美術文献ガイド3:展覧会情報の探し方

3.1 展覧会情報とは

展覧会情報とは、主に下記5点の内容に関する情報です。

  • 展覧会の会期・会場
  • 展覧会の出品作品
  • 展覧会の出品作家
  • 展覧会を開催するにあたって執筆された論文
  • 展覧会を評して書かれた短評(展評)

以下では美術館等で開催された展覧会の展覧会情報の探し方についてご紹介します。

3.2美術館開催の展覧会情報を探す

全国各地の美術館で開催される展覧会は数多くあり、展覧会情報を得るためには様々なアプローチの仕方が考えられます。当室だけでは情報を確認できない可能性もあるため、ここではインターネットや他の美術系の図書館等を利用し、外部から情報を得る方法も含めて紹介していきます。

はじめに展覧会情報の中でも最も重要な情報源である「展覧会カタログ」の探し方を取り上げ、次に「過去の展覧会情報」「開催中(予定)の展覧会情報」の探し方について順を追ってご紹介します。

3.2.1 展覧会カタログを探す

ここでは当館の蔵書検索(OPAC)を利用した検索方法について紹介いたします。次いで他館の所蔵情報の調べ方をご紹介します。

a) 冊子体の検索方法

当館の蔵書検索(OPAC)で展覧会名や作家名をキーワードにして検索すると、展覧会カタログの項目にヒットします。ヒットが多すぎた場合には、展覧会の開催美術館の固有名や出版年などの検索条件を追加して、絞込みをするとよいでしょう。東近美の展覧会カタログと同様、請求記号の「CO」は個展を、「CG」はグループ展を指している事も知っておくと便利かもしれません。

b) 他館の所蔵情報(データベース)

まず「ALC Search : 美術図書館横断検索」で調べてみてください。詳細は「1.5.3 展覧会カタログ」の「a) ALC」をご参照ください。

美術系大学図書館、公共図書館等のホームページでも蔵書検索ができます。各OPACを利用する事により、書誌情報の他、展覧会の会期・会場などの確認ができます。

  • 東京都立図書館(https://www.library.metro.tokyo.jp/)
  • 女子美術大学・女子美術大学短期大学部図書館(https://library.joshibi.ac.jp/)
  • 多摩美術大学図書館(https://www.tamabi.ac.jp/tosho/)
  • 東京藝術大学附属図書館(https://www.lib.geidai.ac.jp/)
  • 東京造形大学図書館(https://www.zokei.ac.jp/)
  • 武蔵野美術大学美術館・図書館(https://mauml.musabi.ac.jp/)

c) 他館の所蔵情報(参考図書)

明治期から現在まで、国公立7館の美術館・博物館が収集した国内開催の主要な展覧会カタログ(絵画・彫刻・工芸・写真・書・歴史など)60,000点を体系的に分類、テーマ・分野ごとに一覧できます。
カタログの基礎的な書誌情報に加え、展覧会の会期・会場・主催、カタログの所蔵先も記載しています。巻末には画家名、作家名やテーマから引ける「人名・事項名索引」「主催者名索引」が付いています。なお、最新の情報は「美術図書館横断検索」で検索できます。

東京都現代美術館が1999年3月までに受入れた約15,000点にのぼる日本語の展覧会カタログの書誌データを収録した目録です。当館の蔵書検索(OPAC)で検索してヒットしなかった1999年以前のカタログは、この目録に当たるとよいでしょう。この目録は本文編と索引編の2冊組になっています。索引編では、「図録(カタログ)タイトル」「美術作家(カナ)」「美術作家(Alphabet)」「美術館(カナ)」「美術館(Alphabet)」から検索することができます。全てのカタログに4桁の数字が付されているので、その数字を元に本文編を引くと、カタログの「タイトル」「出版情報」「会期・会場」「出品作家名」等の情報を得る事ができます。また、本文編は分類番号順に排列されているので、特定の分野に関する展覧会を直接探す事も可能になっています。

