを開催します。 11月02日(金) 18:30-19:30 2F 所蔵品ギャラリー アーティスト:小林正人(画家) ギャラリー内で作品を前に、作者自身にお話をうかがう好評企画「アーティスト・トーク」。13回目となる11月2日(金)は、画家・小林正人(こばやし まさと)(1957- )さんをお迎えします。昨年度購入したばかりの《Unnamed #7》(1997年)を前に、「天空の美術」展出品の《絵画=空》(1985-86年)など他の作品の話題も交えながら、ご自身の創作の秘密について語っていただきます。夕刻からの開催になります。みなさまぜひ竹橋までお越しください。 カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館本館 ギャラリー4(2F) 2007年10月27日(土)~12月24日(月) 月曜日、ただし12月24日(月・振休)は開館 一般 420円(210円)大学生130円(70円)高校生70円(40円)中学生以下、65歳以上および障害者とその付添者(原則1名)の方は無料。 それぞれ入館の際、学生証、運転免許証等の年齢の分かるもの、障害者手帳等をご提示ください。 ( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。 本展の観覧料で、当日に限り、所蔵作品展「近代日本の美術」展(本館、所蔵品ギャラリー)もご覧ただけます。 お得な観覧券「MOMATパスポート」でご観覧いただけます。 「天空の美術」展および、所蔵作品展「近代日本の美術」展のみ11月3日(土・文化の日)、11月4日(日)、12月2日(日) 東京国立近代美術館