戦前から戦後にかけ百貨店美術部や日本画商(新画商)が開催した「市井(しせい)展」を一覧できます。「展名」「会期・会場」「主催」「出品」はもちろん、それらの典拠や展覧会について書かれた主な文献まで紹介されています。

d) 海外の展覧会カタログ

下記は海外の展覧会カタログを探す際のレファレンスツールです。

The worldwide bibliography of art exhibition cataloguesは、1963年から1987年までに世界各国で開催された展覧会カタログに関するデータを収録しています。地理的区分やジャンルごとに排列され、総索引から引く事もできます。

近年のものに関しては、下記のホームページで検索できます。カタログの実物を手に取るためには、ここで得た情報を元に当館の蔵書検索(OPAC)や、ALC Search、他機関のデータベースでお調べください。

  • Worldwide Books (https://www.worldwide-artbooks.com/)

「NYARC Discovery」は、 New York Art Resources Consortium (NYARC) の3館、Brooklyn Museum Libraries & Archives、 Frick Art Reference Library、The Museum of Modern Art Library が提供するリサーチ・ツールです。

  • NYARC Discovery (https://nyarc.org/initiatives/discovery)

3.2.2 過去の展覧会情報を探す

過去の展覧会情報とは、既に開催された展覧会の会期・会場等の情報や記録を指します。探し方としては、カタログが発行されている場合は前項を参考にカタログを探し、展覧会を開催した美術館名や会期などの情報の特定をするのがよいでしょう。また、カタログが発行されていない場合は、「1.人物情報の探し方」を参考に、作家略歴や展覧会への出品歴等を探し、展覧会に関するデータを集めていく方法があります。以上のようにして、ある程度のデータを集め、開催した美術館や開催年を特定した上で、下記で紹介するレファレンスツールを活用することで、様々な展覧会情報を得ることができるでしょう。

a) 年報・ニュースレター

展覧会の会期・会場の情報を把握している場合は、その会場館で発行された年報やニュースレターを用いることで、その展覧会情報の詳細を得られる可能性があります。求める巻号の所蔵の有無はOPACで確認します。年報やニュースレターには、美術館によって内容は違いますが、展覧会の予告、報告、寄稿文等が掲載されている場合が多くあります。また、展覧会に際して行なわれた関連イベントやシンポジウムの記録等も掲載されている事があります。

b) 年鑑

年鑑は一年間の業界の動向を知るための基本的なツールです。その年の美術界の動向、主なニュースなどを扱っています。内容は年代によって多少の違いはありますが、「美術界年史」「主要美術展覧会」「美術文献目録」「物故者」を主に扱っています。詳細は「1.4.4 年鑑」をご参照ください。

c) 雑誌

『展評』は展覧会評を中心に作られている季刊の雑誌です。

他の雑誌にも展覧会評は掲載されているケースが多く、こうした記事は展覧会の評価を知るだけでなく、展覧会の記録としても利用できます。雑誌内の記事情報の探し方は、「4. 雑誌情報の探し方」をご参照ください。

d) その他

『日本の美術展覧会開催実績報告書』は、日本の美術館 (美術系博物館を含む)における1945年以降の美術展覧会の開催記録をまとめた報告書です。美術館ごとに「展覧会名」「会期」「主催・協力」「東京・横浜の主要な8つの美術図書館の展覧会カタログ所蔵データ」を調べることができます。

1935年から現在までに主に日本国内で開催された近現代美術関係の展覧会開催情報が登録されています。会場、展覧会名、開催年、の3項目からの検索が可能です。「文化財関連情報」のタブから「美術展覧会情報」を選んでください。

  • 東文研 総合検索(東京文化財研究所)(https://archives.tobunken.go.jp/archives/)

1945年から2005年に国内の美術館で開催された企画展・特別展・企画性の高い常設展・所蔵作品展について、会期会場、主催、展覧会カタログの有無を検索することができます。

全国の美術展覧会情報についてキーワード検索が可能です。また、開催中・開催予定の展覧会一覧だけでなく、展覧会タイトル・会場の50音別一覧、開催年別一覧、会場県別一覧があるなど、様々な角度から展覧会情報を調べることができます。

2021年3月にPDF版が公開された「日本の美術館における現代美術展」(中島理壽編)、および、「国外で開催された日本現代美術展」(光山清子編)を元に作られたデータベース(2022年2月公開)。

3.2.3 開催中(予定)の展覧会情報を探す

ここでは開催中の展覧会やこれから行われる展覧会の情報を探すための方法をいくつかご紹介します。開催中・開催予定の展覧会情報は、雑誌、インターネット等のツールを利用してアプローチすることができます。

a) 国内刊行物

『月刊ギャラリー』は、掲載展覧会数の最も多い月刊の雑誌です。日本各地の開催中、開催予定の展覧会紹介に加えて、美術館・百貨店・画廊に分かれた1ヵ月分のスケジュール、展覧会紹介等が掲載されています。

『BT : 美術手帖』には国内と海外の最新のアート&アーティスト情報・展覧会情報・評論が掲載されています。なお、2018年4-5月号以降は発行されていませんが、小冊子の「ART NAVI(今月の美術館・ギャラリーガイド)」には、その時期に開催されていた展覧会の情報が掲載されています。

その他、下記にも国内の展覧会スケジュールが掲載されています。

『新美術新聞』は、1ヵ月に上・中・下旬号の3部発行されます。その月の上旬に出される新聞には月毎の展覧会スケジュールが掲載されています。また、毎年3月には、1年間の主な展覧会スケジュールが総覧できるようになっています。

b) 海外刊行物

ここでは主要世界都市の展覧会情報を扱っている雑誌を挙げておきます。

The art newspaperには、「Review」という分冊が付いており、その中の「Calendar」の項目では、世界各国の美術館、画廊で行われる展覧会のスケジュールが掲載されています。

c) インターネット

近年は各美術館の公式ホームページが充実してきたため、ホームページ上で展覧会情報を得る事が容易になっています。下記は各美術館のホームページへのリンク集を含む展覧会情報を提供しているWebサイトです。

「Art Scape」では、トップページの「展覧会スケジュール」から地域別に全国の展覧会情報を調べることができます(毎月1日、15日更新)。同じくトップページの「ミュージアム検索」では、全国の美術館・博物館の情報がデータベース化されており、都道府県から検索することもできます。

  • Art Scape (大日本印刷)(https://artscape.jp/)

「Internet Museum」では、「博物館・美術館」の検索で展覧会情報や施設情報を、「展覧会」で日付から展覧会・イベント情報を調べることができます。イベント・展覧会では、チラシの画像や詳細情報を見ることができます。

  • Internet Museum (丹青グループ)(https://www.museum.or.jp/)

3.3 美術団体の展覧会情報を探す

ここでは美術団体の展覧会情報の探し方を紹介します。美術団体はとりわけ展覧会を活動の場とする事が多く、展覧会カタログは各美術団体を調べる上での重要な情報源となっています。はじめにカタログの探し方を説明し、次に近年復刻された展覧会カタログ及び出品目録を数点紹介します。

3.3.1 美術団体の展覧会カタログを探す

美術団体展の開催に際して作成された展覧会カタログには、「作品図版」「出展作家のリスト」「出品目録」等が掲載されています。「○○年記念」カタログや作品集では団体に関する論文や年譜等が掲載されていることもあります。

当館の蔵書検索(OPAC)で団体名や展覧会名をキーワードにして検索すると、展覧会カタログの項目にヒットします。求める団体のカタログがヒットしたとしても、全ての巻号が所蔵されているわけではないため、必ず各号の所蔵を確認してください。