No image

平山郁夫:祈りの旅路

展覧会について 展覧会の構成と見どころ 今年、平山郁夫画伯は、77歳の喜寿を迎えられました。また絵を学びはじめてから60年にあたります。本展は、これを記念し、その画業を回顧するものです。 平山画伯は、はじめ、仏教に関する伝説や逸話にもとづく抒情性豊かな作品で大きな注目を浴びました。その後、玄奘三蔵のインドへの求法の道やシルクロードを旅し、そこで繰り広げられた雄大な歴史の流れに感銘を受け、風景としての歴史画ともいうべき独特の画風をつくりあげました。それは奈良・薬師寺の玄奘三蔵院の大壁画となって大きな実を結ぶことになります。近年は日本の文化にも大きな関心を寄せ、日本各地に取材した作品に新しい境地を切り開いています。 こうした平山画伯の旺盛な制作活動の根底にあるもの、それは、広島での被爆を経たうえでの、生きること、生かされていることへの問いかけと、その経験から導かれた平和への切実な祈りです。その想いが率直にあらわされた《広島生変図》、《平和の祈り―サラエボ戦跡》などの作品を見るとき、平山画伯が60年にわたる制作活動において表現しようとしてきたものに、私たちは改めて気づかされるのです。 この展覧会では代表的な作品のなかから約80点が出品されます。「仏陀への憧憬」、「玄奘三蔵の道と仏教東漸」、「シルクロード」、「平和への祈り」の4章構成で、平山画伯の芸術の軌跡をたどります。 会期中展示替えがあります。詳細は出品作品リスト をご覧ください。 都合により、次のとおり展示期間が変更になりました。《流水無間断(奥入瀬渓流)》(no.74):10月14日まで。《黎明讃岐路 四国霊場八十八番 大窪寺》(no.75):10月16日から ここが見どころ 画業60年、代表作を一堂に 画業の転機となった《仏教伝来》(1959年)をはじめ、燃えさかる炎に包まれた広島の鎮魂を願う《広島生変図》(1979年)、近作《平成洛中洛外図》(2004年)など、平山郁夫の画業を振り返る上で欠くことのできない代表作が、全国から集まります。 《大唐西域画》7場面13画面を、一挙公開 奈良・薬師寺の玄奘三蔵院伽藍におさめられる《大唐西域壁画》は、平山郁夫が構想から完成まで約30年の月日を費やした畢生の大作です。玄奘三蔵の辿った苦難の道のりを、壮大な大陸西域の風景として描くこの作品を、平山郁夫は壁画完成から7年を経た今年、新たに小品として再制作しました。今春、所蔵館で初公開されたのにつづく、全7場面13画面の一挙公開となります。 シルクロードの過去と現在を巡る旅 平山郁夫は学術調査団へ参加するなどしてシルクロード上の各地へおもむき、長い年月をかけてこの道を、作品によって点から線へと繋いでゆきました。なかには、捨て置かれた廃墟に触発され、文明の栄えたありし日の都市の姿を描いた作品もあります。シルクロードの東と西、過去と現在を巡る旅を、本展でお楽しみください。 大画面の迫力と、繊細な描写 平山郁夫ほど、大画面、ことに屏風形式の作品を精力的に描いている日本画家はいないといっていいかもしれません。そしてその大画面には、実に繊細な描写がなされています。とりわけ1960~70年代の作品に顕著に見られるこの表現は、小さな図版では見て取ることができません。ぜひ、会場でじかに接してご覧ください。 展覧会構成 第1章 仏陀への憧憬 1959年の《仏教伝来》の制作を機に、平山郁夫は1960年代後半にかけて、釈迦の生涯を題材に多くの作品を制作する。しかしそれは信仰の対象としての仏画ではない。描かれているのは釈迦という一人の人間のドラマである。平山は、苦行する釈迦の姿に、被爆の後遺症を背負った自身の人生を重ねあわせることで、劇的であると同時に実感としての生の重みをあわせもった重厚で深みのある画面をつくり出した。これらの作品は次のステップ、玄奘三蔵の歩いた道をたどり、シルクロードを踏破する足がかりともなってゆく。 第2章 玄奘三蔵の道と仏教東漸 平山郁夫は《仏教伝来》の制作以降、玄奘三蔵の足跡を自らたどり、絵画化したいという願いを抱くようになる。それは玄奘の苦難に満ちた旅路と、挫けることのなかった不屈の意志を自らの人生に重ねようとしたのであろう。またそれは、画家としての果てしない道を歩んでいくために意識的に自分自身に課した闘いであったかもしれない。