当館の蔵書検索(OPAC)で展覧会カタログが見つけられなかった場合、各美術年鑑を見ると何かしらの情報を得られる場合があります。『日本美術年鑑』『BT(美術手帖)増刊:年鑑』等には美術団体の項目が挙げられている事が多く、日本美術年鑑では前述した展覧会情報の中で、会期・会場の他、主要美術団体展に関しては出品された作品の記録まで記載されている事があります。また、「1. 人物情報の探し方」で取り上げている専門事典でも、概略的な説明文が掲載されている場合があります。

3.4 復刻されたカタログ資料を探す

下記は、現在では容易に見る事のできない貴重なカタログ等から得られる資料をそれぞれにまとめたものです。

明治から昭和初期にかけて活動した美術団体を含む美術展覧会の資料を復刻集成したシリーズです。このシリーズでは図版、出展目録、関係論文等の貴重資料を確認する事ができます。

ヨーロッパに日本美術を紹介し、日本には印象派を紹介したパリの画商である林忠正が所有していた競売の売立目録や西洋絵画コレクションのカタログ等をまとめたものです。全5巻から成ります。

明治期に日本国内で開催された内国勧業博覧会第1回(1877:明治10年)から第5回(1903:明治36年)までの出品作品をまとめたものです。巻末には姓名索引、号名索引があります。

幕末から明治期に海外で開催された主要9つの万国博覧会に出品された作品の目録。巻末に姓名索引、号名索引があります。

明治期の主要5美術団体が開催した展覧会の出品目録。各団体別ごとに開催順・作家名順で構成されています。

大正期を中心に日本国内で開催された展覧会のうち主要33件の出品目録。巻末には五十音順の出品作家一覧があります。

昭和戦前期 (1926-1945) を中心に日本国内で開催された展覧会のうち主要32件の出品目録。巻末には五十音順の出品作家一覧があります。

3.5 美術館データを探す

ここでは美術館の所在・連絡先・開館情報等のデータを探すための参考図書を紹介します。

a) 国内の美術館情報

「全国美術館会議」のホームページには「全美の美術館」という加盟館へのリンクページがあります。

  • 全国美術館会議 (https://www.zenbi.jp/)

『全国美術館ガイド』は、美術館、博物館等、全国の1780館の情報を集録しています。地域別に排列されていますが、巻末にある館名の五十音順の索引から引く事もできます。

『個人コレクション美術館博物館事典』は、全国の185の個人コレクションを主体に創立された美術館、博物館等の情報を掲載しています。小規模な美術館、博物館も多く取り上げられていますが、上記の『全国美術館ガイド』と重複する情報もあります。巻末にあるコレクター名から検索できる索引が特徴的です。

『人物記念館事典』は、美術作家等の個人を扱う記念館、美術館、資料館等約300館の情報が掲載されています。巻末には館名索引と人名索引があります。

下記も特定の条件のもとに収集したガイドです。

b) 海外の美術館情報

海外の美術館やギャラリー情報を探す際には、次の参考図書を利用するのがよいでしょう。

International Directory of Artsは、世界各国の美術館・ギャラリー・関連機関等の連絡先情報が3巻で構成されています。美術館を探す場合は、Vol.1を利用します。国名・地名から調べることができます。

Museums of the worldは、世界各国の美術館・博物館・ギャラリー等の連絡先情報が2巻にまとめられており、国名から調べることができます。Vol.2の巻末に収録されたindexでは、「Distinguished Persons」「Museum Staff」「Subject」から調べることが可能です。

また、雑誌の中でも美術館やギャラリーの情報を取り上げる場合があります。下記2冊を紹介しておきます。

Art in Americaは、毎年8月号にアメリカ内の美術館・ギャラリーの連絡先情報が掲載されます。展覧会・出展作家のデータ等が含まれる場合もあり、アメリカ国内における美術関連情報の詳細なデータを得る事ができます。

Art DiaryはイタリアのFlash Art Booksから毎年発行されているディレクトリーです。世界各国の美術作家、美術館、ギャラリーのデータが掲載されています。

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