この巡礼にも似た旅から生み出された数々の作品には、成功した玄奘の苦闘や歓喜への共感ばかりではなく、志を半ばに中途で倒れていった多くの僧たちの願いもこめられている。 第3章 シルクロード シルクロードは、古くから東西を結ぶ交通路であり、文化が行きかう交流の道でもあった。平山郁夫にしてみれば玄奘三蔵の道がシルクロードと重なる以上、この道を歩むことになるのは当然のなりゆきだったろう。平山は、文明や歴史は名もなき一人一人の想いの積み重ねからなると考え、画面にそれをうつしとろうとする。平山の描く風景画や人物画が分厚い歴史の確かな堆積をも感じさせるとすれば、その作品はかつて描かれた伝統的な歴史画とは異なる、平山が新しく切り開いた現代の歴史画ということもできよう。 第4章 平和への祈り 《仏教伝来》と《平和の祈り―サラエボ戦跡》には、平和への願いが率直にあらわされている。平山郁夫が抱く平和への想いは、真理を伝えようと求法の道に殉じた人々やシルクロードの繁栄を支えた名もなき人々の想いを、荒涼とした大地に聞こうとすることとも共通している。また、仏教説話にもとづく連作を描きはじめた頃、原爆で死んでいった人々のために、後世に残るたった一枚の絵を描こうと苦しんだことにもつながっている。平山の制作の根底にあるもの、それは平和への祈りである。 作家紹介 平山郁夫 略歴 1930(昭和5)年  6月15日、広島県豊田郡瀬戸田町(現尾道市瀬戸田町)に生まれる1945(昭和20)年 学徒勤労動員の作業中、広島陸軍兵器支廠で被爆1947(昭和22)年 東京美術学校(現東京藝術大学)に入学1952(昭和27)年 同校を卒業、前田青邨に師事1953(昭和28)年 第38回院展に《家路》が初入選、以後入選を重ねる1959(昭和34)年 第44回院展に《仏教伝来》を出品し、高く評価される1964(昭和39)年 日本美術院同人に推挙される1973(昭和48)年 東京藝術大学教授に就任する1984(昭和59)年 奈良・薬師寺の玄奘三蔵院壁画制作に着手1989(平成元)年 東京藝術大学学長に就任する1993(平成5)年  文化功労者として顕彰される1996(平成8)年  日本美術院理事長に就任する1997(平成9)年  故郷の瀬戸田町に平山郁夫美術館が開館1998(平成10)年 文化勲章を受章する2000(平成12)年 12月31日、玄奘三蔵院《大唐西域壁画》完成2007(平成19)年 東京国立近代美術館と広島県立美術館で回顧展を開催 イベント情報 講演会 「平和への祈り」 平山郁夫 2007年9月20日(木)終了しました。 14:00-15:00 学術総合センター・一橋記念講堂 (東京都千代田区一ツ橋2-1-2) 定員500名。聴講無料。要申し込み。 「平山郁夫 祈りの旅路」 尾崎正明(当館副館長・本展企画者) 2007年9月29日(土)終了しました。 14:00-15:30 当館講堂 聴講無料。定員150名。 カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー 2007年9月4日(火)~10月21日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)入館は閉館30分前まで 9月10日(月)、9月25日(火)、10月1日(月)、10月15日(月)*9月17日(月・祝)、18日(火)、24日(月・振休)、10月8日(月・祝)、9日(火)は開館いたします 一般1,300円(900円)、大学生900円(600円)、高校生500円(350円)中学生以下、および障害者(付添者は原則1名まで)の方は無料。それぞれ入館の際、生徒手帳、障害者手帳等をご提示ください。*( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。*本展の観覧券で、入館当日に限り、同時開催の「崩壊感覚」(2F ギャラリー4)、所蔵作品展「近代日本の美術」(4-2F)もご覧いただけます。*観覧券は東京国立近代美術館の他、チケットぴあ、ローソンチケット、イープラス、CNプレイガイドなどでもお求めいただけます。 東京国立近代美術館、読売新聞東京本社 財団法人 文化財保護・芸術研究助成財団 日本サムスン、光村印刷 広島県立美術館 2007年11月2日(金)~12月24日(月・振休)

No image

リアルのためのフィクション

展覧会について 本展は、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立国際美術館のコレクションを中心に、現在活躍中の4人の女性作家が1990年代に制作した作品、約15点によって構成される小企画展です。1990年代は、アートがかつてないほどに多様化した時代と言われます。むしろ混沌といってもよいかもしれません。その背景には、情報技術の急速な発達ばかりでなく、東西冷戦構造の解体などが複雑にからみあっています。「リアル」なものが捉えにくくなった時代に、アーティストたちはどのような表現を生み出そうとしてきたのでしょう。本展で紹介する4人のアーティスト――イケムラレイコ、ソフィ・カル、やなぎみわ、塩田千春――は、扱う素材も、「リアル」なものに迫ろうとするアプローチの仕方も、さまざまですが、彼女たちはみな、ある種のフィクション(虚構)をしつらえて、それを通して逆説的に、私たちに「リアル」なものの扉を開く鍵を示しているようにみえます。リアルのためのフィクション。彼女たちが静かにあるいは饒舌に語りかける物語は、あなたの「リアル」を感じる力を揺り動かすことでしょう。 イケムラレイコの生み出す少女たち。あるときは絵画で、あるときは彫刻で提示されるその少女たちは、作者自身の分身でしょうか。彼女たちは、闇の中に横たわり、あるいは佇みながら、ひたすら内なる声に耳を傾けているようにも見えます。 ソフィ・カルは、あるルールを決めてそれに基づいて行動し、その記録を作品とします。フィクションがドキュメント化されることで、虚実の境目がしだいに曖昧となり、作品を見る私たちを幻惑します。 やなぎみわは、きわめて人工的な空間の中に、物思いにふけるようなエレベーターガールたちを配します。消費空間の中で商品と私たちをつなぐ役割の彼女たちもまた人工的に作られた商品のような相貌を帯びるのです。 塩田千春は、大量の泥を浴びるパフォーマンスを映像作品にしました。身を清めるはずの入浴によって泥まみれとなるその映像は、見る者に驚きを与えますが、それはまた同時に、近代文明に囲まれた生活の中で、大地に還ろうとする儀式のようにも見えます。 ここが見どころ ・東京国立近代美術館のコレクションに、普段東京では眼にする機会の少ない京都国立近代美術館、国立国際美術館の作品を加えた、国立美術館3館が所蔵する、豊かな現代美術のコレクションの一端をご覧いただけます。 ・今回ご紹介する作品は、絵画、彫刻、写真、文字テキスト、映像と、実にさまざまな手法によって作られています。本展は、コンパクトながら、多様化する現代美術の状況を見て取るための、好い機会となるでしょう。 ・展覧会の内容をやさしく解説したパンフレット(豪華12ページ!)を、会場で無料配布します。ぜひ、鑑賞のお供にご利用ください。 カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館 ギャラリー4 (2階) 2007年3月10日(土)~5月27日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)※入館は閉館30分前まで 月曜日 ただし3月26日(月)、4月2日(月)、4月30日(月)は開館します 一般420(210)円、大学生130(70)円、高校生70(40)円中学生以下・65歳以上・障害者手帳をお持ちの方と付添者1名は無料。 それぞれ入館の際、学生証、健康保険証、運転免許証、障害者手帳などをご提示ください。 (  )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。 本展の観覧料で「所蔵作品展 近代日本の美術」もご覧いただくことができます。 「生誕100年 靉光展」観覧券で、当日に限り、本展および「所蔵作品展 近代日本の美術」をご覧いただけます。 4月1日(日)、4月29日(日・昭和の日)、5月6日(日)、5月18日(金・国際博物館の日) 「リアルのためのフィクション」展、所蔵作品展のみ。「生誕100年 靉光展」は観覧料が必要です。 東京国立近代美術館

No image

生誕100年 靉光展

展覧会について  昭和の戦前・戦中期に、きわめて個性的な作品を描き、近代日本美術史上に大きな足跡を残した画家、靉光(あいみつ)。このたび彼の生誕100年を記念する回顧展を開催します。  靉光(本名:石村日郎、1907-1946)は広島県に生まれました。1924(大正13)年に上京し、「池袋モンパルナス」と呼ばれた界隈で仲間たちと切磋琢磨しながら、自らの画風を模索していきます。その探究の果てに生み出された《眼のある風景》(1938年)や、細密で幻想的な一連の作品は、シュルレアリスムの影響を思わせつつも、けっしてその一言では片付けられない独自性と“謎”に満ちています。描く対象に鋭く迫り、写実を突き詰め、そして突き抜けた先に生み出された幻想。この類まれな境地に達した彼ですが、戦争によってその画業は途絶しました。召集を受けた彼は、終戦後まもなく上海で、わずか 38歳で戦病死したのです。  現存する彼の作品は、必ずしも多くはありません。しかし、描く対象の本質をえぐり出すようなその作品の評価は、今日ますます高まっています。本展では、幻想的な作品をはじめ、応召前に残した3点の自画像など代表作を網羅し、約130点の作品を時代・傾向別に4つの章に分け、靉光の見つめたものを検証します。 ここが見どころ 生誕100年の大回顧展、代表作一堂に 日本のシュルレアリスム的絵画の金字塔《眼のある風景》をはじめ、晩年の自画像3点など、生誕100年を記念して靉光の代表作が集います。生前、自らの作品の多くを破棄し、故郷広島に残した作品は原爆で焼失するなど、現存する作品は多くありません。靉光の貴重な作品をまとめて見ることのできる絶好の機会です。 多彩な表現 靉光は、《眼のある風景》に代表されるような幻想的な作品が有名ですが、実はその短い画業の中できわめて多彩な表現を試みました。初期はゴッホやルオーの影響から出発し、「ロウ画」と呼ばれる溶かしたクレヨンなどによる作品や、東洋的な描き方も試みています。早すぎる晩年には自画像のような新しい写実を模索しました。とりわけ「ロウ画」は他に例を見ないきわめてユニークな技法です。ご注目ください。 驚くべき密度 靉光の絵の特徴はなんといっても、過剰なまでに描き込んだ密度の高さです。《眼のある風景》では絵具を何度も重ねたり削ったりする作業が繰り返され、また《二重像》では、面相筆とよばれる日本画用の極細の筆で、B5判ほどの紙に驚くべき細密さで幻想的な世界が描かれています。印刷での再現が困難なほどのその密度を、ぜひ実物でご覧ください。 久しぶりに公開される作品 《馬》(1934年、メナード美術館蔵/展示期間3月30日~4月22日)、《パーサーの像》(1943年、蘭島閣美術館蔵、展示期間3月30日~4月 22日)、《チューリップと蝸牛》(1932年)は、いずれも靉光の回顧展としては1979年以来の28年ぶりの公開となります。とりわけ《馬》は、保存上の理由からめったに公開されることのない作品です。この機会にどうぞお見逃しなく。 展覧会構成 第1章 初期作品 広島に生まれた石村日郎は、少年時代から絵に興味を持ち、はじめ広島市内の印刷所で働きますが、本格的に絵を学ぶために大阪へ、そして東京へ出て「靉光」と名乗るようになります。ゴッホやルオーなど、さまざまな画家の作風を試みながら、あちこちの美術公募展に腕試しのように出品しました。しかしまもなく彼は、自分自身のスタイルを求めて悩むようになり、クレヨンやロウを溶かして絵具と混ぜ、不気味さとユーモアをあわせ持つ小品を生み出していきます。 第2章 ライオン連作から《眼のある風景》へ 新しい作風を模索するうちに、靉光は上野動物園に通ってさまざまな動物をスケッチし、ライオンを描いた一連の作品で注目を浴びるようになります。しかし彼の描いたライオンは、ただの写生ではありませんでした。描く対象に迫るために絵具を塗ったり削ったりする作業を繰り返すうちに、次第に幻想的な世界が生み出されていくのです。こうした制作方法をつきつめて、代表作《眼のある風景》が描かれました。当時フランスから紹介されていた前衛芸術、シュルレアリスムとも呼応するようなこの作品は、強烈な存在感で、見る者を逆に見つめ返します。 第3章 東洋画へのまなざし  シュルレアリスムというフランスの前衛美術に関心を持ちつつも、靉光はその形式的な模倣をしようとはしませんでした。彼はむしろ、中国の古い時代(宋・元時代)の絵画などに触発されながら、闇の中に植物が生い茂り、その中に虫や鳥が見え隠れする濃密な幻想世界を描くようになります。彼はまたこの時期、日本画で用いる面相筆という細い筆を用いて、さまざまな物体が増殖していくような不思議なイメージの世界を描いたり、墨による自由闊達な表現も試みたりしました。 第4章 自画像連作へ  戦争の激化に伴い、前衛的な表現が取り締まりの対象となる中で、靉光は再び模索を始めます。松本竣介らと「新人画会」を結成して、戦時下でも自分たちの描きたい作品だけを発表することを貫いた彼は、自己を見つめる作業を通して、3点の自画像を描きました。孤独、絶望、あるいは力強さ、未来への意志……。さまざまに解釈のできる印象深い自画像を残して彼は戦場へと召集され、戦後まもない1946年1月に、上海で戦病死しました。 イベント情報 講演会 「靉光の幻想世界はどのように生み出されたか」 2007年4月21日(土) 14:00-15:30 講堂 大谷省吾(当館主任研究員) 「靉光と池袋モンパルナス」 2007年5月12日(土) 14:00-15:30 講堂 土方明司(平塚市美術館学芸主管) ギャラリー・トーク 2007年4月20日(金)18:00-19:002007年5月11日(金)18:00-19:00 会場 大谷省吾(当館主任研究員) 学校教職員対象の鑑賞プログラム「生誕100年 靉光展」美術館活用研究会 04月03日(火) 終了しました 14:00~15:30 小・中・高校の教員および職員先着150名(事前申込制) カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー(1F) 2007年3月30日(金)~5月27日(日) 午前10時~午後5時金曜日は午後8時まで(入館は閉館30分前まで) 月曜日 ただし4月2日(月)と4月30日(月)は開館 一般1,300円(1,100円/900円)、大学生800円(700円/500円)、高校生400円(300円/250円)中学生以下、および障害者(付添者は原則1名まで)の方は無料。それぞれ入館の際、生徒手帳、障害者手帳等をご提示ください。( )内は前売/20名以上の団体料金の順。いずれも消費税込。 観覧券は、JR東日本の主なみどりの窓口・びゅうプラザ、チケットぴあ、ローソンチケット、セブンイレブンなどで取り扱っています。*前売券は2007年3月1日より3月29日まで *本展の観覧券で入館当日に限り、同時開催の「リアルのためのフィクション」「所蔵作品展 近代日本の美術」もご覧いただけます。 東京国立近代美術館、毎日新聞社 新生銀行 大日本印刷、毎日ビルディング 宮城県美術館 2007年6月9日(土)~7月29日(日)広島県立美術館 2007年8月10日(金)~10月8日(月・祝)

No image

都路華香展

展覧会について 都路華香(つじ・かこう、1871-1931)は、竹内栖鳳、菊池芳文、谷口香嶠とともに、「幸野楳嶺門下の四天王」と並び称された日本画家です。華香はさまざまな展覧会で活躍する一方、教育者としても近代京都画壇の隆盛を支えました。 華香は京都を代表する作家の一人でありながら、今や知る人ぞ知る存在といえるでしょう。その理由の一つには、主要な作品が散逸し各所に秘蔵されていたという事情があります。それゆえ、華香没後の昭和7(1932)年に、華香の弟子であった冨田溪仙の主導によって、大がかりな遺作展が開催されて以降、現在にいたるまで、本格的な展覧会は一度もおこなわれてこなかったのです。 このたびの展覧会は、京都国立近代美術館が中心となり、作品の所在を一つ一つ探し当て、調査をおこなうという地道な研究活動の末に初めて実現にいたったものです。 幼い頃から学んだ四条派の画風に、建仁寺の黙雷禅師に参禅して得た精神性をまじえ、新技法を積極的に取り入れた華香の画風は、現代の我々から見ても新鮮な魅力に満ちています。最近では、その画風が海外で愛され、アメリカに多くの作品が所蔵されています。 本展覧会では代表作を網羅する初期から絶筆《黙雷禅師肖像》までの作品約80点と、大下図、素描、資料等を紹介し、華香芸術の全貌に迫ります。 ※前期(1月19日~2月12日)、後期(2月14日~3月4日)で約30点の展示替があります。 ここが見どころ 待望の初回顧展 戦前の遺作展以来、初となる本格的な回顧展です。地道な調査によって探し当てた作品を一堂に会します。幼い頃から慣れ親しんだ四条派の作風から、大正、昭和期の大らかで自由な作風まで、自在に変転した華香芸術の全貌を紹介します。 華香の先見性に注目 琳派風の装飾性と、印象派絵画の雰囲気をあわせもつ《緑波》(グリフィス&パトリシア・ウェイコレクション)、独創的な水墨表現をみせる《良夜》(京都国立近代美術館蔵)など、華香は波をモチーフにさまざまな表現的試みをおこなっています。ことに明治末から大正初めにかけての時期は、華香にとって模索の時期であると同時に、新技法を盛んにとりいれて意欲的な作品を数多く描いた時期といえるでしょう。華香芸術にみられる洋画的ともいえる表現には、国画創作協会の活動にもつながりゆく先見性がうかがわれます。 素描、資料も豊富に出品 本画ばかりでなく、素描、大下図、資料などを多数出品します。その多くはこのたび初出品となるものです。本展では、これらの出品作によって華香の創作の秘密にも迫ります。 展覧会構成 第1章 写実表現と日本画の問題 1903年-1938年竹喬は1903年に京都の竹内栖鳳に入門しました。西洋近代絵画の写実表現をとりいれた栖鳳の制作に学びながら、自らも西洋絵画のエッセンスを貪欲にとりこんでゆきました。この時期、竹喬をとらえたのは<写実>でした。それは技法だけの問題ではなく、いかに自然の真実をつかむかという問題でもあったため、竹喬は東洋の南画や、竹喬と同時代の画家たちの作品にも学びながら、画風を変化させてゆきます。1918年、竹喬は土田麦僊らとともに国画創作協会を立ち上げます。しかし、やがて日本画材で写実を追及することに困難を覚えるようになります。1921年からの約1年のヨーロッパ旅行をはさみ、竹喬は東洋絵画における線の表現を再認識することになり、線描と淡彩による南画風の表現に到達します。 特集展示Ⅰ 竹喬の渡欧 竹喬は国画創作協会の仲間である土田麦僊、野長瀬晩花、そして洋画家の黒田重太郎とともに、1921年にヨーロッパへと出発しました。日本画家がヨーロッパで学びたかったものとは何だったのでしょう。この特集展示では、黒田の「芸術巡礼紀行」連載の挿図のために、竹喬と麦僊が描いたスケッチを紹介します。 第2章 自然と私との素直な対話 1939年-1979年1939年頃から竹喬の画風には変化が現れます。新しい画風は、色の面によって対象を把握し、かつ日本画の素材を素直に活かそうとするものでした。この時期、竹喬は大和絵の表現を手本とし、線も色も古い大和絵に学ぼうとしたのです。この転換はその後の竹喬作品の方向性を決定づけました。それ以降、竹喬はおおらかで単純な形と温雅な色彩を特徴とする表現を深めます。そして「風景の中にある香りのようなもの」をとらえようと無心の境地で自然と向き合うことで、ゆるぎない独自の世界を確立してゆきます。 特集展示Ⅱ 奥の細道句抄絵 10点からなる《奥の細道句抄絵》は竹喬晩年の代表作です。竹喬はこの作品で、江戸時代の俳人、松尾芭蕉の『おくのほそ道』をもとに、その句意を絵にしようと試みました。この特集展示では、この連作を制作するために竹喬がおこなったスケッチや下図など10点を、《奥の細道句抄絵》全10点とともに紹介します。 作家紹介 都路華香 (明治3年-昭和6年、1871-1931)京都市上京区の生まれ。本名、辻良景、通称宇之助。実家は友禅描きを営んでいました。満9歳の時に幸野楳嶺に師事。折しも社会は近世から近代へと移り変わる最中で、東京と同様京都でも、新しい時代に即応した絵画の創造を求めて多くの若手画家達が意欲的な作品を発表していました。中でも楳嶺門下生の活躍は目覚ましく、華香も竹内栖鳳らと共に同門下の四天王と呼ばれ、京都後素協会展や新古美術品展など京都内の展覧会だけでなく、内国勧業博覧会、絵画共進会など全国的な展覧会でも受賞を重ねています。明治40(1907)年に文部省主催美術展覧会(文展)が開設されると、その第1回展から出品、第10回展では《埴輪》が特選となるなど文展でも活躍、大正8(1919)年、文展が帝国美術院主催美術展覧会(帝展)と改組された後も、13年の第5回展から審査員を務め、京都を代表する画家の一人として、近代京都画壇の隆盛を支えました。門下からは冨田溪仙らを輩出しています。 イベント情報 講演会(当館講堂)*聴講無料 「初めて華香芸術に触れる人のために」 2007年2月12日(月) 14:00-15:30 小倉実子(本展企画者、京都国立近代美術館主任研究員) 申込不要、先着150名 研究員によるギャラリートーク 2007年2月16日(金) 18:00- 鶴見香織(当館主任研究員) *参加無料(要本展観覧料)、申込不要 カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー(1階) 2007年1月19日(金)~3月4日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)(入館は閉館30分前まで) 月曜日(2月12日は開館)、2月13日(火) 一般830円(700/560円)、大学生450円(350/250円)、高校生250円(200/130円)( )内は前売/20名以上の団体料金の順。 いずれも消費税込。中学生以下、および障害者(付添者は原則1名まで)の方は無料です。それぞれ入館の際、生徒手帳、健康保険証、運転免許証、障害者手帳等をご提示ください。 前売は全国チケットぴあ他、ファミリーマート、サンクスにて取扱い(一部店舗を除く)*本展の観覧券で入館当日に限り 「柳宗理」展、 「生々流転」展、 所蔵作品展もご覧いただけます。 東京国立近代美術館、京都国立近代美術館 京都国立近代美術館:2006年11月17日(金)~12月24日(日)笠岡市立竹喬美術館:2007年3月10日(土)~4月15日(日)

No image

柳宗理:生活のなかのデザイン

展覧会について 柳宗理(1915- )は、フリーランスのデザイナーとしていち早く活動を始め、日本のインダストリアル・デザインの確立と発展にもっとも重要な足跡を記したデザイナーです。経済や生活の環境が急速に変化し成長していくなかで、工業製品や身近な生活道具のデザインをとおして自らの芸術性を明らかにし、国際的にも高い評価を得てきました。 1952年第1回新日本工業デザインコンクールで受賞した《レコードプレーヤー》や1957年第11回ミラノ・トリエンナーレ受賞の《白磁土瓶》《バタフライ・スツール》をはじめ、家具、セラミックのテーブル・ウェア、《早く沸くヤカン》などの生活道具、ミシンや自動車、歩道橋のような環境構造物まで、実に広範かつ先駆的なデザイン活動を繰り広げてきました。それらは、機能に応じ無駄な装飾を排するモダン・デザインの合理性を示しながら、使いやすくて美しい、いわゆる“用の美”を表現したものです。日本の伝統や風土性をもうかがわせるそのデザインと姿勢には、社会生活を鋭く洞察した”日常の美”という思想性が一貫してあります。 今回の展覧会では、1950年代から60年代にかけて戦後のインダストリアル・デザインを先駆的に開拓した柳宗理デザインの確立を明らかにし、そして国内外で現代性が再認識されている優れたデザインを紹介します。 ここが見どころ リニューアルオープンした2002年から、ギャラリー4で開催しているデザイン特別展。赤レンガが印象的な別館、工芸館で展示されることの多いデザイン作品を、違った雰囲気でご覧いただきます。 これまでのデザイン特別展 「森正洋-陶磁器デザインの革新-」 「あかり:イサム・ノグチが作った光の彫刻」 「河野鷹思のグラフィックデザイン-都会とユーモア」 「渡辺力:リビング・デザインの革新」 作家紹介 柳宗理 1915年 東京都生まれ。1940年 来日したフランスのデザイナー、シャルロット・ペリアンの助手を務める。1950年 柳インダストリアルデザイン研究所開設(現・柳工業デザイン研究所)。1952年 第1回新日本工業デザインコンクール受賞。日本インダストリアルデザイナー協会設立。1957年 第11回ミラノ・トリエンナーレに招待出品され、金賞受賞。1958年 《バタフライ・スツール》がMOMAパーマネントコレクションに選定される。1960年 国際デザイン会議実行委員をつとめる。1977年 日本民藝館館長就任。2002年 文化功労者となる。 イベント情報 ギャラリー・トーク 2007年1月27日(土)諸山正則(工芸課主任研究員)2007年2月3日(土)深澤直人(プロダクト・デザイナー)2007年2月10日(土)木田拓也(工芸課主任研究員)2007年2月17日(土)堀井和子(料理スタイリスト)  2月3日(土)のプロダクト・デザイナー深澤直人氏によるギャラリートークは、展覧会会場の観覧者数状況と氏のプロジェクター映写によるガイド希望、そして氏自身の話題性から相当数の参加が予想され、急遽、地下1階の講堂へ会場を変更して行いました。開場時間を前に早くからかなりの参加希望者に行列をしていただき、ご協力と多くのご来場に感謝を申し上げます。可能な限りに入場いただき、柳宗理氏のデザインと深澤氏自らのデザインに関する興味深いトークにご参加いただきました。 同様に、2月17日(土)の料理スタイリスト堀井和子氏によるギャラリートークに際しても、ご協力とご来場に感謝を申し上げます。 なお、予想をはるかに上回る多くの方々にご来場いただきましたが、会場内の窮屈な状況および相当数の参加ご希望にそうことができず、ここに改めてお詫びを申し上げますと共に、当館でまとめましたそのギャラリートーク概要を公開いたします。 また、会場席数の説明や入場対応等においてご指摘の課題につきましては、今後当館スタッフにおいて検討し善処してまいります。 カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館 ギャラリー4 (2階) 2007年1月19日(金)~3月4日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)(入館はそれぞれ閉館30分前まで) 月曜日 (2月12日は開館、翌日休館) 一般420(210)円、大学生130(70)円、高校生70(40)円中学生以下・65歳以上・障害者手帳をお持ちの方と付添者1名は無料。 *それぞれ入館の際、学生証、障害者手帳などをご提示ください。*(  )内は20名以上の団体料金。消費税込。*「所蔵作品展」の料金も含みます。 ★無料観覧日 2月4日(日)・3月4日(日)*「都路華香展」と工芸館は有料です。 同時開催の企画展「都路華香展」 美術館1階 企画展ギャラリー2007年1月19日(金)~2007年3月4日(日) 「漆芸界の巨匠 人間国宝 松田権六の世界」 工芸館2006年12月19日(土)~2007年2月25日(日) *どちらの展覧会チケットでも、お求めいただいた当日に限り、本展と「所蔵作品展」をご覧いただけます。 東京国立近代美術館

No image

揺らぐ近代:日本画と洋画のはざまに

展覧会について 近代日本の絵画は、しばしば日本画と洋画という二つのジャンルに区別されて語られます。明治初年に始まったこのジャンル分けはその後美術界にも一般にも深く浸透していますが、実はこれは近代日本美術史にとって重要な問題を多く含んでいるのです。本展覧会は、この日本画と洋画が並存するという、100年以上にもわたって続いてきた美術状況を見直してみようとするものです。このことはひいては、「近代」「日本」「美術」を問い直すことに通じることでもあります。また、そうした概念上の問題と同時に、この展覧会では、作家個々人にとっての日本画・洋画の存在理由を検証し、実制作上の問題をも取り上げていきます。いわゆる日本画の名品と洋画の名品を時代順に並べていくこれまで繰り返されてきた方法では、そのはざまに揺れ動く絵画史の姿はなかなか見えてきません。本展覧会では、両者のはざまに位置する作品あるいは作家に注目することによって、日本画と洋画のかかえる多様な問題を浮かび上がらせ、日本の近代絵画自体をも再考する機会にしたいと考えています。 会期中、一部展示替があります。 ここが見どころ 日本画と洋画の<はざま>に注目―かつてない初めての切り口により、もうひとつの近代絵画史を語ります。作品、画家の側に視点をおき、制度と近代の問題をとらえなおす試みです。 重要文化財5点を含む日本近代絵画史上の名作も、日本画と洋画の概念が確立する途上に描かれた、奇想漂う作品も、同じ俎上にのせてとらえなおします。 美術ファンや研究者待望の、小林永濯《道真天拝山祈祷の図》、橋本雅邦《弁天(騎龍弁天)》など4点が、ボストン美術館ビゲロー・コレクションから里帰り初公開となります。 気鋭の研究者を招き公開討論会「日本画と洋画のはざまに、なにがあったか」を開催します。 展覧会構成 第一章 狩野芳崖・高橋由一 日本画と洋画の始まり 「日本画」と「洋画」という制度が形をなす時代に、それぞれを背負う立場にあったのは、狩野芳崖と高橋由一でした。芳崖の作品が西洋顔料の強い色彩によって彩られ、高橋由一の作品が江戸絵画に似た構図を示すように、日本画と洋画は、その「はざま」に位置する作品からはじまったといえます。 第二章 明治絵画の深層 日本画と洋画の混成 明治時代、近代の絵画表現をつくりだすために、画家たちは日本画と洋画の「はざま」で、いわば手探りで実験的な制作をおこないました。伝統画題を洋画で描くなど、ときにわれわれの意表を突く作品からは、画家たちの試行錯誤の跡と、創造のエネルギーをよみとることができます。 河鍋暁斎、小林永濯、橋本雅邦、彭城貞徳、田村宗立、原田直次郎ほか 第三章 日本絵画の探求 日本画と洋画の根底 日本画と洋画、それぞれの概念が整えられてもなお、日本画家は日本画の革新を、洋画家は洋画の日本化を求める傾向がありました。そのゆきつくところは、日本画と洋画の区別を超えた「日本絵画」ともいうべき表現世界であったかもしれません。 浅井忠、竹内栖鳳、黒田清輝、横山大観、菱田春草ほか 第四章 日本画の中の西洋 「モノに憑かれて」「風景の発見」というふたつの視点から、大正期の若手日本画家たちによる写実表現のこころみに注目します。彼らは、岸田劉生を中心とする洋画の動向、あるいは西洋の絵画表現を手がかりに、日本画の弱点とされるリアリズムの克服を目指したのです。 土田麦僊、村上華岳、速水御舟、榊原始更ほか 第五章 洋画の中の日本画 大正期の洋画家は、一方では西欧で展開される芸術思潮を受容し、他方で日本の風土に根ざした絵画表現を模索しました。いわゆる「日本的油絵」を生み出す画家たちは、日本画あるいは伝統絵画にそなわるさまざまな要素を取り入れています。彼らの関心は、線や平面的な画面構成、絵具そのものの質感、屏風などの形式にも及びます。 藤田嗣治、小出楢重、藤島武二、梅原龍三郎ほか 第六章 揺らぐ近代画家たち 日本画と洋画のはざまで 第六章で注目する9人は、日本画も洋画ものこした画家たちです。それぞれ数点の作品をとりあげ、個々の画家にとっての日本画、洋画の意味と、絵画表現の問題を考えます。 萬鉄五郎、岸田劉生、小杉放菴、川端龍子、熊谷守一ほか イベント情報 講演会 「戸惑う近代絵画 芳崖・由一から放菴まで」 2006年11月18日(土) 14:00-15:30 当館講堂 古田亮(本展企画者、東京藝術大学大学美術館助教授・当館特別研究員) 聴講無料、申込不要、先着150名 公開討論会 「日本画と洋画のはざまに、なにがあったか」 2006年12月2日(土) 14:00-16:00 当館講堂 児島薫(実践女子大学助教授)/佐藤道信(東京藝術大学助教授)/田中正史(小杉放菴記念日光美術館学芸主任)/古田亮 明治美術学会 *聴講無料、申込不要、先着150名 ギャラリー・トーク 古田亮 2006年11月24日(金) 18:00-19:00 *参加無料(要観覧料)、申込不要 都築千重子(当館主任研究員) 2006年12月8日(金) 18:00-19:00 *参加無料(要観覧料)、申込不要 学校教職員対象の鑑賞プログラム「揺らぐ近代:日本画と洋画のはざまに」展 美術館活用研究会 2006年12月1日(金) 16:00-17:00*15:30開場 小・中・高校の教員および職員 150名(事前申込制) カタログ情報 開催概要 東京国立近代美術館 企画展ギャラリー 2006年11月7日(火)~12月24日(日) 10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00)入館は閉館30分前まで 月曜日 一般850円(700/600円)、大学生450円(350/250円)、高校生250円(150/100円)( )内は前売/20名以上の団体料金の順。 いずれも消費税込。中学生以下、および障害者(付添者は原則1名まで)の方は無料です。それぞれ入館の際、生徒手帳、健康保険証、運転免許証、障害者手帳等をご提示ください。 前売は全国チケットぴあ他、ファミリーマート、サンクス(一部店舗を除く)にて取り扱っています。 *本展の観覧券で、当日に限り、「写真の現在3」と「所蔵作品展 近代日本の美術」もご覧いただけます。 東京国立近代美術館、京都国立近代美術館 JAL 財団法人UFJ信託文化財団 京都国立近代美術館 2007年1月10日(水)~2月25日(日) 電子メール討論会:「揺らぐ近代 揺らいでいるのはなにか?」御意見の受付は平成19年2月20日17時まで。

Page Top